「SSK」の中原さんに聞く!進化し続ける「スポーツ流通業」(後編)

株式会社SSK 中原 幸和

「SSK」の中原さんに聞く!進化し続ける「スポーツ流通業」(後編)

株式会社SSK 中原 幸和

3大・スポーツ流通会社の1つ、「SSK」中原さんへのインタビュー。

前編では、その仕事内容や、スポーツ流通業における時代の変遷を伺いました。→「SSK」の中原さんに聞く!進化し続ける「スポーツ流通業」(前編)

創業70年以上の歴史を誇る企業がこれからも生き残り、人々に必要とされるためには?そのヒントは、「進化し続けること」でした。

(取材:構成=元スポジョバ編集部 久下真以子)


スポーツ流通業に、「ディスラプター」がやってくる?


ーースポーツ流通業というと他にも会社がありますが、競争は激しくなっていくのでしょうか。

「意識はしていますが、昔ほどは激しくなっていません。寡占化されていて絞り込まれている状況です。昔に比べると、スポーツ流通業のいわゆる”問屋さん”といわれるものは半分くらいに減っていると思います。淘汰、合併がされています」

ーー同業他社に負けないように取り組んでいることはあるのでしょうか。

「既存事業だけにこだわっていても、流通業自体がどうなるかというところに実は危機感を持っています。ディスラプターと言いますか、別の何かが来て、流通業そのものが変わってしまうのではないかという懸念です。例えばITの進化によって全く別のライバルが現れて、別の仕組み、別のマーケティング手法によって我々が淘汰されてしまうのではないかということです」

ーーディスラプターに淘汰される、ですか。

「たとえば今、車業界が最大の危機と言われていますよね。これまでは車を作るメーカーが一番強いものだといわれていた。でも今後自動運転が進んだら、ITに強い会社がその心臓部を抑えて、車はただの箱モノでしかなくなるんですよ。ライバルがAppleやGoogleになるわけです」

ーースポーツ用品の仕入れから決済、物流までをワンストップでできる仕組みをITを使って提供するライバルが出てきたら、スポーツ流通業にとっては脅威となりそうですね。

「モノを届けるだけでなく、情報を届けるということを考えているので、ディスラプターが出てきたとしても別の手を打ちながら事業の維持拡大をしようとは考えています。情報であったり、サービスであったり、というところです」


人だからこそできることを。SSKが追求する”共感”とは?


ーー情報とサービスという言葉が出ました。2つの意味はまた違うのでしょうか。

「情報は例えば、”このバットはこんな特性を持っています”とか、動画での説明とか、お客さんが本当に買いたいなというところの最後の後押しをするような、テキストに書かれている以外の付加価値を付けた情報。一方、サービスはお客様の”課題”を解決するためのもの。2割5分しか打てないバッターをどうやったら3割にしてあげられるかということを目的として商品を提案したり、実際に商品の試打をしてみたり、触れてもらったり。スポーツをやったことのない人に健康になってもらうための場所を提供したりなどということがサービスだと思っています」

ーーそういったことはITではなく人でないとできないことですね。

「人だからできることといえば、”共感プロジェクト”というものがあって、さまざまなイベントを行っています。ボランティアや寄付、支援もももちろん素晴らしいのですが、受け手や見ている人にその気持ちを分かっていただけて、共感をしていただけるかが大事だと思うんです。スポーツで人と社会を元気にしたいという信念を常に持っていまして、活動を通じて人々に共感してもらえる企業を目指しています」

ーー共感プロジェクトの中には、アンプティサッカー(肢体不自由な選手たちが松葉杖をついて行うサッカー)の大会の開催もありますね。

「支援活動そのものは他の企業もしていると思います。でも、障害のある方々が社会に出て働いていることや、競技自体もすごくハードで楽しいということなど、商品提供だけじゃなくてそういった方々にフォーカスして、伝えたいメッセージがあるんです。例えば障害を持った方が引きこもってしまったり、社会に出づらくなってしまうこともあるかもしれないけど、スポーツがあるから外に出てみようかなってなればすごく素敵なこと。スポーツは人を呼び起こす力も持っているし、そこに周りの皆さんが共感する。何か寄付したり物を与えていて偉いよね、というのが目的ではないんです」

ーースポーツの持つ力って本当に無限大ですよね。

「そう信じて疑わないですね。これ、否定されるともう困りますから(笑)」






SSKが求めている人材は、スポーツ経験者だけではなく「適材適所」。


ーー勝手な想像ですが、スポーツ流通業というと「タテ社会」「男社会」のイメージがあります。

「スポーツマンが多いので、昔はタテ社会的なところはありましたけど、今はだいぶ変わってきているように思います。明るく・元気に、という社風です。また、障害者雇用も行っていますし、ここ10年くらいは女性の営業担当も増えてきました。まだまだ増やしていかないといけないと思っています」

