カッコいいだけのデザインは要らない。プロスポーツを盛り上げるデザイナーが、アツい想いから作る〇〇【後編】

デザイナー・演出家 高良 和忠

カッコいいだけのデザインは要らない。プロスポーツを盛り上げるデザイナーが、アツい想いから作る〇〇【後編】

デザイナー・演出家 高良 和忠

「会社を辞める」という選択は、非常に勇気の要る決断だと思う。「やりたいことがある」「どうしても実現したい夢がある」としても、お世話になった会社・先輩への想いは、そう簡単にサヨナラできるものでもないだろう。それでも転職という選択をする人が多い中で、次なる道に「独立」を選択する人の勇気は、”会社から会社”の転職よりはるかにハードルが高いと思う。

今回お話を伺った高良 和忠(たから かずただ)さんは、今年の7月に大好きなプロバスケチーム「千葉ジェッツ」を去り、独立という新たなフィールドに立った。まさに「独立したて」の彼にインタビューする中で、仕事1つひとつに対する思い入れや芯の強さを感じることができた。前半は会社員編今回の後半は独立編と2本立てでご紹介する。この記事は、独立を視野に入れているあなたに、ぜひ読んでほしい。

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)

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独立を決めた要因は、多くの人からの声だった

__高良さん、ズバっと聞いちゃいますけれど、どうして千葉ジェッツを辞めちゃったんですか?強い想い入れも持たれていたのでは?と思ったので……。

高良:ズバッと来ますね(笑)。でもお話した通り、この道を選んだからには「独立したい」っていう意識はずっと持っていました。簡単に言うと「そういう時期が来たから踏み切った」というだけなんですけれど、それじゃあ物足りないですよね?(笑)

__察していただいてありがとうございます(笑)

高良:いえいえ(笑)。千葉ジェッツで色んなクリエイティブを作ってお客様と会って実績を積んでいくと、本当に色んな人が見てくださるんですよ。「どのデザインやったの?」とか「演出見てみたいです!」とか言ってくださる方も多くって。そこから繋がって「ウチのデザインとか演出もやってくれませんか?」みたいなお話をいただく機会が増えたんですよね。もちろん、千葉ジェッツに残る選択肢もありましたし、勝手も理解してて自分が創ったものもいっぱいあるから想い入れも強かったんですけれど、大変な道のりにはなるんですが「挑戦してみたい」っていう思いのほうが強くなって、という感じでしょうか。

__7月に退職されたということで、まさに高良さんの真夏の大冒険が始まったわけですね。現在はどんなお仕事を担っているんですか??

高良:今は個人として、いちプロ野球チームからアートディレクターとしてご依頼いただいてたり、Bリーグだと群馬クレインサンダーズの演出とクリエイティブをご依頼いただいてます。他にもスポーツを中心に色んなクリエイティブに携わらせていただいてます。なので、デザイン制作会社〜千葉ジェッツでやらせてもらってた「アートディレクター兼デザイナー」+「演出」というポジションをそのままやらせてもらっているというスタートです。

__前回も少しお話に上がりましたけど、個人的に高良さんが凄いなと思うのは演出の部分なんですよ。もともとデザイナーさんで、前職で初めて演出を手掛けた。そこから今も演出関係のお仕事をいただけてるのが凄いなと。

高良:「たられば」ですけど、もし演出をやることがなければデザイナーとしてずっと生きていくつもりでしたよ。「クリエイティブディレクター」「アートディレクター」「デザイナー」ってザックリ3段階あるとして、一番上の「クリエイティブディレクター」と言えるまで頑張って、部下ができて自分が案件持ってきて振ってっていうのが、1つの理想だなと思ってたんです。でもそうすると、所謂デザイン制作会社になってしまって、いつかちょっと飽きたかもって思ってしまったんじゃないかなと。だから千葉ジェッツで、わけもわからない状態でしたけど「演出よろしく!」ってオーダーをいただけて、そのおかげで武器がデザインだけじゃなくなったので、それは良かったと本当に思ってます。あそこで「無理です」って断ってたら、これまた確実に今はないですから。




