B.LEAGUEの2020‐21シーズン年間優勝・初のリーグ制覇を成し遂げた千葉ジェッツ。2017-18、2018-19シーズンの準優勝の悔しさを胸に「3度目の正直」と言われた今シーズンは、多くの困難に立ち向かった挑戦の1年だったと思います。そんなチームを陰で支え続け、ブースターを盛り上げ続けた人。ファンならお馴染みのマスク・ド・オッチーに今回はインタビュー！
彼を丸裸にすべく1日に密着。普段の陽気な彼から、アツい情熱的な想いを聞くことができました。前編では、なんとかチャンスを掴みたい。何かキッカケがあれば……。と悩むそんなあなた必見。オッチーと落合さんの生き方から、仕事や人生を楽しむための最大のヒントをもらった気がします！
(取材：構成=スポジョバ編集部 小林亘)
＿＿オッチーさん初めまして！スポジョバ編集部の小林と申します！私、オッチーさんのことが大好きで(笑)すごく楽しみにしてました。今日はよろしくお願いします！
オッチー：じぇじぇじぇジェッツ！ありがとうね～～！嬉しいですよ～～！！
＿＿(笑)。改めまして、今回は、オッチーさんのパフォーマーという仕事に焦点を当てて、お話を伺いたいです。Twitterの固定ツイート「オッチー誕生秘話」も拝見させていただいてて、現在に至るまで色々あったと伺ってているんですが……？
オッチー：じぇっつ。あ、僕のマネージャーの落合のことね(笑)。
＿＿あ、はいそうです(笑)
オッチー：すみませんちょっとややこしくて(笑)。一応、マネージャー落合と分離した存在ではあるので(笑)。
＿＿な、なるほど……(笑)。えっと、さっそくなんですが……落合さんの…ご経歴から伺えますか？そもそもバスケ業界で働きたい！って方は、純粋にバスケが好きで携わる方も多いと思うんです。オッチーさん…あ、落合さんもその一人ですか？(笑)
オッチー：それはそうですよ～！落合は小学校の頃『SLAM DUNK』とマイケル・ジョーダンがキッカケでバスケすっげー面白いじゃんってハマって。それで親に頼み込んで、中1の頃にロサンゼルスのマイケル・ジョーダンのサマーキャンプに行かせてもらったんです。そしたらアメリカのバスケがちょ～～面白くて。コーチめっちゃ褒めてくれますし。あとは環境が凄かった。ロスのロングビーチで、海を見ながらバスケコートがいっぱいあって。最高だなって。だから「いつかアメリカ住みたい。そのためには英語勉強しよう。喋れたら世界が広がるから」って思ったんすよ。で、ジャパン帰るじゃん？ぜんっぜんバスケが面白くなくて(笑)たまたま軍隊みたいな部活で、怒られてばっかりだったから。
＿＿ジョーダンのサマーキャンプに参加できるなんて羨ましい！当時はスラムダンク奨学金とかもないでしょうし、よく行けましたね。でも現実、日本とアメリカのバスケの文化の違い・ギャップが大きかったんですね。
オッチー：「なんでアメリカであんなにメジャーなのに、日本ではこんなにマイナーなんだろう」って。学生時代は悶々としてました。でも、絶対英語喋れたほうがいいと思ってアメリカ・テキサス州の大学に留学。日本でバスケの楽しさを見出せなかったので、アメリカでバスケは全然やるつもりなくって。でも行ったら行ったで、バスケ超盛り上がってんすよ(笑)。その光景をみて「やっぱバスケ最高だ！！」って。もうね、スポーツの領域を超えてて。週末は毎週のようにバスケを見ながらホームパーティで、NCAA(米の大学バスケ)とかNBAの話が尽きない。なんだろ、バスケットボールという存在そのものの扱いが全然日本と違うんですよね。
＿＿アメリカで再び、落合さんのバスケ熱に火が点いたわけですね！その光景を想像するだけで、すごく楽しそうだなって思えます(笑)。
オッチー：あと野球のマイナーチームを見に行ったことがあって。そのチームに「マスク・ド・テキサス」って賑やかしてくれるキャラがいて。落合は野球そんなに好きじゃないけど、球場に行って彼のパフォーマンスを見るのが大好きだったのよ。面白いし、子どももキャッキャ喜ぶし。そういうキャラが日本のバスケチームにも居たらいいなってずっと思ってて。それで学生ながらに仮説を立てたわけだ。アメリカのエンタメの要素を取り入れることができたら、日本のバスケってもっと盛り上がるんじゃないかな。見たいと思ってくれる人が増えるんじゃないかなって。マスク・ド・テキサスの存在も参考にしつつやり方次第でチャンスあるだろう！って。で、一時帰国していたときに、千葉バジャーズの門を叩いたわけですよ。
