南関東にある浦和、船橋、大井、川崎の4つの地方競馬場の運営サポートを行う「一般社団法人 関東地方公営競馬協議会」。土日中心にレースが行われる中央競馬に対し、南関東4競馬場では平日を中心にレースが行われる。
そんな関東地方公営競馬協議会での業務内容は多岐にわたる。「競馬」に携わる仕事とは一体どういうものなのか。そして働く中で、どのような魅力を感じているのか。
お客様や関係者の「警備業務」をメインに働く伊藤さんと本橋さん、レースの補助を行う「競走業務」で働く小野里さんと斎藤さんの、笑顔溢れる4名にお話を伺った。(以下、敬称略)
(取材・執筆:伊藤千梅、編集:伊藤知裕、中田初葵)
―――関東地方公営競馬協議会で働く前、競馬と全く関わったことのなかった警備のお2人は、競馬に対してどのようなイメージを持たれていましたか?
伊藤:僕の中での勝手なイメージだったんですけど「ただのギャンブル」だと思っていて、怖いイメージがありました。でも実際には全くそんなことはなかったですね。
本橋:私も同じように、酒に酔った人がたくさんいると思っていたけれど、入ってみたら、家族連れなどもたくさんいました。
伊藤:最近だと女性だけで来ている方もいますね。例えば、大井競馬場などでは、ファミリー層向けのイベントも行っています。仮面ライダーショーを開催したり、バーベキュー会場があったり。割とテーマパークに近いような感じになってきていて「競馬だけ」ではないもので客層を増やしているという風に感じます。
―――元々持っていたマイナスなイメージが、働いてみて覆されたのですね。逆に、齋藤さんは元から競馬がお好きだったということですが、働いて新たに知ったことなどはありますか?
齋藤:普段の大人しくて可愛らしい状態から、だんだんとレースに向かっていく姿になるというのは、外からはわからないことなので、働いているからこそ知ることのできる貴重な部分だと思います。
また、これまでは正直「勝つか負けるか」という視点でしか競馬を見ていなかったんです。でも、馬をお世話する厩務員さんたちの馬への接し方を見ていると、本当に、人と関わるくらいの熱意を持って接しています。お話を聞いても「この馬は普段こういう癖があるよ」とか「こんなに可愛いんだよ」という話をしてくださるんです。
だからこそ、厩務員さんたちがレース前に「とにかく無事に走り切ってくれ」という思いで送り出しているというのを目の当たりにして、それがすごく新鮮でした。もっと勝負にこだわる世界だと思っていたので衝撃を受けましたし、そういった馬への思いがあるのは素敵だなと感じました。
―――この取材中も活気があって、皆さんとても仲が良いですよね。社内の雰囲気もいいのかなと感じるのですが、働いている職員さんたちの関係性はいかがですか?
齋藤: 30代前半や、それよりも若い世代の職員が多いので、雰囲気も仲も良いと思います。特に競走には、生意気な職員が多いですね。いい意味で人の懐に入ってくるのが上手い人が多いんですよ。だから勤務中も和気あいあいとしています。でもメリハリもしっかりしている人が多いので、真面目な時は真面目に仕事をする、いい関係を築けているかなと思います。
伊藤:皆さん優しいですし、教え方が丁寧です。僕はまだ競走の仕事をするようになってから2年くらいしか経っていないですが、実際にいざゲートのところに入ると、最初はすごく怖いんですよ。馬は500㎏もあるし、レース前なので興奮していて、暴れているのを間近で見ると、どうしても恐怖が拭えない部分があったんです。
そういう時に、やり方を教えてもらうだけだと恐怖心は取れなかったと思います。でも教えて丸投げするのではなく、すぐそばにいてくれて、何かあった時にすぐ助けてくれるような教え方をしてくれたので、それがすごく心強かったですね。
―――オンとオフで切り替えられるいい関係が築けているのが伝わります。実際に今働いていて、どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?
