日本から絶対にアイスホッケーを無くさない。【行動+発想】で挑戦を止めない漢の"プライド"

レッドイーグルス北海道(アイスホッケーチーム):フロントスタッフ 渡谷 憲太

日本から絶対にアイスホッケーを無くさない。【行動+発想】で挑戦を止めない漢の"プライド"

レッドイーグルス北海道(アイスホッケーチーム):フロントスタッフ 渡谷 憲太

あなたは何のために、仕事を頑張っていますか?

自己実現のため、業界のため、家族のため……etc 人によって様々だと思います。まさしくこれを『原動力』として今を生きていると思います。「〇〇のため」否定されることではないですが、ちょっと言うには恥ずかしいかもしれません。そしてそれが大きければ大きいほど、行動が伴っていなければ転職時に伝えるとピンとこないケースもきっとあるでしょう。

今回は、アイスホッケーのために今、人生を賭けて生きているレッドイーグルス北海道の渡谷憲太さんにインタビュー。彼のアツい想いととんでもなく大きな覚悟に、私も心が動かされました。

「自分もこれくらい熱量を持って、何かのために仕事を頑張りたい」

この記事は、そんな風に思うあなたが行動を起こすキッカケになるはず!


(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


アイスホッケーを盛り上げたい。業界の過去と現状

__渡谷さんは、とんでもないパッションでかなりアクティブに動かれていると聞いています!とにかくアイスホッケーを盛り上げたいと。





渡谷:そうなんですよ小林さん!そもそもアイスホッケーってめちゃめちゃ面白いんですよ!!……僕の中では世界で一番面白いスポーツだと思っているんです。実際に1966年の札幌オリンピックを皮切りに日本でアイスホッケーリーグが開幕して、すごく盛り上がっていた時代背景があって。野球でもバスケでもサッカーでもなくアイスホッケーって時代。今のBリーグのように、1万人のお客さんが代々木でアイスホッケーの試合を観るっていうこともあったんです。その後も1998年の長野オリンピック、あとTVドラマで木村拓哉さんが主演でやっていた『プライド』とかで盛り上がりは見せていたんですが……。


__『プライド』は懐かしいですね!僕も見ていました。……ちなみに勉強不足で恐縮ですが、日本のアイスホッケーって今はプロなんですか?





渡谷:アイスホッケーは元々実業団スポーツで、そもそも新規ファンの獲得に動いてなかったり、スポ―ツでお金を稼ぐという考えが他スポーツに比べ弱い印象を持っています。今は『アジアリーグアイスホッケー』として日本と韓国、ロシアの計7チームで構成されているプロリーグになっているんですが、でもリーグの分配金や優勝賞金とかはないんですよ。


__え、そうなんですか!?!?それは知りませんでした……





渡谷:元々の1960年代のアイスホッケーが人気だったのは『〜競技力〜競技を見てて面白かったから』だと思っています。これは間違いなく。でも今はスポーツのエンタメが加速してきて、アイスホッケーはそこに力を入れるのが遅かった。だから競技が好きなコアなファンだけが今も見に来てくださっている状況と言いますか。


__いわゆる"非日常"をスポーツで味わってほしいという方針で動いているチームは多いですからね。





渡谷:だからこそ、もっと集客とか認知拡大を頑張らないといけないんです。これは後々話にも上がると思うのですが、僕はホームゲームの総合演出も担当していて、会場の音楽で結構『QUEEN』をかけているんですよ(QUEENの名曲『I was born to love you』はドラマ『プライド』の主題歌)。

知ってる人は懐かしいけど、知らない人にとっては新しいですよね。バブリーダンスが良い例だと思いますが、ほかのスポーツのファンに見に来てもらいたいって考えたときに「やっぱりアイスホッケーといえば『プライド』だよね!」ってなる人、きっと多いと思っていて。だからこそ会場でQUEENがかかって「QUEENだ!プライドだ!」って。ちょっとでも身近に感じていただけて、テンション上げられて、仰る通り非日常感を味わってもらえたら嬉しいなって。表裏一体が重要かと。そんな気持ちで日々活動はしています!




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「一度見に来てくれたらハマる」は死語。そのために何をするかが重要

__確かに!会場ではなくても聴いただけで盛り上がれますから。ところで冬季オリンピックのアイスホッケー女子、予選ラウンド勝ちましたね?





渡谷:『スマイルジャパン』の活躍は、私も嬉しくて!そもそも普段アイスホッケーが日の目を見ることがないので、僕もここぞとばかりにツイートしましたよ。1試合100投稿くらいかな?(笑)。でもそれくらいやってタイムラインをジャックしないと、見られる機会ってないんですよ。



