「Goldwin(ゴールドウイン)」は、自社ブランドのほか「THE NORTH FACE(ザ・ノースフェイス)」「ellesse(エレッセ)」「Canterbury of New Zealand(カンタベリー・オブ・ニュージーランド)」など、数々のブランドを展開するスポーツメーカー。
その他、オリンピック・パラリンピック競技へのユニフォームの提供など、誰もが知る大手スポーツ企業です。
今回お会いしたのは、販売本部の山本雅弘さん(64歳)。前編では、70年の歴史を誇るゴールドウインについて、私たちが知らなかった会社の歴史や現場のこと、ゴールドウインに入社したきっかけについて伺いました。→「GOLDWIN」に見る、大手メーカーの歴史と未来予想図(前編)
後編では、ゴールドウインでの経験で見えてきたものや、スポーツ業界のこれからについて伺います。
(取材・構成=スポジョバ編集長 久下真以子)
ーー山本さんは、現在どんなことを担当されているのですか。
山本:今、2つ名刺を持っているんです。1つはゴールドウインの販売本部。弊社は直営店や百貨店、スポーツチェーン店などの色んな業態と取引をしているのですが、それを全体的にサポートするのが仕事です。2つめは、スポーツ代理店の「ゼット株式会社」さんへの出向です。週に1日はゴールドウインにいて、残りの4日はゼットさんにいるというスケジュールです。
ーーメーカーから代理店への出向があるのですね。
山本:過去にそういう事例はなかったので、ゴールドウインの70年の歴史の中で私が初めてです。1年だけ行ってこいと言われて、もう4年が経ちます(笑)具体的には小売店のサポートが主な仕事です。例えば少子化で地域のスポーツ店の運営が厳しくなった時に、どうしたら続けていけるのか、もしくは廃業・休業という選択肢を取るのか。そういったところで、情報をインプットしたりしています。
ーー過去にもたくさんの部署を担当されてきたと思います。
山本:入社後最初に担当したのが、ゴールドウインの商品をダイレクトに小売店に売ろうと発足したチームでした。でもそうなると代理店を通さないことになるから、調整は大変でしたね。メーカーとしては、代理店に払うマージンを売り場作りに投資することが出来るというメリットがあります。
ーー今でこそD2C(メーカーが直接消費者に売る形態)なども出てきていますが、当時は新しかったのですね。
山本:その後、ブランドの担当などを経て今に至ります。海外とのやりとりでは「英語分からへんし、くそぅ…」と思ったこともあります。今の部署の前身である「販売統括部」では、各営業所の流通を調整していました。地域によって方言(流通の便宜)が全然違うので、そのやり方を統一する役割ですね。本当に色んな仕事を経験しました。
ーー前職も含め、スポーツ業界で40年働いてきている山本さんですが、仕事の魅力はどんなところにあると思いますか。
山本:メーカーとしては、自分が企画したり関わった商品を街中で着ている人を見かけたら、やっぱり嬉しいですよ。小売としては、「たくさん物が売れた=地域で認められた」ということになりますよね。自分のお店のファンがたくさんいれば、苦しいこともたくさん耐え抜くことができる気がします。
ーーダイエーでの経験やゼットへの出向。小売・メーカー・代理店全ての視点でスポーツ業界を考えられることができる人はなかなかいないと思います。そんな山本さんだからこそ見えてきたものもあるのではないでしょうか。
山本:やっぱり「スポーツ業界はいい業界だな」ということです。スポーツって夢のある仕事ですよね。自分がスポーツが出来る・出来ないにかかわらず、憧れだとかカッコイイとか、人の夢を乗せている業界なので、ある意味エンターテインメントなんです。人を喜ばせたり感動させたりする世界に自分が関われているというだけでも、楽しいし幸せですよ、私なんかはね。
ーー今後、ゴールドウインにはどんな人材が求められていると考えますか。
山本:根底として「スポーツが好き」ということだと思います。思いがないといけないと言っているわけではないのですが、そうじゃないと長続きしないと思うんですよ。他業界から転職して来る人であれば、今たまたま別の業界にいるけれどスポーツ観戦が大好きとか、プロじゃなくてもいいから野球やっていたとか。生きる術のためだけにこの業界を選ぶのではなく、「スポーツに関わりたいな」と思ってきてくれる方がいいと私は思います。
ーー他業界にいたからこそ、スポーツ業界に転職してもたらすメリットもありそうです。
山本:弊社にも転職組はたくさんいますけど、結果的には「自分が入ってきたメリットをどれだけ出せるか」だと思います。新卒入社組ができることを転職組がやったって、それだと来た意味があまりない。だから、新しい事業や方法、システムや顧客を任せられる人材が必要だと私は思います。
ーースポーツ業界に長くいらっしゃると、変わらない魅力もあれば、変わってきたことも目の当たりにしていると思います。
山本:大きく変わったのはインターネットです。今はスマホ1つで物が買える時代じゃないですか。だから極端に言えば、これからは「小売店=売る」である必要もないかもしれないって思うんですよ。試着したりバットを振って、気に入ってスマホで注文すれば翌日の朝には家に届いている。わざわざレジに並ばなくていい時代が、遠くない将来にやってくるのではないかと思います。
ーーそうなると、メーカーのあり方も変わってくるのでしょうか。
山本:メーカーは大きく変わることはないと思います。でも、ブランド自体の流行り廃りはありますから、時代に合わせていけるかどうかというのは必要になります。そういった意味では、軸のあるブランドは強いですね。例えばザ・ノースフェイスだったら、「アウトドア」という軸をブレさせてはいけないと考えています。
ーー山本さん自身の今後の夢を教えてください。
山本:ゴールドウインに馳せる思いとしては、いつまでも「スポーツ会社」であってほしいということです。自分自身としては、長くスポーツ業界に携わったので何かしらの恩返しがしたいです。小売店やメーカーの代理店にいろんなアドバイスをするものそうですし、スポーツ選手のセカンドキャリアに携わるのもそうですし、たくさんの方へ還元できる存在でありたいと願っています。
山本雅弘(やまもと・まさひろ)
大阪府出身。近畿大学アメリカンフットボール部を経て、新卒で(株)パシフィックスポーツ(ダイエーグループ)に入社。33歳で株式会社ゴールドウインに転職。現在は販売本部に所属する傍ら、ゼット株式会社に出向し小売店のサポートやアドバイスを担当している。1955年10月18日生まれ。郷ひろみと同じ生年月日。
設立年月 | 1951年12月 | |
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代表者 | 代表取締役社長 渡辺 貴生 | |
従業員数 | 1,729名(グループ 2,526名) | |
業務内容 | 次の各種スポーツ用品の製造および販売 アウトドアスタイル関連商品
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