憧れの選手と同じユニフォームに身を包み、タオルを掲げてスタンドから声を張り上げる……。そんなスポーツ観戦の場で、チームと並走してその情熱を生み出す会社がある。
ファングッズの製造・販売を行う「サイボークリエイト株式会社」。スポーツと密接にかかわりながらも、決して表には姿を見せない、スポーツ界における陰の立役者だ。
グッズを製造するのは、川越駅から歩いて20分ほどに位置する自社工場。工場のもつ薄暗く寒いイメージに反して、屋内にある工場は、オフィスのような明るさと暖かさをもつ。
工場内には、NPB各球団を始め、JリーグやBリーグ、リーグワンなど、日本各地のプロスポーツチームのグッズがずらりと並ぶ。製造工程の至るところに人の手が加わる様子は、どこか職人を彷彿させ、工場全体に「工房」のような雰囲気を漂わせていた。
今回お話を伺った営業部の岩谷さん、川越工場生産部所属の野村さん・笠島さんは、大学まで野球をしていたという。強豪校のエースから、日本代表まで。プレーする側だった彼らが、裏方として新たに掲げる目標とは。川越から日本一を目指す3名の話を伺った。
(取材:伊藤千梅 編集:仮谷真歩)
―――本日はよろしくお願いいたします。まずは、皆さんのこれまでの経歴について教えてください。
岩谷さん(以下、敬称略):僕は小学校から野球を始めました。大学では野球をやめようと思っていたのですが、やっぱり野球が好きなんだと感じて。結局軟式野球部に入ってキャプテンも務め、軟式野球の日本代表にも選ばれました。
大学卒業後は、軟式野球部があったコピー機の会社に入社し、営業をしていました。そこを4年で辞めたときに「何をするか」と考えまして。やっぱり野球が好きだったので、それからはスポーツ系の会社で営業をしていて、1年前にここに入社しました。
野村さん(以下、敬称略):私も新卒で、岩谷さんと同じコピー機の会社に入ったんです。岩谷さんが退職された後も、野球部の繋がりから仲良くしてもらっていました。30歳手前で岩谷さんに声をかけてもらって、スポーツ系の道に行ったという転職の仕方ですね。その後一度、異業種のメーカーにも転職したんですけど、やっぱりスポーツに携わりたいなと思って、ここで働くことに決めました。
笠島さん(以下、敬称略):自分は、大学卒業後は監督の紹介でスポーツ系の企業に就職して、半年ほど前にこの会社に入社しました。スポーツ業界で働くようになったのは、シンプルですけど、野球が好きだったのでその業界っていう考えでした。
岩谷:野村は大学時代、部員が100人くらいいる軟式野球部のエースで。笠島は、高校、大学と硬式野球の強豪校なんです。だから数々のOBたちが選手やチームスタッフでプロ野球の世界にいて。笠島は球場に行くと、声を掛けられたりしていますね。
―――皆さん、競技の経歴がすごいですね。そして、この会社に入った理由も「野球が好きだから」というのが大きいように感じます。
岩谷:そうですね。自分ら以外にも、実際今出荷を担当している社員も野球が好きだからここで働いていますし。結局そこがモチベーションになるんじゃないかなと思います。
野村:仕事も、興味がないものをただやっているだけじゃ、面白くないじゃないですか。他の社員もこの仕事をするうえで「スポーツに携わっているという実感がある」「これがお客さんのもとに届くんだなと感じる」と言っていました。
笠島:野球をやっていて、今は違う業界や職業についた人たちからは「お前は野球が好きで、野球の仕事をしてるからいいよね」みたいなことも言われますね。
岩谷:大体そうですね。いいなって言われることも多いです。自分が営業担当している球団が勝ったとか、趣味の延長のような形で仕事ができるのもいいですね。オフィスで、ドラフトや開幕戦も普通に観ていましたよ。
―――それは、野球好きにはたまらない環境ですね。
―――御社では、野球のグッズを製作することが多いそうですね。
岩谷:野球は確かに多いですね。Tシャツやタオル、キーホルダーも作っています。球場に行って、並んでいるものは、ほぼ作れますね。それ以外にも他のスポーツだけでなく、アーティストのライブやアニメのグッズなどもあります。
―――グッズ製作における営業のお仕事というのは、具体的にどのようなことを行うのでしょうか?
