“正直者”たちが繋いできたバトン コトブキゴルフ創業100年を目指して

コトブキゴルフ 高橋 敏成、村田 一美、稲垣 憲

“正直者”たちが繋いできたバトン コトブキゴルフ創業100年を目指して

コトブキゴルフ 高橋 敏成、村田 一美、稲垣 憲

JR御徒町駅の目の前にそびえるコトブキゴルフ ワールド館。1階から4階までずらりとゴルフ用品が並んでいる。地下1階では世界中のゴルファーから厚い信頼を寄せられる、米国発のゴルフブランド・タイトリストのフィッティングスタジオおよびゴルフスクールを展開。ゴルフ人の聖地といっても過言ではない。コトブキゴルフのスタッフとして、ゴルフ人口の増減や、それに伴うゴルフショップの変革を、40年以上見てきた稲垣憲さん。嘱託社員となった今でも、おすすめしたクラブでお客様のスコアが伸びることが喜びだといいます。同じく現在も嘱託社員として勤務する村田一美さん、高橋敏成さんと共に、コトブキゴルフのこれまで、そしてこれからを語り合っていただきました。

(取材・執筆:小林 千絵、編集:伊藤 知裕、池田 翔太郎)

(左から)

高橋敏成さん:現在はタイトリストのフィッターとして活躍中
村田一美さん:現在はヘッドカバーやマーカーなど雑貨コーナーで活躍中
稲垣憲さん:現在はパターやシューズ、レディス向けクラブのコーナーで活躍中

バブルからポストコロナまで 売り場で体感する時代の変遷

──稲垣さん、村田さんは20代の頃から、高橋さんは40代から、コトブキゴルフで働かれているということですが、入社以来どのような業務をおこなってきたのか教えてください。

稲垣 私は大学時代にコトブキゴルフでアルバイトをしていて、そのまま就職しました。以降ずっと営業です。30代半ばで店長になってからは、60までずっと店長職をやっていました。一時期、今あるワールド館含めて、アメ横に3店舗と恵比寿に店舗があったのですが、4店舗すべてで店長をやりました。

村田 私はいわゆる第二新卒でコトブキゴルフに入社しました。入社後は各店舗で営業をやり、最終的にはワールド館の店長を60歳まで務めました。

高橋 私は前職でゴルフ関係の仕事をしていて、48歳のときに、こちらに転職してきました。入社当時は営業職をやりつつ、クラブの修理やカスタマイズにも携わっていました。そして今から3年前くらいにタイトリストフィッティングスタジオの専属フィッターになりました。

──フィッターになったのは何がきっかけだったのでしょうか?

高橋 社長にやれと言われたから(笑)。ただ、それまでも道具に対する興味はあって。だから、やってみないかと声をかけてもらって、いい機会だなと思って「やります」と返事をしました。

稲垣 タイトリストのフィッターになるにはかなり厳しい試験があって、簡単にはなれないんですよ。僕がワールド館の店長をやっていたときに、地下にタイトリストのフィッティングスタジオを作る話があがって、社長と相談して高橋がいいんじゃないかなって話になったんです。そもそもタイトリストのフィッティングスタジオは日本にそんなにたくさんあるわけじゃないし、ゴルフショップ店の中に入るのはうちが最初。それだけでも十分強みでしたし、お客様に「すごいフィッターがいるから、有料にはなってしまいますが、一度フィッティングを受けてみてはいかがですか?」という提案ができたのもよかったですね。

──長年コトブキゴルフに勤務している皆さんは、ゴルフファンや来店する客層の移り変わりを、どのようにご覧になっていますか?

