◆スポーツ庁が掲げたスポーツ市場15兆円への道のりを様々な角度からアプローチ!約10年で3倍になる可能性に満ち溢れたスポーツ市場ですが、実態はどうなっているのでしょうか。
◆現状の取り組みや課題、今後の可能性など、有名無名に関係なく業界の実務者にインタビューしていきます!これから”スポーツ”ビジネスへ飛び込もうとしているあなたへ、ビジネスを加速させるヒントになるような情報をお届けしていきます!
記念すべき第1回インタビューの相手はスポーツ庁の参事官(民間スポーツ担当)付 参事官補佐という立場で、スポーツビジネスの活性化に関する業務全般を担当している忰田さんです!
◆経歴◆
・1986年福岡県北九州市出身。2009年早稲田大学卒業後、経済産業省に入省。地域経済政策や貿易政策等を担当。
・2015年から2年間オーストラリアに留学し、グリフィス大学でスポーツマネジメント修士号を取得。
・2017年6月からスポーツ庁に出向中。
・スタジアム・アリーナ改革やスポーツ経営人材の育成・活用、SOIP(スポーツオープンイノベーションプラットフォーム)、スポーツシェアエコの推進等を担当。
・スポーツ界と他産業間の交流を促進するため、プライベートでもスポーツビジネス交流会を開催。
- 今回インタビューをさせていただきます、スポジョバ編集長の伊藤です。本日はよろしくお願いいたします!
スポーツ庁参事官補佐の忰田です。よろしくお願いいたします!
- 早速ですが、忰田さんは経済産業省に入省した後に2年間オーストラリアに留学したという珍しいキャリアの持ち主だと思います。どんな想いがあって留学を決意したのでしょうか?
端的に言うと、「スポーツ産業を活性化させて幸せな人を増やしたい!」という想いから、スポーツビジネスを学ぶためにオーストラリアへの留学を決意しました。
高校や大学でプロになりたいと思って本気でスポーツをやっていた友人達も、中々スポーツ関連の仕事に就けないという現状を目の当たりにし、自分はそれを変えたいと思っていました。
そんな中、2020年に東京でのオリンピック・パラリンピックの誘致が決まりました。日本のスポーツに対する関心が高まる中、人事院の留学制度を活用してスポーツビジネスを学ぶために留学をしました。
- 「スポーツ産業を活性化させて幸せな人を増やしたい」という想いが、忰田さんを突き動かしたわけですね。スポーツに対してそこまでの熱い想いを持つようになったきっかけなどはあるのでしょうか?
小さい頃から水泳や空手、野球などスポーツが好きでスポーツに助けられてきたという経験が大きいと思います。保育園の時に喧嘩が弱くいつも泣かされていたことから、父に連れられて空手を始めました。また、人見知りのところがあるのですが、スポーツを通して友達ができました。留学中も最初は英語が通じずどうしようかと思っていたのですが、野球やクリケットを通じて友人ができました。本当にスポーツに助けられたと感じましたし、スポーツの価値を改めて感じました。
- 忰田さん自身がスポーツに助けられたという体験がきっかけなのですね。ところで、なぜオーストラリアを留学先として選ばれたのでしょうか?
留学申請をした2014年当時はスポーツ庁もまだない時で、スポーツで収益をあげるということ自体がなんとなくネガティブな印象を持つ風潮がありました。また、これまで多くの先輩がアメリカやヨーロッパでMBAを取得してきました。ただ、文化や制度の違いもあるのか、欧米のビジネスモデルをそのまま日本に導入できるかといったらそうでない。特に、アメリカのTHE資本主義的な考えをいきなり日本のスポーツ界に持ってきてもそう簡単には進まないだろうなと感じていました。
また、調べているとオーストラリアはスポーツ実施率が70%を超えている。スポーツをレクリエーションとして捉えている等々、色々と面白そうな情報が出てきました。また、英語圏ということで、留学後の汎用性もあると考えオーストラリアを選びました。
- オーストラリアに留学をしてみて、日本のスポーツ界についてどのように感じましたか?