岩谷:例えば、NPBの球団グッズの営業の際は、まず球団事務所で新加入選手やイベントの情報について話します。そこで「こんなグッズを作りたいんだけど」といった打診を受けて、要望を具現化していくイメージですね。
グッズ製作が決まったら、球団の方がデザイン事務所とやり取りするか、社内にあるクリエイティブ部のデザイナーと話し合ってデザインが作られます。そのデザインに対して僕が、見積もりや納期を、どんどん積み上げて相談していく形ですね。
最終的に「このデザインで作りましょう」と決定したら、デザイナーと僕で協力して、「仕様書」といった製造における指示が書かれたものやデータを作る。それを野村・笠島にバトンタッチしていきます。
野村:岩谷さんみたいに、球団事務所に直で提案するのではなく、間に1社挟むような形でやり取りすることもありますね。
―――生産管理部門では、普段どのようなことをされているのですか?
野村:工場は、先ほど岩谷さんが言っていた、仕様書が手元にきます。1つの製品を作るのにもいくつか工程があって、その工程ごとに振り分けられた指示に沿って作業をします。また、タオル1枚製造するのにも、袋やシール、箱が必要で。そういう部材関係の在庫を見て、発注業務も行います。
岩谷:いわば、総務ですね。
笠島:自分は人事じゃないですけど、パートさんの募集や管理、面接からシフト作成までを行っています。人がまだ少ないので、みんなで分担しながらやっていますね。
野村:最初のころは、納品まですべての工程を自分たちがやっていたのですが、最近アルバイトさんが入ってくれて、やっと工場らしくなってきました。今後は、指示を出して、工場を回していく仕事が増えていくかなと思います。
―――すると、マネジメントの要素が強くなるのでしょうか?
岩谷:そうですね。機械の動かし方がわからないといけないので、まずは現場に入って作業して覚えることはもちろんですが。ゆくゆくは、それをパートさんたちに教えて管理していくっていうのが、今後の主な流れになるんじゃないかなと思います。
―――工場というのもさまざまな種類があるかと思いますが、御社ならではの強みなどはありますか?
笠島:自社工場を持っていることですかね。普通は分業制が多いんですが、弊社は最初から最後まで、一貫して作っています。デザインを印刷するための版を自社で作っている所は非常に少ないんです。版を作ると普通は1週間ほどかかりますが、弊社なら3時間でできる。他のメーカーに比べてスピード感はありますね。
岩谷:自社工場を持っていると、提案をするときの訴求力も大きいです。自社工場を持っていることで、こっちで自由に画を使わせてもらえることもありますね。なんでも自分たちですぐに作れるから、やりたいと思ったらチャレンジできる環境だとも思います。
また、取引しているチームから、お客さんを紹介してもらえることも強みだと思います。取引先を一業者として見ることって、世の中いっぱいあるじゃないですか。だけど、チームの人は、仲間として受け入れてくれるんですよね。だから、新規の営業ではなく、紹介からつながることの方が、僕は多いです。
―――スピード感や訴求力、紹介を得られることが強みなのですね。そういった御社での仕事は、どのような人が向いていると思いますか?
