元Wリーガーが見つけた バスケも仕事も楽しめる選択肢

株式会社アクアテック 関東女子バスケットボール部 岡林彩花、陽本麻優

元Wリーガーが見つけた バスケも仕事も楽しめる選択肢

株式会社アクアテック 関東女子バスケットボール部 岡林彩花、陽本麻優

Wリーグでのキャリアを経て、次に選んだのは「働きながら競技を続ける」という道だった──。
株式会社アクアテックの関東女子バスケットボール部に所属する陽本麻優さん(コートネーム=イブ)と岡林彩花さん(コートネーム=リョウ)。かつて同じ大学で汗を流し、その後、女子バスケットボールの国内最高峰・Wリーグの姫路イーグレッツでも共にプレーしてきた2人が、新たなステージで再び肩を並べている。競技の第一線を離れるタイミングで「この先、どう生きるか」と向き合った末にたどり着いたのは、“バスケも仕事も本気で向き合える環境”だった。会社の仲間と働き、創部したてのバスケットボールチームをつくり上げ、そして指導者としての一歩を踏み出す。デュアルキャリアという選択肢のリアルな今を、2人が語ってくれた。

(取材・執筆:伊藤千梅、編集:伊藤知裕、池田翔太郎)

▼アクアテックのバスケ部GM・本田勇真さんのインタビューはコチラ

引退を悩んだ2人とアクアテックの出合い

――お2人はこれまで、どのようなバスケットボール人生を歩まれてきましたか?

陽本 私は小学校2年生のときにバスケットボールを始めました。「うまくなりたい」という一心で、中学からは強豪校に行きたいと親にお願いして、中高一貫の強いチームで全国大会を目指しました。奈良の大学へ進学し、卒業後はWリーグの新潟アルビレックスBBラビッツに加入。その後、姫路イーグレッツを経て、今年からアクアテックバスケットボール部でプレーしています。まさに、バスケットボール一筋の人生です。

岡林 私は小学校1年生から競技を始めて、中学校は地元の公立中学校に進みました。高校では「全国大会に出られるチームでプレーしたい」と思い、埼玉の高校に進学しました。大学はイブさんと同じく奈良学園大学に進み、卒業後はWリーグの姫路イーグレッツに加入しました。私も、ずっとバスケとともに歩んできましたね。

陽本 受験らしい受験をほとんどせずに来たような人生ですね(笑)。

岡林 イブさんは勉強もできそうですけど、私は本当にバスケしかやってきていません(笑)。

――お二人とも、奈良学園大学の出身なのですね。

陽本 私は3年生で、リョウが1年生のときに同じ部屋になったのがきっかけで仲良くなりました。大学時代は門限があったり、アルバイト禁止だったりと、かなり厳しい環境でした。

岡林 当時のイブさんは、すごく怖くて……。声をかけられなかった記憶があります(笑)。

陽本 そんなことないでしょ(笑)。怒った記憶なんて全然ないよ。

――本当に仲が良いのが伝わってきます(笑)。その後、姫路でも一緒にプレーすることになったのですね。

陽本 そうなんです。姫路には何度もリョウに誘われました。

岡林 チームに加入した1年目は、若い選手が多く、もっと経験豊富な選手に来てほしいと思いイブさんに連絡しました。

――アクアテックへ移籍した経緯を教えてください。

岡林 私は高校時代からひざのケガを何度も経験していて、Wリーグでのプレーは気持ち的にも体力的にも、そろそろ限界かなと思っていました。でも、やっぱりバスケは続けたいという気持ちが残っていて。強度を落としてでも続けられる環境があるなら、挑戦したいと考えて大学の先生に相談したところ、アクアテックを紹介していただきました。

陽本 私は移籍の大変さも経験していたので、姫路を辞めようと思ったタイミングで、選手も引退して指導者に転身しようと考えていた時期でした。ただ、ちょうどその頃、先にアクアテックへの加入が決まっていたリョウから「一緒にやらないか」と声をかけてもらったんです。それがきっかけでした。

――お二人とも、いったんは引退を考えた時期があったのですね。競技レベルを問わず「バスケがしたい」と思えるようになった、きっかけはあったのですか?

