「寝たきりを日本から無くす」
そんな理念のもと、運動に特化したデイサービスを提供し、高齢者の自立を支えるリタポンテ株式会社。 利用者さんに寄り添い、体力づくりや身体機能の回復・維持をサポートする取り組みは、高齢化が進む日本で注目されています。今回は介護予防を主な目的とする同社でトレーナーとして活躍する森谷絢太さんと木村優太さんのお二人に、この仕事を選んだ理由や意義についてお話を伺いました。
(取材・執筆:齊藤 僚子 、編集:伊藤 知裕、池田 翔太郎)
▼同社取締役・上村理絵さんのインタビューはコチラ
今年で入社から10年目を迎えるという森谷さんと、5年目の木村さん。ご自身のこれまでのキャリアやスポーツ経験についてお伺いしました。
森谷 僕は体育大学を卒業してから、小学校の非常勤職員として働いていました。大学時代はライフセービングをしていて、卒業後も職員として働きながらスポーツも続けていました。どちらかというと、スポーツをしながら生活できる程度にお給料をいただく、という感じでした。 小学校では特別支援学級を担当し、4年間勤めました。その後半年間、本気でスポーツ一本でやってみようと思い、トレーニングに打ち込み、さまざまな大会にも出場していました。また陸上競技も並行して取り組んでいて、ライフセービングの競技の中で90mの砂浜を走る種目で良い成績を出せたこともあり、100m走に挑戦していました。もう一度きちんと仕事もしたいという事情もあり、自分の経験を活かせるかなと、リタポンテに就職しました。
木村 僕は4歳頃からレスリングを始めて、大学のときに競技を引退しました。そこからは全くやらずに……レスリングが嫌いだったので(笑)。
卒業後はインテリア用品や壁紙などを扱う会社の営業職に就きました。これまでレスリングも運動も嫌いだと思いながら続けていたので、全く違うことをやってみたかったんです。人と話すことはあまり得意ではなかったですが、やってみたら変わるかなと思って営業職を選びました。ですが実際は人と話す機会も少なく、誰もいない倉庫に納品することもあり、思っていたイメージとは違いました。自分ではそれほどの成績ではないと思っていたレスリングでしたが、一緒に働いていた仲間から『その経験を活かした方がいい』と、よく言われていたんです。トレーニングの知識も少しはありましたし、体を動かすフィットネス関係の仕事を探していたところ、リタポンテと出合いました。
リタポンテに入る前は、別の仕事をしていたというお二人。“なぜリタポンテで”トレーナーを目指したのか? 森谷さんはその理由をこのように語ります。
森谷 実は最初からトレーナーをやろうと思っていたわけではないんです。ただ、木村くんが言ったように自分のトレーニング経験から、入りやすかったというのはありますね。それともう一つ、「介護」という言葉が、無くなればいいと思うくらい嫌いだったんです。だから、リタポンテの『日本から寝たきりを無くす』という理念には共感しました。寝たきりの人と、それを支える人たちの介護を通じたつながりってあるかもしれないけれど、どちらも無いに越したことはない。(介護が無くなれば)もっと楽しい生活が送れるかもしれないなって思ったんです。
また森谷さんは、自身の経験を通してこれまで敬遠していた介護という言葉。そして支援への考え方が徐々に変わったと話します。
森谷 特別支援学級で働いていた経験も、この仕事を選ぶきっかけのひとつだったかもしれません。手助けが必要な子どもたちをサポートするのは、当時の自分には初めてのことで『こういう世界もあるんだな』と感じていました。でも実際に接してみると、コミュニケーションも取れるし、気が合う子もいました。特別支援学級はちょっと敬遠されがちなのかなと、勝手に思い込んでいた部分もありましたが、そんな思いは払拭できたのでこういった経験をして本当に良かったです。
利用者さんの多くが高齢者であることを踏まえると、接し方や配慮すべき点も多くなります。利用者さんとどのように向き合い、また利用者さん側にも主体的に関わってもらうためにどんな工夫をしているのでしょうか。
木村 利用者さんの中には、要支援の方と、もう少し重度な要介護の方がいらっしゃいます。
要支援の方と接するときは本当に“トレーナー”として向き合い、言葉遣いにも気をつけながら体の不調や困っている部分にアドバイスします。
一方で要介護の方は、僕のことを孫のように見てくださっている場合も多く、そんな関係性で接することもあります。また、病気で麻痺が残ってしまったり、一度自信を失ってしまった人もいらっしゃるので、どうしてもモチベーションに波があります。なのでこちらがずっと“トレーナー”として接し続けると、嫌になってしまうこともあるんじゃないか……と思うんです。まずはこの場所を利用者さんにとって居心地のいい空間にして、それからトレーニングに対するやる気を持ってもらえたらいいなと思っています。
利用者さんの気持ちを大切にしている木村さん。日々の業務の中で、利用者さんの嬉しい変化や思わず笑顔になるような瞬間も多くあるといいます。そんなエピソードを次のように話します。
木村 だんだんと体が動くようになってきた方が、『私、前はこれはできなかったよね?今はできるようになったのよ!』と嬉しそうに自慢してくれたり、ある利用者さんのお宅に、僕ではないスタッフが迎えに行ったときに、店舗に着いてから「今日お休みかと思ったよ」と言ってくれることもあります。そういう瞬間に『自分の存在はちゃんと意味があるんだな』と実感できて、とても嬉しいですね。
利用者さんと接する中で嬉しい変化を感じる一方、苦労することもあるというお二人。時には、指導やトレーニングの内容に納得してもらうのが難しい場面もあると話します。
森谷 一番難しいのは、利用者さんのキャラクターですね。頑固な方もいらっしゃいます(笑)。目的を持ってもらい、それに向かって僕たちも気持ちを上げていかなくてはならないのですが、ブレずにやってもらうのは簡単ではありません。お互いに落としどころを見つけながら進めることもあります。
