始まりは「ガンバ大阪のアルバイト」。モノづくりの社長がスポーツ業界に参入!

アクリル運動部 監督 稲垣圭悟

始まりは「ガンバ大阪のアルバイト」。モノづくりの社長がスポーツ業界に参入!

アクリル運動部 監督 稲垣圭悟

「スポーツで食べていきたい。」

スポーツに真剣に取り組んできた人なら、誰しもが一度は抱く思い。でもプレーヤーとして、あるいは指導者としての道に進めるのは、ほんの一握りです。

今回、スポジョバがインタビューをお送りするのは稲垣圭悟さん(55歳)。生まれ育った大阪府八尾市でアクリル加工業の会社を経営する傍ら、スポーツに特化した「アクリル運動部」という会社を仲間たちと運営しています。

指導者の夢から志半ばで家業を継ぐことになった稲垣さんが、辿り着いた新しいスポーツとの関わり方。根底にあるスポーツへの想い。そして、新たに抱く夢についても伺いました。

(取材・構成=スポジョバ編集部 荻野仁美)


購買部に保健室。アクリル運動部って、何の会社?


ーーアクリル運動部ってユニークな会社名ですね!

稲垣:僕の本業がアクリル屋さんてわかるようにアクリルって言葉を最初に、運動部は学校のクラブ活動のイメージでつけました。実は名付けに1年半かかったんですよ。最初、かっこいいの考えてたんですが、わかりにくくて(笑)わかりやすいのに落ち着きました。

ーー運動部と付くからには、スポーツに関係した会社という事でしょうか。

稲垣:主に、Wリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)を始めとするスポーツチームのグッズ製作や販売、イベントの企画運営、ホームページの制作管理やアプリの開発などを行っています。その事業を通して、地域スポーツを応援する会社です。ちなみにネットショップは「購買部」って名前で(笑)あの学校でパンとかノート売ってる所のイメージですね。

ーーなるほど!わかりやすい!他には何部がありますか。

稲垣:コロナ禍でスポーツ業界全体がストップしていたので、完全に今は「アクリル運動不足」になってまして(笑)全体的な消費の動向も、健康とか安心に変わっていっているのを感じて・・・。そこで最近、出来たのが「アクリル保健室」。ウェルネス事業に特化した部門です。こんな感じで会社の全体的なイメージは「学校」なんですよ。

ーーもともとは稲垣さんと他2人のメンバーで始められた、チームで運営している会社ですよね。この業態は珍しいと思います。

稲垣:沢山の人が関わってくれていますが、今の主要メンバーは5人ほどです。一言で言うと、やりたい事をやっていくためにプロが集まった組織。コンサルタント、イベンター、SEなど、それぞれが何かのプロフェッショナル。様々な経験と能力を持った一見バラバラのチームですが、やることはやる集団です。プロ同士でチームを作ることで、事業展開のスピードを最大限に上げることができます。信頼関係がありますから、お互いのジャンルに関してはリスペクトして介入しない。だけど、言いたいことはしっかり言う。上下の無い関係性ですね。 







地域貢献の根底にあるのは、スポーツがもたらす感動の可能性


ーー「八尾バスケ祭り」を始めとした地域に密着した活動もされていますよね。今、考えている地域貢献の取組はありますか。

稲垣:もともと僕の生まれ育った大阪府八尾市はモノづくり、産業振興の町なんです。その地元をスポーツで盛り上げたいんです。これから廃校がどんどん出てくると思うのですが、それを再利用して地域のコミュニティにしたいんです。学校じゃなくて、商業施設にして、うちが指定管理受けてテナントいれたり。廃校を利用してアジトをいっぱい作りたい!(笑)

ーーまさに、アクリル運動部の学校のイメージそのものですね!地域貢献のその更に根底にあるスポーツへのこだわりはどこからくるのでしょうか。

稲垣:僕、もともとスポーツで飯を食いたいという思いがあって、若いころ挑戦してたんです。脱サラした後、丸3年、Jリーグチーム、ガンバ大阪のちびっこサッカーのアルバイトコーチしてたんです。そこでプロコーチを目指していたんですが、志半ばで今の会社(共栄化学工業)の経営を引き継ぐことになって。今は、会社も落ち着いたので、もう一度スポーツに関わりたいと思いました。

ーーサッカーコーチをされてた時とは、全く違うアプローチでスポーツに関わる事になりましたね。

稲垣:今、メジャースポーツやプロスポーツにも関わらせてもらっているけど、そうゆうカテゴリーに限らず、少年サッカーでも感動するんですよね。こう・・・心を揺さぶられるというか。スポーツはリアルなドラマだから、ええんですよね。







スポーツの裾野を広げたい。最終的には、なぎなたまで!