©Gunma Crane Thunders Produced by Power Voice


経験は、ひとつ残らず自分の武器に必ずなる。

__デザインは専門学校で学ばれていたと思うんですが、演出はどんな風に学んでいったというか。その部分をぜひ伺いたいです。それこそ前回考え方は一緒だって仰っていましたけれど。

高良:情報収集みたいな話でいくと「全部」かもしれません。たとえば音楽のライブに行ったときに「セットリストはどうやって組んでるんだろう」とか、色んな曲を聞いて「これ会場でかかったら盛り上がるな」とか。何気ない会話でも「そこでそれいく?」とか(笑)。全て生活の中にヒントが溢れていて、それをストックしているイメージに近いですかね。それこそバスケの試合を友人と見てて「ここで火とか出たらいいよな」とか「この曲かけたらクソ盛り上がるよな」とかって言うじゃないですか、素人ながらに。僕もまだまだ素人に近いけど、そのノリと一緒です(笑)。

__わかりやすい!確かに友人同士でそういう話はします。素人ですけど(笑)

高良:あはは(笑)。でも楽しいですよね。あとはそのタイミングでポン!っとそれを出せるかどうか。TVとか見てても、たとえば芸人さんの間でボケたのにツッコミがちょっと遅れて「遅ッ!」みたいな瞬間ってあるじゃないですか(笑)。あれと一緒で、曲を流すにしてもその瞬間でホイッとそれを出せるかが大切かなーって思ってます。演出をやったことで、だいぶ世の中の見え方が変わったので、本当にやってよかったと思いますね。

__これまでのお話を伺っていると、肩書があるとはいえ今は演出関係のお仕事が多いんですか?

高良:そんなことはないんです。演出はBリーグだけで。他の競技もちろんチャンスあればいつでもやってみたいです。今はアートディレクター兼デザイナーが足りてない会社さんが多いみたいで。各競技、主にブランド監修から実際のデザインのところでご一緒させていただいてているので所謂インナーブランディングみたいなイメージかもしれません。つい最近もアパレルブランドを出したいという企画があって、そのネーミングとかロゴとかアパレルとかは僕で作らせてもらってて、そのまま撮影して広告も出してプロモーションしていったら、2時間くらいで売り切れてしまって。「少なすぎるだろ」ってありがたいことに言っていただけたので、いま新作にとりかかっています。

__すごい!!次回作を心待ちにしているファンも多いと思いますよ!(私を含め(笑))

高良:引き続き頑張ります!あとBリーグでも、デザインさせていただいたり、経験上どう思うかってところのアドバイザー的な役割を持っていたりします。それから卓球ですね。Tリーグ。ポスターとかちょこっと作らせていただいてるんです。なのでデザインのほうがめちゃめちゃ多くやらせてもらってます。ちなみに、この前のパラリンピックでも1競技でグラフィックディレクター(主に映像管理)として入らせていただきました。独立してから今までにないような経験をさせていただいてて、ありがたい限りです。





まずは疑うことから入る。外部の人間が、内部的感覚で動くために。

__まさに外部の人間として携わる案件がほとんどだと思います。これまでは内部の人間としてデザインも作られてきたと思うのですが、実際外から携わってみて思ったことがあれば教えてください。

高良:どんなスポーツでも、またはスポーツじゃなくても、外部としてやる以上、ちょっと違うんですよね。細かな歴史もわからないし、社内の雰囲気とかファン層とかを色々知ってからじゃないと始めづらい。で、一番苦労したのはコンセプトを考えるときに「それは理解されないと思うよ」って二言目には言われちゃうんですよ。おそらく気付かないうちに所謂”それっぽくて、カッコいいだけのもの”を作っていたんだと思うんです。ダメだと思ってすぐ頭切り替えて、各チームがどんなことを伝えたくて、どういう風な想いを持っているか、かつそれをどうわかりやすく表現するかっていうところを考えるようにしました。当たり前なんですけどね(笑)。それで案を出したら評判が凄くよかったので、自分を客観的に見て「外から来たな」って感覚でした。だからまさに内部的感覚で「このチームはどんな魅力があるんだろう」「どんなファンが多いんだろう」って。各地で全然違うので、まずは把握してから進めないとなっていうのは、外部の人間として関わって改めて思いましたし、日々勉強です。

