オンラインで繋ぐ心の健康。元アメフト選手のアイディアとは。

日本社会人アメリカンフットボール協会 今井善教

オンラインで繋ぐ心の健康。元アメフト選手のアイディアとは。

日本社会人アメリカンフットボール協会 今井善教

様々なスポーツの協会事務局がひしめき合う「ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア」。新国立競技場の目の前にあり、2019年に完成したばかりの真新しい施設です。そのビルのオープンスペースで爽やかな笑顔で取材に応えてくれたのは、日本社会人アメリカンフットボール協会、通称Xリーグの今井善教さん(39歳)。

アメリカンフットボールの日本一を決めるライスボウルで富士通フロンティアーズが初優勝を決めた時に主将も務めていた、元選手でもあります。今は事業部に所属して、愛するフットボールの普及のために奔走する毎日。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年は春シーズンの開幕が叶わなかったXリーグ。そんな中でXリーグが始めた様々なオンラインのコンテンツ。事業部メンバーで議論を重ね出てきたアイディアから始まったものだそう。一体どんな内容なのか、その奥にある思いも伺いました。

(取材・構成=荻野仁美)


ルール説明会にトーク番組…まず取り組んだのは、126人が一斉に行うオンラインラジオ体操。

――富士通フロンティアーズで主将も務められ、アメフトの選手であった今井さん。取材されるのは久しぶりですか。

今井:はい!引退してからは初めてになります。

ーーそれは光栄です!今日は選手としてではなくXリーグのスタッフという形でのインタビューになります。まずはこのコロナ禍で始められたオンラインの取組みについて伺いたいのですが。

今井:そうですね。4つありまして、オンラインラジオ体操、オンラインルール説明会、アメフトークスタンドというトーク番組、後、アメフトファンウォ-クというのも7月末から始めました。

ーーどれも気になる響き…!それぞれ具体的に教えてください。

今井:はい。この中で一番最初に取組み始めたのがオンラインラジオ体操。ZOOMを使って行うのですが、申し込みさえすれば誰でも参加出来て、選手も参加します。初日は12人程だったのですが、自粛期間中は最大で 126人の方が参加してくれました。好評だったので、その次に始めたのがルール説明会です。もともと昨シーズンから対面でのルール説明会をやっていたので、これもオンラインで出来るよねってなって。

ーーオンラインの講義みたいな感じですかね。先生は誰がやるんですか?

今井:講師は私です!選手時代に会社の人にアメフト見に来てくださいって言っても「アメフトってルール難しいよね」って言われることが多くて…。最近だと「ラグビーとどう違うんですか」とか(笑)。そこで始めた取組みなのですが、時間は50分で、これに来てもらえれば試合の流れがわかるって言うような内容で、0からしっかり説明します!

ーー元選手の今井さんに教えてもらえるのは貴重な機会ですね!3つ目のトーク番組も今井さんが出ているんでしょうか。

今井:私は補佐として出ています(笑)。最初は私と、協会の他の人間と2人でやっていたのですが、今はゲストという形で選手+Xリーグを支える方々(Xファミリー)を呼んでやっています。そこで選手の生き方とか考え方を話してもらったりして、参加者からは質問を受け付けてQ&A形式になっています。最後に始めたアメフトファンウォークは、それぞれが自分の近所を散歩しながらゴミ拾いをして、それをZOOMで繋いで互いに自分の街のいいところを紹介しあうっていう感じです。これも、もともと昨シーズンまで、試合の日に駅からスタジアムまでみんなで一緒に歩きながらゴミ拾いをしていて、それをオンラインにした形です。





スタートのきっかけは、心と身体の健康を大切にしたい思い。

ーーカレンダーを見るとビッシリとオンラインのイベントが毎日の様に入っていますが、そもそもアイディアはどこからきたのでしょうか。

今井:自粛期間中にプライベートで私の友人が主催するオンラインワークアウトに参加したんですよ。私のパパ友とかも一緒に。あ、これはいいなと思いました。

ーーラジオ体操にしたのは理由があったのですか。

今井:そのオンラインワークアウトにドクターの方も参加されていて、医療現場のその時の状況を聞かせて頂き、ワクチンがない中で健康でいる為には、自己免疫力を上げて病気にかからない身体作りが大切。それが社会を守る事にも繋がると聞いて。医療従事者の為に今できる事として、生活のリズムを整えて、適度な運動をする事が必要で、じゃあラジオ体操かなと。後、自粛すると1人になる。身体を動かそうっていうのもひとつだったんですけど、ファンと繋がって心も豊かになって、この期間をみんなで乗り越えて行けたらなっていう思いがありました。

ーーそれはすごくわかります!私も自粛期間中、オンライン上でも誰かと約束があると、それが生活の軸になっていて…誰かと繋がる大切さを身に染みて感じました。

今井:一人暮らしの方は特にそうですよね。あの時期、本当に人に会わなかったじゃないですか。だから画面越しでも誰かに会うって大事なこと。心の繋がり、人との繋がり、これも大切にしていかないと。





いつの間にか、誰かの生活になくてはならないものになっていた。

ーーオンラインイベントの参加者は、やはりもともとのアメフトファンが多いのでしょうか。

今井:もちろんそうゆう方もいらっしゃるんですけど、中にはXリーグを見たことない方もオンラインラジオ体操に参加してくれて。その方が興味を持ってれて、その後オンラインルール説明会を立ち上げた時にそちらにも参加してくれたんです。

ーー従来のファンの繋ぎ止めだけではなく、このコロナ禍で新たなファンを少数ながら増やす事に成功したんですね!

