最大約12億円。クラブ存続すら危ぶまれた『大分トリニータ』が魅せた底力

大分トリニータ(J2):経営企画部本部・本部長 河野真之

最大約12億円。クラブ存続すら危ぶまれた『大分トリニータ』が魅せた底力

大分トリニータ(J2):経営企画部本部・本部長 河野真之

2009年以降、まさに経営危機が表面化していたのはJ2所属クラブの『大分トリニータ』。深刻な債務超過により「クラブを存続させられるかどうか……」というギリギリのところまで危ぶまれていた同チームではあったが、2021年の冬、彼らは浦和レッズと天皇杯決勝を争うまでになっている。

この10年あまり、J2→J3→J2→J1→J2……と、昇降格を繰り返し、倒されても何度でも立ち上がってきた彼ら。ただクラブとしては興行だけでなく、最大約12億円の債務との闘いもあったという。

「2019年、J1昇格とともに債務がなくなり、経営再建を完了できたんです」と冷静に語るのは、大分トリニータの経営企画部本部・本部長の河野氏。河野氏は2015年に同社へ転職してきたものの、前職の会計事務所時代から大分トリニータを顧問担当としてずっと見てきた。転職する前も、転職した後も。長く同チームを見てきた彼に「クラブの経営」という部分にフォーカスして話を伺うことができた。

「チームが試合を行うことが商品だから、売上を創るのは難しい」と語る河野氏。インタビューでは、経営再建真っただ中のエピソードを含め赤裸々に語っていただいた。『クラブ経営』という一見難しそうなことも、大切なことは意外にも……。


(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)

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経営危機からの再建。大きな施策で逆転を狙うより、目の前のことをコツコツと

__遡りますが、河野さんは大分トリニータさんが経営的にも苦しかった時期に転職されたと伺っています。まずは当時の話、聞かせていただけませんか?

河野:元々は私は会計事務所で会計や税務・財務を専門として働いていまして、担当先の1つ、顧問担当という形で大分トリニータとは携わっていました。ですから、2015年に私は大分トリニータに転職したのものの、転職以前から経営が苦しいなどなど、元々どういう状況かというのは知っていた状態で入ったんですよ。


__元々取引先だったわけですか!……苦しい状況下、河野さんはまさに再建を担っていたと伺っています。

河野:2000年代のJリーグは、サッカーそのものは非常に盛り上がっていたものの、クラブ経営の面では財務基盤が未整備なクラブが多かったんです。特に当社のような地方のクラブは資金が潤沢にあるわけではないので、厳しい状況が長く続いていました。一方、ホームスタジアムである昭和電工ドーム大分は、2002年に日韓ワールドカップの会場となったスタジアムです。この翌年2003年から2009年までの7年間「J1」に在籍していました。だから貴重な場所として継続していく必要が絶対にあると考えてはいました。その一役を担うという意味で、転職してきた形ですね。


__ファンにとって思い出深い場所でサッカーが見られなくなるのは悲しいですからね……。まさに債務超過真っただ中、河野さんはどのような活動をされていたんですか?

河野:私自身、サッカーに縁はなかったですしサッカーに詳しくはないですが、海外や日本のクラブがどんな経営をしているか、経営規模、経営母体、スポーツビジネスの財務の作り方等々は色々調べていたんです。ですから「新しい方針を打ち立てた!」とかセンセーショナルなことはしていなくて、とりあえず経営体制の"整備"を徹底していました。


__"整備"と言いますと?

河野:当時はまだJリーグの興行も"導入フェーズ"と言いますか「とにかく見に来てね!」って無料招待券をいっぱい配ったりしていたんですよ。無料じゃなくても「500円でいいから」とか。そういう無料・格安で観戦に行けるような状況だったんです。結果、老若男女多くの方が見に来てくださっていたんですが、一方本質的なスタジアムの価値やサッカーを通じた感動など、私たちが提供する価値に対してお金を払うというモデルが無かった。それを生まない限り新たな選手獲得や施策って、予算的に大きくしていけない。だからまずは『収益モデル』の整備ですね。ただ整備しているタイミングで、私たちはJ2からJ3に落ちてしまったんですが……。