＿＿千葉バジャーズ懐かしい。栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)がJBL2とかだった時代の、千葉ジェッツの前身！落合さんはその頃からチームにいたんですね！
オッチー：そうそうそう！当時アマチュア最強で歴史もあるバジャーズを「どうにかプロ化できないかな」って、落合は動いてたんですよ。テキサスに戻ったあとも外国人のスカウトをやったりして。それが始まり。でも、いざ留学を終えて日本帰ってきて「よっしゃ本格的に始められるぞ」と思ったタイミングで状況が変わってしまって。一旦話が全部消えちゃったんですよね。なんですけど、たまたまそのときにbjリーグでゼロからチームを作りたいって人がいて、その人と知り合って改めてプロ化に動き始めたんですよね。
＿＿運命的な巡り合わせですね。ところで、そもそもオッチーさんはマスクド星出身だと思うんですけど(笑)落合さんは千葉出身？
オッチー：そうそう！彼は生まれも育ちも千葉です。ちなみに、テキサスの人ってテキサス愛がものすごく強いんですよ。地元愛。そのアイデンティティが落合はすごく感動したみたいで「俺も千葉に貢献しよう！」「地元を誇るってめちゃめちゃカッコいいな」って。だから落合は、テキサスで感じたバスケの文化を、そのまま千葉に持ってきて、千葉とバスケを盛り上げたいって思ったわけだ！実現できたら、めちゃめちゃHAPPYになるなって感じたんすよ。だからバジャーズで働き始めたって流れです！
＿＿なるほど！それで千葉バジャーズなんですね！最初はどんなお仕事を担当されていたんですか？
オッチー：そこでいくと、落合は今でこそ私のマネージャーとして地域振興部っていうチームにいるんですけれど、その前はね、スポンサー営業やってたんですよ。とはいえ当時、体制が整っていなかったこともあって、スポンサー営業もスクール活動も、英語ができるから通訳も全部やってて、すげー大変だったんですが、島田さん(現B.LEAGUEチェアマン)が社長に就任されてから、明確に仕事を分けてくれたんですよ。「落合は他のことはいいから、そのキャラを活かして営業やってくれ」って。
＿＿営業されてたんですか！でもそのときって、今に比べてまだまだ日本バスケが注目されてなかった時代だと思うんですが、スポンサー営業も大変だったんじゃないですか？
オッチー：普通にスーツにネクタイ締めて、営業行くわけよ。落合がね。でも、全っっっ然反応がなくって。門前払いが当たり前。プレゼンの途中で追い出されたことだってあります(笑)「これが現実か……」「このままじゃ埒が明かないな」「どうやって営業しようかな」って思ってたときに、たまたま落合を気に入ってくださってる社長さんが、異業種交流会に連れて行ってくれたんですよ。
＿＿おぉ……！わずかながらに光が見えてきた気がします……！
オッチー：そこで社長さんが「みんなに向けて30秒くらいPRしていいよ」って言ってくれて。で、やるんですよ「じぇじぇじぇジェッツ！千葉ジェッツ！」って。スーツの落合さんがね(笑)なんですけど、これも全く反応なし。うんともすんとも言わなくて「何かないかな。いいネタ、何かないかな……」って悩みまくって。営業としての数字も振るわなくて、本当に悔しくて、悩みすぎて、家に帰れなくて。3日くらい事務所に寝泊りしてたんです。そのときに、さすがに着替えなきゃってことで、ドン・キホーテ船橋店に行って、何気なく面白グッズコーナーを見ていたら！そこにね、私が居たんですよ～！で、落合が「君だ！君しかいない！！！」ってことで握手して、始まったって感じです！
＿＿これまた運命的な出会い……！！！そのあと、異業種交流会に行ってPRのチャンスはもらえたんですか？
オッチー：もらえたんですよ！異業種交流会の！PRタイムを！で、そのときに初めて、マスク・ド・オッチーを召喚して「じぇじぇじぇジェッツ、千葉ジェッツ～～！千葉にバスケチームできました～！応援お願いしま～～ジェッツ！！」とかって。それオンリーのPRですよ。でも面白いことに、バスケとか千葉ジェッツとか全く知らないけど「キミ面白いね！」って。それで、地元企業の社長さんたちが名刺交換してくれるようになったんです。そうすると、あら不思議。みんな後日アポを取らせてくれるわけ。で、話を聞いてくれるんですよ。だから私は営業ネタとして、最初は落合に活用されてたんです(笑)