齋藤:競馬の仕事は、前例がないアクシデントがほとんどなんですよ。聞いたことのないアクシデントが起こることが多いので、そういうことに対する「対応力」を持った人が向いているのかなという風に思います。
小野里:そうですね。いろんなトラブルがいつ起こるかわからないので、冷静に、臨機応変に対応できる人がいいですね。あとは真面目な人だったら、仕事はできると思います。
本橋:警備の方は、お客さんと関わることや、主催者さんと話す機会が多いので、ある程度コミュニケーションが取れる方のほうがやりやすいのかなとは思います。あとは、割と力仕事も多いので、ある程度身体を動かせる人のほうがよいかなと思います。
―――力仕事があるということですが、女性でも働くことはできますか?
本橋:警備には女性が3名ほどいます。会社としても少しずつ女性の職員を増やしていこうという取り組みはしているみたいです。
伊藤:女性のお客さんの対応や救護になると、やはり男性よりも女性の方が、安心感があるので。そういった時に頼りにしていますし、女性も活躍している職場だと思います。
―――これまで競馬場でのお仕事の魅力について伺ってきましたが、最後に、この仕事を通して、これからやっていきたいことを聞いてもよいでしょうか?
齋藤:うちの会社は、仕事場所が主に南関東ですが、最近は地方出身の人が多く入ってきています。そういった方たちが、生活の基盤ごと変えて来るので、仕事面だけでなく生活面でもサポートしていきたいです。全員がうまく仕事を回せるように、一緒に仕事をしていけたらいいなという思いです。
小野里:僕はこれまで色々な部署でお仕事させてもらってきて、もう今年で7年目になります。本当にここ最近、若い方の採用がすごく増えてきて、中には未経験者もいます。自分自身がやりたいことというよりは、若い職員の育成に力を入れていきたいですね。
伊藤:今までは門の前に立つといった、現場に出ていくような業務を中心に働いていました。そんな中、僕も4年目になってきて、最近は本部の無線を受ける役など、段々と責任重大なポジションを任されることも増えてきました。そういった重要なポジションを、あと1、2個ほど他のところでもやってみたいなと思っています。
本橋:私は今年から競走業務に携わるようになり、最初は発送業務、馬のゲート入れをやっています。今後は器具の名称や使い方をもっと覚えて、他の部署でも使ってもらえるような技量・知識量を持ってやっていきたいなと思っています。
―――皆さんがそれぞれの目標を達成できるように、応援しています。本日はどうもありがとうございました!
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女性同士やファミリー層まで、さまざまな取り組みで客層を広げている競馬場。ここで、今までとはひと味違った競馬の楽しみ方をする人も増えているのではないだろうか。
始めは「ギャンブル」「怖い」という印象を持っていた中でも、働く中で競馬場の魅力を知っていった警備の2人。そして働く中で、新たな競馬の良さを見つけていった競走の2人。騎手や馬、そしてお客様と関わりながら、意欲的に仕事に取り組む彼らが、新たな魅力を創出し続ける競馬場を、これからも支えていくのだろう。
※今回座談会に参加してくださった関東地方公営競馬協議会の皆様。左から齋藤(さいとう)さん、小野里(おのざと)さん、伊藤(いとう)さん、本橋(もとはし)さん
【PROFILE】伊藤 龍成(いとう たつなり)
警備業務担当。入会4年目。メインは警備で働きながら、2年目からは競走の業務にも携わっている。元は公務員志望。入会前、競馬はギャンブルで怖いイメージを持っていたが、入社後それだけでない新たな魅力を知った。
【PROFILE】本橋 航(もとはし わたる)
警備業務担当。入会5年目。メインは警備で働きながら、今年から競走の業務にも携わっている。元は警察官志望。入会前、競馬は酔っ払いのおじいさんばかりだと思っていたが、入会後は意外と子ども連れや女性も多いと感じている。
【PROFILE】小野里 昌紀(おのざと まさき)
競走業務担当。7年目。競走業務の中でも発走業務、検量業務、馬場管理業務と、決勝審判業務など多くの業務を経験。元は公務員志望。入社の決め手は、営業職以外がよかったことと、父が競馬好きで話題ができると考えたため。
【PROFILE】齋藤 雅揮(さいとう まさき)
競走業務担当。3年目。競走業務の中では、発走業務、検体業務、馬場管理業務を経験。小学校1年生で競馬と出会い、働いていた土木会社を退職後に入会。きっかけは、調教師の福田真広さんが、会社の職員募集をSNSで拡散していたこと。
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※11月上旬公開予定