「先生」と呼ばれるホテルマンが仕掛け人 子どもが急成長するアウトドア教育とは

株式会社MEリゾート但馬 パークホテル白樺館支配人・森 恒介

「先生」と呼ばれるホテルマンが仕掛け人 子どもが急成長するアウトドア教育とは

株式会社MEリゾート但馬 パークホテル白樺館支配人・森 恒介

兵庫県の但馬地方にあるハチ高原。豊かな自然資源を有する当地で、MEリゾート但馬が手掛けるパークホテル白樺館の支配人を務めるのが森恒介さんです。年間を通じて楽しめる自然体験プログラムは、野外実習教育で利用する学校をはじめ、多くの利用者から好評を博しています。“非日常”を体験して急成長を遂げる子どもが多いのだとか。それを後押しする森さんのご経験と仕事の流儀。さらには自然豊かなハチ高原の魅力と、そこで今後成し遂げたいことについて語っていただきました。
(取材・執筆:小林 千絵、編集:伊藤 知裕、池田 翔太郎)

自然×教育 アルバイトから始まった“ドリームジョブ”

──まず、森さんがMEリゾート但馬に入社された経緯を教えてください。

私は最初は社員として入社したわけではなくて。専門学校生のときに、アルバイトとして働き始めたのがきっかけです。そのときは2週間程度のアルバイトだったんですが、「社員になったらこういう仕事があるんだよ」ということを教えてもらって。そこで、卒業してからまず1年間アルバイトとしてフルタイムで働かせてもらって、その後、社員として登用してもらいました。

──アルバイトとしてMEリゾート但馬で働いていたということですが、そもそもアウトドアやリゾートなどに関連するお仕事をしたいと思っていたのでしょうか?

はい。小学生の頃から、こういうキャンプやアウトドアの行事によく参加していて。良くしてくれたのが、凄く思い出に残っているんですよ。何でも自分たちのことを聞き容れてくれて、難しいことでも楽しいように考えてやらせてくれて、というのが凄く印象に残っているので。そのときの先生たちを見て「自分もこういうことをやってみたいな」と思って、教育関係の専門学校に入りました。だからこの会社を見つけたときは、これが仕事にできるんだったら一番いいなと思いました。夢叶って、やりたかった仕事にずっと就いているという感じです。

──現在はMEリゾート但馬の支配人でいらっしゃいますが、入社後は具体的にはどのような業務をされてきたのでしょうか?

アルバイトのときはホテルの清掃や食事の準備などをメインでやっていました。その後、社員になってからは、学校などの団体のお客様担当にシフトチェンジしていきました。野外実習のプログラム内容を考えたり、スケジュールを組んだり。とはいえ、パークホテル白樺館はあくまでもホテル。宿泊業務が1番のメイン業務です。だから清掃もありますし、食事の準備もありますし、フロント業務などもあります。そのうえで、野外実習のプログラムを考えたり、営業をしたり。弊社では、業務内容でセクションをわけていないんです、例えば「私はフロントです」という人はいない。ホテル業務も各自が行うことで、来ていただいたお客様を案内もしやすくなりますし、例えばプログラムを考える上での時間配分だったり動線だったりも考えやすくなります。

自然が相手でも…「“出来ません”は絶対言いません」

──なるほど。ではここからは、貴社のメイン業務でもある野外実習について教えてください。開催するにあたっては具体的にどのような作業を経て実施まで進むのでしょうか?

学校や旅行会社さんから「宿泊を通してこういう教育関係のプログラムを遂行したいのですが」という問い合わせをいただいて、内容を詰めて当日を迎えるというのが一番多いパターン。問い合わせをいただく形ではないパターンとしては、こちらから学校や旅行会社に提案して、予算などを立ててもらえるように「こういうことができますよ」と営業をさせてもらうというものもあります。

──当日はどういうことを行うのでしょうか?

ほぼ全てです。生徒さんを迎え入れて、お部屋へご案内させてもらったあとは、先生からほぼ丸投げ(笑)。例えば野外でプログラムをするなら、インストラクターになって子どもたちに指導して、その間に別のスタッフが夕食の準備をして、夕食の間に、また別のスタッフはキャンプファイアーの準備をして……という感じです。

──プログラムは多岐にわたると思うのですが、一番ノーマルな形のプログラムはどのようなものになるのでしょうか?