「チームが試合を行うことが商品」だからこそ、経営は難しい

__無料で会場に足を運べていた時代から、少しずつ"整備"をしていく中で、河野さんはどんなことを意識していたんでしょうか?

河野:意識していたのは収益化ファンデベロップメントの2つですね。スポーツクラブの経営の難しいところは「チームが試合を行うことが商品」であり、それをいかに収益化していくか、どうお金を稼いでいくか、なんです。


__0円から1,000円、2,000円としていくこと、そもそもその価格設定も悩みそうですね。

河野:それはありました。スポーツの価値は表現しにくい・数値化しにくい部分があるんですよね。たとえばゴールの瞬間で「わっ!」と盛り上がったとしても、その場の衝撃って人には伝えられませんし、今のゴールが〇〇円ですとかってこともできない。ただ、その衝撃的なワンシーンを見ただけで、一撃でファンになっていただける方もいらっしゃるわけです。自ら作り出そうと思っても作り出せないことが起こりうる。これがスポーツビジネスの最大の価値だからこそ、ファンサービスや地域の方々との関わり方を含め、どうマネタイズしていくかっていうところは、今も追及し続けているところです。


__ある程度Jリーグのルールもあると思うのですが、収益を上げていくために、他にどんなことを挑戦されていると言いますか。

河野:やっぱりファンデベロップメントです。ファンの数を増やすこと、熱量を持ってくださるファンを増やすこと。この領域は事業の基盤となるポイントです。試合が開催されるスタジアムがあり、そこにファンが集まる。その周辺に様々な事業がある。事業が顧客を創造し、ファンとなっていく。ファンがファンを形成する。このサイクルの中でどれだけ最善を尽くしていけるか。逆に私たちが愛されるクラブになるためにどんな活動をしていけるか等々は、まさに"整備"の内容の1つになってきますね。


__より具体的に、聞かせていただけませんか?

河野:売上の柱となるスポンサー営業でお話すると、ユニフォームに企業名を載せることで「広告効果がこれくらいあるのでいくらです」という商品提供でした。ただ、これがかなり変わってきていて「広告媒体」という価値ではなく、リアルに1万人が集まっている場所で、お互いの強みをどうアップデートできるか、どう新しい価値を生み出せるかといった企画ではないと、企業側もお金を出さない。「サッカーが流行っているからとりあえず露出してみよう」といったニーズは、無いに等しいんです。だからこそ、クラブとしてスポンサー企業様にどんな価値提供ができるかを考える。トリニータと〇〇企業さんが一緒になって頑張る。そういう姿を見て、ファンがより試合以外のところに興味を持っていただける。そんな風に、地域と一緒になって頑張る姿をより見せていこうとしている形です。





コロナが教えてくれたこと。改めて感じたスポーツの価値。

__チケット0円時代もあったとのことで、売上的にも厳しかったと思うんですが、売上げられたお金をどんな形で形にしていったんですか?

河野:仰る通り、当然チームとしても限られた予算の中で活動するわけです。私たちフロントとしても、チーム予算はいくらで、どこにどのくらいお金を使えるか、財務的にキャッシュフローを算出していく中で分配する必要がある。スポーツの価値を伝えるために、どこに投資していくのが正解か……と。そんな中でフロントとしては、マーチャンダイジング事業の再構築に着手し、グッズ、スタジアム飲食、ECサービスを内製化していきました。本当にコツコツ、コツコツですね。


__スポンサー営業のお話もありましたけど、本当に全員で一致団結しながらクラブを経営されていたんですね。

河野:結果的に2019年のJ1昇格と同時に経営再建を完了することができたんです。整備してきた1つひとつのおかげで、チームの昇格とスタジアムへの集客、経営再建の完了が重なり合った瞬間は感動しましたね。ただ翌年にはコロナ禍となってしまったので、また難しい時期に入ってしまったと言いますか……。


__なかなか興行が行えない時期もあったと思いますが、そのときって河野さんはどんなことを感じていたんでしょうか?

河野:改めてスポーツの価値をひしひしと感じられました。当然このような状況は初めての経験でしたけれど、たとえば興行が行えない、サッカーが観られないという状況になったからこそ、改めてスポーツ観戦における魅力は、個人個人違う感情を持っているにせよ「やっぱりスポーツのある生活って良いよね」といった再認識ができたんです。やはりスポーツはリアルの現場でやるものですから、現場に集中しつつ、かつ昨今のトレンドとかはどんどんスポーツ観戦に組み合わせていくことで、ファンエンゲージメントをより高められるんじゃないかなと。