今井:何をもって成功は言えませんが、Xリーグが発足した当初から掲げている「社会に対してエクセレンスなリーグ」でいようとするところを表現できていればと思います。オンラインラジオ体操では、体操して終わり!ではなくて、深呼吸した後にアメフトークが始まるんです。

ーーアメフトーク?

今井:アメフトの魅力を伝えるスピーチです。ラジオ体操に参加してくれる選手やファンの方が担当してくれて、その人の目線での良さを語ってくれています。そのあと、ZOOMのブレイクアウトルームという機能を使って、参加者を4人づつくらいの小部屋に分けるんです。そこで「いいこと探し」という昨日あったいいことを、それぞれ報告しあう自己紹介タイムを設けて終了です。自粛中ってなかなかいい事って見つからなかったと思うのですが、些細ないい事を見つける習慣をつけようっていうのが発端で。どんな小さいことでもいいんです。ご飯がおいしかったー!とか、少しだけ外に出られたー!とか。

ーー先程の心の健康に繋がる部分ですね。

今井:参加している方から、先日メッセージをもらったんです。「家で 1人でYOUTUBEを見ながらラジオ体操しましたが、いつものみなさんがいないと面白くなかったです。」って。ちゃんと届いているんだ、必要となるものになってくれているんだと思うと嬉しかったですね。

ーーそれは素敵なお話!健康作りだったりオンラインの取組みにも社会貢献への思いを感じ取れます。

今井:Xリーグの大きな目的のひとつに、スポーツを通じたより良き社会の創造があります。そのために人の繋がりがとても重要。もともとXリーグの「X」は、クロッシングエックスとも言って、激しくぶつかり合うチーム、強さ、激しさ、闘志を表現したものですが、人と人とが繋がるっていう意味もあると思ってます。そういう場を作っていけたらなという思いがあります。





「究極のチームスポーツ」フットボールの魅力。

ーー現在、Xリーグの運営に携わって3年目の今井さん。選手時代から変わらず大切にしていることを教えてください。

今井:選手時代はチームに愛を持つってことを大切にしてきたので、今はリーグ全体に愛をもってやっています。今は私が運営するプレーヤーとして表に立ってやってますけど、いつか引退して次に引き継がなければならないので、その時までこのリーグを大切に育てて次に引き継ぎたいと思っています。もうひとつは、常に今よりもよくする、という事。 1日1日大切にして今日よりも明日、ちょっとでもよくする。一足飛びにはいかないので、ちょっとづつちょっとづつ…先代の思いを継いでやっていくという思いでやっています。

ーー繋いで、繋いで…なんだかアメフトに通ずるものがありますね!今井さんが思うアメフトの魅力ってどんなところでしょう。

今井:フットボールって究極のチームスポーツなんですよ。選手、スタッフ、マネージャー、分析するアナライジングコーチ、各ポジションにもコーチがいる。本当に色々な人が関わっていて、1チーム100人以上の組織になっていて、それぞれがその分野の専門性を持っている人たち。そういう人たちがひとつになってゴールを目指している。その競技性はすごく魅力かなと思います。究極の肉弾戦、至高の頭脳戦、そういうのを作り上げているのが周りにいるスタッフ。試合で1対1を見てももちろん面白いし、組織対組織を見ても楽しいですよ!

ーーすごい!聞いているだけでワクワクしてきました。最後に10月の開幕に向けて一言お願いします!

今井:本来なら秋の開幕は8月ですが、今年の開幕は10月24日です。Xリーグに関わる方々が、様々な環境の変化に力を合わせ開幕にむけて準備を進めた特別なシーズンになります。ファンの方も待ち遠しく思ってくださっていると思います。例年とは違うところが多々ありますが、この状況をXファミリー全員で乗り越え、未来に繋がるシーズンにしていきたいです!





【PROFILE】

今井善教(いまい・よしのり)

1981年2月14日生まれ。京都府出身。立命館宇治でアメフトを始め、立命館大学に進学。卒業後は富士通に入社し、富士通フロンティアーズで活躍。現役時代のポジションはDB(ディフェンスバック)。2017年に選手を引退し、富士通で働くが、Xリーグのリーグ編成改革に伴い、2018年8月からⅩリーグに出向。事業部副部長として手腕を発揮。趣味は読書とウォーキング。最近、読んだ本は「自己肯定感で子どもが伸びる」。

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