「スポーツは生観戦が一番!!」
各プロスポーツ団体は、そう謳って観客が球場やスタジアムに足を運ぶことを促してきました。
その概念を、新型コロナウイルスはひっくり返しました。試合観戦はおろか、試合の開催さえも中断に追い込みました。
そんな中で頭を抱えたのは、選手だけではありません。
プロスポーツというお金を生み出さなければならない仕組みを踏まえると、一番の窮地に立たされたのは運営スタッフかもしれません。
その一人、女子プロ野球リーグで働く三島健太さん(25歳)。
今なお、無観客試合を余儀なくされている女子プロ野球。もともとファンクラブ運営などの業務を行っていた三島さんが、コロナ禍で模索しながら生み出したオンラインサービスなどについて伺いました。
(取材・構成=スポジョバ編集部 荻野仁美)
ーーこのコロナ禍で様々なオンラインサービスをスタートしたと伺いました。具体的に教えてください。
三島:はい。大きく分けて2つ、サブスクリプションの「FANCLOVE」というプラットフォームを活用しての定額サービス、その名も「女子プロ野球リーグサブスCLOVE」(サブスクラブ)とZOOMを使用したオンラインイベントですね。両方とも5月下旬からスタートさせました。
ーー「サブスCLOVE」ですか!具体的にはどんな内容なのでしょうか。
三島:月額会費を頂いて、定期的にコンテンツを配信するのですが、過去の試合をフル映像で視聴できたり、その試合映像を選手本人が実況解説する配信もあります。またオンライン野球塾というコンテンツでは、画面上で選手から直接、技術指導を受けることもできます!
ーー月額サービスは、常に新しいものを配信し続けなければならないという難しさがあると思いますが、とてもコンテンツが充実している印象です。もうひとつのオンラインイベントというのは?
三島:「ZOOM」を利用して、選手とオンライン上で会話が出来たり、球団の垣根を越えた選手同士の対談の視聴などが出来るサービスです。オンラインサイン会というイベントも行ったのですが、オンラインで繋がった選手が指定グッズにサインしてくれて、そのグッズが後日、お手元に郵送されるというサービス。こちらはチケットも完売して、ファンの方からも好評でした!
ーー選手を身近に感じられるコンテンツばかりですね!球団の垣根を越えてというのは、リーグ運営している団体ならではのサービスですよね。
三島:確かにそれはありますね。他のリーグではなかなか出来ないサービスだと思います。また、過去の試合映像の権利が全てあり映像コンテンツが豊富にあるのも、ひとつ強みかなと思います。
ーー2010年に創設された日本女子プロ野球機構。創設後8シーズン目を迎える2017年に、三島さんは入社しました。
三島:もともと僕自身、ずっと野球をやってきました。大学2年生までプレイヤーだったのですが、チーム事情で3年生からはマネージャーという立場で部を支えていました。そういった中で就職活動を迎えて、野球の世界で働きたいと思っていましたが、なかなか就職活動がうまくいかず…そんな時に、高校時代の野球部元監督から「女子だけど野球に関われる仕事があるぞ!関西だけどチャレンジしてみないか?」と、今の会社を紹介して頂きました。
ーーその時点で、女子プロ野球の事は知っていたのですか。
三島:お恥ずかしい話、最初は女子プロ野球を見た事すらありませんでした。ただ直接、選手たちのプレーを球場で見た時の興奮は今でも忘れられません。うまい選手はその辺の男子選手より全然できるじゃん!と思いましたし、最初見た時のインパクトはかなり大きかったです。
ーーひと目で、女子プロ野球に魅了されたわけですね。
三島:そうなんです。でもそれと同時に女子野球の置かれている環境というのを知り、女性や女の子たちがもっと野球を十分に続けられる環境を広げていきたいとも感じました。
ーーそんな三島さんから見て、女子プロ野球の魅力ってどんな所でしょうか。
三島:見れば見るほど、選手の成長や伸びしろに驚かされるところですかね。年数を重ねていけばいくほど、選手たちの歩んできたストーリーと共に、心に刺さるものが芽生えてくると思います。
ーー新型コロナウイルスの影響で試合を行えない。時間だけはたっぷりある。そんな状況だったと思いますが、どんな事を考えましたか。
三島:試合がないので売上げが全くない。でも給料はもらっている。そんな状況下で、正直、色んな事を考えさせられました。今でこそオンラインのサービスをたてて、ほんのわずかですが売上が立つようになりましたが、4月・5月の間は売上が1円も立たないような日々が続いていたので「早く何とかしないと」という危機感と焦りを抱えて、業務に取り組んでいました。
ーーオンラインサービスを取り入れて3ヶ月ほど経ちましたが、手応えはいかがですか。
三島:正直、伸び悩んでいます。入会者数が100名を超えてから、そこからなかなか増えていません。ただ続けていく事も重要になってくるので、今入って頂いている約100名の方達に満足して頂ける様にコンテンツ配信を継続して行っていきます。非会員に比べて限定感があり、その良さが認められつつあると感じています。
ーー三島さんだけでなく、各プロスポーツ団体が何か新しい事は出来ないかと模索していると思います。
三島:そうですね。女子プロ野球に関しては、特に厳しい環境だと思います。現在、開幕はしましたが無観客開催が続いてるので、収益も立てにくいのが現状です。でも、だからこそ、これから試合が無くとも収益の柱となる仕組みを作るべきと思っています。常に先を見据えて新たなものを生み出していく必要があるなと感じています。僕自身、改めて仕事の姿勢について見直す良い機会になりました。
ーーこんな時「だからこそ」見えてきたものが多くありますよね。
三島:スポーツがもたらすものについても同じように言えると思います。新型コロナウイルスで暗いニュースが続く中だからこそ、スポーツが人々を元気にしている姿は印象深いと感じています。スポーツが持つ人の心へ訴える力というのは底が知れないな、と思います。
ーー今後、新しく考えている取り組みはありますか。
三島:引き続きオンラインサービスには力を入れていきます。好評頂いているサイン会もそうですし、仕入れているグッズと連動する事で付加価値をつけて、ファンの方々に満足してもらえるようなサービスを提供していきたいと思っています。
ーー女子プロ野球全体としては、どんな姿が目標ですか。
三島:持論ですが、日本中にプロ野球チームが出来る事が理想です。他のスポーツとも共存しながら、その地域を活性化させたいです。そこに球団があれば、地域に雇用が生まれ、若者が集まりやすくなると思うので。その為にも、今は女子野球界の発展に少しでも貢献していきたいです。
ーー三島さんとお話していると「野球愛」をビシビシ感じます!
三島:「野球に恩返しすること」が僕の人生の目標なんです。これまで野球を通じて多くの人に出会い、野球から生きる上で必要な沢山のことを学びました。進路選択、行動選択の際にも全て野球が基準になってきました。多くのことを与えてくれた野球界に自身が関わることで、競技者や野球に馴染みを持ってくれる方を増やし、これまで以上に野球が愛される存在になるよう努めていきたいと思っています。
【PROFILE】
三島健太(みしま・けんた)
1994年東京都荒川区生まれ。小学校2年生から野球を始め、東洋大牛久高校(茨城県)から日本体育大学の硬式野球部へ。2017年、日本女子プロ野球機構を運営する株式会社わかさ生活に入社。現在は、日本女子プロ野球リーグのファンクラブ運営を担当。特技は、洗顔の泡立て。
今回ご紹介した「女子プロ野球リーグ サブスCLOVE」について詳細はコチラ
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