1泊2日の小学生のプランですと、だいたいお昼頃に到着して。午後から我々のホテルの前にある森の中のアスレチックに行ったり、登山をしたり、川でのプログラムを楽しんでいただいて。夕方にホテルに戻ってきて、お風呂に入ってもらって、ごはんを食べて、夜はキャンプファイアーや星空の観察をして、その日は終わります。翌日は、飯盒炊爨でお昼ごはんを作って帰る、というのがオーソドックスなプランですね。

──そういったお仕事の中で、森さんがこれまでで特に印象的だったお仕事や出来事を挙げるなら?

警報級の台風が来たり、大雨が降ったりということはどうしても起きるんですよ。自然の中での実習なので。そういうイレギュラーなときこそ、私たちの腕の見せ所でもあって。安全面を第一に考えたうえで、「では体育館でこういうことをしませんか?」と、いくつか代替案を提案させてもらう。そこで先生の思いにハマったプランが提案できたときは達成感を感じますね。

──自然相手だからこそ、その柔軟性も必要になると。

はい。中でも私が特に意識しているのは「できません」と絶対に言わないこと。イレギュラーな出来事に限らず、プランを相談している中でも「こういうことってできますか?」と提案されることはあって。どんなに難しい内容でも、「できません」と言わずに、どうしたら実現できるかということを必ず考えます。

──そういった提案の中で、特に無理難題だなと感じたものではどういったものがありましたか?

100人の生徒がいて、20人しか入れない施設で100人に体験してもらいたいと。さすがにそれは物理的に無理ですよね。でも「できません」と私は言いたくないので、「100人が同時に入ることは無理ですが、20人ずつ5つのグループに分けて、残りの4つのグループはその間、こういうことをしませんか」と、提案まで先にしました。そうして快諾してもらえたということがありました。「できません」と言わないのは、自分自身の経験から生まれたものですね。自分は旅行に行くのが好きなのですが、その先で「できません」と言われたら嫌だなと思ったら、自然とそういう考えになっていきました。

「全部教えない」プログラムで成長を間近で見られる達成感

──その難題にも答えていくことが、やりがいにもつながっているんでしょうしね。

そうですね。私たちはスタッフに対して「絶対にこうしてください」というマニュアルを作っていないんですよ。最終地点のゴールは決まっていますが、その間はどういう過ごし方をしてもいい。だから自分で考えたことが形にできる仕事なんです。


──そうなんですね。てっきり、基本の形があって、それにはまらないときや、イレギュラーなときだけ、別の形を提案するのかと思っていました。むしろ逆なんですね。

もちろん最初はレールを引いてあげますが、ずっとそのレールに乗っている必要はない。やりながらどんどん自分のやり方を見つけていって、それぞれが自分なりに変えていっています。考えざるを得ないから、考えない人にはしんどいと思います。

──ご自身の経験から教育関係の専門学校に進まれたとおっしゃっていましたが、お子さんとの関わりでうれしかったことや面白かったことはありますか?

子どもって成長がすごく早いんですよ。昨日できてなかったことが今日できていたり、あとは先生から「学校ではあんまり前に出ない」と言われていた子が、すごくしゃべっていたり。そういう成長を間近で見られるのがすごくうれしいですね。先生も巻き込んで「先生、見てください。めっちゃできていますよ」と言ったら、先生も喜んで「来てよかったです」と言ってくれたりすると、すごくうれしいですね。

──先ほど「できません」と言わないようにしているとおっしゃっていましたが、森さんはこのMEリゾート但馬での野外実習を経て、子どもたちにはどのようなことを学んでほしいと考えて、プログラムを組んでいたのでしょうか?

私は「全部を教えないようにしよう」と思ってプログラムを組んでいました。今の子どもは昔の子どもとちょっと違うと思っていて。言ったことに対してはすごく真面目に取り組んでくれるけど、言わなかったことはやらない。チャレンジしようとしない子が増えているように感じて。全部説明してしまうと、その通りにやって終わってしまうので、考える余地を残してあげたいなって。そういう考える力や自分から学ぼうとする力を身につけるために、MEリゾート但馬の野外教育があると思っているんです。それが企業理念「自然と協和し豊かな心を創造する」にも通ずるのかなと、私は考えています。

──学校の先生、みたいな心持ちでいないとできないお仕事ですね。

学校ではないけど、こういった場所の「先生」というイメージで学校から問い合わせしてきてくれる。受け入れて「勝手に何かしてください。食事だけ準備しておきます」ではなくて、自分たちが出来ることを含めて1泊2日で何ができるか考えていきましょうと。それが理念の一つ「ホスピタリティでお客様の感動を創造する」にも繋がっていきます。

野外教育にスポーツ経験が必ず活きる理由とは

──今回、スポジョバで募集をしているということで、スポーツ経験者や、スポーツ・アウトドア好きな人をターゲットにした求人かと思います。そのような方々に、どのような活躍を期待していますか? 

