『感謝と恩返し』の言葉だけで生きている。プロ・アマの垣根を無くし業界を盛り上げるために、プロキャディが目指す生き方

プロキャディ/女子プロゴルファー石井理緒選手の専属コーチ 栗永 遼

『感謝と恩返し』の言葉だけで生きている。プロ・アマの垣根を無くし業界を盛り上げるために、プロキャディが目指す生き方

プロキャディ/女子プロゴルファー石井理緒選手の専属コーチ 栗永 遼

プロになれる実力がありながら、突然襲ってきた悲劇。その現状を受け入れ、大好きな業界にある別の道で生き続ける。この選択、なかなかできることではないと思います。ちなみにあなたは、得意とする武器が明日から全く使い物にならなくなってしまったら、どんな選択を取りますか?

今回お話を伺ったのは、プロキャディとして全国を飛び回って活躍をされている栗永 遼(くりなが りょう)さん。前編では、彼がキャディとして歩んできた道のりにあった感動物語をお伝えしました。後編では、彼がこれから目指す目標、未来について伺います。楽しそうに将来の夢を語る彼の姿が、私にはとても眩しく見えました。

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


地元への感謝と恩返し。それから、これからの業界の発展のために

__前回お話いただいた増田プロとの再会のお話と、淺井プロと実現したツアー初優勝のお話には、とても感動しました。当時、反響も凄かったんじゃないですか?

栗永:テレビにバッチリ映っていたのもあって、実家にも連絡がすごかったみたいです。「本当によかったね~」って。それこそ地元・香川のゴルフ協会の人からも電話をいただけて。小さい頃からいろんな人にお世話になっていたので、多少なりとも地元に恩返しできたかなって思っています。本当は僕がプロゴルファーとして優勝する姿を見たかった人もいるとは思うんですが、それでも「おめでとう」と言ってくださる方ばかりで、人のあたたかさをたっくさん感じられました。

__プロに比べたらキャディさんは黒子かもしれませんが、それでも大きな影響を与えているとは思いますよ!

栗永:よく「スポーツが感動を生む」って言うと思うんですが、それを選手と一緒に自分ができたっていうのは、改めてすごいことなんだなって思えました。あの経験によって、キャディという仕事でこんなにも人に感動とかを与えられるんだっていうことを理解できたので、すごく大変な側面もあるんですが「この仕事を極めたい、もっと頑張りたい」って思えたのも事実です。

__いいですね~!ちなみに栗永さんはどんなキャディさんになりたいとか、今年はこういう目標があるとか、その辺りも伺えますか?

栗永:まず今シーズンに関しては、担当する選手が男子含め11人。それこそ親友の稲森佑貴プロをはじめ、女子は柏原明日架プロ、プラチナ世代の西村優菜プロ、あとは僕がコーチをしている石井理緒プロなど、結構忙しくさせてもらっているのですが、担当する多くの選手と一緒に優勝したいですね。特にコーチをしている石井理緒プロとは早く優勝したい気持ちです。もちろん、佑貴(稲森プロ)は僕がこの業界に入るキッカケをくれた恩人なので、彼とマスターズに行きたいとも思っています。あと、担当する選手が多いだけに、誰もが接しやすいキャディになりたいって思っています。プロが困ったときにポロっとヒントを言える。常に感謝と謙虚なマインドを持ち続けて、ベテランから新人まで慕われる人間になりたいなって思っていますかね。僕はプロキャディの中では、まだまだ下っ端のほうなので…(笑)

__え、そうなんですか?そもそも、プロキャディさんってどのくらいの年齢の方が多いとか、人数はこのくらいいるとか、そのあたりにも興味が出てきてしまいました…(笑)

栗永:プロキャディの平均年齢的には、だいたい40歳くらいと高めなんですよ。で、選手120人に対して、70人いるかいないかくらい。因数分解していくと、余った50人のプロの内、そのゴルフ場のハウスキャディがつけられても30人程度。残り20人は、実は学生のアルバイトなんです。


▲写真は本人提供


『プロキャディ』という職業を当たり前にしたい。彼が現在も続けている活動とは

__学生アルバイトが、プロキャディとして働けるんですか!?

栗永:僕も経験あるんですが、1日15000円とかもらえるので、結構良い仕事なんですよ。重労働だし朝早いんですが「選手の練習終わったら帰っていいよ」とかなので、むしろ学生のときに行きまくっている方とかも多くって。なので、そこから本格的にプロキャディになりたい!っていう人が多い印象でもあります。それこそ僕のところにも、5~6人から「プロキャディになりたいけど、どうすればいいですか?」って連絡がきたこともあります。

