「流行に押し流されず」「流行を押しつけず」「お客様が本当に求めているもの」「お客様に心から喜んでいただけること」。
この4つの理念に基づいて、防寒インナーの「HEATRUB(ヒートラブ)」や「INSPIRAL GLOVE(インスパイラルグローブ)」、ゴルフクラブの「GINNICO(ジニコ)」など、高機能を誇る商品を数々生み出してきた株式会社イオンスポーツ。今回、社長の東 義弘さん、東京営業所長の川田 大智さん、製品管理部長の加賀 敬章さんの3名に、会社誕生のきっかけや自社製品の魅力、社風や仕事の面白さ、今後の展望などについて語ってもらった。
(取材・執筆:内河 文、編集:小西 秀人、中田 初葵)
――本日はよろしくお願いいたします!まず、イオンスポーツはどのようにして生まれたのか教えてください!
東:もともとは安全衛生保護具のトーヨーセーフティという会社があり、溶かしたプラスチックを型に流し込む射出成型技術を使って、ヘルメットを製造していました。その当時、ゴルフクラブのフェイスをカーボンで、その周りをプラスチックで成形するドライバーが流行りつつあったので、じゃあトーヨーセーフティの技術を用いて、ゴルフクラブを作って販売していこうということになったのがきっかけです。
――ヘルメットからゴルフ用品が生まれたのですね!そのなかでイオンスポーツが展開するスポーツブランド「ZEROFIT」シリーズはどこから誕生したのですか?
東:ZEROFITの初代(製品)ができたのは2006年5月です。もともと、現会長は、繊維系との繋がりや知見があるという強みを持っていました。繊維を用いてウェアを作ることにずっと興味があったので、開発から本格的にやり始めたんです。

――代表的な商品ラインナップと、イオンスポーツならではのものづくりのこだわりを教えてください。
加賀:メインとなるブランド「ZEROFIT」の強みは、一言でいえば「他社が手を付けないような製法や技術を、スポーツウェアに惜しみなく取り入れること」です。
例えば、冬用インナーの「HEATRUB」は「速暖。」を掲げて、10年以上前に開発したものですが、当時はスポーツ用として珍しかった特許レベルの裏起毛技術を採用しています。昔は真冬のゴルフというと、何枚も重ね着して動きにくくなるのが当たり前でした。でもこれなら、上に1枚羽織るだけで真冬でもプレーできるようになりました。
――冬物だけでなく、夏物や他のラインナップでもその姿勢は共通しているのでしょうか?
加賀:例えば夏物インナー(ICE WEAVE)でも、ほぼ縫い目のないシームレスで編み上げる特殊な製法を取り入れています。これも他社ではなかなか採用されないやり方です。

――そうした「他社がやらない挑戦」を続けられるのはなぜですか?
加賀:自社工場を持たない企業だからこそ、特定の製法に捕らわれず、世界中の優れた技術や工場と手を組めるからです。会長や社長、現場スタッフが実際に使ってみて「本当に良い」「他にはない」と実感できたものだけを商品化する。この軸があり、商品ラインナップを広げてきました。
――会社の皆さんで商品化を決めていくとのことでしたが、イオンスポーツでは、営業の方が商品企画にも関わると伺いました。
川田:もちろん自信をもって商品を打ち出していますが、やはりお客様から「こういう形があったほうがいい」「このように改良してほしい」というフィードバックをいただくことがあります。そこから、市場にまだこんな商品がないから作ってくれないかというところから始まって、実際に開発チームが生地を選んだり、協力会社と一緒に生地を作ったり、テストをして…と繰り返しながら商品を作っていくイメージですね。
加賀:私はふだん兵庫県三木市の本社にいますが、買っていただくお客様は、関東も含めた日本全国にいらっしゃるので、そういう情報がなければ、どうしても狭い視野でものを考えてしまいがちです。商品化できるかどうか最終的に取捨選択はしますが、基本的にそういう情報はいくらでもほしいですね。