__ということは、これから新しい取り組みをどんどん増やそう!という形ですね?

河野:いえいえ。画期的な最新テクノロジーを使って何かしよう!ってことは正直ないんです。とはいえ、昨年はクラウドファンディング(大分トリニータ一致団結プロジェクト~みんなの想いをピッチへ~)を通じて9,000万円近く集めることができましたから、本当に多くの方に感謝してもしきれないです。なかなかスタジアムに来られない状態の中で、私たちも新しい収入の形を創れたのは良かったですし、WEBオークションなどチケット以外のto Cのサービスを提供できたことで、結果的にファンの方々もさらに増やすことができたましたから。わかりやすく馴染みある形で、ファンの方、地域の方、スポンサーの方……大分トリニータにまつわる全ての方に、恩返しできたらと思います。





もしこれから「大分トリニータで働きたい!」と言ってくれる方がいるのなら。

__恩返しという意味でも、J2降格してしまったものの、天皇杯の準優勝は未だ鮮明に記憶しています。それによる効果は大きかったんじゃないですか?

河野:J2への降格が決定していたものの、新国立競技場での天皇杯決勝の舞台は価値あるものとなりました。惜しくも準優勝という結果でしたが、しばらく連絡をとっていなかった人から「感動した」「元気をもらった」という連絡を多くいただきました。実際今期はやはりコロナの影響で数字的に厳しかったんですが、仰る通り天皇杯でインパクトを残せましたから、このような価値を定量・可視化して収益につなげていくことを目指していきたいと考えています。


__だからといって、以前のようにスタジアムが人で溢れる……みたいなシーンを見るまでにはもう少し時間がかかりそうですよね。

河野:そこも当然、リーグと協議しながら……にはなるんですが、コロナによる観戦の仕方や座り方っていうのは、ファンの方にとっては良い側面もあったりするんですよね。入場規制も緩和されつつある一方で、今のタイミングでできることやファンの方が求めていることを、これまでの積み重ねのようにまた1つずつ前進していけたらいいと思っています。だからこそ、良い意味でアナログに、目の前のことをコツコツやっていけたらと思います。


__チームに所属する選手はもちろん、スタッフの結束力もコロナを経験したからこそ高まったのでは?と想像しますが、その点はいかがでしょうか?

河野:それは間違いなくあります。ただ、もう1つの要素として、やはりファンの方々の存在なしに語れないことって非常に多いです。J3に落ちたときでも、現在までずっと応援し続けてくださるファンの方がいらっしゃいますから、その方々、そしてこれから大分トリニータを好きになってくださる方々のためにも、こんな状況だけど全力で頑張ろうって、スタッフ同士コミュニケーションはよく取っていて。そういう意味でも、結束力は高いと思いますし、社内も良い雰囲気だなと感じますね。


__ありがとうございます!……ちなみに最後に、これからトリニータさんに入りたい!という方に向けて、一言いただけませんか?

河野:そうですね。やはり地方のクラブで、限られた人数の中で仕事をしていますから、本当に色んな仕事が回ってきます。受け身ではなく主体性や自主性がないと、置いていかれてしまうかもしれません。1年間の興行のスピードって本当にあっと言う間なので。裏を返せば、やる気があってどんどん自分から意見を求め成長していける方っであれば、早期に何か大きな仕事を任せたりするケースもあります。学ぶ機会は本当に多いので、まずは大分トリニータを知るところから始めていただけると、私たちとしても非常に嬉しく思います。





【PROFILE】

河野真之|大分トリニータ(J2):経営企画部本部・本部長

東京の大学で会計・税務・財務を学んだ後、地元である大分に戻り会計事務所で10年以上活躍していた。当時の担当先に『大分トリニータ』があり、顧問担当として携わっていたとのこと。当時2010年代前半の大分トリニータはまさに経営危機の中にあったことから、クラブの経営再建を担う形で2015年に転職。数億円あった債務を2019年のJ1昇格と同時に完済まで導いた立役者である。

同チームへの転職理由として「サッカーには全く縁がなく学生時代で、サッカー自体そこまで詳しくはない」と語る一方で「海外・日本のスポーツクラブの経営、スポーツビジネスの財務の作り方には非常に興味を持っていたこと、前職時代に関わりを強くもっていた地元・大分のサッカークラブに貢献したいと考え転職を決めた」と力強く語ってくれた。


▼クラブのため、日々全力で活動している大分トリニータの甲斐さんの記事はコチラ!