稲垣 僕が入ってすぐにバブルになって。当時は青木功、中嶋常幸、ジャンボ尾崎といったスター選手がいて、「プロゴルファーが使っている」という宣伝だけでクラブが売れる時代でした。だけど、だんだん自分に合うクラブを探すという時代になっていき、それこそフィッティングや試打が必須になりました。

村田 それこそ「プロが使っているから」という理由で売れていた頃には必要なかった試打室が、20年前くらいにできて。それからは試打をしないで買う人はほとんどいなくなりましたね。

高橋 最近はSNSやYouTubeでいろいろな情報が簡単に手に入れられるので、皆さん知識が豊富で。そのうえで自分に合うものは何だろうかということを考えて、店にいらっしゃっています。

村田 お客さんの増減でいうと、ここ10年くらいで女性がかなり増えましたね。女子プロの露出が増えたことも多いのかな。プレーを見る機会が増えて、女子プロのファンも増えて、実際にプレーヤーも増えた印象がありますね。

稲垣 コロナ禍でも20代のゴルファーが一気に増えましたよね。ゴルフは野外でやるスポーツだし、団体でやるわけじゃないし、4人で一緒に回るにしても、それぞれの場所へ進むから密にならない。時代の流れも後押しして、男女ともに20代のゴルフ人口が増えていきました。

「商売っ気がない」と言われても揺るがないポリシー

──その変化にあわせて、皆さんの接客はどのように変化させてきましたか?

稲垣 専門的なことはフィッターがやるにしても、僕たちもやはり良い数値を出すために、クラブをどう変えるべきなのかといったアドバイスができないといけない。そのあたりの勉強はしないといけないし、クラブもシャフトもどんどん新しいものが出てくるから、それを絶えず追いかけていないといけない。ゴルフ用品って、スポーツの中でも一番種類が多いんじゃないかなと思うんです。だから常に勉強はしています。

村田 この間スポジョバに出たうちの若手社員の記事で、「ゴリ押ししない接客」という話が出ていたと思うんですが、それは私も入社以来心がけていることで。良いクラブに変えたからって全員スコアが良くなるわけではない。もちろん、違う商品を使えば良くなる人もいますけど、そうじゃなくて、スイングの形を変えないといけないのかもしれないし、合うクラブは違うものかもしれない。その場合はお客さんが「これが欲しい」と言っても、売らないこともあります

稲垣 合うものがないなら無理して買わなくていいんですよ。新しいものを試してみることはもちろんいいことですけど、試打してみて、あまり変わらなかったら無理しなくていい。だから、お客さんに「お前んとこは商売っ気がないな」ってよく言われます。

村田 同じクラブを使い続けていると、飽きるわけです。新しいものを使ってみたいと。でも、打ち比べてそんなに変わらなければ、頑張って買い替える必要もないじゃないですか(笑)。

──ありがたいお店ですね(笑)。前回取材させていただいた若い世代の方々は、皆さんに習ってきたのだと思うのですが、こうした接客手法は皆さんも教わってきたものなのですか?

稲垣 自分の接客は「嘘ついてまで売りたくない」です。一回嘘ついたら、そのお客様は二度と来ないじゃないですか。「コースに持って行ったら、全然飛ばねえよ」って思われちゃったら、絶対来ないでしょう。

村田 私も嘘はつきたくないですね。昔はスタッフの数も今の3倍はいて、色々な人間がいたわけです。お金を稼ぎたい人間とか、真摯にお客様にとって良い物を探す人間とか。会社として「嘘をついてまで売るな」という接客手法を推奨していたわけではなかったですね。そういう教えを、会社としてやってきたわけではない。でも、いい加減じゃない接客をしていた人たちが最終的には残っていきましたね。

稲垣 確かに、そういう人たちが全部残った。

高橋 自分はお客様が何を求めているのかなとか、どう言ったら納得するかな、喜ぶのかなとコミュニケーションを取りながら、そこに注意を払って接客しています。自分もゴルファーなので、他のゴルフショップに行くこともあるのですが、そのときに真摯に接客してくれているのか、売りたい気持ちが先行しているのかが見えるんです。後者の接客をされると、ちょっと引いちゃう。だからそういう自分が経験して嫌だなと思うことはしない、ということは自分も意識していますね。

