公務員志望の未経験者から、6歳からの競馬好きまで。 多様な経緯で集まった職員たちが語る「競馬場の仕事」

一般社団法人 関東地方公営競馬協議会 伊藤 龍成、本橋 航、小野里 昌紀、齋藤 雅揮

公務員志望の未経験者から、6歳からの競馬好きまで。 多様な経緯で集まった職員たちが語る「競馬場の仕事」

一般社団法人 関東地方公営競馬協議会 伊藤 龍成、本橋 航、小野里 昌紀、齋藤 雅揮

南関東にある浦和、船橋、大井、川崎の4つの地方競馬場の運営サポートを行う「一般社団法人 関東地方公営競馬協議会」。土日中心にレースが行われる中央競馬に対し、南関東4競馬場では平日を中心にレースが行われる。

そんな関東地方公営競馬協議会での業務内容は多岐にわたる。「競馬」に携わる仕事とは一体どういうものなのか。そして働く中で、どのような魅力を感じているのか。

お客様や関係者の「警備業務」をメインに働く伊藤さんと本橋さん、レースの補助を行う「競走業務」で働く小野里さんと斎藤さんの、笑顔溢れる4名にお話を伺った。(以下、敬称略)

(取材・執筆:伊藤千梅、編集:伊藤知裕、中田初葵)

入会までのさまざまな背景

―――本日はよろしくお願いいたします。まず始めに、皆さんがこの仕事についたきっかけを教えてもらってもいいですか?

伊藤:実は、私はこの会社に入るまで競馬のことを一切知りませんでした。元々は公務員志望で、一般企業も見始めたときに求人サイトで見つけただけで。でも、それまで全く関わったことのないジャンルに興味を持ったことと、福利厚生の良さから入会しようと思いました。

本橋:私は高校の時に野球をやっていたので、多少運動ができることを役立てられたらと、警察の試験を受けていました。それがあまりうまくいっていなかったときに、ここの求人を見つけたんです。規模は小さくなりますが、警察と同じようなことができるのかなと思い入会を決めました。

小野里:実は私も2人と一緒で、元は公務員志望でした。その後方向転換をして、一般企業からいくつか内定をもらったのですが、正直、人とコミュニケーションを取ることが苦手で。営業など外に出ていく仕事ではない、この会社を選びました。あとは、父が競馬好きだったので、仕事をしていく中で、何か父と話すきっかけになるかなと思ったのも入会の決め手です。

―――皆さん始めは公務員志望だったのですね。齋藤さんはいかがですか?

齋藤:自分は、小学校1年生の時にたまたまテレビでレースを見たのが、競馬を知ったきっかけです。そのときに「馬と人がかっこいいな」と衝撃を受けて、それから競馬のことはずっと好きです。

自分は他の3人と違い、転職でこの会社にきました。前の職場は4年半、仙台の土木会社で働いていました。そこをやめて次の職場を探しているタイミングで、大井競馬場にいる調教師の福田真広さんが、ここの会社の職員募集をSNSで拡散していたんです。それを見つけたのがきっかけでした。

小野里:福田さんのSNSからというのは知らなかったです。

齋藤:ファンの時からSNSをフォローしていて、たまたま流れてきたのを見ました。それを見ていなかったらこの会社に入っていないので、毎回会うたびに「ありがとうございます」と心の中で思っていますね。

競馬場内外の問題に対応する警備業務

―――御社の業務には「警備業務」と「競走業務」があるそうですね。先に「警備業務」のお2人に、具体的にどのようなお仕事をされているのかを伺ってもよいでしょうか?

本橋:ざっくり言うと、競馬場の中と外周の警備を行っています。お客様が入ってくる入場門や、競馬場の建物の中に立つこと。また施設を巡回して、何か異常がないか、お客様同士でトラブルになっていないかを見回って確認しています。

お酒に酔った方も来られるので、1人で対応しきれない時には無線機で応援を呼び、複数人で対応することもありますね。さらに大きなトラブルに発展すると、警察を要請して、警察の方と一緒に仕事をすることもあります。

―――そういった問題は、どのくらいの頻度であるんですか?

伊藤:基本的には1日12回ほどレースを行うのですが、1日に1回くらいは何かしらトラブルが起きますね。1日平和ということの方が珍しいです。

本橋:平日に5日間レースがあったら、1回ぐらいは警察や救急車を呼ぶようなことが起きます。重なると、一気に複数台がくることもありますね。

―――日々の業務でトラブルが頻発する中で、仕事をしていてうれしいと感じる瞬間はどんなときでしょうか?

伊藤:場内でお客様の対応をしていると、例えば財布や携帯などの大事なものを失くされることもあります。その時に私たちがすぐ連絡を取り合って見つけてあげると、嬉しそうな、安心した表情を見せてくれるんです。そういう時はやりがいを感じますし「よかったな」と思いますね。

本橋:そうですね。何かお客さんの対応をした時に「ありがとう」と言ってもらえるだけで、十分です。

―――直接お客様と関わる仕事だからこそ、感謝を直で受け取れることがやりがいに繋がるのですね。

お客様に見えない部分でレースを支える競走業務

―――次に「競走業務」のお2人に、仕事内容も伺ってもよいでしょうか?

