「フジクラゴルフクラブ相談室」。
この親近感のある名前でフィッティング&レッスンを提供しているのは、“フジクラシャフト”で知られる藤倉コンポジットの子会社・アールアンドアールフジクラだ。取り扱いはシャフトだけだが、「シャフトに留まらず、将来はゴルフライフ全体をサポートする会社にしたい」。そう語るのは、アールアンドアールフジクラを導く取締役統括部長の木村聡さん。そのために会社として大切にしていること、目指すものを伺いました。
(取材・執筆:小林 千絵、編集:伊藤 知裕、中田 初葵)
──そもそも「フジクラゴルフクラブ相談室」というお店の名前が素敵ですよね。
パーツメーカーである私たちは、ゴルフにおいては黒子のような存在だと思うんですが、シャフトに留まらず、ゴルフクラブというものを一般のゴルファーさんに気軽に相談してもらえるような場所を我々が提供するという思いでつけたのかなと私は思っています。「うちはシャフト屋だからヘッドはわかりません」とか「このシャフトを付ければなんでも合いますよ」ではなくて、お客様が当社で購入したものを実際に使用してベストスコアが出たり、良いショットが出たりして、次に来ていただいたときに「ありがとう」と言ってもらう。そういうことを繰り返すことで、スタッフのモチベーションにもつながりますし。シャフトメーカーですが、シャフトだけではなく、ゴルフクラブ 全体をサポートする会社でありたい。そう思っています。
──実際、「フジクラゴルフクラブ相談室」という名前に惹かれて来店される方もいらっしゃるのでは?
はい。何の相談ができるのかはっきりとは分からずとも、ゴルフクラブについて相談があると言ってご来店される方も結構いらっしゃいます。私が前任からアールアンドアールフジクラを引き継いだのが7年前。当時はあまり業績が良くなく、立て直す必要がありました。当時「フジクラゴルフクラブ相談室」がメーカーの直営店という見られ方をしていたので、行きづらい、入りづらいという印象があったんです。だから「フジクラゴルフクラブ相談室」という名前を活かして、もっと気軽に入れるように、敷居を下げるPRをしました。ホームページやゴルフ雑誌、ゴルフ専門チャンネルなどで、「まずは相談に来てください」という内容の広告を出しました。その結果、利用されるお客様のハードルが少し下がって。
──つまり、初心者やライトなゴルファーが多くなったと。
そうなんです。「初心者でも気軽に行っていいんだ」って思っていただくことができました。正直、初心者の方がシャフトだけを選ぶのはちょっと難しいのですが、まずはどのようなゴルフクラブを揃えるべきかなどをアドバイスさせていただく機会が増えました。いろいろな方に来ていただける場所になれたという意味で、「フジクラゴルフクラブ相談室」というのは良い名前なのかなと思います。
──先ほど、前任から引き継いだのが7年前というお話がありましたが、そもそも木村さんがアールアンドアールフジクラで働くようになった経緯はどのようなものだったのでしょうか。
私が親会社である藤倉コンポジット(当時の藤倉ゴム工業 )グループに入社したのは2002年ですが、私はもともとゴルフばっかりやっていたんです。まず、学生の頃はゴルフ専門店でアルバイトをしていて。そのあと、ゴルフ場にいたらゴルフがうまくなるんじゃないかと思って、大学を辞めてゴルフ場に勤めました。親にはものすごく怒られましたけど(笑)。そこでしばらく働き、その後、藤倉コンポジットがツアープロのクラブを作ったり、ツアーの会場で選手のサポートをしたりする「プロ担当」ができる人を探しているという話を、お世話になっている人から紹介され、プロ担当として入社しました。
──最初は「プロ担当」だったんですね。
そうです。15年ほど担当しました。その後、マーケティングの責任者などを務め、2017年にアールアンドアールフジクラの取締役として加わり、翌年に当時の社長が退任したのを受け、私がその社長業を引き継ぐことになりました。藤倉コンポジットは複数の事業を持つ会社なので、総合職社員はゴルフ以外の部署にも回ることが多いのですが、私はゴルフだけでしたね。
──藤倉コンポジットの企業理念は「技術・創造・いきいきコミュニケーションを大切にし、人々の安心を支え社会の豊かさに貢献いたします」。これを、木村さんはどのように捉えていますか? また働く中でこの企業理念の大切さや意味を実感した瞬間があれば教えてください。
