あなたは会社を選ぶとき、何を軸に選びますか?給料や、仕事内容、社風…そして多くの人が求めるのが「安定性」。そんな中、今回はベンチャー企業の価値観に迫ります。
スポーツ系企業「Ascenders」は、スポーツ分野の人材育成やマネジメントなど「ヒト」にフォーカスした事業を行っています。CEOの橋本さんが大学4年で起業し、現在は上場を目指すほどの規模に成長しています。
前編では、橋本さんが起業するまでの軌跡や起業時の苦労話を伺いました。後編では、人はどんな時に成長するのか、成長するためには何が必要なのか?そのヒントを探ります。
(取材:構成=元スポジョバ編集部 久下真以子)
ーー現在「Ascenders」は、インキュベート(育成)事業・マネジメント事業・エージェント(代理人)事業の3本柱で展開しています。
「事業を通して得たチームや企業の課題は、”人がいないこと”ではあったのですが、単純に“採用できない”ではなくて、”人が安定しない”ということでした。今動き出しているのは、インキュベートで育てた人材で専門職チームや外部から専門の復業チームを作って、プロチームとHRパートナーという契約をして、人が足りない部分を、うちのチームでやりますよ、というのをやってます。」
ーー求人メディアの「MERCI」も今年1月に立ち上げましたよね。
「もともとはトレーナーや栄養士などの現場に近い仕事をやっていたんですけど、チームや企業との付き合いの中で、ビジネスサイドで”こういう人材はいないの?”という相談をされ始めたんです。スポーツのチームとかって少し複雑で、現場のことは現場が決めるのに、フロントのことはフロントが決めるとか、むしろフロントが現場を決めるということもあるんです。だからどちらかだけに人脈を作るより全部つながればいいんじゃないかというので、どちらかというとフロントサイド向けにやり始めたサービスです」
ーースポーツ業界に人が足りないと一口にいっても、どういうところに足りなくて、どういう人材が欲しいという情報はなかなか見えてこないですね。
「そうですね。僕が一番足りないと思っているのは”売り上げを上げられる人間”と”現場で働ける人間”だと思っていて、前者がいないとお金が増えないし、後者がいないと現場のオペレーションが全く機能しないというこの2つでしかない。極端に言えば、コンビニにオーナーと現場の店員が両方いないようなものです」
ーーそれはまったくコンビニが動かないです…。
「でも僕らの業界は無人にできないんですよ。人がいるからスポーツはいい、というところもある世界なので、オーナークラスと現場、どちらかに能力を偏ってもいけないし、両方に優秀な人材を集めなきゃいけないと思っています」
ーー前編では、ビジョンとして「夢の国を創る」ということをおっしゃっていました。
「2つ意味があって、1つは本当に概念的な意味でのカルチャー。もう1つは場所として作ることです。日本版のIMGのようなスポーツタウンを日本のある島に作る計画をしていて、2021年から進める構想です。寮やオフィス、商業施設を併設して、街そのものがスポーツをテーマとして様々な商い、研究、教育が行われる環境です。人も知識も集まるような空間にしたいんです」
ーースポーツの夢の島ができるんですね!
