3大・スポーツ流通会社と言えば皆さんご存知でしょうか?
「ZETT」「イモト」、そして今回インタビューを行った「SSK」です。
SSKは野球商品をメインにプロ野球選手のサポートや小売店への仕出しを行うほか、さまざまなブランドやサービスの展開をしています。
では、実際にどんな業務を行っているのか?時代とともに、どう変化してきたのか?軸となるものは、点と点を結ぶ「線」の役割でした。
(取材:構成=元スポジョバ編集部 久下真以子)
ーー今日は勤続28年の中原さんにお話を伺います。よろしくお願いします。
中原さんは現在、SSKの「トータルコミュニケーショングループ」にいらっしゃいます。具体的にはどんな業務をされているのでしょうか?
「まずは、”SSKネット”の管理です。小売店などの得意先様がオンライン上で注文して、商品を買うとSSKの物流センターから発送されるというオンラインのBtoBシステムです。得意先さんがすぐに商品を見つけてすぐに購入しないといけない。我々はそれに対し、これだけの商品を持っているということを伝えないといけないですよね。となれば商品ページを作らないといけないし、今こういうものが売れていますということを得意先に伝えないといけない。そういったいわゆる情報の部分の仕事です」
ーーインターネット上でいつでも注文できる分、情報の管理や更新も大変そうですね。
「SSKネットというのは24時間365日止まっていないんです。一般的にオフィスの仕事は9時から17時半で、6時からは留守番電話です。でもSSKネットは365日動いているので、夜中にほしいものがあっても得意先さんは注文ができる。それをきっちり動くように運用管理しています」
ーー得意先とのやりとりを結ぶパイプラインを管理しているんですね!
「BtoBだけでなく、BtoCも見ています。一般のお客様が見る、SSKの公式サイトです。ここが、お客様が情報を仕入れたり購入したりするいわゆるタッチポイントになっています。BtoBもBtoCもオンライン上なんだから、近い将来シームレスになるだろうと。あとはWebだけではなく、店頭の演出物。お見せに行くとPOPとかポスターとかありますよね。そういうものの企画や、野球教室などのイベントやキャンペーンも企画しています」
ーーネットだけでなく、さまざまなことを手掛けているのですね。
「ネットだけでは足りないですね。ネットは1つのタッチポイントでしかないんですよ。初動の部分でパッと見て、”こんな商品があるんだな”って思ってもらうことは大事なのですが、最終的にラストワンマイルはお客様に得意先様(=小売店)のところへ行っていただくことになる。その時に、ネットで得た情報と同じ商品を見つけるためには当然アイキャッチが必要になってくる。それが”店頭演出”です。お客様が”僕が思っていた商品がここにある””ネット情報と同じことがここに書かれている”ということがわかるようなものが必要なので、そこまでの導線と、行きついたゴールの手前の部分。購買の最後の一押しができればと、演出物を作っています。そこまで一貫してやらないと、別々の人がやると何かずれが生じるような気がするんです」
ーー客目線でいうと、欲しかったものが店頭にあって”いいな”と思った時の感動ってすごい気がします。
「そこにずれがあってもいけないですからね。”ネットで見たときは欲しいと思ったけど、実際はこんなんなんだ…”っていうギャップがあってはいけません。情報が全てネットに詰まっているわけではないし、一番は店に行って商品を触ることだと思います。SSKが一押しだとネットで言っておきながら、店に行くとその他大勢で置いてあったらがっかりするじゃないですか」
ーー確かに。買うモチベーションが下がるかも…
「あとは店員の最後の一押しですよね。SSKの担当者が展示会場や営業活動の中で”このバットはこんな特性があるんです””お客さんが来た時にはこんな風にプレゼンしてください”と小売店に伝える。そして店員が実際にお客さんにそこを語ってあげる。これはもうネットにも演出物にも書いてない情報です。そこで初めてお客様が満足して、じゃあ商品を使ってみようとレジに向かうんです」
ーーお客様という”点”とお店という”点”、そういったものをつなぐ”線”がスポーツ流通業の役割なんですね。
「上手いこと言ってくれましたね。そういう表現でお願いします(笑)」
ーーそもそも中原さんがSSKに入られたきっかけは、何だったのでしょうか?