__外部の人間ではあるものの、内部的感覚で働くために、何か意識して行動していることってありますか?

高良:それこそタブーとされているものとか、ルールみたいなものがないかは聞きます。この前も、とあるミーティングでロゴの使い方の話になったんですけれど「そのロゴってそもそも使わないといけないのか」「文字は横一列じゃないとダメなのか」「こんな小さくしてもいいのか」とか、バーッて投げかけるんですよ。有り得ないことかもしれないんですけれど。でも言ってみたら「Aは無理ですけど、Bはありかもですね」ってなりました。疑問に思ったら可能な限りヒアリングして、しまくって、今一番良いものを作れるよう心がけています。

__今回のインタビューで最初に「なんで3歩歩いちゃダメなの?」と仰っていたのを思い出しました(笑)

高良:今はゼロステップって「0歩目」ができましたけど、僕らの時代はあれ、もろトラベリングじゃないですか(笑)。たぶんNBAのジェームズ・ハーデン選手(NBA:ブルックリン・ネッツ所属)が最初ですけど、画期的ですよね。ルール変えちゃいましたから。でもそれと一緒で、ルールには書いてあるけど、抜け道を探すというか。どんな仕事でもまず疑いからかかってみて、「こっちの方が良いと思うけど、これじゃダメなのかな」みたいなのを好奇心に変換して出来ることを模索するっていうことは凄く大切だし楽しいと思ってます。

__それこそ常識を疑うことに始まり、自分がやっていることを「こういうところにも生かせないかな」っていう別の視野を持つことって大事だな~と、お話聞いてて思います。

高良:まさにそうだと思いますよ!それこそ僕、TVで松本人志さんを見ててそれを感じてます。きっとあの人って「お笑い」だけで色々物事を捉えてないと思うんですよ。お話したことはないですけどね(笑)。だから映画や歌を作れるとも思うんです。それと、ご依頼をいただいてる演出会社の社長さんから言われたのは「ディレクターがディレクターだけやっている時代は終わった」と。「野球の大谷翔平選手(MLB:ロサンゼルス・エンゼルス所属)のように、二刀流の時代にどんどんなるから、とにかく武器を持ってくれって社員には言ってて。だからデザイナーとディレクターってすごいね」って言っていただけたんです。意外と気付いてなかったので、「確かに」って思いました。例えば演出の現場でも「ココでこういう絵がほしいな」って思うときって結構あるので、すぐ自分でつくっちゃいます。そういう風に、色んな物事を色んなところで使えないかなって考える力は、これからも伸ばしていきたいです。




©Gunma Crane Thunders Produced by Power Voice


僕にできることを全力で。できないことも全力で。

__二刀流の話で言うと、それこそ高良さんはファッションや建築もやってみたいと仰ってましたね。でも、CADで設計図を描けたりするわけではないですよね?

高良:もちろんできないです(笑)。矛盾するかもしれないですけど『餅は餅屋』で良いと思うんです。僕が今出来ないことはもちろん僕がやる必要はないと思うんです。オーダーにもよりますけど、たとえば「家を造ってください!」ってなって、「どんな設計図ですか!」って言われても今すぐは絶対できない(笑)。でも、理想の形とか雰囲気とかは余裕でいけるじゃないですか。「どんな家に住みたいですか?」って。あとはそれをつくれる人を探すだけなので、全部が全部自分が手を動かしてやる必要はないと思います。あ、ちなみに、実作業を出来も知りもしない人が理想だけ語って「ディレクションなら出来ますよ」っていうのとは全然ワケが違います。念の為。(笑)