ーースポーツ流通業に興味を持っていても、”自分には向いていないんじゃないか”と思って躊躇してしまう人もいるかと思います。

「実際、言われたことがあるんですよ。”僕野球やってて、SSKさんのバット使ってたんです。でも地区大会で負けたレベルなので、SSKさんに入れると思ってなくて別の会社に入りました”っていう人がいました。でも別に甲子園に行った人だけが来る会社じゃないですからね(笑)」

ーー本当ですか!自分の持っているスキルを、適材適所で活かせればいいですよね。

「ITに長けているとか、人とのコミュニケーション能力に強いとか、指導力があるとか。指導経験があるだけでも会社員になった時に部下に対しての組織力に役立つじゃないですか。そういうところをすごく求めているので、決してエースで4番だったとか、エースストライカーだったっていう人たちだけを求めているわけじゃないんです」

ーーそう考えたら、今転職を考えている違う畑にいる社会人でも飛び込めそうですね。

「中途採用の方であれば、全く違う業界で例えばマーケティングとか統計分析をやってたのであれば、それをスポーツに置き換えても是非貢献できるので志願してみました、と言ってもらえればいいのではないかな。逆にそういう方のほうが我々にとっては新鮮ですね」


自分自身から、産業全体へ。中原さんの抱く夢


ーー中原さんの今後の夢はありますか。

「28年間勤めてきて、今50歳です。今までの夢って自分中心に考えてたんですけど、この業界を何とかしたいという風に変わってきていますね。年齢の影響かはわからないですけど、産業そのものに大きな可能性を感じています。用品だけにとどまらず、スタジアム事業とかエンターテインメントも含めたスポーツ産業。その中で自分がやってきた経験をもとに、つながりを大きくしたいんです」

ーースポーツ業界内の横のつながりを大きくして、スポーツ産業自体を大きくしようということですね。

「具体的にはITであったり、弁護士や会計士の方でスポーツビジネスに関わっている方がいっぱいいらっしゃいます。会計士でサッカーチームのサポートをしていたり、弁護士だけのスポーツ分科会をしていたり。そういう人たちの話を聞いているとものすごく面白いんです。スポーツに対しての考え方やビジョンがすごくて、自分も夢が膨らんでくるんです。いろんな人たちとともに、何か新しいことをやってみたい。まだ机上の空論の段階ですけど」

ーーどんな机上の空論なのか、聞きたいです!

「例えば、新しい形の球団経営ですね。メジャーなプロスポーツは大企業がスポンサーになって、スポンサーありきの経営でした。そこをよりマイナーなスポーツまで落とし込み、ファンだけで運営できる仕組みを構築したい。例えばクラウドファンディングでできないか、とかですね。そして、リアル観戦よりもアプリで観戦する人をメインにしたサービスを提供したい。」

ーー斬新なアイデアですね。

「新日本プロレスワールドという月額999円のプロレス閲覧サービスは、数十万人の会員がいて、そのうち40%は海外のファンだそうです。後楽園ホールで生で観るだけじゃない。そういう風に興味のある人がたくさんいるっていうことを分かったうえで従量課金のビジネスを始めたら右肩上がりに成長しました。これを草野球や、少年野球でやっても面白い。1万人程度のスタジアムで試合をやっているけど、裏側で何十万人の人が試合を見ているという世界を作り上げてみたいです」

ーー今のお話の中にもアプリが登場しました。インターネット、ITの波に乗りながらも、人の部分を残していく。そういった進化こそが、スポーツ流通業が生き残るヒントとなりそうですね。

「まさにそう思います。商品を売るだけでは安かろうで終わってしまうので、どちらかというとスポーツをする人を元気にするためにはどうしたらいいかとか、勝つためにはどうしたらいいかというところから”逆算”ですね。そこにはモノかもしれないし、サービスのほうがいいかもしれないし、このアプリがいいよね、という提案にもなるかもしれない。出来たから売る、流すというのはもうダメだなと感じています」






【PROFILE】

中原 幸和

1969年3月生まれ、愛媛県出身。二松学舎大学卒業後、株式会社SSKに入社。大宮支店(埼玉)営業部、物流センター(埼玉)、東京支店営業部を経て、大阪に赴任。大阪の営業部時代にネット通販を担当したことから、ネット推進事業部(現・トータルコミュニケーショングループ)に異動し「SSKネット」の運用を任される。A型の牡羊座。







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