――社内の考えだけでなく、実際に手に取ってくださったお客様からのお声も大切にされているのですね。商品化できる基準はどこにあるのでしょうか?
東:イオンスポーツの経営理念の1つである「流行に押し流されない」というところで、我々は現在の流行に乗らず、ゴルファーやその他のスポーツで快適にプレーするためにどうしたらいいのかという機能軸で考えています。そのうえで世の中に出して価値があるものになるかということがぶれないように、意識していますね。
――そうして強いこだわりを持って作られた商品を、営業としてどのように広げていらっしゃるのでしょうか?川田さんが取引先を回られる中で、今までで一番印象に残っていることはありますか?
川田:うちはまだまだ発展途上のメーカーですし、特にZEROFITはこだわりの商品なので価格も高い。スタート当時は販売も専門店や百貨店に限定されていました。ですから、量販店で売れているナショナルブランドと比べると、ささいな売り上げではあります。なので、ある全国チェーン店では、最初からたくさん商品を仕入れていただくわけじゃなく、1.2店舗からスタートし、半年かけて30店舗ぐらいに広げることができました。

そこから売り上げを積み重ねて、1年後には全国展開になったという、印象深いサクセスストーリーを描けました。時間はかかりますが、営業としては取引も目に見えて伸びるし、展開店舗も広がって、身に着けている人が増えているなと感じています。
――地道な努力が大切であることがわかります。やはり、ゴルフ場で自社製品を見かけると、嬉しいものですか?
全員:嬉しいですよ!
川田:「あの組、結構うちのグローブを使っていたな」と思うことはあります。自分たちでゴルフ場や練習場に行っても、だいたい見かけるので。
東:実はゴルフの練習場も2店舗経営しています。三重県の津市と志摩市にあるのですが、たまたまご縁があり、本社の事業と親和性もあるため、買収させていただきました。始めて20年近くが経ちますが、リーマン・ショックなどでゴルフ業界が冷え込んでしまった時期は、この練習場と練習場の社員さんのおかげで、イオンスポーツが存続できたともいえるくらい、重要な柱です。
――営業としての手ごたえも大きいですね。そうした成果を出せる背景には、イオンスポーツならではの働き方や組織風土もあるのでしょうか?
川田:もちろんそれぞれの部署で、会社としての役職や序列は一応ありますが、結構意見を交わしてやり取りをすることが多いですね。縦割りじゃなく、基本的にはフランクに「みんなでやろうぜ!」という社風だと思います。

加賀:情報の伝達が行ったり来たりすることもありますが、フラットに近い組織だと思います。最近は社員数が増えてきましたが、今でもみんな並列ぐらいの感覚はあるので、距離も近く、意見を言いやすい会社じゃないかなと思います。
――皆さんが相互に関わり合うことができる環境がイオンスポーツらしさだと思うのですが、他にもイオンスポーツだからできる働き方やチャレンジなどはありますか?
川田:イオンスポーツは業務の幅が広いんです。だからこそ、仕事の広げ方を自分自身で考えられる余白があることが一番の楽しみなのではないかと思います。例えばZEROFITは、今はゴルフ中心ですが、「ゴルフだけやりなさい」ということではなく、自分が得意な競技や市場も含めて、チャンスがあれば他にも展開することができると思っています。
加賀:イオンスポーツという社名ですが、別にスポーツ以外でもいいんです。例えば普段、家事・育児をされている女性に向けた商品を今後展開する事業も考えています。自ら考えて動ける人、それを面白がることができる人であれば、やりがいをもって働けるんじゃないでしょうか。
東:会社の方向性を会長と考えた時に、まさに2人が言ってくれたようなところを目指したかったので、同じ目線でいていただいて非常にありがたいですね。
――主体的にチャレンジされている皆さんですが、それぞれ熱中してきたスポーツをされていたと伺いました。ゴルフに限らず、スポーツをしていたことが今に繋がっていると感じることはありますか?
加賀:7、8年別業界で営業をやっていた時、イオンスポーツが新しいことを始めることを知りました。私はずっと野球をやっていましたが、ゴルフはほとんど未経験。そんな自分でもできるかもしれない、と業界未経験ながら挑戦することを決めました。

――ゴルフが未経験ながらご入社されたのですね!川田さんはいかがですか?
川田:やはりスポーツへの興味・関心は非常にあって、趣味と実益を兼ねて仕事ができるという感覚はあるので、スポーツは好きなほうが絶対生きると思います。僕はサッカー、ハンドボール、バレーボールなどの球技を中心に、スポーツ全般が好きなのですが、実はゴルフに一番アレルギーがあったぐらいです(笑)。
東・加賀:ははは(笑)。
東:私も一緒です(笑)。商品開発に生かせるので、スポーツが好きなのは非常に良いかなと思います。私は入社後にゼロから新しい商品を開発した経験はまだありませんが、会社のメンバーには、バイクが好きだからバイク用ウェアを開発してみようとか、登山が好きだから登山用靴下を開発してみようという人もいます。
スポーツによって、汗のかき方や衣類の摩耗の仕方も違うし、ストレッチのかけ方、体への負荷のかかり方も違う。やはりそれは、スポーツをしている人にしかわからないことかなと思います。