＿＿オッチーさんとドンキで出会えて、落合さんは本当によかったですね……！！完全に「何かないかな」のネタを掴んだわけですね！
オッチー：そうなのよ！でも、営業ネタだったとはいえ、落合はオッチーみたいなパフォーマーは絶対必要だと思ってたんですよ。やっぱり、アメリカ留学中に見た「マスク・ド・テキサス」の存在がすごく大きかったみたいで。彼みたいに賑やかしてくれるキャラが、千葉ジェッツにも1人いたほうが絶対良いって思っていて。実は落合、オッチーと出会う前に自分で白塗りして「マスク・ド・ピエロ」ってやったことがあって(笑)。ただ白塗りとかメイクとかに時間かかりすぎるって悩んだみたいですよ。本当に私と出会えてよかったですよね、私は一瞬で召喚できますから(笑)。
＿＿ピエロ(笑)。落合さんも、さまざまな挑戦をし続けた結果なんですね！門前払いとか色んな苦労があったけど、食らいつく精神が本当にすごいです。
オッチー：もちろん心折れたときもありましたよ(笑)でも、とにかく営業という仕事でなんとか成果を出したかった。千葉ジェッツを通じて日本バスケをもっと盛り上げたい。テキサスで感じたような雰囲気や文化を千葉でも作っていきたい。そんな想いで、とにかくやれることはやりまくってましたね。当時、私を信じて自由にやらせてくれた千葉ジェッツにも感謝ですし(笑)。だから最初は本当に営業メイン。もちろんマスク・ド・テキサスへの憧れもありましたが、まさか自分がそのポジションを作るなんて思っていなかったそうですが(笑)。当時は営業と、オッチーのマネージャーと両方頑張ってましたよ！
＿＿本当にもともとパフォーマーを目指されてたわけじゃないんですね(笑)。2足の草鞋、大変だったんじゃないですか？
オッチー：そのあとB.LEAGUEが誕生して、千葉ジェッツが天皇杯3連覇して。で、昔に比べて千葉ジェッツが大きくなっていることもあって、落合1人が頑張りすぎなくてもある程度ほかの営業メンバーで数字も立つようになってきたんです。そして現在は島田さんがチェアマンになられて、千葉ジェッツの社長が田村さん(現社長)に代わったタイミングで「これからも、地元を大切にしていきたいから、落合さんはオッチーのマネージャーに専念してくれ」って、地域振興部って新しい部署ができて異動になって、ようやくマスク・ド・オッチーのマネージャーに専念できるようになったんです。それが去年の出来事ですね。それまでは、まぁ大変だったので、今のポジションは本当にありがたいっす(笑)
＿＿おぉ……！！さまざまな挑戦を経て、ようやく掴んだ今のポジション、すごく楽しいんじゃないですか？ちなみに現在はどんな仕事をされているんですか？
オッチー：いや、本当に！！よかったよね落合は。マジであのときドン・キホーテ船橋店に行ってなかったら、私と出会わなかったわけですから(笑)。だから今の仕事はすごく楽しいみたいですよ！小学校やお祭り、あとは企業案件のイベントに行かせてもらったりとか。いずれにしても、地域振興の象徴的な存在として、活動していますね。もちろん、ホームゲーム開催のときは、踊って声出してパフォーマンスしてます！「今日も良いことあるぞ～～♪♪」とか「じぇじぇじぇジェッツ～！千葉ジェッツ！！」ってね(笑)
＿＿お話を聞いていると、落合さんの夢は、どんな形であれ千葉とバスケを盛り上げることなんだなって感じます。
オッチー：そうですね。極論、バスケが好きじゃない人がここ(船橋アリーナ)に来ても、何か面白いなって感じてくれて通うようになったり、競技を好きになってくれたら嬉しいじゃないですか。だから切り口はなんでもいいと思うんですよ。STAR JETS(チア)の美しさだったり、ジャンボくん(千葉ジェッツ公式マスコットキャラクター)だったり、私のちょっとお笑いチックなね(笑)。キッカケはなんでもいいと思うんですけど、やっぱり活動を通じて、最終的にバスケットボールという競技や千葉ジェッツを好きになってほしいなって。その(キッカケの)1つとして、私は頑張り続けたいですね！じぇっつ。
＿＿いいですね！(笑)。もちろん、会社の方針もあるでしょうけど、落合さんが作ってきたポジションで、今オッチーさんの存在もあるのかなって思うんですよね。でも、長く苦労されてきたと思うんです。何が落合さんを支えてきたんですか？