岡林 そうですね。でもやっぱり年齢的にも、もう少しプレーを続けたいという思いがあって。そこから「自分に合った場所で続けられないか」と考えるようになりました。

陽本 アクアテックのGMを務める本田(勇真)さんと話すなかで、「まだプレーしたい」という気持ちが湧いてきました。さらに、ジュニアの指導にも関われると聞き、それも大きな魅力でした。「トップレベルでできないなら辞めようかな」と考えていました。でも、まだ動けるなら挑戦したいという気持ちと、興味本位で「自分の人生がどうなるのかな」というのも凄くありました。そして「新しいチームをイチからつくっていく」というワクワク感が大きくて!飛び込んでみようと決めました。

岡林 私もWリーグを辞めたときは、もういいかなという気持ちでした。でも、何十年も続けてきた競技を楽しくない状況のまま終わるのは嫌でした。もう少しバスケを楽しみたいと思ったところから、立ち上げメンバーとして新しい挑戦ができるのはきっと楽しいだろうと感じて、このチームで続ける決意をしました。

“自分たちでつくる”楽しさと責任

――アクアテックのバスケットボールチームについて教えてください。

陽本 関東には男女のチームがあり、私たちの女子チームは千葉県のオープンリーグに所属しています。練習は平日の木曜日と金曜日の夜、だいたい19時か19時半からスタートと、土日にしています。今年からWリーグ経験者が3人加入して、現在の選手数は11人。うち社内メンバーが7人、社外メンバーが4人という構成です。社外メンバーはどうしても平日に参加しづらいことがあるので、人数が少ないなかでどう練習するかなど、試行錯誤しながら取り組んでいます。

岡林 ヘッドコーチはアクアテック創立時から男子チームを立ち上げた方で、現在は女子の指導も兼任しています。ただ、平日は業務の関係で来られないことが多いので、練習メニューはキャプテンである自分が考えて実施しています。

――メニューまで選手主体なのですね。チームを“イチからつくる”というのは、具体的にどんなことを?

陽本 体育館の確保など、運営面の事務作業を自分たちで行っています。GMの本田さんが全体を見てくださってはいますが、現場での細かい部分は選手が担う場面も多く、これまでまったくやってこなかったこともあります。難しさもありますがその分、新鮮でおもしろさも感じています。

岡林 荷物の管理や大会の申請、経費の精算なども選手が担当しています。Wリーグ時代にはやらなかったことばかりで、最初は大変だと感じることもありました。女子部にはマネージャーがいないので、余計にそう感じた部分はありますね。

陽本 でも、だからこそ、これまで支えてくれていた人たちへの感謝の気持ちを、改めて感じられるようになりました。当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃなかったんだな、と。自分たちも、今は誰かに「ありがとう」と言ってもらえる側になれるよう、頑張りたいです。

――コートの中でもメンバーを引っ張っていくところを求められると思いますが、今、チーム作りで大切にしていることは何ですか?

陽本 私たちが一番求めているのは、“バスケットを楽しむ”こと。Wリーグから移籍してきた3人がチームの中心になって引っ張っている状況でもあるので、まずは自分たちが楽しむ姿勢を見せることが大切だと思っています。
特に意識しているのは「笑顔」です。走る競技はどうしてもきつい場面が多いですが、しんどい時に辛い顔をしていると、周りも声をかけづらくなるし、チームの雰囲気も落ちやすい。だから私は「とりあえず笑っとこ!!」と思っています。笑っていれば、自然と楽しさもついてくる気がしますね。

――今はどんな目標を持ってプレーしているのでしょうか?

岡林 私たちは現在、千葉県の社会人オープンリーグという一番下のカテゴリーに所属しています。その上にはSB2リーグ(社会人バスケットボールリーグの地域リーグ)があるので、まずはそこに昇格することが、チームとしての一番の目標です。

「やっと社会人になれた」仕事も全力で

――では、お仕事の話をお聞きしようと思います。普段、アクアテックではどのような業務を行っていますか?

岡林 営業事務を担当しています。人材派遣の会社なので、従業員の方の書類管理や給与計算、請求書の作成などが主な業務です。最近ようやく慣れてきたところですが、やっぱり大変です。特に締め日が近づくと、残業続きで毎日がバタバタですね(笑)。

陽本 私もバタバタな毎日です。今は覚えることに必死で、とにかくがむしゃらに働いています。

――Wリーグ時代との違いはありますか?

岡林 姫路でも仕事をしていました。1年目は工場で検品作業をして、2年目からは事務の仕事をしていました。でも簡単な作業が中心だったので、今の仕事とのギャップはすごく大きいです。今は仕事がメインなので、業務量が多ければ残業もしますし、生活の中心が完全に“仕事”にシフトしています。

陽本 私は新潟時代に保育士をしていて、姫路では工場の事務をしていました。Wリーグのときは、試合がある日は仕事をお休みさせてもらったり、遠征が多かったりと、やっぱりバスケが優先される働き方でした。今は仕事が軸になっている分、練習の時間も限られますし、バスケットの強度という意味でも多少違いは感じています。けれど、それも含めて自分たちの“今”だと思っています。

――働く時間も変化があったのですね。

岡林 以前は15時までの勤務だったのですが、今は17時半まで働いています。この2時間半の差が、最初はけっこうきつくて…特に入社したてのころは15時を過ぎるとぐったりでした(苦笑)。

――仕事への意識にも変化が出てきていると思いますが、今の仕事に対して、どんな気持ちを持っていますか?