藤倉コンポジットはもともとゴム会社で、ベテランの職人が、後輩たちに技術を伝えていく必要がありました。この理念はそこから生まれたもので、それが今も引き継がれている形です。技術に限らず業務に関する様々な知識や経験は、もちろん研修で身につけられることもありますが、それだけではなく、先輩と後輩のコミュニケーションがなければ、受け継がれていかないのではないかと思っています。特にアールアンドアールフジクラは、きちんとした研修制度というものを作れていなくて。それは反省点でもあるのですが。だからこそ、先輩から後輩にきちんと教えるということが徹底されている。それは企業理念に通ずるところもあるのかなと思っています。
──研修プログラムがないからこそ、コミュニケーションが取れていると。
そうなのかなと思います。それは仕事以外の時間も含めて。例えば一緒にゴルフに行くとか。
今朝も「○○さんが昨日ベストスコア出したんですよ」とスタッフから言われました。それが「いきいきコミュニケーション」と言っていいのかわからないですが、そういうことも大事だと言っているのかなと、私は解釈しています。
──そのほかにアールアンドアールフジクラとして大切にしている考え方や、全社で統一している信念などがあれば教えてください。
フィッティングという仕事は、どうしても「こういうスイングにはこのシャフトがいいんですよ」とこちら側の視点になりがちなんですね。だけど、そうではなくて、お客様が何をどうしたいのかをちゃんと聞いて、お客様に寄り添って、それに対して提案をする、ということは大切にしています。最近の言い方をすると“お客様ファースト”というのでしょうか。この考え方はスタッフにも伝えています。
──様々な形でゴルフと関わってきている木村さんは、現在、ゴルフ業界で働く面白さや魅力をどのように感じていますか?
これは弊社に限った話になってしまうかもしれませんが、今、世間一般では、仕事と自分の時間のバランスを保つという、ワークライフバランスという考え方が重視されていますが、弊社は“人生の中にゴルフがある”という感じ。趣味なのか仕事なのか、きっちり線を引かないといけないという考え方もあると思うのですが、社員を見ていると、普段のゴルフで得た経験や学びを、お客様に還元しているんですよね。それが魅力かどうかは人によると思うのですが、好きなことを仕事にしたいという人にとっては、魅力的だと思いますね。いつでもギアに触れられるし、仕事中にゴルフの話をしていても怒られないですし(笑)。だからといって休みなく働けということでは全くないですよ。ただ、ゴルフが好きで、それを仕事にしたいと考えている人にとっては、弊社の仕事はすごく魅力的なのではないかなと思います。
──ではアールアンドアールフジクラのスタッフや社員に、ここで実現してほしいことはありますか?
従業員によって求めているものや実現したいことは異なると思うのですが、弊社は比較的休みも取りやすいし、残業も少ないので、ゴルフが好きで、趣味と仕事が一緒になっている人はそのまま楽しんでもらいたいですし、趣味が別にある人も、自分の時間を楽しんでもらえればと思っています。
──アールアンドアールフジクラで働く時間や働くことに対しては、どのような時間にしてほしいと考えていますか?
フィッターって、お客様1人と1時間くらい向き合って診断する仕事なので、その中でいろいろな発見があるんです。こちらからギアについてお教えするだけでなく、お客様から学ぶこともたくさんある。それこそゴルフをやっていると、いろいろな業界の方がいらっしゃるので、そういう出会いも大切にしながら、コミュニケーション能力を高めていってもらえたらと思います。仮にお客様が製品を買わなくても「いい時間だった」「楽しかった」と思ってくだされば、また来てくださると思うので。実際に店舗にいると、そういうお客さまの声が時々聞こえてくるんですよ。そうすると、わたしもうれしいし、担当したスタッフもうれしい。そういう職場になっていけばいいなと思っています。
──ちなみに木村さんは、最近もゴルフには行かれていますか?
はい。最後に行ったのは、先月の社員旅行です。
──アールアンドアールフジクラで働き始めてから、ゴルフの楽しみ方やゴルフの面白さは何か変わりましたか?
それこそギアに頼り始めてしまって(笑)。「今日は調子が悪かったのはギアが合っていなかったからかも」なんて言ってしまいますね(笑)。
【PROFILE】
木村 聡
2002年に藤倉コンポジットグループに入社し、長年ツアープロ担当として全国を飛び回る仕事を経験。現在は株式会社アールアンドアールフジクラの取締役統括部長を務めている。
設立年月 | 1994年10月 | |
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代表者 | 若林雅貴 | |
従業員数 | 20名(2024年8月現在) | |
業務内容 | フジクラシャフトのフィッティングおよび加工販売 |
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