__今の話も、デザイナーだけだったら自分がどう造るかって考えてしまいそうですけど、ディレクターの視点で発信できるのは、改めて高良さんの強みだと思います。

高良:もちろんデザインの領域は広げたいですよね。目標は佐藤可士和さん(日本を代表するクリエイティブディレクター)みたいなイメージです。そのうち可士和さんが日本の紙幣も創るんじゃないかなーなんて思います。そうなると、なんでそういう仕事が舞い込んでくるのかって考えた時に「できそうだから」なんですよね。何でもできるんじゃないかなって。出だしの思考の問題だと思うんです。僕は演出もスポーツもデザインも学生の頃から凄く似てるなって思っていて、話して伝えていくことで、どんどん仕事も来るかもしれない。つまるところ、好奇心の一言で、「あれもやってみたいな」って目線で、普段から街を歩いたり車に乗ってどこかへ行ったり、蓄えて考えて準備をするのが大事だと思うんです。僕もあれやりたい・これやりたいって色々あります。でもあんまりよそ見ばっかしちゃうと、やらなきゃいけないことを忘れがちなので、常にイメージしておけばいいかなって思ってます。

__やりたいこともいっぱいある高良さん。まだまだ独立したばかりでこれからだとは思いますが、今後の目標についても、ぜひ。

高良:最終的な一番の目標は死ぬまで仕事をしたいです。何かをずっと作っていたい。例えば病院にまで「高良さんこの案件ですけど……」って社員とかが聞いてきたりとか、相談に来てくれるのが一番の目標?かもしれないです(笑)。あと昔、田臥勇太選手(現・宇都宮ブレックス所属)の本の中で「never too late」って言葉があって。始めることに遅すぎるってことはないよって意味で、もう無理ってこともきっとないと思うので、領域を広げるって意味でも挑戦はし続けたいですね。あとは前職同様、目の前の仕事は全部手を抜かない。結果を見て「こんなヤツにお金を払ったのか。。」と思われないように、1つひとつ全力で取り組んでいきたいですね。

__ユニークな高良節全開の回答ばかりで、終始クスクス笑わせていただきありがとうございます(笑)!最後に「これから独立したい!」と考えている方に向けて一言メッセージをいただけませんか?

高良:まだ独立したばかりなので恐れ多いですが……。でも、もしこれから独立するのであれば、いま自分が何と戦っているのかを見直した方が良いと思います。お金(給料)なのか、環境なのか。それと向き合うことで”自分”が見えてくると思います。もしわからなかったらアンケ―ト形式で、10個中何個クリアになっているかっていう感じで始めていったら良いと思います。自問自答で「✖」や「▲」が多くあったら改善することがあるのでまだ独立の時期じゃないのかも知れませんし、「●」が多ければドンドン、ビジョン拡げていくべきだと思います。あと僕もフリーになって「仕事がもし来月からなくなったら」みたいなネガティブな要素を頭の隅に置いてます。常にブレーキを踏めるように「なんでもあり」にならないように気をつけてます。昔からすぐ調子にのるんで(笑)。あとはネガティブは最大のチャンスだとも思っています。例えば戦国時代の戰(いくさ)も一緒で、相手の人数が桁違いに多かったとしても「意外と少ないほうが有利なんじゃないか?」とか、「こうすれば勝てるんじゃないか?」って考えるようにしています。ポジティブに変換することで風向きも変わりますし、何より自分の見た目も変わります。そして、その苦境を乗り越えたら、3倍にも4倍にも楽しみが膨れ上がるので、逆境はむしろチャンスだろって。そんな風に楽しく、仕事を仕事だと捉えずにやるのが、きっと良いと思いますよ!





【PROFILE (独立編)】高良和忠 デザイナー・演出家

独立後は、様々なスポーツを中心に、デザインや演出に携わっている。主に広告やプロモーション、ロゴ、アパレル、会場演出など。これまでの経験を活かし引き続き活躍中。また自身が考える『スポーツユーティリティデザイン』という概念を持ってまい進中。

独立してからは生涯黒髪だと思っていたところを金髪に。「金髪でこの人相だと、あんなんダメって言われるかもしれないし、仕事が減るかもしれない」と考えたそうだが、”金髪にしてはいけない理由がない”ということで一念発起。結果「雰囲気が明るくなった」「あの金髪の人か」と、より覚えてもらえるようになり気に入っているとのこと。ちなみに夫婦そろって黒髪ではない(笑)。「もし子宝に恵まれて、娘だったら確実に門限を作ると思う」と最後に一笑いもくれた。

