さまざまな屋外競技のフィールドにおいて、長期間にわたり安定したプレー環境を維持するために、欠かせない存在となっている人工芝。スポジョバの利用者には、競技経験のある人はもちろん、スポーツ観戦を目的に全国の競技場を利用したり訪れたりした経験を持つ人も多いはず。
広大な競技場の維持には、人工芝の定期的な張り替えが欠かせないが、株式会社ワイルドブルーは、その中でも人工芝の撤去に特化し、数多くの実績を重ねてきた専門業者。今回は、まさにスポーツ界を名実ともに“足元”から支える存在である株式会社ワイルドブルーの代表・倉持さんと、その現場をともに支える佐浦さんに、その仕事の奥深さやそこに込められた想いについてお話を伺った。
(取材・執筆:齊藤 僚子、編集:伊藤 知裕、中田 初葵)
業界に携わって20年以上の経験を持つ倉持さんが、その豊富な知識と実績を活かして2022年に立ち上げた株式会社ワイルドブルー。倉持さんは、まずどんなことがきっかけで人工芝に注目するようになったのか、そして撤去に特化した事業を立ち上げるに至った経緯について、次のように話します。
倉持:前職では産業廃棄物の処分業者で働いていたのですが、その際に人工芝を廃棄物として回収しに行ったことがありました。そこで初めて、こういった廃棄物があるということを知ったんですね。その後も何度か取りに行くなかで、あるとき撤去作業も含めて業務を請け負わせてもらえないかと現場に相談をしてみました。僕は人とコミュニケーションを取るのが好きな性格なので、現場にいる業者さんや現場監督さんなどと話をするようになりまして。それから少しずつ、小さな現場から任せてもらえるようになったんです。
当時の専務からも、今後人工芝の回収が増えていくんじゃないかと話していましたし、この分野は任せるよ、とも言ってもらえたので、一からのスタートで最初は大変でしたが、現場に足を運ぶなかで自分なりにこの業務の基盤を作ってきたという感じです。
その後、経験を重ねていくうちにこの業界にもっと深く入って独立してやってみたいなと思うようになりました。そのことを会社に相談したところ、快諾してくれて気持ちよく送り出してくれました。前職でお付き合いがあった業者さんからも、「独立してからも倉持に頼みたいから、今まで通りにやって欲しい。」と言ってもらえてすごく嬉しかったです。そんな言葉も後押しして、この事業を立ち上げました。
競技場の人工芝の張り替えのスパンは、おおよそ10年に一回ほど。一面のフィールドが新しく生まれ変わる工程に立ち会えるのは特別なことです。ひとことで『人工芝を剥がす仕事』と言ってしまうのは簡単ですが、それは単なる撤去作業ではなく、フィールドを新たに生まれ変わらせるための重要なスタート地点だと倉持さんは語ります。
倉持:僕たちが請け負っている現場は主に、私立の大学や高校、公共のスポーツ施設などです。サッカー、野球、テニス、ラグビーなど、屋外スポーツの大体は人工芝が使われていますので多岐に渡りますね。僕たちの仕事というのは、競技場が新しく生まれ変わるための工事の先駆けとなるポジションです。だからこそ一番気をつけているのは、最初に入る業者である自分たちがいい流れを作ることです。我々が最初にずっこけてしまうと、後の工事が遅れてしまうんですね。自分たちの仕事は雨でもできますが、芝を張る業者は作業ができません。そんなときも、自分たちの作業の予定が本来10日間のところを8日間で終えられたら、後に入る業者さんがその分早く入ることができたり、天候に関する予想外のことが起きても余裕を持ったりすることができます。遅れるより当然前倒しになった方がいいので、そういう全体像も想像しながら仕事をしています。ですから、いかにいい流れを作って次の業者に引き継ぐかというところをとても大切にしています。
人工芝は相当な重量があるため、当然ながら手作業では対応できません。重機の操作が必要となる作業ですが、ワイルドブルーではそのための資格取得も会社としてサポート。“人材は一から育てる”という方針のもと、未経験者でも現場で活躍できる体制を整えています。
倉持:重機を扱うと言っても、例えば建物を解体するのとは全く違います。人工芝の場合は、剥がして丸めていかないといけないので力任せではうまくいかず、重機の扱いは結構シビアで繊細です。まず人工芝を剥がすときは、切断用のカッターを入れて持ち上げてから、フォークリフトで丸めていきます。ロールケーキのように丸め終わったらすくわないといけないのですが、それもうまくやらないとバタバタっとせっかく巻いた人工芝が元に戻ってしまう。また、剥がした人工芝は処分するだけではなくて、他のところに移設する場合もあります。雑に扱って穴なんか開けられないわけですね。ですから、作業にはすごく気を遣っていて、やっているうちに手先は器用になると思います。
入社後は重機を動かす資格も必要となってきますが、最初は仕事の流れを見てもらってから。一緒に現場をまわるなかで、使っている重機やそのために必要な資格などがわかってくると思いますので、その取得のためのサポートはしっかりやっていきます。
重機を使う作業は力強く見えて、実はとても繊細。そのギャップと、操作一つで仕上がりが変わることには緊張感も感じます。倉持さんは仕事を進める上で、このような実務以外にも大切にしていることがあると言います。
倉持:僕が仕事をする中で一番大切にしているのは、“縁”です。お客さんと仲良くなる、と言ったら変かもしれませんが、いい関係を築ければきっと仕事もうまくいくし現場の雰囲気も良くなります。例えば、現場が学校のときは、顧問の先生やコーチと仲良くなります。以前、とあるサッカーの強豪校のグラウンドで作業したときに、剥がした人工芝を野球部の方に移設してもらえないかとお願いされたことがありました。本来の仕事以外のことでしたが、重量のある人工芝を動かすのは大変だと思い引き受けたんです。
そんなとき、顧問の先生方や生徒たちから「ありがとうございました!」と感謝の言葉をいただいて、自分たちの仕事は、やったことに対して直接感謝を伝えてもらえる仕事でもあるんだなと思いました。「こんなこと、できませんか?」と何か頼まれれば、“これも何かのご縁だな”と思い、できる限りプラスアルファで応えるようにしています。
人工芝を撤去する専門職とは――。ここまで軽やかに業務のことを語っていただいた倉持さん。誰もが見られる景色ではない、リセット直後の競技場。その清々しさは、現場に関わった者だけが味わえる格別の爽快感や達成感があるといいます。
倉持:この仕事をやっていて感じるのは、やっぱり大きな達成感ですね。人工芝を剥がして緑色から地面のアスファルトの色が見えるわけですが、掃除した後のまっさらな状態の爽快感。「うん、いいね!」と思いますね。リセットされると言うのかな。本当に気持ちがいいものです。そして、生まれ変わった競技場で多くの方々が気持ち良くプレーをしてもらえる。そんなことを考えただけでもワクワクします!
