幼児体育の在り方にメスを。「ぜひとも能動的な社会人になってほしい」と願い活動する体操教室の理念

パル・クリエイション 髙崎利子|佐藤真里子

幼児体育の在り方にメスを。「ぜひとも能動的な社会人になってほしい」と願い活動する体操教室の理念

パル・クリエイション 髙崎利子|佐藤真里子

子どもの頃、たとえば小学校の頃に遊んで「楽しかったことは?」と聞かれたら、あなたは何と答えるだろう。

ドッチボール、カードゲーム、鬼ごっこ、運動会、修学旅行、etc。走馬灯のようにいろんな思い出が巡ってると楽しい。この"楽しかった"という思い出は色褪せることなく、成人してもずっと心に刻まれてるはずだ。

さて一方で、「苦手だったものは?」と聞かれたら何と答えるだろう。そしてそれはなぜ"苦手"になってしまったのだろう。できなかったから?誰かに何か言われてしまったから?それとも……

「最初から苦手だったことは絶対にない。運動を通じて楽しいこととか成長を実感することは必ずある」

力強く語るのは、東京都文京区で幼児体操教室を運営する『パル・クリエイション』の社長・髙崎氏と体操部門の責任者である佐藤氏。言われてみれば、小学生の頃、私はずっと鉄棒で逆上がりができなかった。だが、友人の力も借りながら挑戦し続けた結果、できるようになって嬉しかった思い出がある。あの日以来、鉄棒にはすごくハマったものだ。

話を戻すが、地方に比べ都内の学校では校庭を広く取っているところが多いとは言えない。交通量も多い街中で「それはダメ」「危ないよ」というシーンも比較的多い。「でもそれじゃ、子どもたちが幼少期に身体を動かして楽しいって経験ができない。運動しない状況で幼少期を過ごしたらまずいんじゃないの?」そんな想いから始めた教室の理念やリアルな話、また最後には今後の採用計画について語ってもらった。この記事は、教室で働きたい!と転職を希望する人だけではなく、これから子育てにまい進しようとしている方にもぜひ読んでほしい。たくさんのヒントが、この中にはあるから。


(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)





[左]:体操部門責任者:佐藤氏 [右]代表取締役:髙崎氏


たとえば鉄棒を極めたところで、それって本当に面白いの?可能性は広がるの?

__御社の創業から34年。様々な歴史があったと思うのですが、まずは『パル・クリエイション』さんの特色について伺いたいです。

髙崎:東京の文京区、この辺に住んでいたら、未就学児が勝手に一人で外に遊びに出るなんてことは出来ないんですよ。緑がいっぱいの、車の通りもほとんどない安全な場所なら、子供たちは自然とかけっこをしたり、木登りや虫取りなんかをするでしょう? でもこの辺りはそんな環境じゃない。子供が外に出るときは、必ずお母さんと一緒。だけど親と一緒だと「それはダメ」「危ない!」ってなるじゃない。そうすると子ども達は、自分が選択して自由に身体を動かすことがしにくい。そんな環境で幼少期からずっと暮らしていたら、まずいんじゃないかって思ってたんです。

佐藤:元々の始まりは、高崎が一人で造形教室を開いていた時、教室が終わった後に子供たちから目の前の公園に誘われて一緒に遊んだところからだったんです。子ども達は体を使った遊びを余り知らなくて、「どんジャンケン」や「ドロケイ」を教えたら夢中になった。身体を動かすのも巧みじゃないし、方法も余り知らない。そこから都内に居たとしても、思う存分身体を動かせる環境が創りたいっていうのがスタートだと聞いています。

髙崎:できれば毎日外がいいくらいなんですけど、なんでって外の方がやれることがいっぱいある。屋内だとマット運動、鉄棒って限られちゃうでしょう。外で起伏のあるところを走って、飛び降りたり、よじ登ったりすることでもっと色んな身体の動かし方が身に付く。より身体にかけられる負荷の幅が広いと言うかね。こういうことをちっちゃい子どもの頃からやっていれば、その後に何か一つのスポーツを選んでもすでに体は自由に動くようになっていて、スムーズに上達します。良いと思いません?