余談に余談だが「”つながり”をどう作っているか?」という質問に対しては「どんなことでも一旦仕事と思ってない」「その人の見た目云々はさておき、まずはその人の人生や人柄を知ろうとする」と話してくれた。結果的に「占い師」と呼ばれることもあるとのこと(笑)。


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「会社を辞める」という選択は、非常に勇気の要る決断だと思う。「やりたいことがある」「どうしても実現したい夢がある」としても、お世話になった会社・先輩への想いは、そう簡単にサヨナラできるものでもないだろう。それでも転職という選択をする人が多い中で、次なる道に「独立」を選択する人の勇気は、”会社から会社”の転職よりはるかにハードルが高いと思う。

今回お話を伺った高良 和忠(たから かずただ)さんは、今年の7月に大好きなプロバスケチーム「千葉ジェッツ」を去り、独立という新たなフィールドに立った。まさに「独立したて」の彼にインタビューする中で、仕事1つひとつに対する思い入れや芯の強さを感じることができた。前半は会社員編今回の後半は独立編と2本立てでご紹介する。この記事は、独立を視野に入れているあなたに、ぜひ読んでほしい。

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独立を決めた要因は、多くの人からの声だった

__高良さん、ズバっと聞いちゃいますけれど、どうして千葉ジェッツを辞めちゃったんですか?強い想い入れも持たれていたのでは?と思ったので……。

高良:ズバッと来ますね(笑)。でもお話した通り、この道を選んだからには「独立したい」っていう意識はずっと持っていました。簡単に言うと「そういう時期が来たから踏み切った」というだけなんですけれど、それじゃあ物足りないですよね?(笑)

__察していただいてありがとうございます(笑)

高良:いえいえ(笑)。千葉ジェッツで色んなクリエイティブを作ってお客様と会って実績を積んでいくと、本当に色んな人が見てくださるんですよ。「どのデザインやったの?」とか「演出見てみたいです!」とか言ってくださる方も多くって。そこから繋がって「ウチのデザインとか演出もやってくれませんか?」みたいなお話をいただく機会が増えたんですよね。もちろん、千葉ジェッツに残る選択肢もありましたし、勝手も理解してて自分が創ったものもいっぱいあるから想い入れも強かったんですけれど、大変な道のりにはなるんですが「挑戦してみたい」っていう思いのほうが強くなって、という感じでしょうか。

__7月に退職されたということで、まさに高良さんの真夏の大冒険が始まったわけですね。現在はどんなお仕事を担っているんですか??

高良:今は個人として、いちプロ野球チームからアートディレクターとしてご依頼いただいてたり、Bリーグだと群馬クレインサンダーズの演出とクリエイティブをご依頼いただいてます。他にもスポーツを中心に色んなクリエイティブに携わらせていただいてます。なので、デザイン制作会社〜千葉ジェッツでやらせてもらってた「アートディレクター兼デザイナー」+「演出」というポジションをそのままやらせてもらっているというスタートです。

__前回も少しお話に上がりましたけど、個人的に高良さんが凄いなと思うのは演出の部分なんですよ。もともとデザイナーさんで、前職で初めて演出を手掛けた。そこから今も演出関係のお仕事をいただけてるのが凄いなと。

高良:「たられば」ですけど、もし演出をやることがなければデザイナーとしてずっと生きていくつもりでしたよ。「クリエイティブディレクター」「アートディレクター」「デザイナー」ってザックリ3段階あるとして、一番上の「クリエイティブディレクター」と言えるまで頑張って、部下ができて自分が案件持ってきて振ってっていうのが、1つの理想だなと思ってたんです。でもそうすると、所謂デザイン制作会社になってしまって、いつかちょっと飽きたかもって思ってしまったんじゃないかなと。だから千葉ジェッツで、わけもわからない状態でしたけど「演出よろしく!」ってオーダーをいただけて、そのおかげで武器がデザインだけじゃなくなったので、それは良かったと本当に思ってます。あそこで「無理です」って断ってたら、これまた確実に今はないですから。