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2009年以降、まさに経営危機が表面化していたのはJ2所属クラブの『大分トリニータ』。深刻な債務超過により「クラブを存続させられるかどうか……」というギリギリのところまで危ぶまれていた同チームではあったが、2021年の冬、彼らは浦和レッズと天皇杯決勝を争うまでになっている。

この10年あまり、J2→J3→J2→J1→J2……と、昇降格を繰り返し、倒されても何度でも立ち上がってきた彼ら。ただクラブとしては興行だけでなく、最大約12億円の債務との闘いもあったという。

「2019年、J1昇格とともに債務がなくなり、経営再建を完了できたんです」と冷静に語るのは、大分トリニータの経営企画部本部・本部長の河野氏。河野氏は2015年に同社へ転職してきたものの、前職の会計事務所時代から大分トリニータを顧問担当としてずっと見てきた。転職する前も、転職した後も。長く同チームを見てきた彼に「クラブの経営」という部分にフォーカスして話を伺うことができた。

「チームが試合を行うことが商品だから、売上を創るのは難しい」と語る河野氏。インタビューでは、経営再建真っただ中のエピソードを含め赤裸々に語っていただいた。『クラブ経営』という一見難しそうなことも、大切なことは意外にも……。


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経営危機からの再建。大きな施策で逆転を狙うより、目の前のことをコツコツと

__遡りますが、河野さんは大分トリニータさんが経営的にも苦しかった時期に転職されたと伺っています。まずは当時の話、聞かせていただけませんか?

河野:元々は私は会計事務所で会計や税務・財務を専門として働いていまして、担当先の1つ、顧問担当という形で大分トリニータとは携わっていました。ですから、2015年に私は大分トリニータに転職したのものの、転職以前から経営が苦しいなどなど、元々どういう状況かというのは知っていた状態で入ったんですよ。


__元々取引先だったわけですか!……苦しい状況下、河野さんはまさに再建を担っていたと伺っています。

河野:2000年代のJリーグは、サッカーそのものは非常に盛り上がっていたものの、クラブ経営の面では財務基盤が未整備なクラブが多かったんです。特に当社のような地方のクラブは資金が潤沢にあるわけではないので、厳しい状況が長く続いていました。一方、ホームスタジアムである昭和電工ドーム大分は、2002年に日韓ワールドカップの会場となったスタジアムです。この翌年2003年から2009年までの7年間「J1」に在籍していました。だから貴重な場所として継続していく必要が絶対にあると考えてはいました。その一役を担うという意味で、転職してきた形ですね。


__ファンにとって思い出深い場所でサッカーが見られなくなるのは悲しいですからね……。まさに債務超過真っただ中、河野さんはどのような活動をされていたんですか?

河野:私自身、サッカーに縁はなかったですしサッカーに詳しくはないですが、海外や日本のクラブがどんな経営をしているか、経営規模、経営母体、スポーツビジネスの財務の作り方等々は色々調べていたんです。ですから「新しい方針を打ち立てた!」とかセンセーショナルなことはしていなくて、とりあえず経営体制の"整備"を徹底していました。


__"整備"と言いますと?

河野:当時はまだJリーグの興行も"導入フェーズ"と言いますか「とにかく見に来てね!」って無料招待券をいっぱい配ったりしていたんですよ。無料じゃなくても「500円でいいから」とか。そういう無料・格安で観戦に行けるような状況だったんです。結果、老若男女多くの方が見に来てくださっていたんですが、一方本質的なスタジアムの価値やサッカーを通じた感動など、私たちが提供する価値に対してお金を払うというモデルが無かった。それを生まない限り新たな選手獲得や施策って、予算的に大きくしていけない。だからまずは『収益モデル』の整備ですね。ただ整備しているタイミングで、私たちはJ2からJ3に落ちてしまったんですが……。





「チームが試合を行うことが商品」だからこそ、経営は難しい

__無料で会場に足を運べていた時代から、少しずつ"整備"をしていく中で、河野さんはどんなことを意識していたんでしょうか?

河野:意識していたのは収益化ファンデベロップメントの2つですね。スポーツクラブの経営の難しいところは「チームが試合を行うことが商品」であり、それをいかに収益化していくか、どうお金を稼いでいくか、なんです。


