小学生の頃の夢を叶えた人。あなたの周りにも数少ないと思いますがいるはず。裏を返すと、夢をどこかに置いてきたまま、全く違う仕事をしている方がほとんどでは?成長課程で夢も変わるでしょう。では実際、どこまでその夢に近い仕事をしているか。人それぞれだと思いますが、ちなみにあなたはいかがでしょうか?
今回は『Subroadcast』というYouTube・バスケチャンネルに出演されている皆様にインタビュー!その第一弾として、『ms tokyo(渋谷店)』というバスケショップの店長でありながら、吉本興業所属の芸人として活躍されているホタさんを直撃。「ショップの店長」という部分にスポットを当てながらお話を伺いましたが、聞いている内に、私の仕事の価値観も良い意味でだいぶ変わった気がします。
(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)
__ホタさんは何足もの草鞋を履いていらっしゃいますが、そもそも何者なんですか?(笑)
ホタ:自分でもよく理解できてないんですが(笑)一応、ここ(ms tokyo)の店長をやらせてもらってて、都市伝説芸人っていう枠組みで吉本の芸人もやっています。ちなみに高校までバスケはしっかりやっていて、今でこそ麒麟の田村さんと一緒のバスケチームでプレイさせてもらったりもしています。ウチのお店でも、田村さんのYouTubeを撮影したりしていますよ!
__おぉ…!すごい![お笑いxバスケ]というジャンルでご活躍されているんですね。となると、どのような経緯でバスケショップの店長さんをされることになったんですか?
ホタ:NSCの若手は、渋谷の劇場でデビューするまで活動をするんですよ。そこで私も『スパルタン』というコンビを組んで芸人として頑張っていたんですが、ちょうど同時期に渋谷をブラブラしていたら、このお店を見つけたんです。「OPENしたばっかりなんで寄ってってください!」って呼び込みを受けたのが最初かな?
__もともとは普通のお客さんでしたか!
ホタ:そうです!当時は芸人としての稼ぎはなく、コンビニ夜勤とか、Uber Eatsの前身であろうデリバリーとか、スポーツジムとかそういう仕事をして生活費を稼いでいたので、めちゃめちゃしんどかったですね。楽しくないし。でも小学校からの夢でしたし、活動も好きだったので、なんとか食いつないでたって感じです。それを4年くらいやっていたので「現状をなんとかしたい…」と悩んだりした時期もありました。
__決して楽ではない道のりを歩んで来られたとはいえ、それを打開するために、ホタさんはどんなアクションを起こしたんですか?
ホタ:とにかく今を楽しもう!と思って、ショップ行ってお笑いしてまたショップ寄って夜勤のバイトして…と、時間を見つけてはよくお店に通ってました。やっぱりバスケ好きなので、ショップの人と話すのがすっごい楽しくて、新しいバッシュを見ることにワクワクしてて。ちょうどその頃、日本に上陸したばかりの最新の物、バスケ好きが震える物しか置いてないっていうお店のコンセプトも知って、ますます『ms tokyo』にハマっていきましたね。そんな日々を過ごしていたら、ある日仲の良い店員さんから「よかったらウチで働かない?」って声かけてもらえたんです。あのときは本当に嬉しかったなぁ。
__めちゃくちゃラッキーと言えばそれまでですが、それ以上に何回も足を運んだからこそ生まれた結果ですね!
ホタ:これは後日知ったんですが、僕に声をかけてくれた仲良しの店員さんは、社長さんだったんです(笑)採用の決裁権を持っていたので、それもラッキーでした。あとはやっぱり、僕がその人に強烈に憧れてた。話していてすごく満たされるし、何より人としてカッコよかった。「バスケを盛り上げたい!」って、とんでもない熱量で動いている社長を見ていたから、声かけてもらったときは「ぜひともやらせてください」って即答。その瞬間は、今も鮮明に覚えています。
__憧れの人に声をかけてもらえるなんて、本当に素敵です。晴れてバスケショップの店員さんになったわけですが、当時のことも伺えますか?
ホタ:僕が芸人だから、というのもあるんですが「芸人がやってるバスケショップ」にはしたくなかったんですよ。やかましいじゃないですか(笑)どっちだよ!ってなるし(笑)両方の側面を出して「カモンカモン!」みたいにやってたらめんどくさい芸人の店員ですし(笑)だから僕自身ではなくお店のブランディングを頑張ることだけに注力して、たとえばInstagramで情報発信したりしていました。
__それはそうですね(爆笑)。ちなみにファンから店員さんになったときのギャップや心境の変化っていかがでした?
ホタ:ただ単純に「好き」っていう気持ちだけだったので、お客様に勧めるときに「カッコいい」とか「オシャレ」とかしか言えないのは辛いというか、店員としてダメだなと思って。個人的な好みだけで売ることはしたくないなって思っていましたね。だからこそパーツの名前とか1つひとつの機能とか、一生懸命勉強しました。結果的に「このバッシュはこの機能があるから自分に合ってるかもな」とか、そういう見方ができるようになって、提案も変わっていきましたね。
__デザインではなく、ポジションやプレイスタイルに合わせた提案ができるようになっていったんですね。
ホタ:僕の中で靴は、その人のパフォーマンスを最大限に発揮してくれる武器だと思っていて、それぞれに魅力があるんです。だからお客様に合ってないと思えば「合ってないですよ」ってハッキリ言えるようにもなりました。でも未だにデザイン重視で買ってしまって、よくないレビューをされることもあります。そういうときは、とても悲しい。
__バッシュで言うと、最近は各メーカーでNBA選手のシグニチャーモデルが増えているだけに、デザイン重視で買う人も多いと思うんです。イメージが先行するというか。そういう買い方をしてしまって、合わない靴を履いているプレイヤーがいるということですか?
