アリーナ立川立飛(ハード)と立川ダイス(ソフト)の一体経営で地域を盛り上げる

株式会社多摩スポーツクラブ 代表取締役 原 宏樹

アリーナ立川立飛(ハード)と立川ダイス(ソフト)の一体経営で地域を盛り上げる

株式会社多摩スポーツクラブ 代表取締役 原 宏樹

立飛駅を降りると、目の前に現れるのがBリーグ「立川ダイス」が本拠地とする「アリーナ立川立飛」です。
この施設とチームを両輪で運営するのは、株式会社多摩スポーツクラブ。
「ハコ(施設)」を作ってから「中身(チーム)」を育てるという、業界では珍しい順序で歩みを始めました。ハードとソフトを一体経営することは、「チャンスと広い空間がある」状態だと話すのは代表の原宏樹さん。異色の経歴を持つリーダーに、会社立ち上げの舞台裏から、スポーツが街の「空気」になる未来までじっくりと伺いました。

(取材・執筆:小林 千絵、編集:伊藤 知裕、中田 初葵)

チームを持つことを目指してアリーナ運営を始める

──まずは多摩スポーツクラブ設立の経緯を教えてください。

アリーナ立川立飛の運営をするために一般社団法人を立ち上げ、その後、Bリーグに参入するために2022年に株式会社に移行しました。当時のバスケット界では、ほとんどのチームが体育館やアリーナを借りて試合をしていましたが、やはりみんな、自分たちのアリーナを持って自由に運営したいと思っていて。我々も、最終的に自分たちのチームを持つということを考えて、アリーナ運営をしようという話をしていました。

──設計段階から関わっていたということは、細部にまで「バスケ愛」が詰め込まれているんですね。

アリーナ立川立飛の設計段階から入っていたので、そのときから「自分たちがホームゲームをするなら」ということを考えていました。実は応接室のサイズにもこだわっていて。都知事のようなVIPがいらっしゃる場所も必要なのですが、そこを豪華にしすぎると、肝心の選手たちのスペースが削られてしまう。悩みに悩んで、どちらも最高のおもてなしができるサイズを設計しました。また、レフェリールームにも専用シャワーを作ったんです。全てにおいて、誰もが気持ちよくバスケットボールやスポーツの興行をやることを前提に設計しました。

──まさに興行のプロの視点ですね。とはいえ、ゼロからアリーナを運営し、さらにチームまで持つというのは前例のない挑戦だったはずです。アリーナ運営を行うことになったきっかけは何だったのでしょう?

アリーナの所有者である立飛ホールディングスさんが「民間でアリーナを作る」と決断されたのがきっかけです。当時、僕はbjリーグ(株式会社日本プロバスケットボールリーグ)の事務局にいましたが、民間でアリーナを作るならバスケットボールやスポーツのアリーナということで、お話しをいただきました。また、その流れでアリーナの運営もさせていただくことになり、「立川でなら、ハードとソフトが一体となった理想のクラブが作れる」という構想もお話し、今に至ります。

──なぜ立川に根付いたチームにしたいと思われたのでしょうか?

東京で地域密着型のバスケットボールチームを作るということは、バスケット界にとってもスポーツ界にとっても大事だなと思っていて。そういう意味で立川という街はすごく魅力的だったし、そのポテンシャルが非常に高い街だなと思いました。

──東京で地域に根付いたチームは確かにスポーツ業界にとっても魅力的ですね。そして立川ダイスを吸収合併し、念願のチームを持ちます。

これは偶然なんですが、アリーナが建ったタイミングで、地元の商工会議所が町おこしを考えていて。そのときに3人制のバスケットボールチームとして立川ダイスが立ち上がったんですね。同時期に、我々がアリーナの運営をすることになって、商工会議所の方が僕に会いに来てくれました。
そこで僕が将来的に5人制のバスケットボールチームを作ろうと思っているという話をしたら、目的が同じこともあって意気投合して。それから、しばらくは3人制として立川ダイスが活動し、また、アリーナはアリーナで運営されていました。いよいよ、5人制のチームを立ち上げようとなった時に、色々な経緯を経ながらも最終的には「立川ダイス」という名前でBリーグに参戦することになりました。
立飛ホールディングスさんが民間としてアリーナを作ってくれたのも本当に日本では珍しいことでしたし、また、立川の商工会議所が3人制のバスケットボールチームを立ち上げたことも本当に稀なことで、奇跡とまでは言わないですけど、こんなにいろんなタイミングが合うことってあるんだなと思いましたね。「スポーツで街を盛り上げよう」と考えていてくれた方が立川にはたくさんいたことは本当に幸運でした。

目指すは“自然とそばにあるもの”になること

──そこからアリーナ運営と立川ダイスの運営を行なっていくことになりますが、立ち上げから今日までで、苦労されたこともたくさんあるのではないかと思います。特に大変だったことをあげるとしたら何でしょうか?