ーーアクリル運動部を設立されたのが2016年(平成28年)。そこからスポーツ業界はどのように変わってきていると感じますか。

稲垣:今、政府の後押しもあってプロスポーツがどんどん増えてきています。スポーツ庁ができて、国がスポーツにかける予算が大きく増えて、大手の企業がどどっとスポーツ業界に参入してきた。当然、盛り上がりますよね。アクリル運動部を立ち上げた平成28年がBリーグ(男子プロバスケットボールリーグ)元年。で、Tリーグ(プロ卓球リーグ)が出来たりと。スポーツ業界を産業とみることが出来る時代に突入していると思います。

ーーその中で、アクリル運動部の立ち位置はどこでしょうか。

稲垣:僕ね、アクリル運動部は黒子でええと思うんです。頼りになる黒子。そして、マイナースポーツを助けられるようになっていきたい。僕はもともとサッカーしか知らないんですよ。バスケもスノボも、アクリル運動部を運営していく上で知っていった。もっともっと色んなジャンルのスポーツをサポートしていきたいんです。最終的には、なぎなたまで、というのが目標です。

ーーそうなるとプロスポーツだけに限らないですね。

稲垣:運動が出来る子ばっかりだったり、トップ層だけを狙っているわけではないんです。全然運動した事ない子たちを受け入れて活動する場を提供してあげたい。今は小学校でも週に二日程度しか運動場を開放しないので、遊べるところがないんです。公園は規制だらけですし、スポーツクラブに行かないと運動ができない。子どもは少ないので、各スポーツ団体は子ども達の争奪戦を繰り広げています。地域の子ども達が自由に色んなスポーツを楽しめる環境を作りたい。色んなスポーツを楽しんでもらいたいと思っています。







スポーツは下剋上!若者へのメッセージ


ーー稲垣さんのようにスポーツ経験者で、今は違う業界で働きながら、スポーツに中から関わりたいと思っている若者が多くいると思います。そんな人たちにアドバイスするとしたら、どんな言葉をかけますか。

稲垣:まずは、上から関われないか考えるべきやと思います。サッカーなら日本サッカー協会とかJリーグ。自分はもともとガンバ大阪にいてたけど、単なるアルバイトコーチですよ。でも、それを自分のキャリアとして使えるし、今、サッカー界の方と仕事する中で、そのキャリアを前提としているものもあります。後々のことを考えると、自分でクラブを起ち上げたり、起業したりするより、そっちの方がええと思います。

ーーまずは組織に属して、という事ですね。

稲垣:そこから、のし上がれますからね!僕の同期も、ベトナム代表監督とかタイのプロチームの監督になってたりします。スポーツの世界は下剋上ですからね!

ーーまさに実力主義!

稲垣:そう!実力プラス人間関係揃ってたら、チャンス掴めますもん。厳しい世界には変わりないですけどね。あかんかったら速攻クビにされますし。僕は、サッカー雑誌に載っているJクラブの連絡先、片っ端から電話して採用してもらえないか聞いたんです。まあ片っ端から断られたけど(笑)僕、自分の会社の若い子にも言うんです。何か悩んでたら「電話して聞いてみたら?」って。そしたら結構そこから道開けたりするんですよ。今の若い子は、電話かけるのにも勇気がいるみたいやけど、3回電話したら慣れますから。やらんよりはやった方がええですよ。







【PROFILE】

稲垣圭悟(いながき・けいご)

1965年大阪府八尾市生まれ。大学では体育会系サッカー部所属。卒業後はJAに入社。9年務めた後、脱サラし、ガンバ大阪のアルバイトコーチに。2002年に、家業の共栄化学工業に入社。2年後に3代目社長に就任し、経営を立て直す。2016年、共栄化学工業を経営する傍ら、仲間たちとアクリル運動部を起ち上げる。趣味は、月1ゴルフ。ビール好き。




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