__0円から1,000円、2,000円としていくこと、そもそもその価格設定も悩みそうですね。

河野:それはありました。スポーツの価値は表現しにくい・数値化しにくい部分があるんですよね。たとえばゴールの瞬間で「わっ!」と盛り上がったとしても、その場の衝撃って人には伝えられませんし、今のゴールが〇〇円ですとかってこともできない。ただ、その衝撃的なワンシーンを見ただけで、一撃でファンになっていただける方もいらっしゃるわけです。自ら作り出そうと思っても作り出せないことが起こりうる。これがスポーツビジネスの最大の価値だからこそ、ファンサービスや地域の方々との関わり方を含め、どうマネタイズしていくかっていうところは、今も追及し続けているところです。


__ある程度Jリーグのルールもあると思うのですが、収益を上げていくために、他にどんなことを挑戦されていると言いますか。

河野:やっぱりファンデベロップメントです。ファンの数を増やすこと、熱量を持ってくださるファンを増やすこと。この領域は事業の基盤となるポイントです。試合が開催されるスタジアムがあり、そこにファンが集まる。その周辺に様々な事業がある。事業が顧客を創造し、ファンとなっていく。ファンがファンを形成する。このサイクルの中でどれだけ最善を尽くしていけるか。逆に私たちが愛されるクラブになるためにどんな活動をしていけるか等々は、まさに"整備"の内容の1つになってきますね。


__より具体的に、聞かせていただけませんか?

河野:売上の柱となるスポンサー営業でお話すると、ユニフォームに企業名を載せることで「広告効果がこれくらいあるのでいくらです」という商品提供でした。ただ、これがかなり変わってきていて「広告媒体」という価値ではなく、リアルに1万人が集まっている場所で、お互いの強みをどうアップデートできるか、どう新しい価値を生み出せるかといった企画ではないと、企業側もお金を出さない。「サッカーが流行っているからとりあえず露出してみよう」といったニーズは、無いに等しいんです。だからこそ、クラブとしてスポンサー企業様にどんな価値提供ができるかを考える。トリニータと〇〇企業さんが一緒になって頑張る。そういう姿を見て、ファンがより試合以外のところに興味を持っていただける。そんな風に、地域と一緒になって頑張る姿をより見せていこうとしている形です。





コロナが教えてくれたこと。改めて感じたスポーツの価値。

__チケット0円時代もあったとのことで、売上的にも厳しかったと思うんですが、売上げられたお金をどんな形で形にしていったんですか?

河野:仰る通り、当然チームとしても限られた予算の中で活動するわけです。私たちフロントとしても、チーム予算はいくらで、どこにどのくらいお金を使えるか、財務的にキャッシュフローを算出していく中で分配する必要がある。スポーツの価値を伝えるために、どこに投資していくのが正解か……と。そんな中でフロントとしては、マーチャンダイジング事業の再構築に着手し、グッズ、スタジアム飲食、ECサービスを内製化していきました。本当にコツコツ、コツコツですね。


__スポンサー営業のお話もありましたけど、本当に全員で一致団結しながらクラブを経営されていたんですね。

河野:結果的に2019年のJ1昇格と同時に経営再建を完了することができたんです。整備してきた1つひとつのおかげで、チームの昇格とスタジアムへの集客、経営再建の完了が重なり合った瞬間は感動しましたね。ただ翌年にはコロナ禍となってしまったので、また難しい時期に入ってしまったと言いますか……。


__なかなか興行が行えない時期もあったと思いますが、そのときって河野さんはどんなことを感じていたんでしょうか?

河野:改めてスポーツの価値をひしひしと感じられました。当然このような状況は初めての経験でしたけれど、たとえば興行が行えない、サッカーが観られないという状況になったからこそ、改めてスポーツ観戦における魅力は、個人個人違う感情を持っているにせよ「やっぱりスポーツのある生活って良いよね」といった再認識ができたんです。やはりスポーツはリアルの現場でやるものですから、現場に集中しつつ、かつ昨今のトレンドとかはどんどんスポーツ観戦に組み合わせていくことで、ファンエンゲージメントをより高められるんじゃないかなと。