Bリーグに参加した1年目はお客さんが入らなくて。1年目の平均来場者数は586人。当時から地元の小学校に行ったり、地域の活動に参加したりはしていたんですけど、周知にはなかなか時間がかかって。結果につながったのは2年目。2年目で平均来場者数が2106人になって、そのあとは今日に至るまで増え続けています。それまでは本当に大変でした。

──1年で586人から2106人に一気に増えたのは、何がきっかけだったのでしょうか?

周知をしてもらうために、いろんなところに行ってお願いしたり、選手に動いてもらったりしたことですかね。これは今も続けているんですが、立飛ホールディングスの村山社長からアドバイスをいただいて子どもを対象に無料でTシャツを配る日を作っていて。その日から1年間は、そのTシャツを着てきたら無料で入場できるという形にしたんです。あとは、商店街を年間1000回は回ろうという目標を立てて、ポスターを持って回ったりもしました。そうやって1年間通して活動しているうちにちょっとずつ知ってもらうことができて、今では試合会場に子どもがたくさん来てくれるようになりました。

──選手も含めてみなさんで地道に名前を広げていったからこその結果だったのですね。

そうですね。Tシャツをもらうとうれしいのか、試合後にTシャツを着たまま子どもたちがららぽーと立川立飛で遊んでくれて、それを見た人がまた興味を持ってくれるという連鎖が起こりました。ホームゲームの日、2100人くらいの人がいるなかで、アリーナの中を子どもたちが走り回っているという光景は本当に幸せです。

本当は危ないから走ってる子がいたら注意しないといけないので、これを言うと運営のスタッフに怒られるんですが(笑)。

──子どもたちがTシャツを着て街を歩く姿は、まさに理想的な光景ですよね。単なる集客の一環を超えて、ダイスが立川の一部になり始めているように感じます。原さんにとって地域に根付くとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか?

よくスポーツチームの目標として「文化になりたい」って言うんですが、「文化になる」とはどういうことなのか。これは僕の持論なんですが、“自然とそばにあるもの”になることだと思うんです。「今度の日曜日、どこか行こう」という話になったときに「じゃあダイス見に行こうか」ってなってくれたらうれしいし、アリーナには行かなくても「今週、ダイス勝ったのかな?」って勝敗を気にしてくれたらうれしい。そういう、存在していることが当たり前で、空気のような存在になりたい。立川周辺に住んでいる人にとって子どもの頃一度は見に行った経験があることが当たり前になって、大人になってからも「たまには行ってみようか」と思ってくれるような存在になれたらと思っています。

──自然とそばにあるもの。特別な存在ではなく、日常の中に入り込むのは大切ですね。チームを立ち上げてからこれまでのなかで特に印象的なエピソードはありますか?

ホームゲームを開催して、2000人を超えるお客様が来てくださるようになりました。1年目は来場者数が少なかったこともあり、来てくださる方の顔をだいたい覚えていたんですが、今は知らない方もたくさん会場に来てくださり、数が増えたのだなと実感します。そしてその方々から「今日はこの選手を応援するんだ」などと話しているのを聞くと「この人たちの人生にコミットできているんだな」と感じてすごく幸せな気持ちになりますね。

──きっと見に来てくださる方々も立川ダイスから大きな力をもらっていると感じます。原さんもスポーツに影響を受けた経験はありますか?

僕は大阪の藤井寺市出身で、近鉄バファローズの藤井寺球場が近くにあったので、子どもの頃、半年に一回くらい祖父に球場へ連れて行ってもらっていたんですね。球場に着くと一番前まで走って行ってネットにしがみついてガチャガチャしながら一生懸命応援して。そしたら、おっちゃんが「応援頑張れよ、坊主」とか言って飴ちゃんをくれたりして。

そんな近鉄バファローズがなくなったときの喪失感はすごく大きかった。球場に行くのは半年に一回くらいでしたけど、毎日テレビや新聞で結果を見ては、「今日は勝った」「負けた」というのを楽しみにしていたから、それが急になくなって、本当に自分の人生がつまらなくなってしまった実感がありました。それが僕にとっては「当たり前にそばにあるもの」だったんですよね。だから今、日曜日に家族でダイスを見に来たことが、その人の記憶に残るんだと思うと、それに関われていて幸せだなと思います。

事務所から出て5秒でシューティングができる距離感だからこそできること

──アリーナ運営とチーム運営の両方を手掛けていることは多摩スポーツクラブさまの特徴の一つだと思いますが、両方を手掛けていることのメリットはどのように感じていらっしゃいますか?