__全然知らなかったので、正直ビックリです(笑)とはいえ、アルバイト入り口で、プロキャディさんとして活躍する人も増えそるでしょうし、ゴルフ業界もますます盛り上がっていくんじゃないですか?

栗永:僕はそう思っています!それこそ、僕みたいに選手やっていてキャディに転身するパターンも増えてくるんじゃないかなって思います。それこそ昨年、プロキャディ協会っていうのも立ち上がって、問合せも増えているみたいですよ。ちなみに、現状キャディの平均年齢は高いんですが、みなさん元気な方が多いので(笑)多少減るにしても、増える見込み人数を考えたら、もっと業界が盛り上がるんじゃないかなって思いますね。

__その上で、栗永さんは業界にどんな影響を与えたいってお考えですか?もちろん選手と一緒に優勝して盛り上げたいとかはあると思うのですが、もしほかの要素もあればぜひ!

栗永:将来的には、ゴルフやっている人もやっていない人も「プロキャディ」という言葉を聞けばわかる職業にはしたいなと思っていて。そのためには、まず自分のプロフェッショナル性を高める必要があるとは思っていますが、同時進行でYouTubeもやっています。「プロキャディはこんなやりがいがあるよ」などといった情報発信をして、次世代に貢献できたらなって気持ちでもいますね。

__たしかに。私も「プロキャディってなんですか?」と前回聞いてしまいましたし…。すみません…。

栗永:いえいえ(笑)でもそれが現実でしょうし、もっと認知拡大のための活動を続けたいと思いますし、それが僕にできる貢献の方法だとも思うので。あ、ちなみにこの前ゴルフ仲間とご飯行ったとき、まさに「栗永は将来どうしたいの?」って聞かれたんですが、その時に僕、ゴルフの学校を作りたいなって思ったんですよね。


▲写真は本人提供


憧れと伝統のバトンを、次の世代に。その環境をどうしても創りたい

__ゴルフの学校というと、おそらく私がイメージしているアマチュアのスクールとは、たぶん違いますよね?

栗永:僕が考えているのは、プロもアマもジュニアも、色んな人が通えるスクールとかを作りながら、そこでプロキャディさんを育てられたらいいなって思っていて。それこそ、僕が所属していた『3.7.3.ゴルフアカデミー』だと、女子プロと一般の方が普通に並んで打ってるんです。ツアー出てるプロたちですよ?この光景って異常だなと思うと同時に、アマチュアの人たちはめちゃめちゃ嬉しいだろうなって。

__おぉ!私がそこにいても、かなりテンションが上がります!!

栗永:そうですよね!やっぱり話を聞くと「ヤバい」「気分が良い」とか言ってくれるので。だからこそプロ・アマの垣根がないゴルフの学校を作りたいって思っています。「誰でも来て良いけど、プロはお客さんの横で打ってください」といったルールだけ決めて、あとは僕がアマチュアの方のレッスンをしたり、プロにお願いをしてジュニアと回ってもらうとかして、子供たちにも夢を与えていけば、かなり業界って盛り上がると思うんですよね!選手たちも「それはいいね!」って言ってくれるでしょうし!

__架け橋となるその場所を創れるのは、多くのプロのキャディをしている栗永さんだからこそできることかもしれないので、本当に実現してほしいです!

栗永:夢を与える、という話ですと、それこそこの前『ダイキンオーキッド』の試合を有観客でやったんですが、凄かったのは成田美寿々プロ。今の時期、サインとかダメなんですが、1週目からずーーっと成田美寿々プロを見ている女の子がいたんです。その子を見て、ボール2個持って消毒してサイン書いて「今日はありがとうね」って渡してたんですよ。…イチコロじゃないですか(笑)絶対ファンになるなって。仮にあの子がゴルフを知らなくても「成田プロにボールもらった」って残りますし。

__それは凄い!というか、今のプロもそのようなキッカケでゴルフ始めたって方、多いんじゃないですか?

栗永:仰る通りで、今の黄金世代・プラチナ世代に「憧れのプロは誰ですか?」って聞くと、圧倒的に宮里藍さんなんです。聞くとみんなサイン入りグローブとかボールとかを持ってるって言うんですよ。だから藍さんが当時やっていたことを、同じように現役の選手たちはやっていて。とっても大事なことだと思うんです。それこそ僕はキャディとして、担当しているプロをずっと応援してくれている子がいたら「あの子、ずっと応援してくれてたよ、ボールとかあげたら喜ぶかもね」とか言うんですよ。そうすると「本当にありがとう!!」って言って渡しに行く選手がほとんどなので。キャディという側面からも、業界を一緒に盛り上げていきたい気持ちは強く持っていますね。