「大学では文学部だったんですけど、サラリーマンになるんだろうなって何となく思っていて。そこで同じ”物を売る仕事”をするんだったら、自分の好きなものを売りたい。スポーツ用品を売りたい。野球用品を売ってみたい。そういう気持ちで決めました。当時(28年前)は氷河期じゃない時代で、ファーストタッチでSSKを受験したら内定をもらいました」
ーー野球がお好きなのですね。
「大学で軟式野球をはじめました。中学ではバスケ部で、高校では部活をやっていませんでした。でもやり始めて面白かったんです。体育会の部活だったということもあって簡単に抜けられませんでしたし練習もしっかり出ていたので、4年間やり通せた。だから社会に出たときに、全然関係のない分野を1からやるよりは、好きな野球に携って営業する方が面白そうだなって思ったんです。今まではお客さんとしてスポーツ店に行っていたから、逆に自分が物を収める立場になるのもいいじゃないかと」
ーー野球をしているときからスポーツ”用品”に対するこだわりがあったんでしょうか?
「商品に対する扱い方や手入れ、物を大切にする気持ちなどを先輩からすごく言われたのは覚えています。先輩の分まで磨けというのはなかったけれど、自分の道具はしっかり磨いて準備をしておきなさいって。そういうところでは用具に対しての大切さみたいなものは学びました。いい経験になりましたね」
ーー使う立場からすれば、買ってからが商品とのお付き合いですものね。それを提供する側に立つのはやりがいがありますね。
「やりがいもあるし、大事に使ってもらいたいし、大事に使える商品を作って販売していかないといけない気持ちは当然あります」
ーー中原さんがSSKに入社したのが平成3年。28年間で感じてきたスポーツ流通業の変化はありますか。
「全然違います。まずSSKネットというものもなかったので、商品の発注が当然ながら電話やFAXが主流でした。その分、ずっと電話越しでやり取りしているので、得意先とのコミュニケーションをとる時間はたくさんありました。今は私は営業ではないですけど、電話なんてほとんどかかってきていないです」
ーー確かに今御社の会議室でインタビューしていますが、電話のベルの音は聞こえてこないですね!
「注文を受けるのも電話ばかりで、受けた注文を紙に書いて、端末に向かってそれを打っていく。当時は商物も一体だったので、注文を打ち終わると自分で商品を品出しに行って自分で梱包もして、経理に行って納品書を出してもらってセットして宅配便に出すっていう。全てをやっていました。私が若い頃が、最後の時代でしたけど」
ーーそれは大変!
「その後商物が分離されて、そのあとにインターネットが発達したので、SSKネットができて、受発注の部分もだんだん少なくなってきて電話応対がどんどん減ってきた。でもそれ以外の仕事、たとえば口頭でしか伝えられないようなことなどは残っていますので、チーム対応ですね」
ーー28年間で一生忘れられないという失敗談はありますか。
「ありますあります。得意先に納品したものが思っていたのと違った時に、電話の時代だと、”赤頼んだのに!””いや、黒ですやん”って水掛け論になってしまったり。部下が電話番をしていた時に発注を間違えて納期遅れが発生したので、お詫びに行ったときとか、そういうこともたくさんありますし。ミスで一番多いのは発注ミスですね。でもそれがSSKネットだと、ミスがないんです。また、商品の品出しや検品のミスもほとんどなくなり99.999%誤発注がない状態まで来ていますので、頭を下げに行くという機会は昔に比べるとずいぶんと減りました」
インタビューの続きはこちら! →「SSK」の中原さんに聞く!進化し続ける「スポーツ流通業」(後編)
【PROFILE】
中原 幸和
1969年3月生まれ、愛媛県出身。二松学舎大学卒業後、株式会社SSKに入社。大宮支店(埼玉)営業部、物流センター(埼玉)、東京支店営業部を経て、大阪に赴任。大阪の営業部時代にネット通販を担当したことから、ネット推進事業部(現・トータルコミュニケーショングループ)に異動し「SSKネット」の運用を任される。A型の牡羊座。
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