野村:うちの工場は、機械でボタンを押すだけで作業が終わるわけではなく、ほとんど人の手で動いています。なので「もっとこういう風にできる」とか、そういう自分の意見がある人は、どんどん発信してもらえたらうれしいです。
―――自分の意見を持っている人のほうがいいのですね。
野村:そうですね。やれと言われたことだけをこなすような毎日だと、モチベーションも何もなくなりますよね。
例えば、半分営業の話ですが、球団側から「御社の機械でなにかできない?」と聞かれることもあります。そのときに最新の機械について知っている自分たちが、商品について提案することもありますね。
笠島:工場勤務では、まずは作業内容を覚え、確実に製品を作らなきゃいけないというのはベースであります。そういった優先順位はもちろんありますが、製造現場であっても、自分の意見を持つことは大切ですね。色んな球団やスポーツチームをチェックして、意見を営業に伝えるといった話は、工場側からもできると思っています。
―――サイボークリエイト株式会社は、現在設立から約1年の新しい会社ですが、現在の環境についてはいかがですか?
岩谷:いいですね。新しい会社とはいえ、設立75年以上の歴史をもつサイボー株式会社の100%出資の子会社ですので。週休2日は確実に保証されていますし、残業に対しても、結構厳しいです。
野村:会社独自の環境整備については、今進めているところでもありますが、親会社と同じ保険組合に入るので、出産一時金が関係組合から出るなどは一例としてあります。外部の相談窓口みたいなところに連絡ができるようにもなっていますし。
―――環境面以外で、新しい会社だからこそ、今後自分たちでこんな会社にしていきたいというものはありますか?
岩谷:多分、みんな一緒なのは、会社を大きくしたいっていうこと。それは絶対なんですよね。
笠島:この会社を大きくしようという気持ちは確かにありますね。そのためには工場を強くしなきゃいけないな、というモチベーションです。
野村:逆に、今後会社を大きくするうえで、上からの指示で全部が決まってしまうような会社にはしたくないです。体育会系にみえるとは思いますが、納期が短い案件などで「なんでもいいからやれ」という風にはしたくない。
もうすでに歴史のある、できあがった状態のいい会社って、もちろん世の中にはたくさんありますが、自分たちは「まだまだ、今から一緒に創りましょう」という気持ちです。新しく入る人には、これから会社を創っていくメンバーという気持ちで、楽しく働いてもらえたらなと思っています。
―――最後に、個人の目標などを伺ってもよいでしょうか。
岩谷:僕は社外に対して、業界に影響力のある人間になりたいですね。「グッズを作るんだったら、こいつだ」って言われるようになりたいなと思います。
笠島:自分は、個人として、もし営業に戻ったときには、自社工場に関しては何でも説明できる状況になりたいです。また、営業に戻らなくても、工場長というポストも狙っています。会社としては、日本一の工場ですね。全国ナンバーワン。
―――日本一とは、日本で一番知られているといった部分ですか?
野村:それは難しいですね。我々は表に出ない仕事ですから。
笠島:そうですね。「日本一の縁の下になる」ですかね。世間には知られていなくても、業界内で仕事をしている人たちがどこよりも先に自分たちを思い出してくれる。そんな裏方での日本一を目指したいです。
これまでスポーツを行ってきた人は、競技を引退した後に目標を見つけられないことも少なくないのではないか。しかしサイボークリエイトでは、同じスポーツ界で新たな目標をもち、一から自分たちの描く未来に向かっていくことができる。
常に新しいものを生み出していくサイボークリエイトには、ここだからできるワクワクが詰まっているのだ。
【PROFILE】
岩谷さん
サイボークリエイト株式会社、営業部所属。現在はNPBの球団を担当し、球団の人からは仲間として受け入れてもらいながら活動している。学生時代は獨協大学の軟式野球部でキャプテンを務め、軟式野球の日本代表にも選出された。本人は運が良かったと言い張っている。今の目標は「業界に影響力のある人間になること」。
野村さん
サイボークリエイト株式会社、川越工場生産部所属。現場業務に加え、営業や総務の役割も行っている。大学では軟式野球部に所属し、主力として活躍した。
笠島さん
サイボークリエイト株式会社、川越工場生産部所属。現場業務や工員のシフト管理、採用業務を行っている。大学まで硬式野球を続ける。良い指導者・良い仲間に恵まれましたと語る。現在も草野球チームでエースとして活躍中。
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