サッカーのフィジカルコーチの仕事とは?閉鎖的だけど開放的。門戸を広げるため、僕ができる最大限の取り組み(4)

ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ) アカデミーフィジカルコーチ:加藤 裕

サッカーのフィジカルコーチの仕事とは?閉鎖的だけど開放的。門戸を広げるため、僕ができる最大限の取り組み(4)

ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ) アカデミーフィジカルコーチ:加藤 裕

「周りのプレイヤーに比べ、自分はそこまでスキルがない」

「どれだけ一生懸命頑張っても、おそらくプロにはなれないだろう」

スポーツに携わってきた方であれば、一度や二度、その夢と現実の壁にぶつかった経験があるでしょう。大切なのはその後。もう一踏ん張りするか、別の道を行くか。

「選手を4年間プレーして終わるのが、とにかく寂しかったんです」

こう語るのは『ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ)』にて、現在アカデミーフィジカルコーチとして活躍する加藤裕氏。元々はサッカーの指導者を目指していたという彼が、フィジカルコーチという道を選んだ理由は、ただ単純に「サッカーに携わり続けたい」という強い気持ちからでした。

「好きだからこそ良くしたい」

フィジカルコーチの仕事をはじめて約9年。第一線で活躍する中で見えてきた業界の課題感とは。その課題を解決するために起こすアクションとは……?


前回(Vol.3)▶サッカーだからフィジカルコーチが必要?ラグビーとの違い。

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


サッカー界へ関わり続けたいという強い想い。そして、これから業界を目指すあなたへ

__これからサッカー界でフィジカルコーチを目指す方に向けたコメントもぜひいただきたい。加藤さんのお話の中で、身体の知識+サッカーの専門知識の両方兼ね備えている必要があるとお話にありましたけど、それ以外で「これはあった方が良い」という能力等々はいかがですか?





加藤:当たり前かもしれませんが、コミュニケーション能力は必要だと思います。1つの組織に色んな役職の人がいますから、多くの人とどうコミュニケーションを取って、どう選手を強くしていくか。自分の専門性だけでは上手く勧められないことも多いので、そういう周りの方々と協力しながらプロジェクトを進めていけるコミュニケーション能力はマストですね。

それこそ監督とのコミュニケーションは特に大事で、もちろん人なので、いきなり「練習こう変えてください」って言ったら、あまり良い気持ちにはならないじゃないですか(笑)。ですので伝え方とか、相手を思いやる気持ちとかは大事です。


__監督もそうですし、選手からの信頼を勝ち取ることも非常に重要じゃないかなと思うのですが、信頼を勝ち取るために加藤さんが日々心掛けていることがあればぜひ教えてください。





加藤:僕が今やってる育成年代に対しては、お伝えした通り「できるようになった」という声かけは意識していますね。ただ、やはり競技ですから、スポーツをやる前提の上で身体をどう創っていくか、という役割が非常に大きい仕事だからこそ難しくて、フィジカルコーチのするトレーニングや考え方が、必ずしも勝利につながるとは限らないわけですよ、スポーツである以上。

すごく線の細い選手で当たりが強くなくても、足元がとても上手でパスさばいてゴール取れる選手もいます。ポジションによっても少し異なる部分はあります。でも、時には専門性を活かして「選手はこう考えているけど絶対こっちの方が良い」と提案すること、取り組みを上手く実現することで、勝利に近づく可能性がグンと上がる場合もあるわけです。選手やクラブのことを思って、発言することは、今も昔も心掛けているところではありますね。


__その辺り、1人ひとりやクラブの状況を見ながら尽力されているわけですね。





加藤:ただ、だからといって必ず評価に繋がるかと言えばそんなことも無いんです。まだまだサッカー界のフィジカルコーチに対する評価は曖昧な部分が多いんですよね。もっと言うと、自分で開拓して色んな経験をしているフィジカルコーチが多いので、人それぞれ考え方も違うんです。だからこそ評価が難しい部分もあります。

とはいえ、ちょうど今Jリーグの評価制度ができていて、そもそもクラブに対してスタッフをしっかり配置しようという流れになっているんです。しっかりスタッフを配置しているかどうかもアカデミーの評価に影響を与えるような仕組みで、アカデミー含めリーグ全体で人をしっかり配置しようという流れで、そこは今まさに追い風なんです。かつ、アカデミーのフィジカルコーチはまだまだ配置していない(できていない)クラブが多いですから、インターンは引き続き採用していきたいですし、その先には必ずサッカー界の発展があると信じて、これからも頑張っていきたいですね。


__酸いも甘いも沢山お話いただきありがとうございました!非常に勉強になりましたし、サッカー界のフィジカルコーチはまさにこれから価値が高まっていくと信じています。そこでズバリ、加藤さんの今後の目標についても聞かせてください!





加藤:偉そうですけど、後進の育成はとにかくやりたいですし、その先に業界をもっと盛り上げたい気持ちが強いんですよね。フィジカルコーチは資格がないので、今後専門学校などで「ウチはこういうことが学べて、こういう資格が取れます。だからウチでフィジカルコーチを目指しませんか?」という取り組みをする際には、協力したいと思いますし、そういったフィジカルコーチの資格制度を創るのも1つ目標まではいかずとも、あって良いとはおもうんですよね。

そうすると、日本のサッカー界におけるフィジカルコーチの地位が確立されてくるので、目指したいところかもしれません。もちろんお伝えした通り、J1で優勝したり、ACL行ったりと色々経験はしたいものの、もしかしたら自分で別の事業を立ち上げて、二足の草鞋でやっていくかもしれません。どんな形であれ、今後もサッカー界で、この仕事の価値向上や選手、クラブのために尽力していきたいですね。

<バックナンバー>

Vol.1▶サッカー業界における、フィジカルコーチという仕事の課題感

Vol.2▶そこまで入り込む!?ただ単純にトレーニングを教えることだけが役割ではない!

Vol.3▶サッカーだからフィジカルコーチが必要?ラグビーとの違い。









【PROFILE】

加藤 裕 (かとう ゆたか)|ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ):アカデミーフィジカルコーチ

サッカーは小学校1年生から高校3年生までプレイ。東京学芸大学進学後、サッカー部に入部するものの、周りのレベルの高さを初め「自分はJリーガーになれるレベルではない」「4年間プレーして終わるのも寂しい」と考え、学生トレーナーとしてサッカーに関わり始める。その後、Jクラブに数多くのトレーナーを輩出している筑波大学院へ進学。修了間近な時期から『鹿児島ユナイテッドFC』に関わり始め、修了後はそのままチームのフィジカルコーチとして加入。鹿児島→長野→鹿児島→千葉という流れで現在に至る。現在はアンダーカテゴリのフィジカルコーチ。「もっとフィジカルコーチになりたい!という方に情報を表に出して行きたい」と自身がクラブに提案しインターンを募集するなど、コーチ業に留まらず活躍中だ。

娘さんが2人おり、休日は美容師さんごっこ、チョコレート屋さんごっこ等々「◯◯ごっこ」をして一緒に遊ぶのが日課。また、知人が尾道でコーヒーショップをされているそうで、そこからコーヒーを購入し飲み比べることも日々の楽しみだそう。当然、筋トレ大好きで毎日のルーティンに組み込まれているんだとか。


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