__た、たしかに。仰る通りです。私は田舎育ちだったので、恵まれてたんですね。改めて母には感謝です。

佐藤:本来はそういうフィールドが欲しいの。知り合いとかでいらっしゃいません?自由に使える広場を持っている人。山一個欲しいくらいなんです。マムシのいない(笑)。 

__や、やまっすか?(笑)

髙崎:本当にそうよ!もう河原を走り回れたりしたら、ものすごくラッキーだと思うんです。凸凹の石の上をピョンピョン跳んで走って、もう最高!まあ今の子どもたちにいきなりそんなことさせたら大変なことになっちゃうけど(笑)

佐藤:大怪我。(笑)。外遊びに出るとよく公園なんかで保育園の子ども達のお散歩に出くわすんですけど、うちの子供たちの遊び方はダイナミックでよくあちらの保母さんが驚いた顔をしています。もちろん安全には充分配慮した上でですが、普通に岩登りとかもやってますし。

髙崎:だから入会したての子どものお母さんたちは結構唖然とした顔で子どもの動きを見てますよ。そんなこともやるの?って(笑)。私たちからすると当たり前のことで、だって絶対にその方が良いって。ハツラツと動いて、いろんな可能性を広げられるのに、なんでも危険だからって規制してやらせないのは、勿体ないというかね。





最初から"苦手"なことは絶対にない。だからこそ最初から"得意"にするために

__私も幼少期は木に登ってカブトムシ取ったりしていました(笑)。それこそ、田舎であれば子どもたちが自然にというか勝手にやっていることが運動になっている。でも、都心部でそれをやるのは難しい。それをなんとかして子どもたちに体験させてあげたいという気持ちが、お2人は強いんですね。

佐藤:だからこそ、ウチは一時間の体操量にしても結構な量なので、体験に子供を連れてきたお母さんたちは「すごく動きますね」って。やっぱり他の教室も体験している方が多いので比べられるんでしょうが、「いや、まだまだ足りないです」って感じなんですけどね(笑)。見た人はそう思うみたいで。。

髙崎:だいたい、小学校の体操の時間で、子どもたちが実際に動いている時間ってめっちゃ少ないらしい。順番待ちで、並んでいる時間が長いの。実態をよく知る人に「45分のうち思い切り動いている時間が15分もあれば良い方だ」って聞いたことがあるわ。そんな体育じゃ意味ないでしょ。私たちは実質が欲しいのよね。45分あるなら45分フルで運動するという実質。

佐藤:最近は就職試験に運動を入れたほうがいいんじゃないかって声も上がっていたし、それくらい体力のない成人が多い。子供たちはまだしも、大人でそれじゃやばいですよね?(笑) 

__ぐぬ……。それは刺さりますね……(笑)

一同:あははは(笑)

髙崎:何をするにしてもそうだと思うけど、造形にしても体操にしても、楽しいと思わないと続けないよね。で、楽しくないと思った時点からやめてしまう。例えば私が、親子一緒の1.5才のクラスの造形の時間に、お母さんたちに「動物を描いてみて」って言うと、「私は小さい時から造形が苦手で・・・」という人がいます。でも最初から苦手だったはずはないの。誰かに「こうじゃない、こうしなさい」って言われて嫌いになっていったんでしょう。体操も同じ。縄跳びが楽しいと思える前に強制されてやらされたら、そして上手く跳べなかったら、人と比べられるのが苦痛でやらなくなる。挙句生涯スポーツ嫌いになったら大損ですよね。

佐藤:そうそう。だから単純にこっちが「これやります」って開示するだけじゃなくて「絶対楽しい!」って言わせるように開示するんです。「はいやるよー」って棒読みで言っても、子どもたちに楽しさは伝わらない。「やってみようか!!」って言ったら「そうだね!!!」って言ってくれる。それが大事なんです。だから最初社長にも、室内で何をどうやらせるかって散々言われて、「これでいいですか!これでいいですか!これで!!!どうでしょう!!!どうだ!!!!」って話し合ってました(笑)。

髙崎:あはは(笑)。でもそうなんですよ。ちっちゃな技術を黙々と訓練したところで、それは幼児に馴染まない。だったらもっと、パーーーっと派手に楽しく、遊ぶように動いてってやった方が、面白いと思いません?身体を動かすと気分までスッキリすることを実感できるよね。





