就職活動や転職活動で多くの人が利用する、「就職支援サービス」。このうちスポーツ人財に特化したサービスを展開する「株式会社スポーツフィールド」は、昨年末にマザーズ上場を果たし、注目を集めています。
今回お会いしたのは、キャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザー両面を務める社員の岸充さん(37歳)。体育会系学生やスポーツ選手に向けて、就労に関する相談や教育、就職先の企業を紹介する仕事をしています。
スポーツフィールドの強みは何なのか?キャリアアドバイザーとして大切にしているものは何なのか?岸さんのスポーツ業界にかけるアツイ思いをインタビューしてきました。
(取材・構成=スポジョバ編集長 久下真以子)
ーー岸さんは、昨年8月にスポーツフィールドに入社されたそうですね。
岸:それまでは大手の人材派遣会社で13年務めていたのですが、スポーツに特化した人材支援に携わりたいと思い、ご縁があって転職しました。現在は求職者にアドバイスをするほか、産学官と連携したデュアルキャリア推進の取り組み、そして普及や運営に関する競技団体のサポートなど、さまざまな仕事を担当しています。
ーーどうしてスポーツに特化したいと思ったのですか?
岸:前職でもスポーツ業界とお付き合いしていたのですが、スポーツに無限の可能性を感じたからです。自分自身も学生時代にサッカーをやっていて、社会人になってからも見る・支えるという面で関わってきて、そこで成長させてもらって助けられて。あと、営業や商談の中でも「スポーツされてたんですか」っていう話になるじゃないですか。そこで「サッカーをしていました」って答えると話題が広がっていく。自分だけではなく多くの人の間で、スポーツというのが会話のフックになっているんだというのをその時改めて感じたんです。
ーー確かにそう思います!今日はこのうち、キャリアアドバイザーとしての仕事についてお伺いしますが、どんな求職者を担当しているのでしょうか。
岸:体育会学生はもちろん、現役のスポーツ選手もたくさんいらっしゃいます。この数ヶ月で、サッカーやバスケットボール、バレーボール、フェンシング、陸上…幅広い分野の方にご登録いただいています。今日も元Jリーガーの選手と面談をしていたところです。
ーー現役のサッカー選手ですか?今後を見据えて仕事のことを考えようと?
岸:はい。Jリーグの後、その下のリーグであるJFL(日本フットボールリーグ)でプレーしていたんですがそこの契約も切れてしまって。これから選手を続けながら仕事をするか、引退してセカンドキャリアとして活躍していくかという話をしていました。
ーーそういった相談内容までは、何となく想像がつきます。でも、それに対して岸さんがどう答えているのかが気になります。
岸:どんな業界があってどんな職種があって、その求職者の強みが何なのか、ゴールをどこにしていくかを整理するということをしています。高卒からずっとプロで活躍された方は、そもそもどんな仕事があって何が自分に向いているのかというのが整理できていないんですよね。だから、イメージ的には「伴走」をして2人で一緒に考えていくという感じです。ただ現実もちゃんと話さないといけないので、「こういう仕事にはこういう練習や勉強が必要だよ」というのをしっかり伝えるようにしています。
ーー実際に選手たちと話をする中で、どんな能力を見出してどんな仕事を紹介してきたのですか。
岸:例えば以前、強豪の大学でバスケットボール部に所属し、海外留学もして、将来はBリーグチームで活躍したいという子も担当しました。そう聞くと「忍耐力」「やりぬく力」というのは皆さん想像しやすいと思います。でもそこで私は、「事務職」を斡旋しました。
ーー事務職ですか?
岸:しかも、スポーツとは全く関係のない医療関係の協会です。Bリーグチームに入るために現場での経験をとにかく積ませるというのも1つの選択肢ですけど、彼に何が必要なのか考えたときにたどり着いたのが、「データ入力や資料作成って出来るのだろうか?」ということだったんです。スポーツチームに入ったら、イベントを作るにしてもExcelとかPowerPointが必要になってくるじゃないですか。営業でも運営でも指導者でも必ず活きてくると考えたので紹介しました。そしたら彼、事務職の仕事を経てBリーグのチームに採用が決まったんです。
ーーそれはすごい!おめでとうございます。
岸:医療関係なので医者や教授とのやり取りも難しかったと思いますが、「体育会系の人が入ってくれて職場が明るくなった」と喜んでもらえてよかったです。
ーー先の先まで見据えた就職支援は、とても心強いと思いました。
岸:一時的ではなく、継続的な付き合いもしていきます。まだまだ彼自身が未熟なところもあるので仕事の仕方に対する相談も受けますし、チームそのものとも今後私もお付き合いしていきたい。そういう意味では、一方的な支援ではなくお互いがウインウインの関係でありたいとも思っています。LINEでも「おめでとう。今後も一緒にいろいろやっていこうね」って話しました。
ーー1人1人の人生と、真剣に向き合っている岸さんの姿が胸に響きます。
岸:「アナログ」であるということが、スポーツフィールドの強みですね。今はデジタルな世の中で、遠隔で何でもできてしまう社会。でもだからこそ対面で何回も話をするというのが、他社にはない特徴だと思っています。
ーースポーツフィールドのキャリアアドバイザーは、何人くらいいらっしゃるのですか?