©Gunma Crane Thunders Produced by Power Voice


経験は、ひとつ残らず自分の武器に必ずなる。

__デザインは専門学校で学ばれていたと思うんですが、演出はどんな風に学んでいったというか。その部分をぜひ伺いたいです。それこそ前回考え方は一緒だって仰っていましたけれど。

高良:情報収集みたいな話でいくと「全部」かもしれません。たとえば音楽のライブに行ったときに「セットリストはどうやって組んでるんだろう」とか、色んな曲を聞いて「これ会場でかかったら盛り上がるな」とか。何気ない会話でも「そこでそれいく?」とか(笑)。全て生活の中にヒントが溢れていて、それをストックしているイメージに近いですかね。それこそバスケの試合を友人と見てて「ここで火とか出たらいいよな」とか「この曲かけたらクソ盛り上がるよな」とかって言うじゃないですか、素人ながらに。僕もまだまだ素人に近いけど、そのノリと一緒です(笑)。

__わかりやすい!確かに友人同士でそういう話はします。素人ですけど(笑)

高良:あはは(笑)。でも楽しいですよね。あとはそのタイミングでポン!っとそれを出せるかどうか。TVとか見てても、たとえば芸人さんの間でボケたのにツッコミがちょっと遅れて「遅ッ!」みたいな瞬間ってあるじゃないですか(笑)。あれと一緒で、曲を流すにしてもその瞬間でホイッとそれを出せるかが大切かなーって思ってます。演出をやったことで、だいぶ世の中の見え方が変わったので、本当にやってよかったと思いますね。

__これまでのお話を伺っていると、肩書があるとはいえ今は演出関係のお仕事が多いんですか?

高良:そんなことはないんです。演出はBリーグだけで。他の競技もちろんチャンスあればいつでもやってみたいです。今はアートディレクター兼デザイナーが足りてない会社さんが多いみたいで。各競技、主にブランド監修から実際のデザインのところでご一緒させていただいてているので所謂インナーブランディングみたいなイメージかもしれません。つい最近もアパレルブランドを出したいという企画があって、そのネーミングとかロゴとかアパレルとかは僕で作らせてもらってて、そのまま撮影して広告も出してプロモーションしていったら、2時間くらいで売り切れてしまって。「少なすぎるだろ」ってありがたいことに言っていただけたので、いま新作にとりかかっています。

__すごい!!次回作を心待ちにしているファンも多いと思いますよ!(私を含め(笑))

高良:引き続き頑張ります!あとBリーグでも、デザインさせていただいたり、経験上どう思うかってところのアドバイザー的な役割を持っていたりします。それから卓球ですね。Tリーグ。ポスターとかちょこっと作らせていただいてるんです。なのでデザインのほうがめちゃめちゃ多くやらせてもらってます。ちなみに、この前のパラリンピックでも1競技でグラフィックディレクター(主に映像管理)として入らせていただきました。独立してから今までにないような経験をさせていただいてて、ありがたい限りです。





まずは疑うことから入る。外部の人間が、内部的感覚で動くために。

__まさに外部の人間として携わる案件がほとんどだと思います。これまでは内部の人間としてデザインも作られてきたと思うのですが、実際外から携わってみて思ったことがあれば教えてください。

高良:どんなスポーツでも、またはスポーツじゃなくても、外部としてやる以上、ちょっと違うんですよね。細かな歴史もわからないし、社内の雰囲気とかファン層とかを色々知ってからじゃないと始めづらい。で、一番苦労したのはコンセプトを考えるときに「それは理解されないと思うよ」って二言目には言われちゃうんですよ。おそらく気付かないうちに所謂”それっぽくて、カッコいいだけのもの”を作っていたんだと思うんです。ダメだと思ってすぐ頭切り替えて、各チームがどんなことを伝えたくて、どういう風な想いを持っているか、かつそれをどうわかりやすく表現するかっていうところを考えるようにしました。当たり前なんですけどね(笑)。それで案を出したら評判が凄くよかったので、自分を客観的に見て「外から来たな」って感覚でした。だからまさに内部的感覚で「このチームはどんな魅力があるんだろう」「どんなファンが多いんだろう」って。各地で全然違うので、まずは把握してから進めないとなっていうのは、外部の人間として関わって改めて思いましたし、日々勉強です。