陽本 姫路時代も社会人ではありましたが、あくまで“バスケ中心”の生活でした。今は仕事がメインなので、ある意味「やっと社会人になれた」と感じています。もちろん比較するものではないですが、こういう社会人生活もあるんだな、と。これまでは、バスケが最優先だったので「多少効率悪くてもそのままやろう」「言われた通りにやろう」と思っていたことが多々ありました。でも今は、会社の一員として、ちゃんと自分が求められている実感があります。会社の飲み会にも初めて参加できたりして、やっと「自分も社会の一員なんだな」と思えるようになってきました。

岡林 姫路ではそこまで難しい内容はなかったので、今のように学びながら仕事ができる環境はすごくありがたいです。覚えれば将来きっと役に立つスキルなので、自分の武器になる感覚があります。イブさんが言っていた「やっと社会人になれた」という感覚、私もすごく共感しますし、それが今のワクワクにつながっていると思います。

陽本 「今を生きている」って感じがしますね。毎日充実しています。

――普段一緒に働いている職場の方々の応援は、どのように感じていますか?

岡林 少し前に千葉県で皇后杯予選があったのですが、その試合を見に来てくださった方がいて。差し入れまでいただいて、本当にありがたいです。

陽本 普段から「試合どうだった?」と声をかけてくださる方や、興味を持ってくださる方がいて、すごくうれしいです。

悩んだらワクワクする方へ

――それだけしっかり仕事をされているからこそ、会社の方々からも愛されているのですね!お二人は、競技を引退した後のことをどのように考えていますか?

岡林 姫路を辞めた時、引退も視野に入れていたのですが、正直その後のことはあまり考えていませんでした。今も明確に見えているわけではないですけど、ここまでバスケをやってきたからには、いつかは何かしらの形で競技に関わって、少しでも還元できたらいいなと思っています。

陽本 私は指導者になりたいという思いがあるので、今は市原のジュニアチームで週1回ほど、中学生に向けて自分たちが培ってきたことを伝えられる場をつくってもらっています。GMの本田さんもセカンドキャリアをすごく大事にされていて。競技を続けたい気持ちがあっても、将来を考えなきゃいけないからといってバスケを諦める人が出ないように、そうした環境づくりに動いてくれています。私たち女子バスケ部を始動させたのは、そうした思いがあってのことだと思っています。

――仕事に、競技に、未来に向けて、充実した毎日を送られているんですね。

陽本 求められていることが多いのは、それだけ充実しているということでもあると思います。指導もさせてもらっていますし、仕事もバスケも色んなことにチャレンジしやすい環境があると感じています。あと、プライベートの時間も取れるようになりました。Wリーグにいた頃は週6で練習があって、試合もありましたし、四六時中バスケのことを考えていました。今は逆に視野が広がって、心にも少し余裕がもてるようになった気がします。

――バスケットボールを続けるか悩んでいる方や、セカンドキャリアに不安がある方に向けて、メッセージをお願いします!

岡林 続けるかどうかは大事なことだけど、それ以上に「ワクワクするほう」に進んだほうがいいと思います。

陽本 私も去年はすごく悩んでいたので、その時の自分には「こういう人生も悪くないよ」って伝えたいです。競技が楽しめなくなる瞬間って誰にでもあると思うんですけど、今はアクアテックに来て本当に楽しいです。本田さんをはじめ、まわりの人がとても温かくて。会社の方が試合を応援しに来てくれたりもするので、人に恵まれてるなと日々感じています。もしバスケを続けるかどうかで悩んでいる方がいたら、ぜひ一度アクアテックでプレーしながら働くという選択肢も知ってもらえたらうれしいです。


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【PROFILE】

岡林 彩花(おかばやし・あやか)東京都出身。マイブームはアサイーボウルを食べること。趣味は韓国ドラマを見ること。ポジションはセンター(C)。175センチ。

陽本 麻優(ようもと・まゆ)静岡県出身。好きな漫画は「ブルーロック」。女子バレー・ブラジル代表のガビ選手の肉体美に憧れてトレーニングに励んだ結果、新潟時代についた愛称が「骨格ガビ」。ポジションはポイントガード(PG)。163センチ。

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設立年月 2000年06月
代表者 坂巻 和彦
従業員数 1,200名
業務内容

・電子機器部品製造
・各種業務請負業

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