サッカーのフィジカルコーチの仕事とは?閉鎖的だけど開放的。門戸を広げるため、僕ができる最大限の取り組み(2)

ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ) アカデミーフィジカルコーチ:加藤 裕

サッカーのフィジカルコーチの仕事とは?閉鎖的だけど開放的。門戸を広げるため、僕ができる最大限の取り組み(2)

ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ) アカデミーフィジカルコーチ:加藤 裕

「周りのプレイヤーに比べ、自分はそこまでスキルがない」

「どれだけ一生懸命頑張っても、おそらくプロにはなれないだろう」

スポーツに携わってきた方であれば、一度や二度、その夢と現実の壁にぶつかった経験があるでしょう。大切なのはその後。もう一踏ん張りするか、別の道を行くか。

「選手を4年間プレーして終わるのが、とにかく寂しかったんです」

こう語るのは『ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ)』にて、現在アカデミーフィジカルコーチとして活躍する加藤裕氏。元々はサッカーの指導者を目指していたという彼が、フィジカルコーチという道を選んだ理由は、ただ単純に「サッカーに携わり続けたい」という強い気持ちからでした。

「好きだからこそ良くしたい」

フィジカルコーチの仕事をはじめて約9年。第一線で活躍する中で見えてきた業界の課題感とは。その課題を解決するために起こすアクションとは……?


前回(Vol.1)▶サッカー業界における、フィジカルコーチという仕事の課題感

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


そこまで入り込む!?ただ単純にトレーニングを教えることだけが役割ではない!

__さきほどフィジカル的なコーチかメディカル的なスタッフか、という話もありましたが、加藤さんがされているフィジカルコーチのお仕事について、具体的にどんな仕事かも教えてください。





加藤:たとえば、他の競技でも共通しているのは、筋トレを教えることや怪我防止のための身体作りやウォーミングアップを担当するなど、身体を扱う部分は同じだと思います。ただ、サッカーの場合は先ほど軽くお伝えした通り、今の役割がある上で、プラスアルファ競技の中に入っていくんですよね。

具体的には、選手が試合中にどういう動きをしているかGPS(※)を使って記録を見たりするんですね。そこでたとえば、ある選手Aが、ここでスプリントしてほしいのにできていないことを指摘して「こういう練習を取り入れてください」って監督に発言することができたりします。もちろんこれは、監督との関係値やクラブの考え方にもよりますが、少なくとも僕は、監督が「こういう練習をしたい」と聞いた上で「技術や戦術的にはOKだと思いますが、フィジカル的には上がらないかもしれないから、そのトレーニングは何分やって、どれくらいインターバルとればこういうトレーニングになるから、時間はこのくらいにしませんか?」みたいな話をするようにはしています。

(※)選手一人ひとりに装着するGPSチップを指す。選手の位置情報をリアルタイムで把握でき、個々のプレーヤーの走行距離やスピード、そしてその時に使われたパワーをモニターし、記録できるシステム


__そこまで入り込むんですか!?てっきりトレーニングの部分をメインに担当されているのかと。





加藤:そこが、他の競技で言うところの『ストレングス&コンディショニングコーチ』と呼ばずに、サッカー界では『フィジカルコーチ』と呼ばれているところの所以になるんですよね。

それこそ今の話の続きですけど、たとえばボールをキープするときに、手で相手を抑えるっていうシーンがサッカーは多いんですが、手が弱くて詰められてボール取られちゃう、結果よくないプレーになるってことはあるあるで、監督は「ちゃんとボールキープしなさい」って言うんですよね。

ただ、僕がそこにフォーカスしたときは「ちゃんと手で相手を抑えられるように、手の使い方はこうしたほうが力が入りやすい。そしたらボール取られない」「じゃあ腕の筋トレをやりましょう」みたいな話になったりするわけです。


__今の話の流れだと、サッカー界においては、身体のこと+サッカーの専門知識も必要になるわけですね?結構テクニックの部分とフィジカルがセットということが衝撃で。言われてみれば、確かにその方が良いとは思ってしまうのですが。





加藤:そうですね。そもそもサッカー界だと、フィジカルと戦術と技術の3つの輪が重なり合ってるような考え方なんですよね。ですので、GPSを活用して練習強度の調整もします。90分走り続けるために、これくらい練習強度持たせないといけない、ですとか。もっと言うと一週間でこれくらい負荷をかけようとか、これくらい休ませようとか、そういった話はします。

仮にGPSで練習強度『100』を目指す練習をしたとして、実際やってみたら『120』になって「思ったより負荷をかけすぎてしまいましたね」「じゃあ次はサイズをこうしましょう」といった話に現場でなるわけです。そのような形で練習を進めていって「負荷もかけられたし練習としてもちゃんと成立したね」って流れで、フィジカルを育てていくのが、比較的大きな役割。世界的にはこれがスタンダードで、日本は徐々にこの形になってきたのもリアルな話です。


__そこまで監督に近いポジションというのも、お話を聞けば聞くほど衝撃的です……!ちなみに理解不足で申し訳ないんですが、そこまで監督に近いのはフィジカルコーチだけなんですか?チームスタッフがどのように構成されているのかも伺いたいです。





加藤:大きく言うと、コーチングスタッフという括りがあって、これがHCやキーパーコーチ、フィジカルコーチですね。それを束ねる監督、というイメージです。それとは別に、リハビリや治療を行うトレーナーや、通訳、それからドクターがいるような形で構成されています。

ですので、結構勘違いされるんですけど、先ほどお伝えした通りサッカー界でのフィジカルコーチに関しては、練習を作り上げていくコーチングスタッフの括りの中にいるんです。フィジカルコーチとトレーナーが、一般の方は同じだと多くイメージされていると思うのですが、ここには圧倒的な違いがあります。発言力や地位、そもそも練習をどうするか、何をして選手を強くして試合に臨ませるかという結果に繋がりやすい役割なんです。だからこそその分、不安定な仕事でもあるのが本音です。結果が出なければ、トレーナーはチームに残るけどフィジカルコーチはカットということも全然ありますから。

次回(Vol.3)▶サッカーだからフィジカルコーチが必要?ラグビーとの違い








【PROFILE】

加藤 裕 (かとう ゆたか)|ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ):アカデミーフィジカルコーチ

サッカーは小学校1年生から高校3年生までプレイ。東京学芸大学進学後、サッカー部に入部するものの、周りのレベルの高さを初め「自分はJリーガーになれるレベルではない」「4年間プレーして終わるのも寂しい」と考え、学生トレーナーとしてサッカーに関わり始める。その後、Jクラブに数多くのトレーナーを輩出している筑波大学院へ進学。修了間近な時期から『鹿児島ユナイテッドFC』に関わり始め、修了後はそのままチームのフィジカルコーチとして加入。鹿児島→長野→鹿児島→千葉という流れで現在に至る。現在はアンダーカテゴリのフィジカルコーチ。「もっとフィジカルコーチになりたい!という方に情報を表に出して行きたい」と自身がクラブに提案しインターンを募集するなど、コーチ業に留まらず活躍中だ。

娘さんが2人おり、休日は美容師さんごっこ、チョコレート屋さんごっこ等々「◯◯ごっこ」をして一緒に遊ぶのが日課。また、知人が尾道でコーヒーショップをされているそうで、そこからコーヒーを購入し飲み比べることも日々の楽しみだそう。当然、筋トレ大好きで毎日のルーティンに組み込まれているんだとか。


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