__外部の人間ではあるものの、内部的感覚で働くために、何か意識して行動していることってありますか?

高良:それこそタブーとされているものとか、ルールみたいなものがないかは聞きます。この前も、とあるミーティングでロゴの使い方の話になったんですけれど「そのロゴってそもそも使わないといけないのか」「文字は横一列じゃないとダメなのか」「こんな小さくしてもいいのか」とか、バーッて投げかけるんですよ。有り得ないことかもしれないんですけれど。でも言ってみたら「Aは無理ですけど、Bはありかもですね」ってなりました。疑問に思ったら可能な限りヒアリングして、しまくって、今一番良いものを作れるよう心がけています。

__今回のインタビューで最初に「なんで3歩歩いちゃダメなの?」と仰っていたのを思い出しました(笑)

高良:今はゼロステップって「0歩目」ができましたけど、僕らの時代はあれ、もろトラベリングじゃないですか(笑)。たぶんNBAのジェームズ・ハーデン選手(NBA:ブルックリン・ネッツ所属)が最初ですけど、画期的ですよね。ルール変えちゃいましたから。でもそれと一緒で、ルールには書いてあるけど、抜け道を探すというか。どんな仕事でもまず疑いからかかってみて、「こっちの方が良いと思うけど、これじゃダメなのかな」みたいなのを好奇心に変換して出来ることを模索するっていうことは凄く大切だし楽しいと思ってます。

__それこそ常識を疑うことに始まり、自分がやっていることを「こういうところにも生かせないかな」っていう別の視野を持つことって大事だな~と、お話聞いてて思います。

高良:まさにそうだと思いますよ!それこそ僕、TVで松本人志さんを見ててそれを感じてます。きっとあの人って「お笑い」だけで色々物事を捉えてないと思うんですよ。お話したことはないですけどね(笑)。だから映画や歌を作れるとも思うんです。それと、ご依頼をいただいてる演出会社の社長さんから言われたのは「ディレクターがディレクターだけやっている時代は終わった」と。「野球の大谷翔平選手(MLB:ロサンゼルス・エンゼルス所属)のように、二刀流の時代にどんどんなるから、とにかく武器を持ってくれって社員には言ってて。だからデザイナーとディレクターってすごいね」って言っていただけたんです。意外と気付いてなかったので、「確かに」って思いました。例えば演出の現場でも「ココでこういう絵がほしいな」って思うときって結構あるので、すぐ自分でつくっちゃいます。そういう風に、色んな物事を色んなところで使えないかなって考える力は、これからも伸ばしていきたいです。




©Gunma Crane Thunders Produced by Power Voice


僕にできることを全力で。できないことも全力で。

__二刀流の話で言うと、それこそ高良さんはファッションや建築もやってみたいと仰ってましたね。でも、CADで設計図を描けたりするわけではないですよね?

高良:もちろんできないです(笑)。矛盾するかもしれないですけど『餅は餅屋』で良いと思うんです。僕が今出来ないことはもちろん僕がやる必要はないと思うんです。オーダーにもよりますけど、たとえば「家を造ってください!」ってなって、「どんな設計図ですか!」って言われても今すぐは絶対できない(笑)。でも、理想の形とか雰囲気とかは余裕でいけるじゃないですか。「どんな家に住みたいですか?」って。あとはそれをつくれる人を探すだけなので、全部が全部自分が手を動かしてやる必要はないと思います。あ、ちなみに、実作業を出来も知りもしない人が理想だけ語って「ディレクションなら出来ますよ」っていうのとは全然ワケが違います。念の為。(笑)

__今の話も、デザイナーだけだったら自分がどう造るかって考えてしまいそうですけど、ディレクターの視点で発信できるのは、改めて高良さんの強みだと思います。

高良:もちろんデザインの領域は広げたいですよね。目標は佐藤可士和さん(日本を代表するクリエイティブディレクター)みたいなイメージです。そのうち可士和さんが日本の紙幣も創るんじゃないかなーなんて思います。そうなると、なんでそういう仕事が舞い込んでくるのかって考えた時に「できそうだから」なんですよね。何でもできるんじゃないかなって。出だしの思考の問題だと思うんです。僕は演出もスポーツもデザインも学生の頃から凄く似てるなって思っていて、話して伝えていくことで、どんどん仕事も来るかもしれない。つまるところ、好奇心の一言で、「あれもやってみたいな」って目線で、普段から街を歩いたり車に乗ってどこかへ行ったり、蓄えて考えて準備をするのが大事だと思うんです。僕もあれやりたい・これやりたいって色々あります。でもあんまりよそ見ばっかしちゃうと、やらなきゃいけないことを忘れがちなので、常にイメージしておけばいいかなって思ってます。