スポーツをやっている人には、自分の中で何かをやり遂げる力を持っていたり、外には出さなくても内に秘めているものがちゃんとある人が多いと感じていて。あとは“自分一人でやっているわけではない”ということを理解している人が多いように思うんです。誰かに助けてもらったり、誰かに教えてもらったりという経験があるはずなので。そこは、私たちのやっていることに近いのかなって。

──実際、スポーツ経験者やアウトドア好きな方で、現在貴社で活躍されている方はいらっしゃいますか?

スキーをやっている人は割と多いですね。パークホテル白樺館があるハチ高原は、冬にはスキー場になるので、スキーのインストラクター業務もあって。もしスキーが得意な方だったら、その方にはメインでインストラクター業務についてもらうとか、そういうこともできます。山登りが好きな人は登山のプログラムで活かして欲しいと。いろいろな知識を持っていると、ただみんなを山に連れて行くだけじゃなくて、いろいろ話しながら登れますし。

──また、貴社では女性も活躍していると伺いました。

そうなんです。男性のほうが多いですが、女性の目線が入ると、やはり女性の先生から「助かりました」と言ってもらえることが多かったりして。子どもにとっても、特に中高生になると「男の人には言いづらいな」という部分もある。そういうときにも女性のスタッフがいるとすごく助かります。先生の中にも、女性スタッフのほうが話しやすいという方もいらっしゃいますし。例えば実習で使う棚を設置しようという話になったときに、女性スタッフが「その高さだと女性には使いづらい」と指摘してくれて、誰でも使いやすい高さの棚を設置することができたということもありました。力仕事もあるので、お互いにフォローしながら、女性も男性も働きやすい環境にしていきたいなと思っています。

まだまだ未開拓 ハチ高原を盛り上げるこれからの“仕掛け”

──従業員にとっても働きやすい環境づくりを進めているということですが、会社の今後のビジョンとしてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか?

ハチ高原のなかに、パークホテル白樺館を含めて事業所が3つあるんですね。2つがホテルで、もう一つがキャンプ場。その3つの事業所で力をあわせてハチ高原をもっと盛りあげていきたいと考えています。ハチ高原って、街からは離れた場所にあって、冬はスキー場というイメージがあって、グリーンシーズンは何をしているのかが一般の方にはなかなか知られていない。ホテルの周りにはまだまだ未開拓の森があるんですよ。自然の中で遊べる場所を作れるのが凄い強みです。スタッフ同士でアイデアが出やすい環境なので、例えば森の中を走り抜けられるバギーのコースを作ったり。新しくどういったものを作ったら喜んでもらえるのかな、というのを考えて作っています。実際にお客さんがそれで遊ぶことをメインで来てくれて、楽しんでもらえてるのは凄く嬉しかった。今は学校をはじめとする団体さんがメインではありますが、今後、一般の方も喜んでもらえるようなものを作り上げていくことができれば、一年中人が集まるようになる。それが企業理念にもある「持続可能な中山間地域を創造する」ということだと考えています。

──では、これからは一般の方も視野に入れた施策が?

始まるかもしれません。今、そのためにキャンプ場を作っています。例えば家族でキャンプ場に来てくれたとしても、何もなくてひたすら焚き火をするしかなかったりするわけです。でも私たちは団体に向けたプログラムを持っているので、お父さん・お母さんにはのんびりお昼からビールでも飲んでいてもらって、その間にお子さんは私たちのプログラムに参加するみたいなこともできる。

──すごく素敵ですね。

もちろんお父さんお母さんも一緒にプログラムに参加してもらってもいいですし。ただキャンプ場やホテルを提供するだけでなく、そこでの過ごし方も提供・案内できるのが私たちの強み。それを活かして、これからもハチ高原を盛り上げていきたいと思っています。

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【PROFILE】
森 恒介(もり・こうすけ)
パークホテル白樺館の支配人。最近は時間ができたら淡路島に旅行へ行く。行くたびに変化があり新たな気付きを得られて、仕事に活かせる。

第1位

第2位

第3位

第4位

第5位

設立年月 2016年10月
代表者 一ノ本 智毅
従業員数 120名
業務内容

・ホテル事業
・野外教育事業
・スノーリゾート事業
・ゴルフ事業
・キャンプ事業
・アドベンチャーパーク建設事業

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