▲写真は本人提供


生涯ゴルフ漬け。一回置いた夢を、もう一度取りにいくことも目標

__栗永さん、欲を言うと私、もっと選手を近い距離で見てみたいなって思っていて。最前列でも結構遠いじゃないですか(笑)

栗永:そうなんですよ!!ロープでさえぎっているから、あのルールも変えたい気持ちです。たとえば高校生まではロープの中に入れる。マナーをちゃんと守った上で、好きなところから見ていいよっていう感覚にしていきたい。選手の間近でキャディさんとの対話とかを聞けたりしたら、もっとジュニアって増えると思うんですよね。もし今それが実現できたら、たぶん渋野日向子プロに集まると思うんですが、人数制限したりとか、やり方はいくらでもあると思っていて。もっとプロとの距離を近づけたり、カジュアルにできたらいいなって考えていますね。

__そのような環境をぜひ、栗永さんには実現してほしいなって思います。ツアーのルール改定は未知数かもしれませんが、それこそ学校が実現できたら、アメリカじゃないですけどハーフパンツでフラっとゴルフに来たプロと会えたりとかもできて、めちゃめちゃ業界って盛り上がるんじゃないかなって勝手に思っています(笑)

栗永:いや本当に。やっぱりゴルフってまだまだ目立つスポーツではないから、「ジュニアがプロに憧れる」っていう環境を作ることが、最優先だと思っています。たとえばオフシーズンは、学校でコンペしましょうとか。協賛していただいて華やかになって、交流が増えて、ゴルフ人口が増えたら、間違いなくゴルフ業界、もっと盛り上がりますから。いろんなキッカケを、いっぱい与えられる人間にもなりたいですね。

__いろいろと伺ってしまいましたが、プロキャディとして多くの選手と優勝したい、ゴルフをもっと盛り上げたいなど、栗永さんの夢を聞けて、私もたくさんの勇気をもらえました。本当にありがとうございます。ちなみに余談ですが、選手として復帰しようとかって思っていたりするんですか?

栗永:実はシニアでデビューしようかなって(笑)ドライバーイップスも治ってきて、この前ゴルフ行ったときは74だったんですよ。プロとも互角に戦えてたので、ちょっと頑張れば行けるかなって思っています。今のキャディ、コーチの仕事がもう少し軌道に乗ってきたら、練習も始めたりして、生涯ゴルフで終われたらめちゃめちゃいいなって思っています。

__ゴルフ漬けの人生になりそうですが、それって最高ですね!

栗永:『みんゴル』から始まったんですけどね(笑)本当、プレイステーションに感謝です、当時の僕は『みんゴル』が全てだったので(笑)あ、でも結構勉強になるんですよ!リアルのキャディに役立つシーンがたま~にあって。その際に「『みんゴル』でこう打ったから、これなら行ける」って思うこともあります。それくらい『みんゴル』信者でもあります(笑)

__最後に一笑いもくださって、ありがとうございます(笑)!栗永さんのこれから、本当に応援しています!!


【PROFILE】

栗永 遼 (くりなが りょう) / 1995年生まれ・香川県出身

ゴルフを始めたキッカケはTVゲーム『みんなのゴルフ』。7歳頃、祖父に連れられて参加したジュニアレッスン会にて、増田伸洋プロのコーチングによりナイスショットを出したことからゴルフに没頭する日々へ。大学在学中、得意だったドライバーのイップスになってしまった際に、同級生で親友の稲森佑貴プロに勧められキャディへ転身。2019年シーズンから本格的にプロキャディとして活躍し、同年8月には『CATレディース@大箱根カントリー』で淺井咲希プロと念願の初優勝。2020年シーズンからは石井理緒プロのコーチとしても活動している。

座右の銘は『感謝と恩返し』。ゴルフ以外で好きなことは競馬。「ジョッキーとキャディは似てる」と独自の見解も話してくれた。「ディープインパクトが全て」と語るほど競技を愛しており、休日の日課は競馬中継を見ること。推しは当然コントレイル。憧れは武豊氏。


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