__やりたいこともいっぱいある高良さん。まだまだ独立したばかりでこれからだとは思いますが、今後の目標についても、ぜひ。

高良:最終的な一番の目標は死ぬまで仕事をしたいです。何かをずっと作っていたい。例えば病院にまで「高良さんこの案件ですけど……」って社員とかが聞いてきたりとか、相談に来てくれるのが一番の目標?かもしれないです(笑)。あと昔、田臥勇太選手(現・宇都宮ブレックス所属)の本の中で「never too late」って言葉があって。始めることに遅すぎるってことはないよって意味で、もう無理ってこともきっとないと思うので、領域を広げるって意味でも挑戦はし続けたいですね。あとは前職同様、目の前の仕事は全部手を抜かない。結果を見て「こんなヤツにお金を払ったのか。。」と思われないように、1つひとつ全力で取り組んでいきたいですね。

__ユニークな高良節全開の回答ばかりで、終始クスクス笑わせていただきありがとうございます(笑)!最後に「これから独立したい!」と考えている方に向けて一言メッセージをいただけませんか?

高良:まだ独立したばかりなので恐れ多いですが……。でも、もしこれから独立するのであれば、いま自分が何と戦っているのかを見直した方が良いと思います。お金(給料)なのか、環境なのか。それと向き合うことで”自分”が見えてくると思います。もしわからなかったらアンケ―ト形式で、10個中何個クリアになっているかっていう感じで始めていったら良いと思います。自問自答で「✖」や「▲」が多くあったら改善することがあるのでまだ独立の時期じゃないのかも知れませんし、「●」が多ければドンドン、ビジョン拡げていくべきだと思います。あと僕もフリーになって「仕事がもし来月からなくなったら」みたいなネガティブな要素を頭の隅に置いてます。常にブレーキを踏めるように「なんでもあり」にならないように気をつけてます。昔からすぐ調子にのるんで(笑)。あとはネガティブは最大のチャンスだとも思っています。例えば戦国時代の戰(いくさ)も一緒で、相手の人数が桁違いに多かったとしても「意外と少ないほうが有利なんじゃないか?」とか、「こうすれば勝てるんじゃないか?」って考えるようにしています。ポジティブに変換することで風向きも変わりますし、何より自分の見た目も変わります。そして、その苦境を乗り越えたら、3倍にも4倍にも楽しみが膨れ上がるので、逆境はむしろチャンスだろって。そんな風に楽しく、仕事を仕事だと捉えずにやるのが、きっと良いと思いますよ!





【PROFILE (独立編)】高良和忠 デザイナー・演出家

独立後は、様々なスポーツを中心に、デザインや演出に携わっている。主に広告やプロモーション、ロゴ、アパレル、会場演出など。これまでの経験を活かし引き続き活躍中。また自身が考える『スポーツユーティリティデザイン』という概念を持ってまい進中。

独立してからは生涯黒髪だと思っていたところを金髪に。「金髪でこの人相だと、あんなんダメって言われるかもしれないし、仕事が減るかもしれない」と考えたそうだが、”金髪にしてはいけない理由がない”ということで一念発起。結果「雰囲気が明るくなった」「あの金髪の人か」と、より覚えてもらえるようになり気に入っているとのこと。ちなみに夫婦そろって黒髪ではない(笑)。「もし子宝に恵まれて、娘だったら確実に門限を作ると思う」と最後に一笑いもくれた。

余談に余談だが「”つながり”をどう作っているか?」という質問に対しては「どんなことでも一旦仕事と思ってない」「その人の見た目云々はさておき、まずはその人の人生や人柄を知ろうとする」と話してくれた。結果的に「占い師」と呼ばれることもあるとのこと(笑)。


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