「毎日をW杯に」。そんなビジョンを掲げ、スポーツ観戦体験に新たな価値を生み出しているのが、株式会社スポカレです。大学サッカー部の運営や、早慶戦プロデュースに関わった大学時代の原体験をもとに、2018年に同社の立ち上げに参画した俣野泰佑さん。現在は世界中で行われるスポーツの試合日程を一覧で紹介する自社プロダクト「スポカレ」の運営。そしてデジタル広告施策やWEB/SNS制作運用、コンサルティングなどを通じたプロスポーツ集客支援の両輪で、”デジタル”マーケティングを起点に”リアル”の観戦体験を増やしていく事業を展開している。スポーツがもつ最大の魅力「スタジアムでの熱狂」を、デジタル施策を活用してより多くの人へ届けるために。俣野さんが描く、これからのスポーツビジネス像を聞いた。
(取材・執筆:伊藤 千梅、編集:伊藤 知裕、池田 翔太郎)
ーー俣野さんがスポーツビジネスに関わろうと思った原点を教えてください。
僕は学生時代、ずっとサッカーを続けていて、大学でもサッカー部に入りましたが、当時から「自分で会社をつくりたい」という思いが強く、大学1年生のときからビジネスに興味を持ち始めていました。中高時代ほどサッカーに打ち込めない自分もいて、悩んだ末に1年生のときに休部し、自分の将来について考える時間を持ちました。たどり着いた結論は、「サッカーも好きだし、ビジネスも好きだ」ということ。起業するにはサッカー部を辞めなければいけないけれど、サッカーは自分のアイデンティティの一部。どうにか両立する術はないかと考え「部活の経営」という道を選びました。
(大学時代の俣野さん)
ーー「部活を経営する」という発想はとても斬新ですね。
所属していた東大サッカー部には、プレイヤーを続けながら、マネジメントにも携わるGM(ゼネラルマネージャー)という役職があり、マネージャーの統括や部全体の運営を担当しました。部には約100人が所属していて、スポンサーの獲得や資金管理、人事マネジメントなど幅広い業務を担いました。それがスポーツビジネスに触れるようになったきっかけです。
その後は大学4年間で、学生連盟の長を務めたり、学内でマネージャー組織を立ち上げたりと、活動の幅を広げていきました。
ーーそのなかでも特に印象に残っている取り組みはありますか?
特に大きな経験だったのが、早稲田大学と慶應義塾大学の間で行われる「早慶戦」に関わったことです。早慶戦は、Jリーグに匹敵する集客力を持つ試合で、その大会のブランディングや集客のために学生が中心となって社団法人を立ち上げ、早慶戦のプロデュースに関わりました。僕はおそらく唯一の他大生でしたが、大学サッカーを学生自身で盛り上げるというミッションに共感し、運営に関わりました。試合当日のスタジアムの光景は今でも忘れられない体験です。
お客さんが生み出した熱狂を目の当たりにしたことで、プロジェクトの面白さやスタジアム観戦が持つ力を心から実感し、気がつけばスポーツビジネスの道に向かっていました。
(早慶戦のプロデュースを担った)
ーー現在、スポーツビジネスに取り組むうえで目指している世界観は?
僕は創業当初から「毎日をワールドカップにしたい」と考えています。スポーツがもたらす感動は、他には代えがたいものです。それを多くの人に、できるだけ高い頻度で感じてもらいたいと思っています。
様々な活動を通じてスポーツとの接点を設けることで、これまで興味がなかった人にも、スポーツを通して得られる感動がきっとある。そう信じて、日々活動しています。
ーーそんな原体験を経て立ち上げた株式会社スポカレは、現在どのような事業を行っていますか?
スポーツ領域におけるメディアや集客支援を中心に展開しています。事業は大きく二つに分かれており、自社プロダクトの開発・運営と、スポーツチーム・リーグを支援する事業があります。スポーツにおけるtoCデジタルマーケティングであれば基本的にはなんでもできる会社でありたいと思っています。
ーー具体的にはどのようなことを?
支援事業であれば、スポーツチームやリーグの担当者と連携しながら、「どうやって集客を伸ばすか」「どのように人気を高めるか」といった課題に向き合い、施策をサポートしています。具体的な事例でいえば、あるスポーツチームで主にホストゲーム集客プロジェクト全体を担い、各試合のコンセプトや戦略立案、実行までをサポートしました。実行領域では、SNSやメルマガ運用、WEB広告配信、ランディングページ制作等を行い2023-24シーズンにおけるリーグNo.1の集客を達成しました。
ーー例えばスポジョバで募集している求人の職種としては「SNS運用ディレクター」とありますが、ただSNSを運用するだけではなく、その先の集客まで考えるのですか。
そうですね。スポーツの最大の価値は、実際にスタジアムで体感できることだと思っています。SNS施策やウェブ施策、グッズ制作もすべて、根源的にはスタジアムでの体験が価値の中心にあると考えいるため、一見少し観戦とは距離のある施策でも、必ず集客やスタジアムでの体験を意識するようにしています。
(事業について説明する)
ーーやることが幅広いですね。1人で全部を担当するのですか?
ディレクターを中心に、社内チームで連携して動いています。動画制作チームやデザインチーム、エンジニアチームなどの専門部門があり、それらの力を集め、プロジェクトごとにリソースを編成しながら、クラブやリーグと向き合う体制を整えています。
ーーなぜこの事業をやろうと考えたのでしょうか?