「ダメだった」と報告しに来店するお客さん

──安い買い物ではないですし、じっくりとお客様と向き合っているのですね。では、これまでコトブキゴルフで勤務をしてきて、特に喜びを感じた瞬間ややりがいを感じた際のエピソードを教えてください。

稲垣 「この間、おすすめしてもらったクラブでコースに出たらスコアが良かったよ」と、伝えてもらえること。そこから「良かったから、次はこれを見てほしい」とか、知り合いのクラブも探してほしいとか、そうやって繋がっていくことが、一番のやりがいじゃないかな。あと、おすすめした商品がダメだったのに来店する人もいて。「ダメだったよ」って。それもうれしいですね。本当に嫌だったらもう2度とこないはず。そうじゃないからまた来てくれるわけで。

村田 僕も同じで、お客さんに喜んでもらえることが一番うれしいですね。「この間買ったクラブで飛距離伸びたよ」とか「ホールインワン出たよ」というお話を聞くのが一番うれしい。あと、担当アイテムの話も同じで。僕は今、こんな顔してかわいい雑貨を担当しているんですが(笑)、ちょっと置き場所を変えたりするだけで急に売れたりするんですよ。そういう工夫が報われたときはうれしいですね。

高橋 僕も同じ。お客さんに満足してもらうことが一番の喜びなのですが、それをどういうときに実感するかというと、買ってもらったときではないんです。私はフィッティングをしているので、お客様に一番合うクラブを提案させていただきますが、実際に現地でその通りの結果が出るかはわからない。だから、そうして提案させていただいたお客様から、「この間フィッティングしてもらったクラブ、めちゃくちゃよかったよ」とか「ベストスコアが出たよ」と言っていただけたときに、初めて「あのクラブを提案してよかったな」と思います。

──良いクラブを売るだけではなくて、それでちゃんと結果が出て、お客さんが喜んでくれて初めて喜びを感じるんですね。

高橋 そうですね。こんなこと言ったら怒られちゃいますけど、私は売れる・売れないはあまり気にしていなくて。“このお客様に最も良いクラブを提案する”ということしか考えていないんです。逆に、フィッティング時点では私もお客様も「悪くないけど……」という状態で買ったクラブが、コースを回ってみたらめちゃくちゃ良かったということもありますけど(笑)。そうやって良くも悪くも報告してくれるのがありがたいし、嬉しいです。満足いく結果が出なかったことに対して報告してくれるのは、もう一度チャンスをくれているのかなと思うのです。自分のスキルアップにつなげる反省材料にもなります。

──そういう喜びを感じながら、皆さん60歳の定年退職後も嘱託社員として働き続けています。現在、感じているコトブキゴルフで働く理由や、やりがいは何ですか?

稲垣 今話したような楽しみを感じられるから。あと、この会社は、60歳を過ぎても20代、30代の人たちと仕事内容が一緒なんですよ。それはもちろん大変なことでもありますけど、60を過ぎても同じように見てくれるということにはやりがいを感じますね。それが老けない理由でもあるだろうし。

村田 ……老けない? 老けてるよ!(笑)

稲垣 あはは(笑)。確かにそうだけど、同じように働き続けられることで、まだまだ頑張ろうと思えるし、「若い人たちに負けられない」という気持ちでいられるのかなと思います。

村田 やはり嘱託社員になっても、自分がわかる仕事をそのまま同じ形で続けられるというのは、すごくありがたいことですよね。自分が若い頃、先輩たちにすごくかわいがってもらって、毎日仕事に行くのが楽しかったから、今の若い人たちにもその気持ちを教えてあげられたらいいなと思っています。

高橋 年齢と共に仕事に対する熱量ってどうしても下がってしまうと思うんです。それは仕方ないこと。そんな中で、私は3年半前にタイトリストのフィッティングスタジオという新しい挑戦をさせてもらって、自分を成長させることができた。この会社では、やる気になれば色んなことに挑戦できる。そこにやりがいを感じています。