ホタ:仰る通りです。正しい情報を集めないままバッシュを買って「合わない」「苦手」ってなるのって違うと思っていて。そもそもメーカーさんが何十年も研究して造ってきているのに、変なものを造るわけないじゃないですか。昨日造った靴じゃないし(笑)もちろんデザインは大切ですが、だからこそ僕は「このバッシュはこういうメリットがあります。ただ、こういう側面もありますよ」って言うことだけは必ず意識しています。
__ものすごく中立ですね!買う側も知識を得た上で購入できるので素敵です。それで言うとホタさんは、どんなときにやりがいを感じるんですか?
ホタ:たとえばAというバッシュ目当てで買いに来た方がいて。デザインは好きだけど、どうしても足に合いませんと。そういうときに、色々ヒアリングをして「こういうデザインが好きかな。こういう機能あったら嬉しいかな?」って考えてBを提案する。それがビターっとハマったときは、脳内麻薬が爆発しますね(笑)
__(笑)!売上云々よりも、そこにホタさんのプライドを感じます!
ホタ:僕はウチのお店で買ってくれたプレイヤーたちが、このバッシュに出会ってよかった。最高のパフォーマンスができるようになった!って思ってほしいだけなんです。だから極端ですが、お店の全てのバッシュを試して全部合わないってなったら「買わないで」とも言います。まぁ、それこそ売上がめちゃめちゃ良いわけではないんですが、でもそれ以上にバッシュの悪口のない世の中にしたいなっていう気持ちも強いんですよ。
__逆に、そういうことを言われてしまったときが、仕事をしててツラいときですか?
ホタ:そうですね。「前のバッシュ最高だったんですけど、もうボロボロすぎて機能を果たせてなくてエアーも潰れすぎてるから、次の買いに来ました!」のほうが、そりゃテンションは上がります(笑)「こんなに大切に履いてくれる人なんだ」って思えるから「よっしゃー!」って。僕がバッシュを愛しすぎてるが故に「このバッシュ、クソだな」とか言われない限り、ツラいってことはないです(笑)
__バッシュがクソとは、なかなか店員さんに言わないとも思うので…(笑)ちなみに今は店長さんですが、将来は社長さん?それとも芸人として大成したいとか、将来的な目標も伺えますか?
ホタ:それが、僕そういう目標の立て方をしていなくて。ないんですよ。
__え、そうなんですか!いろんなことをやられているだけに意外です。
ホタ:大きい目標もなければ小さい目標もない。もちろんお店を盛り上げたい!とか今の目標はありますが。そういう話で言うと僕の目標は「やっていたい」というすごくハードルの低いところにあると思っていて。お笑いをやっててとっても楽しい。ショップでバスケ関係の人と繋がれて楽しい。それだけで幸せなんですよね。その状態をずっと絶やさないことが、最大の目標かもしれません。
__最高の生き方かもしれないですね。働いててストレスがないって。ある種人生のゾーンに入ってると思います。
ホタ:僕もコンビニ夜勤時代はめちゃめちゃしんどかったからわかるんですが、そうなるとマイナスから始まって、楽しいことでプラスして結果ゼロになっちゃうじゃないですか。それ意味ないなと思って。店員になれたのはたまたまでしたが、こういう環境に身を置けて、プラスがどんどん積み重なって楽しく毎日過ごしている結果、たとえばバスケカフェの『Coast 2 coast』と繋がれたり、麒麟の田村さんのチームに入れてもらえたりしたのかなって思ってます。
__ホタさんの働き方というか生き方が、それぞれ良い具合に融合しているんですね!芸人さんなので「一旗あげたる!」みたいなマインドがあるのかとてっきり…。
ホタ:ないです(笑)ないですって言うと語弊がありますが、僕は芸人であり続けたいだけなので。よく若手は「絶対売れたい!」とか言うじゃないですか。でも売れた先何したいかが明確じゃない人も多くって。なんか無理に目指しすぎだなって思ったりもしますね(笑)
__「目指しすぎ」ってすごく刺さります!となると、世に言う『趣味を仕事に』って、ホタさんはどう捉えていますか?
ホタ:どのレベルで携わりたいかっていうボーダーを明確にしてから選んだほうが、僕は良いと思います。そこは芸人と一緒で、なった先にどうしたいか。じゃないと「意外と大変」って好きなものも嫌いになったりしちゃいます。あとは自分の心がどれだけ乗っかれるか。どんな作業をしてても「これやってる自分が好き」って思えるか。偉そうに言っちゃいましたけど、でも目指しすぎないで、目の前の”楽しい”を積み重ねたら、将来はきっと、とんでもなく大きな”楽しい”があると僕は信じてます!
__いい言葉ばかり!今回はありがとうございました!
【PROFILE】
ホタ (堀川 翔) / 1990年生まれ・東京都板橋区出身
気が付いたときからバスケを始める。埼玉県の強豪高校に進学し、当時のトレーナーに憧れ鍼灸の専門学校に通うが、卒業後は小学生の頃から夢見ていたNSC東京18期のお笑い芸人として『スパルタン』というコンビを組みデビュー。同期には、おばたのお兄さん、ひょっこりはん、レインボーなどがいる。その後、渋谷にOPENした『ms tokyo』に出会い、現在店長として活躍中。自身の活動を通じてバスケを盛り上げたいと、麒麟・田村氏プロデュースのバスケ部にも所属。一方、バスケカフェ『Coast 2 coast』と連携し『Subroadcast』というYouTubeチャンネルも開設。座右の銘は「宇宙選抜」。マイブームはオリジナルTシャツ作りとアニメ・エヴァンゲリオンの実況。
★ホタさん所属の『Subroadcast』のYouTubeチャンネルはコチラ
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