"運動機能"も"考える力"も伸ばす。能動的な社会人になってほしいから

__教育の在り方のような話は非常にユニークですね!"楽しい"の継続が、子どもたちにポジティブな影響を与えている。その環境を創っているということ自体が、本当に素晴らしいと思います。

佐藤:体を動かすだけじゃなく、同時に頭の中も動かそうって考えてカリキュラムを組んだりはしています。いろんなことを子供達に投げかけて、それを理解させてフィードバックするっていうことを、わざとやっているんです。ウチの問いかけ、投げかけ方は面白いと思うんです。そのテクニックだけは負けない自信がありますね。

髙崎:極端だけど、頭だけ育っても意味ないじゃない?"そのこと"に対応できる子どもを育てないといけないのに、1はこれ、2はこれってやっても何の役にも立たないでしょう。もし津波が来たらどうするのって。校庭に出て先生が来るのを待ちましょう!って、それじゃ波にさらわれちゃうわけで。「おい、一緒に逃げようぜ!」って自己判断で言える子が必要なの。生きていくには、そういう自己判断能力を子どもの頃に養うことが大切。だから単純に運動機能の向上だけじゃなくて、考える力も伸ばせるように指導はしています。

__なるほど。ちなみに働く側に視点を移すと、当然やりがいは大きいと思うんです。一方で大変なこともあるのでは……?

佐藤:私たちにとってはそれが本望ではないんですけれど、結果それで小学校の受験に成功したっていう実績もあるわけです。都内のお母さんは教育熱心な方も多いので、それを狙ってウチに入ってくる子たちもいるんですけれど、でもそれって子供たちが自発的にそうしたいって望んでいる場合じゃないことの方が多い。私たちがやりたいことは、”受験のための体操”ではないんですが、とはいえそこに向き合わないのも違うじゃないですか。だから誠心誠意向き合うんですけれど、でもそういう子たちは受験塾にも通い、訓練され、だんだん疲弊していくのが見えてくる。

髙崎:そうそう。仮に小学校受験に成功しても、また先に行けば何かしらにぶつかるわけでしょ。今の話のように、お母さんの気持ちだけで進んでしまったら、子供は受動的な人になってしまう。能動的になれない。それが惜しいよね。是非とも能動的な人間になって欲しいのに「それを止めているのはあなたじゃない?」とお母さんに申し上げたい。でも、「そんなの関係なく、ただ技術だけ教えてもらえればいい」って言われたら、そこからは、手出し、口出しはできないじゃないですか。そこがこの仕事をしていると、一番難しいなって今も思いますね。





全国展開なんてとんでもない。この地に根差して全身全霊で取り組む

__リアルな話ですね。とはいえ、この教室に通ったお子さんの中にはたくさん体を動かして、それを楽しく感じている人も多いと思うんですが、その点に関してはいかがですか?

髙崎:凄いのは、子供たちが、卒業して10年20年経ってもまだ来るんです。「先生、元気?」って。フラっと時々現れたり、それこそ「就職決まりました」「結婚しました」「子どもできました」とか報告しに。いかに私たちの付き合った3年とか5年の中身が、週1回の教室にもかかわらず濃密だったかっていうのは、改めて嬉しいなって感じます。今は二世が来たりとかしています。

佐藤:元々ウチに通っていた子がお父さんになって、自分の子どもを入れてくれるケースってすごく多いんですよ。だから私たちも昔の感覚に戻ってしまって、お父さんを叱っちゃったりするんです(笑)。あぁヤバイ(笑)。と思ってすぐに切り替えますけど「子どもの方が上手ね」とか耳打ちしたりして(笑)。楽しくやっています(笑)。

__卒業生が返ってくるっていうのは嬉しいですね。口コミも広がっているでしょうし。

髙崎:だからこそ他には増やさないんですよ。ここだけ。ノウハウがあればできるってことじゃないので多店舗展開なんてとんでもない。結果、ココに来てくれる子どもたちも年々増えているので、本当に苦労しているのはスタッフを採用すること。誰か助けてー、スポジョバさん助けて―!って(笑)。