__渡谷さんがTwitterを頑張っている理由は、そういうところに現れているわけですね。





渡谷:僕はほぼTwitterで生きてますからね(笑)。あ、これはマイナースポーツあるあるかもしれないんですが「一回見に来てよ、ハマるから」っていう言葉は、僕は死語だと思っているんです。だって「一回見に来てもらうために何かしないといけない」じゃないですか。実際バスケもサッカーもハンドボールもそういう施策はめちゃめちゃ打つじゃないですか。



__仰る通りですね。それこそレミたん(土井レミイ杏利選手)の影響でハンドボールが盛り上がるみたいな現象がアイスホッケーでも起きたら良いですが。ちなみにレミたんみたいな方っていらっしゃったりするんですか?(笑)





渡谷:あはは(笑)。ほしいっすねレミたん(笑)。でもアイスホッケーですごく有名な選手に福藤豊選手(H.C.栃木日光アイスバックス所属)っていう方がいて。日本人で唯一NHL(世界トップリーグ)に出場した選手で。容姿も端麗で、ファッション誌『Safari』の3月号にも載ったんです。海外挑戦している選手もいて、結構日本人のレベルも年々高くなってきてもいるんですよ。


__えぇそれはすごい!!それだけでもどんな人なのか気になりますね。





渡谷:最初にチームを知ってもらうのはハードル高いと思うんですが、でも今の福藤選手のように「あ、Safariに出てたイケメンの人だ!アイスホッケー選手なんだ!一回生で見てみたいな」って、個人を知ってもらう方が早いと思っていて。その方が観に行きたい!って初めての人はなりやすい。

それで、ウチのチームは結構イケメンが多くて。だから今年は1人ひとり載っているような写真を使ってポスターを作ったんです。25人いるので25パターン作って。その方が「カッコいい!」「リアルで見てみたい!」とかに繋がりやすいじゃないですかあえてグローブを履いていない写真を使用し、人間味を出してます(笑)。グローブがあるとガンダムみたいなので(笑)。そこは割と成功していると思いますが、まだまだ数字は欲しいっすね(笑)




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アイスホッケーx地域活性化にもつながるように、フロントの僕らができること

__今までの話は平たく言うとマーケティングの領域なのかなと思うのですが、渡谷さんはフロントスタッフとして、どこまで手広くやられているんですか?





渡谷:仕事としては、スポンサー営業もSNS運用も含め、本当に色んなことを少数精鋭でやっている状況で。ホームゲームのときは一応、総合演出を担当させていただいてますが、僕は演出を勉強してきたタイプではないので、今は色んなスポーツ、それこそバスケやサッカー、野球などを見て良い物を盗んだり、アイデアをいただいたりしていますね。


__広い領域だからこそ、専門性を高めるのも難しそうですね……。





渡谷:小林さんが以前取材されていた高良さん(元千葉ジェッツのデザイナー)とは知り合いでして、関東に行ったときに千葉ジェッツさんの興行を見に行かせていただいたんですよね。その時にミラーボールを使った演出があって。「これはウチのチームでも使えるぞ」ってなって、やってみたら大好評でした。ほかのスポーツでは既にやっていることを導入するだけでも、お客さんは凄く喜んでくれるのでやってよかったです。ただ、僕としてはまだまだだなって思ったりもします。ほんと、コツコツですね。


__ポスターやミラーボールの話もありましたけど、それこそ「1回目来てもらうため」に、ほかにどんな施策を打っているんですか?





渡谷:あとはバスケで言う『アリグル(アリーナグルメ)』みたいなフードもイチから始めまして。たとえば苫小牧で興行があったら「苫小牧周辺の特産品を堪能できる」みたいなのをコンセプトにお店を呼んだり。



__え、それはめちゃめちゃ行きたいです!アイスホッケー見られて食事も楽しめるなんて最高じゃないですか!





渡谷ぜーーーーーひ来てください!(笑)。それで今の話も、本当にチャレンジの連続なんですよね。だから正直不安なこともあります。でも、そんなときにエゴサして(笑)「今日のイーグルスの試合楽しかった!」「日曜が終わってしまった……」とかSNSに書いてあるのを見ると凄く嬉しい気持ちになるんです。アイスホッケーをこんなに楽しみにしてくださる方がいるって本当に嬉しくて。今は毎試合平均1,000人も入らないような状況ですが、これを2,000、3,000と増やしていくために、色んな人の目にも触れられるように、もっと様々な仕掛けをしていきたいと考えています。





日本から絶対にアイスホッケーを無くさないために

__渡谷さんはnoteに「このままじゃアイスホッケーが日本から無くなるのでは……という危機感を持っている」と書かれていましたけれど、そして今も競技の発展のために頑張り続けているとは思うのですが、何が原動力になっているんですか?





渡谷:もちろん競技が好き!っていうのは大前提ですが、僕が以前『室蘭スティーラーズ(元:日本製紙室蘭アイスホッケー部)』で選手をしていたときの想いは強いかもしれません。企業チームで会社の福利厚生の一環で予算が何百万ってついてる中で、ホームゲームをしてもお客さんは数人だけ。それなのに多額の予算をかけてもらうのが気持ち悪かったんですよ。それを見て「もっと良くしたい」「アイスホッケーを盛り上げたい」って思ったのが原動力かもしれません。