小野里:競走業務の仕事は細かく分類されています。入会したときは「整馬」と言って、レース前に馬が枠の中に入るお手伝いをする業務を行います。少し経つと「馬場管理業務」や「検量業務」といった、専門的な部分も含めた業務を行うことが多いです。自分は1年目から、騎手の体重を測り、負担重量を合わせて情報を管理する検量を行っています。

齋藤:自分は最初に入ったときから、馬場管理をメインでやっていました。この業務は、主に怪我をした馬と人の救助などを行います。また、レース中には鞭などを落としがちなので、レースが終わって、全馬が引き上げてきたタイミングで、落し物を取りに行くこともあります。

小野里:馬場管理の中には、競走馬の「馬体照合」などもありますね。競馬場に来た馬が、本当にその馬かどうか、情報の照らし合わせを行います。あとは調教師の方がその場にいるかや、馬を引いてきた厩務員さんが本当にその人かどうかという確認作業もあります。

―――業務内容はさまざまなのですね。その中で特に大変なことはありますか?

小野里:1年目は全くの未経験で、馬に関する知識もないまま入会したので、馬との距離感などがわからなかったのは大変でした。その他にも、整馬の際に使う道具の使い方や管理、騎手の顔と名前を一致させるなど、覚える作業が1番大変でしたね。

齋藤:馬の救助に行く時は、大体骨が折れていたりするので、その様子を見る時は心苦しいですね。あと馬は500㎏ぐらいあるので、怪我をした状態の馬を車に乗せないといけないのは、大変だし辛いなと感じます。

―――逆に、うれしかったことなどもうかがっていいですか?

齋藤:自分は元々競馬が好きなので、知っている馬を近くで見られた時は、ものすごく嬉しいです。あとは知っている騎手に対して、仕事中に確認などで直接声をかける機会もあるので、そのときも密かにうれしいですね。

小野里:自分はその日1日が、特に問題なく終われることですかね。そこでやっと肩の力が抜けます。1日問題なく終われることが、1番、自分にとっては嬉しいことです。

競馬場で働くからこそ感じられるもの

―――競馬の面白さというのは、どのようなときに感じますか?

小野里:例えば、母馬が優勝したレースで、その子どもも勝って母子制覇をするときなど、血のつながりというのは競馬ならではの楽しみ方なのかなと思います。

齋藤:個人的な話でいうと、以前中央競馬で馬券を買ったときに、すごくいい思いをさせてもらった牝馬がいたんです。そしたらこの前仕事しているときに、その馬の娘を照合することになったときは、感慨深かったですね。

―――血のつながりを感じられるのは、競馬特有の魅力ですね。他に、競馬場で仕事をしていて感じる競馬の魅力などはありますか?

齋藤:ファン目線で見るときよりも、実際に仕事として内側に入ってからの方が、1頭の馬に関わっている人が多いことを知りました。元を辿っていくと、牧場の人たちがいて、競馬場にきてからは調教師さんなど、1頭の馬に何十人もの人が関わっています。たくさんの人たちが試行錯誤した結果を、僕たちはレースという場で見ているので。そういう繋がりはすごいなと思いますね。

―――確かにそれは、競馬場で働いているからこそ感じられることかもしれませんね。

小野里:他にも、日常で馬と触れ合うことはなかなかないでしょうし、騎手と関わることもほとんどできないと思うんですよ。そういった内部の仕事をしていて、普段関わることができない馬や人と一緒に仕事ができるのも、この仕事の良いところの一つではないかなと思います。

伊藤:警備でも、競馬場で大きいイベントをするときには、有名な芸能人の方が来ることがあるんですね。その人たちのアテンドをするときなどは間近で会えるので魅力の一つだと思います。

本橋:また、警備をしているときにお客様の方を見ていると、騎手や馬の追っかけの方が、たくさん写真を撮っているんですね。その応援している騎手や馬が勝って、お客様が喜んでいる姿を見られるのはいいなと思います。

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※今回座談会に参加してくださった関東地方公営競馬協議会の皆様。左から齋藤(さいとう)さん、小野里(おのざと)さん、伊藤(いとう)さん、本橋(もとはし)さん

【PROFILE】伊藤 龍成(いとう たつなり)

警備業務担当。入会4年目。メインは警備で働きながら、2年目からは競走の業務にも携わっている。元は公務員志望。入会前、競馬はギャンブルで怖いイメージを持っていたが、入社後それだけでない新たな魅力を知った。

【PROFILE】本橋 航(もとはし わたる)

警備業務担当。入会5年目。メインは警備で働きながら、今年から競走の業務にも携わっている。元は警察官志望。入会前、競馬は酔っ払いのおじいさんばかりだと思っていたが、入会後は意外と子ども連れや女性も多いと感じている。

【PROFILE】小野里 昌紀(おのざと まさき)

競走業務担当。7年目。競走業務の中でも発走業務、検量業務、馬場管理業務と、決勝審判業務など多くの業務を経験。元は公務員志望。入社の決め手は、営業職以外がよかったことと、父が競馬好きで話題ができると考えたため。

【PROFILE】齋藤 雅揮(さいとう まさき)

競走業務担当。3年目。競走業務の中では、発走業務、検体業務、馬場管理業務を経験。小学校1年生で競馬と出会い、働いていた土木会社を退職後に入会。きっかけは、調教師の福田真広さんが、会社の職員募集をSNSで拡散していたこと。

▶▶【本編】「ギャンブル」から覆された競馬のイメージ 競馬場で働く中で知った、勝敗以外の視点。

第1位

第2位

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設立年月 1951年08月
代表者 川﨑泰彦
従業員数 115人
業務内容

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