加賀:我々もそうですが、ゴルフは別に「マスト」なわけではないです。だから、「入社してから新しいスポーツにチャレンジしてみよう」というぐらいのスタンスでも大丈夫。ゴルフをずっとやっていた人より、むしろスポーツ全般が好きで、もの作りや販売が好きという人のほうが向いているかもしれません。そこは、うちが他のゴルフメーカーと違うところですね。
――ご自身の好きや得意を最大限発揮できる環境なのですね!最後にそれぞれが今後チャレンジしたいことや会社の展望などがあれば教えてください。
東:私の最大のミッションは、イオンスポーツとトーヨーセーフティ、それを束ねる間接部門のTSホールディングスの3社が全体最適でうまく発展できるようにしていくことです。そのなかで、イオンスポーツとしては、ZEROFITがまだまだ一部の、たとえばゴルフやバイクの業界でしか認知されていないので、これをグローバルなブランドに構築していきたい。
ただ一方で、機能性という軸だけは絶対ぶれずに、世の中にない唯一無二の商品を連発していく会社にしていきたいと思います。

川田:今はゴルフを軸に広げていますが、アンダーウェアのカテゴリーでは国内でもかなり認知されてきています。その強みを生かして、市場としてバイクなどの他のカテゴリーにももう少し広げられるような動きをしたいです。そうすることで、ナショナルブランドまでは難しいと思いますが、1ゴルフブランドから機能性ブランドへ、知っている人を増やしていけるかなと思います。
ゴルフでも、今あるアイテムだけじゃなく「ゴルフといえばZEROFIT、GINNICOブランド」という存在になれるように広げていくことが、私のミッションです。
加賀:僕もほぼ一緒ですね。やはり今は知る人ぞ知るブランドなので、もう少し幅広く知ってもらいたい。商品ラインナップも、今はどちらかというと「こだわりのある方が、こだわりを生かすために買う」ブランドです。そこをずらしたくはないですが、裾野を広げる意味でも、もう少し手に取りやすいものや、ゴルフをやらない人でも使ってもらえるZEROFIT商品を開発したいです。
私は、地方の出身ですが、そこではゴルフをしていても、うちの商品を知らない方々がまだまだいます。そういう地方や海外でも、機能性ブランドとして名前を知ってもらいたいですね。
東:ちょうど今年、今までイオンスポーツになかった靴下や下着を製造する事業を買収しました。また、業界や国を超えて営業でチャンネルを増やしていくことの芽が出始めてきているので、そういう展開に非常に期待しています。

【PROFILE】
東 義弘(ひがし よしひろ)・写真中央
代表取締役社長。
大学院修了後、外資系人材紹介会社でのリクルーターを経て、日系コンサルティングファームにて官公庁調査や企業のサービス企画・BPR等に従事。その後、株式会社イオンスポーツに入社し現職。中高では陸上部(200m・400m)に所属。現在はボクシング、筋トレ、早朝のランニングやバイクを日課とし、入社後に始めたゴルフのスコアアップに向けても日々練習中。
川田 大智(かわだ だいち)・写真左
営業戦略部 部長。
新卒で株式会社イオンスポーツに入社し営業を担当。外資系スポーツシューズブランドでの営業職を経て、ZEROFITブランドの可能性をさらに広げるべくイオンスポーツへ再入社。現在は大手量販店への本部営業、売上管理から商品企画・ブランド戦略まで幅広く手掛ける。幼少期から球技全般を愛好し、現在はバレーボールやフットサルを定期的に楽しんでいる。
加賀 敬章(かが たかあき)・写真右
製品管理部 部長。
他業界の営業としてイオンスポーツを担当していた縁で、入社を決める。現在は兵庫県三木市の本社にて、製品・生産部門の責任者としてものづくりの現場を統括する。学生時代は野球に熱中。ゴルフ未経験から入社した経験を持ち、「スポーツ全般が好き」「ものづくりが好き」な現場目線での製品開発・生産管理を支えている。