__ありがとうございます(笑)。今までのお話を伺っていると、御社にピッタリな人物像は、やっぱり身体をとにかく動かすスポーツやっていた人っていう印象なのですが、いかがでしょう?

佐藤:もうね、明るくて元気な子がいいですよね。

一同:あははは(笑)

佐藤:子どもが好きな人は多いと思うんですけど、どっちかっていうと運動できる人の方が少ないのかなって。いずれにしても、明るくて元気に身体を動かしてくれて、子どもが好きな人。

髙崎:さっきの話ではありませんが、どうしても幼児なので親御さんもいらっしゃいます。リアルな話も先ほどさせていただきましたけど、色んな人がいるわけなので。だからこそ人と接することが好き。なにかあってもめげない子がいいな。確かに大変なこともありますけど、それ以上に楽しいことが多いと思うんです。色んなことを考えて形にして、子どもたちと直接触れ合えて反応が直接返ってくるので、楽しいはずなんです。だからこそ新しく入ってくれる人自身も、全部仕事って見ないでまずは楽しんでもらいたい。

佐藤:あったかいし楽しいっていう雰囲気をつくっちゃっているので、子どもたちもみんな本当に人懐っこいんですよ。「わー!!」って子どもたちから声かけてくれる。だから来た瞬間から、初対面から子どもたちと仲良くできる。そういう意味でも、ココは凄く良い環境だと思います。

髙崎:ホント、自分の親じゃないのに、見学に来ていたよそのお母さんのところにもよって行っちゃうくらいなので。そろそろ来ますよ、子ども達。そしたら「お兄ちゃん、遊ぼう!」って言われると思うよ。(笑)

__子どもたちの将来のことを本気で考える非常に良いキッカケにもなり、たくさん勉強させていただき感謝しかないです!教室が始まるまでスタンバイしておきますね(笑)。今日は本当にありがとうございました!





【PROFILE】

代表取締役社長・造形担当:髙崎利子

大学卒業後、小学校の教員として従事。その後旦那様の留学に伴い5年間アメリカへ。帰国後は再び小学校の教員を希望したが、知人に相談したところ「あなたは1人でやったほうが向いているわ」と助言をいただいたことや、周囲から「先生に子どもを見てほしい」と多く要望受けたことから、1人自宅で造形教室を始める。ただ家の目の前に公園があり、造形が終われば「遊んで遊んで」と子どもたちがねだったことで、どんじゃんけんやドロケなどを教えていた。楽しそうに遊ぶ子どもたちの姿を見て「子どもはやっぱり作ったり壊したり、身体を動かすのが仕事。今は色んな規制でそれが取られちゃってるから、楽しみを返してあげたい」と想い、体操と造形を組み合わせた『パル・クリエイション』を開校し現在に至る。

「本の虫なので、仕事のとき以外は活字を追っている」と語るほどの読書家。「本当は絵が描きたいんだけど、ハマったら出てこれないので封印しています(笑)」とも話してくれた。また、用事が無くても1日8,000歩は歩こうと努力しているとのこと。


体操部門責任者:佐藤真里子

元々は幼稚園教諭志望。ただ、身体を動かすことがとにかく好きで体育系を選択したという。『パル・クリエイション』開校時、体操担当はいわゆる「保育」の先生が担当していたことで物足りなさを感じていた社長から声をかけられ「事務仕事もなくて運動だけ教えられるって最高じゃん!」と想い同社へ就職。創業間もない時から会社を支えるコアメンバーの1人である。「ごめんね、今は事務仕事が増えちゃって」と社長が言えば「何言ってんすか、社会勉強ですから!楽しくやらせてもらってます(笑)」と、持ち前のポジティブさを発揮し教室内・社内ともに明るい雰囲気をつくっている。

スポーツのバックボーンはバスケットボール。コロナの影響でプレイすることはできていないが、走り込みだけは欠かさない。バスケ女子日本代表が東京五輪でメダルを獲得した際は、興奮して眠れなかったとのこと。それを機にバスケを観るのも好きになったそう。


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設立年月 1996年11月
代表者 代表取締役社長:小林利子
従業員数 -
業務内容

幼児を対象に体操と造形を指導

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