「日本で一番」を目指すため 変えるものと変えないもの

──そんな皆さんがこの先コトブキゴルフで成し遂げたいことややりたいことを教えてください。

稲垣 僕が店長をやっていたとき「ゴルフショップのトップを取る」というのを目標にしていました。その目標を持つことで、「ディスプレイを変えてみよう」とか、接客を変えてみようとか、いろいろな工夫をするじゃないですか。絶えずその努力をしないとトップにはなれないと思う。そういうことを教えていきたいし、そうやって売り上げも立つし、お客さんからの評判も良い。そんな日本で一番いいお店にしていきたいです。

村田 難しいことではあるんですが……切磋琢磨する職場を作っていきたいですね。僕らが若い頃は、社員同士で売り上げのトップを争ったりしていましたが、最近は和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気があって。会社が継続していくにはもうちょっと互いに切磋琢磨し合うことが必要だと思う。そういうことを伝えていけたらと思っています。

高橋 時代の変化によって、お客さんのニーズも変わっていく。そのなかで最適な提案をし続けるためには、個々のスタッフのレベルアップが必須。そのために力添えはできる限りしていきたいなと思っています。

──コトブキゴルフでは、創業100周年を目指した会社作りを行っています。そんななかで、皆さんがこの会社に残していきたいことや継承していきたいものを教えてください。

稲垣 さっきも話した“嘘をつかない接客”。それはうちの会社の良いところだと思うので、これからも変わらないでいてほしいですね。あとは、ゴルフの専門店自体が少なくなってきているので、専門店としてできることを考えていってほしいなと思います。それこそタイトリストのフィッティングスタジオが入っていたり、ゴルフスクールも入っていたりするゴルフショップというのは、珍しいと思うので、それをうまく活用してより良い店を作っていってほしいです。

村田 これからのことは、若い人たちに考えていってもらいたいですが、うちの会社に限らず、会社というのは社員が一番大事。いい人材を育てることを考えて、続けていってもらえればと思います。

高橋 時代にあわせて会社も変わっていくべきだと思うのですが、変わらないで欲しいのはお客さんに喜んでもらう接客。人間が接客をする以上、そこはずっとコトブキゴルフの強みだと思うので。

村田 個人個人が受け持っているコアなお客さんを大切にするとかね。休みでもLINEや電話が来ますよ。そういうことは人間が接客するからこそできることだと思うので。

稲垣 ゴルフの場合、クラブを試打しなければ分からなかったり、靴だと履いてみないと分からなかったり。そういう点だと、まだまだお店に来てくれる商売なんだなと思います。ネットで買うと大体失敗して、それで来店してくれるお客さんも少なくないので。

▼他のコトブキゴルフの記事はコチラ

高橋 敏成(たかはし・としなり)
奈良県出身。スポーツ経験は野球、サッカー。ゴルフの他に釣りが趣味。座右の銘は「Never up, never in」。

村田 一美(むらた・かずみ)
埼玉県さいたま市出身。趣味はバイク。特技は気遣い気配り(性格かな)。座右の銘は(強いて言えば)「言行一致」。

稲垣 憲(いながき・さとし)
愛知県出身。剣道3段、サーフィン歴は20年になる。趣味はサイクリング、特技は接客、話上手。座右の銘は「初心忘するべからず」。

第1位

第2位

第3位

第4位

第5位

設立年月 1967年02月
代表者 安本昌煥
従業員数 50名
業務内容

・ゴルフ用品小売業
・スポーツ用品の輸入、卸、小売販売
・前号に付帯する一切の業務

友達追加するとあなたに合ったスポーツ業界情報をおしらせできます

友達追加する!

スポーツ業界の求⼈を探す


スポーツ業界の求⼈を探す

スポジョバについてもっと知る気軽にスポーツ業界の情報を知る

スポジョバ 公式SNS

フォローすればスポーツ業界の情報感度が上がる!