木村 高齢の方が相手なので、自分の感覚だけで考えてはいけないなと思っています。利用者さんが『キツイ』と言ったときに、『もう少し頑張れるキツイ』なのか『本当に無理なキツイ』なのか。『大丈夫』と言っていても『余裕がある大丈夫』なのか『無理している大丈夫』なのか……表情から読み取るように注意していますが、そういう微妙な違いを汲み取るのは難しいです。でも、そこをプラスに考えられるようになれたら、仕事が面白くなってきました。
リタポンテのトレーナーには、一般的なジム以上に幅広い知識や繊細な対応が求められます。多くのことに気を配りながら業務に取り組む姿から、その様子がよく伝わってきます。そんなお二人は、自身のスポーツ経験も現在の仕事に活かされていると話します。
木村 この仕事が面白いなと感じるようになったのは、レスリング経験のおかげもあると思います。レスリングは対人競技で、試合までの間に相手の傾向や考え方を予想しながら戦術を考えていきます。この考え方が今の仕事にも役立っています。例えば、ある利用者さんがトレーニングをする様子を想像して、さらに『こんなメニューを課したらキツくて嫌がるだろうな』と予測し、実践してみます。思った通り『キツイ』と言われても、終わった後には 『やって良かった!』と言ってもらえたりします。
また、休憩中に歩きが不安定だったり、飲み物を置いたあとに動こうとする様子を見ると『トイレに行かれるのかな』と行動を予測できたりします。
今では自然とわかるようになりましたが、最初のうちは自分に置き換えて考えることで、相手の気持ちや行動を予測していました。そういった考え方などは競技経験から仕事に活かすことができているなと感じます。
森谷 全体を見ることの多かった競技経験が、仕事に活かされていると思います。ライフセーバーは、海開きの期間、監視業務を住み込みで行います。20人くらいで共同生活をして、朝から晩まで大家族のように仲間と過ごします。また、業務のシフトも自分たちで組みます。海でも全体を見て、安全を確保する。こうした全体を意識して動く経験はすごく活かされています。実際にトレーニング中に利用者さんが『何か違う動きをしているな』と気づくことがあります。本当にアクシデントが起きている場合もあるので、広い視野を持つことは大事だと思います。
木村 スタッフ同士のやり取りも重要です。例えば利用者さんから『昨日転んでしまい痛いところがある』という話を聞いたら、自分だけで抱えていても意味がありません。情報を共有するコミュニケーション能力は、体育系の人は自然にできるような気がします。
森谷 確かにチームスポーツをやっていた人は、情報を伝える大切さを経験してきたと思います。個人競技の人も目標に向かって努力してきた情熱や経験値は、十分に活かせると思います。
多くのやりがいを感じられるリタポンテのトレーナーですが、未経験からでも指導法の習得や資格取得を支える体制が整っています。実際にお二人も未経験で入社し、介護福祉士の資格を取得。スキルアップを実感できることも、この仕事の魅力の一つです。
森谷 資格はもちろんあれば良いとは思いますが、それよりも必要なのは病気のことや体の基礎・基本、機能、解剖学、筋肉や骨のことなどの知識です。入社後でも貪欲に学んで吸収できれば、いくらでも活躍できる職場です。知識があるだけで武器になるので、そこから会話も広がっていきます。
木村 ここで働くメリットの1つが、色々な人と関わることができることです。自分の親の介護が必要になった時に活かせる知識が仕事で学べる。人生を通して見て、この仕事って大切だなと思います。介護は無くなって欲しいけど、無くならない仕事だと思います。
森谷 寝たきりを「防ぐ」ということを考えるのはもっと出来ます。なってしまった時の対処法も学べるけど、ならないために日頃どう過ごすかも大切です。
お二人の朗らかで自信に満ちた姿からは、仕事で得たやりがいや学びを糧に、さらなる成長を目指す思いが伝わってきます。最後に、これからリタポンテでどんな展望を描いているのかを伺いました。
森谷 高齢社会が進む中で、日本全体がこの課題に目を向けているかというと、一部に留まっていると感じています。ここを拠点に全国に向けて意識を広めていけたら。また、この地域だけでもリタポンテが「困ったらここに行こう」と思ってもらえるような、地域に開かれた存在になれたらいいなと思っています。そしてこの社会の中で今できること、10年後、20年後に状況が悪化しないようにするためにはどう対処していくかを発信していきたいです。
木村 僕はトレーナーとしてまだまだだと思っているので、もっと体に関する知識を増やし、説得力のあるトレーナーになりたいです。リタポンテの中から、もっと知識や情報の発信をしていきたいです。最近、祖父の介護が必要になった際に、自分に知識があったことでさまざまなサービスを利用することができました。しかし、こうした情報を知らない人はまだまだ多い。もっと早く知っていれば、リタポンテのようなところでリハビリを受け、寝たきりにならずに済んだ方もいたのではないか。だからこそ、こうした情報を広めていきたいと考えています。
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【PROFILE】
森谷 絢太(もりや・けんた)
家に帰ると8歳の娘と、6歳と3歳の息子を持つお父さん。 「仕事と育児を両立させながら、家族との時間をいかに楽しく過ごすかを大切にしています。」
木村 優太(きむら・ゆうた)
休みの日はランニングでリフレッシュ。走った後は「ひとりで居酒屋で飲むのが好きで、走った後はその分だけしこたま飲むのが最高です!」
設立年月 | 1997年11月 | |
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代表者 | 神戸 利文 | |
従業員数 | 17名 | |
業務内容 | 介護保険事業・その他 |
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