「お世話になっていた人がその島出身で、その人の実家に遊びに行ったときにすごく感動したんです。車に乗って橋で島に渡るときのワクワクする感じもそうですし、島なので周り全部海ですし、ご飯もおいしいし、自然もあるし、土地もたくさんあるし、雪も降らないし。地元の若者を増やしたいという思いと、僕たちの若者を連れてきたいという思いも一致して、ここにしようと去年決めました」
ーー夢が広がりますね。
「もともと構想のきっかけになったのは、学生最後に目の当たりにしたアメリカでの光景なんです。ラスベガスの大企業であるZappos(靴のオンライン小売業)の企業カルチャーという考え方と、シリコンバレーにあるGoogleの広大なキャンパスオフィスに衝撃を受けたんですが、それが僕にとっての”夢の国のリアル”だったんです。日本のスポーツ企業でそれを意識している会社がなかなかなかったというのもあるので、Ascendersをグローバルな会社にしたいなという思いでいます」
ーーこれから就職や転職をする方々の中には、安定性や知名度を優先する方も多くいると思います。そんな中で、スポーツベンチャーで働くメリットってありますか。
「スポーツ産業がこれから伸びる、伸びないのところの分岐点にあって、こういった体験をできるのは今しかないと思っています。また僕は、人はリスクを背負った分だけ得るものがあるし伸びると思うんですよね。例えばライザップさんで人はなんで痩せるか?っていったら、40万払うから頑張るんですよ。お金回収したいから」
ーー確かに安いジムだとサボっちゃうかも…。
「お金をかけるリスクの差なんですよ。ただそれだけの差だと思っていて、リスクを負わない人は成長しなくはないけど成長スピードが遅いですし、上手くやることよりも早くやることを意識したほうが僕はいいと思っている。リスクを背負った人のほうが給料も上がるし、大事な仕事を受けられるというところを精神的に持ってほしいと思っています」
ーーAscendersをはじめとした、スポーツ系のベンチャーで身につくスキルというのはあるのでしょうか。
「あると思いますけど、まずは”やりたいこと”が大事です。ゴールをしっかり決めることだと思っていて、バスケやりたいのにサッカー学んだってしょうがないじゃないですか。ゴール対して必要な知識を得られるところを探す。よく”スポーツ界に入るには何をやればいいですか?”って聞かれますけど、例えば弁護士でスポーツに詳しくなればその分野の仕事を受けられますし、マーケティングでも営業でも自分の領域をやればその知識は横展できると思います。別の業界で営業をやってたのでスポーツに生かす、ということもできる。まずはゴールに必要な知識が分からなかったら聞くというのが一番の方法なのではないでしょうか」
ーー橋本さん自身の仕事のやりがいを教えてください。
「実は漫画やアニメがスポーツより好きなんですけど、そこはコンテンツを受ける側であって、働きたいと思ったことは1回もない。でもスポーツは全く逆で、プレーや観戦というよりも”スポーツをやっている人”が好きなんです。友達は時々しか会わないけれど、仕事で関わる人は毎日のように会う。僕にとって”仕事関係=スポーツ関係”の人たちなので、すごく個人的に楽しいです」
ーー私もスポーツ取材をしていて、アスリートから元気をもらっているので、少し気持ちがわかるような気がします。
「あとはみんなスポーツの中で求めているものがあって、それが実現できるとすごく嬉しいことなんだろうなと思っていて、それを自分たちが作れているということがすごく楽しい。スポーツ産業が伸びていくということに対して、僕たちの会社ってシンプルで、産業が伸びたら儲かるし、伸びなかったら儲からないというのは分かっているので、だからこそ一緒になって核を埋めてやれるんじゃないかなと感じています。他業界の人たちだってスポーツは盛り上がってほしいと思ってるとは思うんですけど、本業には全く影響がないじゃないですか(笑)。やっぱり起業家としてはリスキーなところが楽しくて、僕はそこにやりがいを見出しています」
ーーリスクを楽しむ。新たな価値観に触れた気がします。長期的なビジョンや夢はありますか。
「まずは先ほども話した”スポーツの夢の国”を完成させること。また、Ascendersをスポーツのあらゆる商いをする総合商社、スポーツ総合商社にするというのが目標です。自分自身に関しては、会社が大きくなってもプレーヤーでいたいかな。夢やビジョンを追う一因であれば、どのポジションでも構わない。ずっと、永遠に、起業家でいたいです」
【PROFILE】
橋本貴智
1991年生まれ。小学校から高校まで10年間バスケットボールをプレー。強豪・八王子高校ではキャプテンを務める。早稲田大学社会学部卒。2016年、Ascenders株式会社を創業。 一般社団法人JapanSportsHub 代表理事も務める。マンガとアニメが大好き。将来絶対やりたいことはパン屋さん。
設立年月 | 2016年06月 | |
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代表者 | 橋本貴智 | |
従業員数 | - | |
業務内容 | スポーツ人材事業
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