__ということは、これから新しい取り組みをどんどん増やそう!という形ですね?

河野:いえいえ。画期的な最新テクノロジーを使って何かしよう!ってことは正直ないんです。とはいえ、昨年はクラウドファンディング(大分トリニータ一致団結プロジェクト~みんなの想いをピッチへ~)を通じて9,000万円近く集めることができましたから、本当に多くの方に感謝してもしきれないです。なかなかスタジアムに来られない状態の中で、私たちも新しい収入の形を創れたのは良かったですし、WEBオークションなどチケット以外のto Cのサービスを提供できたことで、結果的にファンの方々もさらに増やすことができたましたから。わかりやすく馴染みある形で、ファンの方、地域の方、スポンサーの方……大分トリニータにまつわる全ての方に、恩返しできたらと思います。





もしこれから「大分トリニータで働きたい!」と言ってくれる方がいるのなら。

__恩返しという意味でも、J2降格してしまったものの、天皇杯の準優勝は未だ鮮明に記憶しています。それによる効果は大きかったんじゃないですか?

河野:J2への降格が決定していたものの、新国立競技場での天皇杯決勝の舞台は価値あるものとなりました。惜しくも準優勝という結果でしたが、しばらく連絡をとっていなかった人から「感動した」「元気をもらった」という連絡を多くいただきました。実際今期はやはりコロナの影響で数字的に厳しかったんですが、仰る通り天皇杯でインパクトを残せましたから、このような価値を定量・可視化して収益につなげていくことを目指していきたいと考えています。


__だからといって、以前のようにスタジアムが人で溢れる……みたいなシーンを見るまでにはもう少し時間がかかりそうですよね。

河野:そこも当然、リーグと協議しながら……にはなるんですが、コロナによる観戦の仕方や座り方っていうのは、ファンの方にとっては良い側面もあったりするんですよね。入場規制も緩和されつつある一方で、今のタイミングでできることやファンの方が求めていることを、これまでの積み重ねのようにまた1つずつ前進していけたらいいと思っています。だからこそ、良い意味でアナログに、目の前のことをコツコツやっていけたらと思います。


__チームに所属する選手はもちろん、スタッフの結束力もコロナを経験したからこそ高まったのでは?と想像しますが、その点はいかがでしょうか?

河野:それは間違いなくあります。ただ、もう1つの要素として、やはりファンの方々の存在なしに語れないことって非常に多いです。J3に落ちたときでも、現在までずっと応援し続けてくださるファンの方がいらっしゃいますから、その方々、そしてこれから大分トリニータを好きになってくださる方々のためにも、こんな状況だけど全力で頑張ろうって、スタッフ同士コミュニケーションはよく取っていて。そういう意味でも、結束力は高いと思いますし、社内も良い雰囲気だなと感じますね。


__ありがとうございます!……ちなみに最後に、これからトリニータさんに入りたい!という方に向けて、一言いただけませんか?

河野:そうですね。やはり地方のクラブで、限られた人数の中で仕事をしていますから、本当に色んな仕事が回ってきます。受け身ではなく主体性や自主性がないと、置いていかれてしまうかもしれません。1年間の興行のスピードって本当にあっと言う間なので。裏を返せば、やる気があってどんどん自分から意見を求め成長していける方っであれば、早期に何か大きな仕事を任せたりするケースもあります。学ぶ機会は本当に多いので、まずは大分トリニータを知るところから始めていただけると、私たちとしても非常に嬉しく思います。





【PROFILE】

河野真之|大分トリニータ(J2):経営企画部本部・本部長

東京の大学で会計・税務・財務を学んだ後、地元である大分に戻り会計事務所で10年以上活躍していた。当時の担当先に『大分トリニータ』があり、顧問担当として携わっていたとのこと。当時2010年代前半の大分トリニータはまさに経営危機の中にあったことから、クラブの経営再建を担う形で2015年に転職。数億円あった債務を2019年のJ1昇格と同時に完済まで導いた立役者である。

同チームへの転職理由として「サッカーには全く縁がなく学生時代で、サッカー自体そこまで詳しくはない」と語る一方で「海外・日本のスポーツクラブの経営、スポーツビジネスの財務の作り方には非常に興味を持っていたこと、前職時代に関わりを強くもっていた地元・大分のサッカークラブに貢献したいと考え転職を決めた」と力強く語ってくれた。


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