スポーツのコア価値である観戦体験はリアルなものなので、デジタル(=ノンリアル)の集客やブランディングなどは、他の業界に比べるとまだまだ伸びしろがあると思っています。
とはいえ最初から課題やチャンスを感じていたわけではなく、2018年の創業から、目の前のスポーツチームやファン皆様の役に立つために色々なことに挑戦する中で少しずつ感じ始めたという流れです。
比較的若い会社だと思うので、若さやクリエイティビティで、多くの皆さんのお手伝いができればいいな、と。そして皆さんが感動をする機会が増えていけば僕らとしてはうれしいなと思っています。
ーースポーツチームやリーグに直接入社するのではなく、スポカレに入るメリットは何がありますか?
チームやリーグの中に入る良さは、スポーツの熱狂や感動や興奮を直近で感じられること、その輪に自分自身も入ることができることだと思います。スポカレでは、その輪に直接入ることはできませんが、反面、デジタルマーケティングカンパニーとして、様々な業界や技術、ノウハウと接点を持ち、高めていける環境があります。
スポーツチームを近くで支えつつ、一定の距離を保ちながら外の視点をもてる“衛星”のようなポジションを取ることで、スポーツ業界と他の業界と両方会話できるんです。たとえば、スポーツチームと話しながら、SNSプラットフォームの担当者と継続的にコミュニケーションをとったり、AIの最新技術を追って、積極的にソリューションに取り入れたりと、最新のトレンドを他の業界から仕入れることができます。
スポカレの採用も、他の業界からもたくさんの人材を採用しています。どちらの業界にも触れられることが出来るポジションに居られるのは、転職してくる人にとっても良いことなのかなと。自分のスキルアップをしながらその力を使ってどんどん大好きなスポーツに貢献することができるのは、大きな強みだと考えています。会社としても、そういった人材の力を結集して、スポーツ業界全体の成長に寄与できる存在になりたいと思っています。
ーー入社する人に求めることはありますか?
採用基準はまだ明文化できていなくて、現状は僕自身の価値基準がかなり色濃く反映されていると思います。たとえば「筋を通すこと」や「頭で考えるよりまず手を動かして、クライアントに貢献しようとする姿勢」などは、大事にしている部分ですね。大学時代に起業スクールみたいなところに通ったことがあるのですが、他の受講生を見て思ったのは「僕は根っこが体育会系なんだな」と(笑)。何をもって体育会系かはっきり分からないですが、そうした価値基準へ沿うようになったのは間違いないですね。
(「根っこが体育会系」と笑顔)
ーー仕事をする中で、俣野さんご自身が大切にしていることは何でしょうか?
「挨拶をすること」「間違ったら謝ること」「ありがとうを言うこと」。この3つができる人であれば、基本的には問題ないと思っています。
ただ、意外とこの当たり前のことができない人も多いんですよね。たとえば、朝出社したときに「おはようございます」と言えるか。間違ったときに「すみません、間違っていました」と素直に謝れるか。クライアントに対しても、これができるかどうかで仕事のやりやすさも大きく変わってくると感じています。
ーー仕事の成果だけでなく、人として基本的な部分も大事になる。
はい。社内では失敗を責めるのではなく、チャレンジを大切にしています。基本的には「挑戦した結果のミス」であれば、まったく問題ないと考えていて、むしろ大事なのは、その後どうするか。最初の仕事は30点だとしても、その後の対応を120点でできるかといった、切り替えの速さは求めますね。
ーー間違った後の対応を見ているのですね。
そうですね。AIと違って人間は挑戦できる生き物で、だからこそ誰しも間違いがあると思うので。
デジタルはあくまでツールであって、最終的には人と人とのつながり、感情のやりとりがあってこそスポーツは面白くなる。だから、デジタルに頼るだけでなく、人間らしさや温かみをどう残していくか。そこは、事業を進める上でも、人材に求める部分でも意識しているところです。
ーー今後、会社としての目標はありますか?
まずは何より、目の前のお客様の力になることですね。スポーツチーム、リーグの方々はもちろん、一人ひとりのファンにも少しずつ、スポーツの感動を届けていきたいと思っています。
そのうえで、あえて大きな目標を挙げるなら、「スポーツビジネスをもっと大きく、オープンなものにしていきたい」ということです。今のスポーツ業界は、少し閉じた世界になってしまっている側面もあります。もっと違う業界から人材やノウハウを取り入れて、スポーツを新しい形で盛り上げられるようにしていきたいですね。
ーー俣野さんご自身の目標や、なりたい姿はありますか?
「毎日がワールドカップ」のように、みんなが自然と盛り上がり、幸せに過ごしている世界を創れる人でありたいと思っています。裏方志向が強いので、そういう大きな舞台を創れる人間でありたいですね。それと、少し夢の話をすると、例えば欧州のサッカークラブのオーナーになってみたいな、と。スタジアムを満員にして自分も一緒になって応援したりするような存在になれたら最高ですね。
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【PROFILE】
俣野 泰佑(またの たいすけ)
株式会社スポカレ代表取締役社長。東京大学在学中はサッカー部に所属し、学生GMを務める。都学連の運営や学生団体の運営なども兼任。スポーツとビジネスを結びつける原体験を得たことをきっかけに、2018年に株式会社スポカレの立ち上げに参画。スポーツ観戦の価値向上とデジタルを活用したマーケティング支援事業を展開している。現在は自社プロダクト「スポカレ」の運営と、スポーツリーグ・クラブへの集客支援の両軸で事業を推進している。
設立年月 | 2018年06月 | |
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代表者 | 俣野泰佑 | |
従業員数 | 43名(パート/アルバイト含む、2023年10月時点) | |
業務内容 |
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