一番よく知っている場所でホームゲームができることですね。チームとしては、よく知っている場所だから戦いやすいし、ホームゲームを作る上では、何がどこまでできるのかがわかりやすい。それは本当に有利なことだと思います。あとは単純に、自分たちで会場を抑えることができることも。東京の体育館って予約を取るのが大変なんですよ。3000人規模の体育館って、どの競技団体も使いたいので。そういう意味では、自分たちで抑えられるというのも大きいですね。

──確かにそれはとても大切ですし、ありがたいことですよね。

あとは自分たちのアリーナだからこそ、いろいろなチャレンジができる。ほかの会場だと「壊れちゃうから、これはしちゃダメ、あれはしちゃダメ」ということを結構言われるんですが、アリーナ立川立飛においては、僕たちが一番良く知っている側。だから「ここまではやっても大丈夫」という決断ができる。それはかなり大きいです。また、アリーナの貸し出しもしているので、自分たちがやったことをフィードバックもできるんですよ。「こういうこともできますよ」って。そういう意味ではハードとソフトが一体でできているというのはすごくいいですね。

──リスクを考えることはもちろんですが、より挑戦しやすい環境なのですね。アリーナ立川立飛だからできた演出や施策の具体例があれば教えてください。

今は他のアリーナでも増えていますけど、天井からスポンサーの広告を吊るしたり、可動席が自由に動くので、好きな場所に設置したり。あとは自動車をアリーナの中に入れたこともありましたね。

走らせるのは消防法上できないのですが、中に入れるだけならできるんです。普通の体育館だとおそらくできないと思いますが、耐荷重を計算したり、汚れないように工夫したりすればできることに気づいて。

──確かに計算上できるとしても、実際に試すのは他の体育館だと厳しそうですね。

そうなんです。今話したのは一例ですけど、本当にいろんなことができるし、まだまだやれることもたくさんある。今後もそのスタンスでアリーナを活用していきたいですね。

──皆さんが勤務しているオフィスもアリーナの中にあるんですよね。

そうです。事務所から出て5秒でバスケットのシューティングができます(笑)。

──つまり、ホームゲームの日も何かあれば5秒でオフィスやデスクに戻れると。

そうです、そうです。だからすごくやりやすい。体育館を借りていたときは、必要なものは全部持って行かないといけなかったから、何か足りないものがあれば近くで買ったり、時間をかけて戻ってきたりしないといけなかった。だけど、今はすぐそこ。それもすごくやりやすく、また、やれることが増えますね。

長く続いて、地域の人の誇りとなるクラブに

──多摩スポーツクラブさまの代表として、原さんは社員やスタッフの方にはどういう気持ちでアリーナ立川立飛および立川ダイスに関わってほしいと考えていますか?

バスケットボールやホームゲームはエンターテインメントなので、それを一緒に作ることを楽しめる人と仕事をしたいと思っています。それこそうちはハードとソフトを一緒に運営しているので自由度が高い。だから積極的にアイデアを出したり、意見を言えたりできる人がいいですね。よく「チャンスと広い空間はある」って言っているんです。だからそれらを活かしてやりたいものをたくさん持っている人がいたら、どんどんやらせてあげたいです。チームとしては4年目。これからのチームなので「歴史を作っていきたい」という思いも持っている方と一緒に仕事ができたらと思っています。

──一緒に作りあげることを楽しめる人がいいですね。今働いていたら、ゆくゆくはレジェンドスタッフになれるかも(笑)。

本当にそうですよね。今はまさに始まった時期なので、この時期を10年くらい経験できた人はレジェンドになれると思います(笑)。もともと商工会議所が作ったチームということもあって、今も街の方と話をしながらいろいろなことに挑戦しています。あくまでも立川ダイスを大きくすることは手段の一つで、目的は立川の街が盛り上がっていくこと。立川の街を盛り上げるということを、一緒に目指していけるといいですね。

──最後に、会社やチームの今後の展望を教えてください。

来年からはB.LEAGUE ONEになるので、まずはしっかりとお客さんを入れて、人気のチームになって、CSで優勝して……ゆくゆくは、ヨーロッパのサッカーチームのように、その地域とチームがセットになるような、その街になくてはならないチームになるとともに、50年、100年続いてまさに街の歴史となるチームになっていきたいです。立川の街だけじゃなくて、多摩地区になくてはならないチーム、さらには日本になくてはならないチームになっていけたら。長く続いて、地域の人の誇り、立川の人の拠り所の一つになれるクラブを目指していきたいです。

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【PROFILE】
原 宏樹(はら ひろき)
代表取締役。2017年より立川市でのアリーナ運営・立川ダイスの立ち上げに参画。
幼少期での近鉄バファローズの球場で感じた原体験をもとに、立川の街にスポーツ文化を根付かせるべく、ハード・ソフトの両面から奮闘中。

第1位

第2位

第3位

第4位

第5位

設立年月 2022年08月
代表者 原 宏樹
従業員数 15名
業務内容

アリーナ立川立飛・ドーム立川立飛の運営
プロバスケットボールチーム『立川ダイス』の運営

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