サッカーのフィジカルコーチの仕事とは?閉鎖的だけど開放的。門戸を広げるため、僕ができる最大限の取り組み(3)

ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ) アカデミーフィジカルコーチ:加藤 裕

サッカーのフィジカルコーチの仕事とは?閉鎖的だけど開放的。門戸を広げるため、僕ができる最大限の取り組み(3)

ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ) アカデミーフィジカルコーチ:加藤 裕

「周りのプレイヤーに比べ、自分はそこまでスキルがない」

「どれだけ一生懸命頑張っても、おそらくプロにはなれないだろう」

スポーツに携わってきた方であれば、一度や二度、その夢と現実の壁にぶつかった経験があるでしょう。大切なのはその後。もう一踏ん張りするか、別の道を行くか。

「選手を4年間プレーして終わるのが、とにかく寂しかったんです」

こう語るのは『ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ)』にて、現在アカデミーフィジカルコーチとして活躍する加藤裕氏。元々はサッカーの指導者を目指していたという彼が、フィジカルコーチという道を選んだ理由は、ただ単純に「サッカーに携わり続けたい」という強い気持ちからでした。

「好きだからこそ良くしたい」

フィジカルコーチの仕事をはじめて約9年。第一線で活躍する中で見えてきた業界の課題感とは。その課題を解決するために起こすアクションとは……?


前回(Vol.2)▶そこまで入り込む!?ただ単純にトレーニングを教えることだけが役割ではない!

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


フィジカルコーチの必要性を、もっとサッカー界で広めたい。

__加藤さんはJクラブを経験された後、今ジェフ千葉さんではアンダーカテゴリのフィジカルコーチを担当されていますよね?やはりプロと育成年代では、教え方等々も違ってくるのでは?





加藤:身体の大きい小さいとか、成熟度は違いますけれど、身体をどう機能的に動かすとか、そのためにはどういう要素(筋力や柔軟性など)が必要とか、その辺りの要素は変わらないんです。ただ、それをどう落とし込むか、というプロセスは全然違います。

大人だと、やっぱり話したことをすぐパッと動きができたり改善できたりするんですけれど、子ども達だと「スクワットってどうやってやるの?」といった、基本の『キ』から教えないとちゃんとできないんですよね。その辺りは最初「どう伝えればいいんだよ(笑)」って悩んだりもしました(笑)。もっと言えば、サッカーでボール蹴るのは楽しいけど「ストレッチ嫌だ」「筋トレして意味あるの?」とか、そういった話になったり、やり続けても「全然変わらないじゃん」とか言われちゃうと、結構悲しいと言いますか(笑)。


__あはは(笑)。子ども達は正直ですね(笑)。でも成長に伴って、実感してくることもあるのでは?





加藤:仰る通りで、正しいトレーニングの仕方を身に付ける過程に時間がかかることもあるんです。たとえばラグビーって、身体が大きくて強いことが競技に直結するから、わかりやすくてみんなトレーニング好きになりますけど、サッカーはそこまでじゃないところもあるので「なんでここまでやらなきゃいけないの?」って文化を作るところから教育なんですよね。

とはいえ成長期でガッと筋力が増えてきた時期に、今までできなかったことが急にできるようになって、それこそ怪我が減ったり当たり負けしないようになってくる変化は、子ども達も実感しているところはあるんです。だからこそ、まだ2年目なんですけど、1年目に地道にコツコツ種をまいてきてよかったなって思ったりはします。「種をまいてなかったら……」と考えると恐ろしいくらい。


__まさにその実感を子ども達が感じ始めることで、フィジカルコーチとしての信頼も徐々に厚くなってきそうですね!





加藤:僕は今中学生を結構メインで見ているんですけれど、あんまり実感するっていうことはまだ少ないんです。僕が「良い動きできるようになったね」って伝えて初めて「本当ですか!?」って喜んでくれるような形なので、逆にそれくらいでいいのかなとも思っています。

もっと言えば、やっぱり中学生を見ている分、高校生とかになって筋トレとか本格的に頑張り始めて体重が増えたりパワーがついたりして、よりトレーニングの効果を実感してくれるようになったときを見たいとも思っているんですよね。

ちなみにジェフに来て、基本的な教え方のベースが一緒でも、トップとの取り組み方の違いや育成年代ならではの身体のことを学べたからこそ、育成年代に特化したフィジカルコーチのスペシャリストがもっともっと出てきても良いはずだ、とも思うようになりました。もしくはどっちもやれますという人が増えることが、今後のサッカー界の発展には必要不可欠だとも思うんです。


__参考までに、トップとアンダーカテゴリのフィジカルコーチの仕事の魅力について、改めて教えていただけませんか?





加藤:アンダーカテゴリに関しては、やっぱり先ほどお話した通り、今教えている中学1年生の子たちが、高校3年生のときにどうなるんだろうというのは凄く気になりますし、そのプロセスに関われるというのは、間違いなく一番の魅力だと思います。

一方トップに関しては、どうしても結果を求められますから、アンダーカテゴリのようにどう成長していくか、だけでなくその取り組みで勝てるようになったかどうか。もっと言えば、極端ですが変わった取り組みをしても結果が出たら評価されたりもします。勝利というものに対して一喜一憂できる中毒性のある楽しみは、間違いなくトップにはありますね。それに僕自身も、やはりこの仕事を選んだからには、長く育成年代を見続けたい気持ちもありながら、J1の優勝に関われたりACL出たりとか、そういう経験はしてみたいとも思っています。この仕事を通じて、さまざまな経験をしたいですし、これからフィジカルコーチになってくださる方にも、同じように多くを経験してサッカー界をともに発展させて行けたら、これ以上ない幸せだなと思いますね。

次回(Vol.4)▶サッカー界を目指すあなたに大事にして欲しい能力。








【PROFILE】

加藤 裕 (かとう ゆたか)|ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ):アカデミーフィジカルコーチ

サッカーは小学校1年生から高校3年生までプレイ。東京学芸大学進学後、サッカー部に入部するものの、周りのレベルの高さを初め「自分はJリーガーになれるレベルではない」「4年間プレーして終わるのも寂しい」と考え、学生トレーナーとしてサッカーに関わり始める。その後、Jクラブに数多くのトレーナーを輩出している筑波大学院へ進学。修了間近な時期から『鹿児島ユナイテッドFC』に関わり始め、修了後はそのままチームのフィジカルコーチとして加入。鹿児島→長野→鹿児島→千葉という流れで現在に至る。現在はアンダーカテゴリのフィジカルコーチ。「もっとフィジカルコーチになりたい!という方に情報を表に出して行きたい」と自身がクラブに提案しインターンを募集するなど、コーチ業に留まらず活躍中だ。

娘さんが2人おり、休日は美容師さんごっこ、チョコレート屋さんごっこ等々「◯◯ごっこ」をして一緒に遊ぶのが日課。また、知人が尾道でコーヒーショップをされているそうで、そこからコーヒーを購入し飲み比べることも日々の楽しみだそう。当然、筋トレ大好きで毎日のルーティンに組み込まれているんだとか。


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