岸:全国で160人くらいです。現役選手・コーチや元アスリートも活躍しており、私は一般人で(笑)人材系からの転職ですが、総合商社にシステム会社…いろんな分野から転職してきた個性豊かなアドバイザーが集まっていて、それぞれが武器を発揮しています。例えば総合商社出身だったら幅広い知識や職種について話せますし、システム会社出身だったらそれに関する案件を求職者に提示できる。私にはその分野は話せないですからね。弊社CFOは「うちの会社はレアルマドリードだ」と言っているんですよ。
ーーレアルマドリード!
岸:いろんな分野からのプロフェッショナルが集まった集団だと。160人のアドバイザーがいれば160通りの得意分野が弊社にはあるということですよね。凹凸のパズルみたいなもので、社員みんながお互いの強み弱みを補い合っている会社だと思います。「スポーツ」という共通言語の中で、自分の得意分野から波及して企業や求職者に還元する。そして、私たち自身の成長にもつながる。そんなアドバイザーでありたいと願っています。
ーーセカンドキャリアやデュアルキャリアが浸透すれば、選手たちにも光が見えてきそうです。
岸:「スポーツ=稼げない」というイメージを壊したいんです。多くのスポーツ選手が引退後のセカンドキャリアや、競技中の収入に関して悩みを抱えています。また我々親世代もスポーツに対する価値観も変わってきていると感じています。そうした現実もあって、スポーツ選手を目指す子どもたちが減少傾向にあります。日本スポーツ振興センターが実施した「デュアルキャリアに関する調査研究」の結果からは、アスリートの「デュアルキャリア」の過程において、特に保護者と指導者が、アスリートの競技継続、進学先の決定、将来の設計も含めたキャリア形成に対する影響力が大きいことが実証されました。
ーー子どもたちの憧れの職業ランキングといえば、スポーツ選手がトップでしたもんね。
岸:もちろん他の職業を否定するわけじゃないんですが、自分もスポーツに救われてきた部分があったので、スポーツに関わる人が減っていくのは寂しいなと思うんです。特にデュアルキャリアに関しては日本でも4~5年前から力を入れて掲げているのですが、なかなか浸透していないのが現状です。
ーー今の日本は、競技だけに集中するべきという風潮があるように感じます。
岸:もちろん選手にとっては今の成績が次のシーズンに左右されたりなどもありますから、本人が集中したいという場合もありますし、その価値観は尊重するようにしています。でも選手がまたここに戻ってきたら必ず相談に乗りたいし、現実だけはしっかり言い続けないと本人のためにもならない。だから、アスリートやチーム、指導者ともバランスをとりながら向き合っていこうと思っています。
ーースポーツで稼ぐ。その価値観を生むためには、子どもの時から広い視点を持てる教育が必要なのかもしれませんね。
岸:そういう意味では、保護者世代に働きかけていかないといけないし、産学官連携で貢献をしていきたいと考えています。「スポーツ=食べていける」という価値観を世の中に見せたいな。今、少子高齢化の影響でスポーツが衰退していくとも言われている現状もあります。でもちょっと文化を変えれば、またスポーツ業界全体が盛り上がるのではないでしょうか。長期的な話ですから、もうその頃には私は75歳くらいになってるかもしれませんが…!
岸 充(きし・みつる)
6歳からサッカーをはじめ、大学卒業後は大手人材会社に入社。13年間、営業・アドバイザーとスポーツ業界を担当した後に株式会社スポーツフィールドに入社。
現在は経験を生かし、スポーツ人財のデュアルキャリアやセカンドキャリア支援、第二新卒・中途の転職支援を担当。長崎生まれ、東京育ち。37歳。
設立年月 | 2010年01月 | |
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代表者 | 篠﨑克志 | |
従業員数 | 272名(連結:2023年12月末現在) | |
業務内容 | ◆スポナビ合同就職セミナーの企画・運営(体育会学生限定合同就職セミナー)
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