オッチー：やっぱり子どもたちやブースターの存在は大きかったです。イベントに行く度に「オッチー！！」ってすごく元気に声かけてくれて。それが本当に嬉しいんですよね。自分がそこにいるだけで喜んでくれるなんて、本当に今まで感じたことのない幸せで。やっぱりオッチーも凹んだりテンション低いときはあるんですよ(笑)。でもそういうときに、子どもたちやブースターの方と会うと元気をもらえるというか、息を吹き返せるというか。「自分を好いてくれる人がこんなにいっぱいいて元気をくれるから、自分も誰かに元気を与えられる存在になろう」って。それが大きかったし、活動にも気持ちが乗っかりますよね。あ、これは落合さんが言ってたことね。うん(笑)。
＿＿感慨深いですね。ちなみに、今日も多くのファンがいらっしゃったと思うんです。その中には「自分もオッチーみたいになりたい」と思った方がいるかもしれません。どうやったらオッチーさんのようなポジションで働けるんですか？マスク・ド・オッチーの募集！なんてないじゃないですか(笑)
オッチー：そうね、そうね(笑)。まぁ、募集はないと思うので最初はできないかもしれませんが、もし本格的に考えている方がいるのであれば、今のうちにSNSで情報発信を頑張るのが良いと思いますね。やっぱりバスケだけではなくて、どんなスポーツチームも、多少なりとも影響力を持っている人って欲しいと思いますよ！面接に来てくれた子が「1000人フォロワーいます」ってなったら「どうやってるんですか？」「もうそんなにいるの！？」ってなるじゃないですか。だから今の時代は、間違いなくSNSよ。うん。
＿＿そういう情報発信を頑張ってる人って、たしかに同年代の中でも突き抜けてる人が多い気もします。オッチーさんになれなかったとしても、就職や転職活動のときは絶対有利に働きますしね！
オッチー：働いてて、面白い人っていう見られ方をされるようになったら「オッチーみたいなことやってみる？」みたいなオファーがあるかもしれないじゃないですか。その瞬間を迎えるためにも、ネタをいっぱい仕込んでいつでもプレゼンできるようにしておくと、本当に強いと思いますよ。クオリティが高ければ、キャラ作ってそのまま売り込んでもよし、落合みたいに私を召喚するもよし！ですよ！(笑)
＿＿最後の最後まで、私のことも笑顔にしてくださってありがとうございます(笑)。では最後に、悩める転職者に一言メッセージをお願いします！
オッチー：やっぱりその他大勢から抜きんでるための一番の近道は、今の時代であれば本当にSNSですよ。発信力。これが大事だと思いますね。それをするためのインプットをいっぱいすることが大事っす。いろんな情報を仕入れて発信するっていう練習をしておくことがいいんじゃないかな。そういう人がいっぱい増えて、千葉もバスケ業界も一緒に盛り上げられたらめっちゃHAPPYっすね！ゆくゆく、コラボなんかしちゃったりして。そろそろ私みたいな存在が出てきてもいいと思うんですけどね(笑)。マスクドは、あなたを待ってますよ～～！じぇじぇじぇジェッツ！！
＿＿未来でコラボ、最高っすね！！単独インタビューにご対応いただき、ありがとうございました！このあとも密着させていただきますね！
▶▶▶次回「マスク・ド・オッチーに1日密着したら……」に続く
【PROFILE】
マスク・ド・オッチー／千葉ジェッツふなばし：地域振興キャラクター(仮)
マスクド星から日本観光が目的で来日。ドン・キホーテ船橋店で、俯いていた落合氏と出会い、彼からのリクルートによって千葉ジェッツの地域振興キャラクター(仮)として活躍中。千葉県の小学校へ行けば、サインの行列ができるほど大人気。またマネージャー・落合氏の家に居候中で、しばらくマスクド星に帰る予定はないとのこと。「じぇじぇじぇジェッツ！千葉ジェッツ！」「今日もいいことあるぞ～♪」と、ブースターと千葉県を笑顔にし続けている。
落合 豪／千葉ジェッツふなばし：地域振興・SSRチーム
生まれも育ちも千葉県。中1の頃、マイケル・ジョーダン主催のサマーキャンプに参加した経験がある。そこからアメリカのバスケットボールの文化を日本にも持ち込みたいと、当時地元で最強と言われた千葉バジャーズ(千葉ジェッツの前身)に入社。bjリーグ参戦当時から営業として活躍。しかし仕事に行き詰まり「なにか解決の糸口はないかと」とドン・キホーテ船橋店に行ったところマスク・ド・オッチーと出会う。彼を千葉ジェッツにリクルートした張本人。その後はオッチーのマネージャーとして、寝食を共にする日々を送っている。
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