そう語る倉持さんの右腕としてともに現場を支えるのが、佐浦さん。前職からの縁が続く信頼の厚い存在です。そんな佐浦さんは、この仕事ならではの魅力についてこのように話します。
佐浦:今の仕事は前職から倉持さんと一緒に始めて4年目くらいです。この仕事の魅力は、さまざまな大きな工事事業のひとつに携われることだと思います。ここ最近で印象に残っている仕事の現場は、ある大きな球場ですね。そこは人工芝と砂が混ざっている現場だったので、それらを分別する最新の機械を導入して作業を行いました。特殊な構造だったので、普通に丸めて撤去するより3倍くらいは時間がかかりましたね。
倉持:普段は丸めて撤去し、綺麗に掃除をして、という流れになるのですが分別する作業も加わるので手間がかかります。その作業ができる機械がいま日本に4台ほどしかないんです。
佐浦:そんな貴重な機械を使って作業することは普通ではなかなかできないことなので、やりがいがありましたね。また、地域によってはこのように分別をしないと処分できないところもあるんです。なので、間違いなく今後こういった機械を扱う需要も増えてくると思います。
2022年にスタートし、今年9月で設立から4年目を迎える株式会社ワイルドブルー。人工芝の撤去というニッチでありながら、競技場整備に欠かせない専門分野に特化し、着実に実績を積み重ねてきました。倉持さんは、今後もスポーツ業界を支える企業として、共に働く仲間をもっと増やしていきたいと語ります。
倉持:お客さんからは、ワイルドブルーとしてきてもらえるという信用も大事ですが、ここで働いている個人が来てくれるなら安心だ、と思ってもらえるような人材を育てたいと思っています。スポーツが好きな人なら、ワイルドブルーの仕事はすごく合うと思います。というのは、色々な競技の現場に行くことができて、なんなら、仕事場のすぐ隣ではプロチームがアップや試合をしていたりする。あの選手とばったり、なんていうこともありました。そんなサプライズも楽しいですね。また、出張も多いですから、旅が好きな人にも合っているのではないかと思います。海岸線に現場があるときは海を眺めながら、また、富士山を目の前に仕事をするなんてこともあります。そんなこともこの仕事の魅力の一つだと思いますね。
そして夜は地元の美味しい食事を楽しみながら締めくくる。そこで反省するところや次に向けた話なんかもできますから、これも仕事の一環です(笑)やるときはやって特権を楽しむときは楽しむ。この魅力が、興味を持ってくれた人にも伝わるといいんだけどなぁ。
企業としてだけではなく、1人の人間として育てていきたいと話す倉持さん。長年倉持さんとお仕事をされている佐浦さんは、倉持さんの人間性の高さについて話します。
佐浦:本当に面倒見がいいと思っています。話したことがない人にとっては近寄りがたい存在だと思いますが(笑)、コミュニケーションをたくさん取りながらしっかりと育ててくださいます。
『呼ばれれば全国どこへでも。』そう話す倉持さんと佐浦さんは、今後も各地の声に応えたいと意気込みを話します。
倉持:現在の一番の目標は全国制覇ですね。僕たちの仕事の場所は、日本全国にありますから、そういった各地のお客さんの期待に応えたいです。そのためにはどうしても仲間が必要になってきます。体が資本だからこそ、まずは仲間を増やしていきたいですね。少数精鋭のチームですからまずは仲良くなって、メリハリをつけてついてきてもらえたらなと思っています。
▼ワイルドブルーの求人を見る▼
【PROFILE】
倉持 厚(くらもち あつし) 写真左
代表、一級土木施工管理技士
学生時代は、小中高と陸上部に所属しキャプテンを務める。お神輿が大好きで、仕事の合間を縫ってでも各地のお祭りに参加してしまうほど。神社仏閣やお城を巡るのも好きで、出張先ではそうした名所を訪れるのも楽しみのひとつ。
佐浦 旭(さうら あきら) 写真右
解体工事施工技士、一級土木施工管理技士
学生時代はサッカー部に所属。店構えが渋いラーメン屋さんや定食屋さんが好き。ラーメン好きな人、大歓迎です!