__それは確かに申し訳なくなると言いますか……





渡谷:だからこそ、もっとアイスホッケーを盛り上げるためには、初めて見に来てくださる人が「また来たい」って思っていただけるような施策をもっともっと打たないと。僕が所属している『レッドイーグルス北海道』ってチームは、母体は『王子製紙』っていう100年近い歴史がある"名門"と呼ばれるチームで。だからこそ、僕らが牽引しないといけないんです。まぁ、僕がインフルエンサーになりたいわけでもないんですけどね。


__とはいえ、渡谷さんの活動によって、大きく変わった部分もあるんじゃないですか?




渡谷:僕がレッドイーグルス北海道に入ってから丁度1年くらい経ったんですけれど、SNSのフォロワーは倍にできましたし、UGCって言われるファンの方からの口コミは圧倒的に増えたと実感しています!嬉しい声も多いので、これを糧にもっと頑張らなきゃと思っています。

一方で、アイスアリーナって結構なくなってきているんですよ。先日、福岡・博多のアイスアリーナが無くなってしまって。実際アイスアリーナはアイスホッケーだけではなくて、フィギュアスケートとかカーリングとかスピードスケートとかも練習で使うんですよね。そうすると、フィギュアの後にアイスホッケーの練習ってよくあるんですが、すごくやりにくいんですよ。穴が開いてたりするので。逆も然りなんですが、お互いリスペクトして共存共栄しないといけないのに、このままだったら3年後にアイスホッケーが日本から無くなってしまうかもしれないし。それは絶対に嫌なので、今もこうしてできることを全力で取り組んでいます。だからこそTwitterをメインに色んな発信をして色んな繋がりを作っていくことで、何かの発展に繋げていこうと活動を続けている形ですね。


__まさに今、人生を捧げている渡谷さん。最後に、アイスホッケー業界はもちろんプロスポーツチームで働きたいと思っている若者に一言いただけませんか?





渡谷:偉そうなことは言えないんですけど、どのチームもリーグも企業も、稼ぐことが全てなんじゃないかなと思っていて。「スポーツチームで働きたいなら、あれしたらいいよ」とかはないと思っていて、その場で全力で働いて全力で培った知識を、スポーツにどう還元できるか。それ以外のプラスアルファの部分は自分で学ばなければいけないところなので、自分で考えて動ける人、自分で仕事を作ってお金を稼げる仕組みを作って動ける人っていうのが、どのチーム・競技でも必要になってくるんじゃないかなと思っています。特に雑談力には自信があります!(笑)

僕自身も課題なんですけどね、頭悪いので(笑)。「やりたいな」と思う事をやってみて「ヤベ、これめっちゃ大変だ(汗)」って気づけない。リスクヘッジできていないと言えばそれまでですけど、でも勉強とか頭の良さは上には上がいるけど、行動力や発想力は間違いなく唯一無二だと思っています。そういう強みを強めていけるように、色んな経験をしないといけないと思っているので、これからも動き続け、吸収しまくり頑張ります!!




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【PROFILE】

渡谷 憲太 (わたりや けんた)|レッドイーグルス北海道(アジアリーグアイスホッケーチーム):フロントスタッフ

1993年生まれ。北海道札幌市出身。幼少期からアイスホッケーを始め、苫小牧駒澤大学卒業後、日本製鉄(株)に入社・日本製鉄室蘭アイスホッケー部(現:室蘭スティーラーズ)の選手としてのキャリアをスタート。その後、自ら手を上げマネージャーも兼務。引退後はそのままチームに残り統括マネージャーとして活躍した。約1年前、BリーグやJなど他競技のプロスポーツチームからも声がかかる中で、レッドイーグルス北海道(元:王子イーグルス)への転職を決意。フロントスタッフとして、スポンサー営業、SNS運用、総合演出等々幅広く手掛けている。

一方、日本のアイスホッケー界をとにかく盛り上げたいと、スポーツマーケティング等々を学ぶべくビジネススクールに参加。日本アイスホッケー連盟のアスリート委員会にも所属し、多角的に情報発信中。冬季オリンピックでスマイルジャパンが躍動した際には「Twitterで100投稿以上した」とアツく語ってくれた。

趣味は旅行。「例えば、高校生のときに見た竹下通りと、今見る竹下通りは全然違うじゃないですか。そんな風に、色んなものに触れて、色んなことを知りたい」と語る。とにかく"フットワークの軽さ"と"熱量"は誰にも負けないと自負している。目標は地元である札幌市にフリースクールを創ること。そこにスポーツ施設を併設し「アイスホッケーを軸に様々なスポーツに関われる場所を提供したい」とのこと。


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