まずスポーツに対する捉え方が全然違うと感じました。
日本にいるとスポーツ=競争というか、少し息苦しい印象で捉える方もいると思います。けれども、オーストラリアではスポーツは楽しむものと捉えられていて、生活レベルに浸透している印象を受けました。
- 確かに日本では体育=スポーツというイメージから、楽しむものとは少し違う見方をしているかもしれませんね。具体的にそのように感じたきっかけなどはあるのでしょうか。
半年間RUGBY UNIONというプロリーグの支局のようなところでのインターンシップでは子どもから大人までを統括するアマチュアリーグの運営支援していました。そこでは、ジュニア世代から各チームに1軍、2軍、3軍があり、1軍は1軍同士、2軍は2軍同士、3軍は3軍同士でリーグ戦をしていて驚きました。
スポーツをすることの楽しさって実際に試合に出ることだと思います。しかし、日本だとどんなに練習しても少年野球ですら試合に出られない子がいる。年代が上がると更に試合に出られる数が減ってしまう。そうすると、スポーツが一部の人のものになってしまいます。そういう小さい頃からの習慣って大人になっても中々変わらない。
スポーツを自分と関係のあることとして捉える人の割合が、オーストラリアと日本の間では圧倒的に違うと思いました。
- そうなんですね!確かに大前提である「楽しむこと」をスポーツする際には重視していきたいですよね。ビジネス的なこととしては、オーストラリアに留学してみてどのようなことを感じましたか?
スポーツ界に限らず日本社会全体の課題だと思いますが、個々のサービスや商品が優れているというより、システムを整えることが重要だと感じました。
特にスポーツは無形資産、つまり目に見えにくいものを売る性質があります。その性質上、関係者が結束し、役割のルールメイキングをすることが非常に大切だと思います。
そういった観点から見ると、リーグ側がかなりビジネスライクに意思決定をしてルールメイキングをするのがオーストラリアです。
例えばオーストラリアンフットボールでは、他スポーツとの競争が激しくなり顧客基盤の確保が困難になることがあります。その際には、ホームスタジアムの数を絞り、特に収益確保が難しい大規模なホームスタジアムは2チームでの共同ホームとする。こういった意思決定をしました。
新しい論点ではありませんが、リーグの事業としての権限の強さは、無形資産であるスポーツで収益をあげる上で改めて大切だと感じました。
- なるほど。オーストラリアでは、リーグとしてビジネスへの取り組み方が違うのかもしれませんね。オーストラリア留学を通して、スポーツを楽しむ方法についてはなにか感じたことがありますか?
スポーツに関わるというとどうしても、スポーツを「する」ことをイメージしてしまいがちです。しかし、エンタメとして又は友人との交流のため「みる」ことを楽しんでも良いし、スタジアムやアリーナでの食事を楽しんでも良い。
企業も事業拡大のためにスポーツを「活用」しても良い。
スポーツには本当に多様な価値がありますし、それは個々の人・企業によって違うと思います。
「得意でないと、ルールを知らないと楽しめない。」
こういった前提条件がないと楽しめないという障壁を、色々な業界の方の知見を活用しながら取り払っていけると良いのではないかと思います。
多様な楽しみ方をスポーツ業界側が認めて、色んな業界の方と組んでいく、オープンになっていくことがスポーツ業界側には求められていると思います。
では、スポーツを多岐に渡って活用していくとは具体的にどのようなことをできるのでしょうか。
後編では、日本のスポーツ界をスケールする上で何が必要なのか、スポーツの活用ということに焦点をあてて引き続きインタビューしていきます!
→スポーツ市場は本当に大きくなるの!?市場15兆円への道のり(後編)
Text:伊藤知裕/Photo:伊藤知裕
今回のインタビューは「すかいらーくグループ~ガスト板橋本町店~」ご協力のもと行いました。
『全てはお客様の笑顔のために』をモットーにされているステキな従業員から、ステキな空間を提供いただきました。 すかいらーくグループとは、和洋中をはじめとする各種テーブルサービスレストランを中核として皆様に「食」を通しておいしさ・安全・安心・快適さを提供しています。現在は約3,200店舗を展開し、国内で年間約4億人のお客様が利用しています。
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