「元体操日本代表が社長の体操教室チェーン」
アナタはどんな職場を思い浮かべますか?体操のエリートが集まるところ?限られた人だけで作られた世界?今回インタビューをお届けする、南友介社長(40歳)にお会いして、私のそんな考えは一瞬で吹き飛びました。2010年の創業から、今や首都圏を中心に31店舗を展開するネイス体操教室のトップである南さんは、一言で言うならとってもざっくばらん。幼少期の体操との出会いから、体操日本代表時代、ネイスの創業、更にはそこにある信念についても、時に真剣に時にギャグを交えながら・・・ユーモアたっぷりに語ってくれました。
南社長の言葉は、がむしゃらに何かに取組むあなたの大きなヒントになるかもしれません。
(取材・構成=スポジョバ編集部 荻野仁美)
ーー大阪ご出身で大変ユニークな社長だと伺っています(笑)今日はよろしくお願い致します!!まずは南さんご自身も体操選手として活躍されていたという事ですが、体操との出会いから教えて頂けますか?
南:ハードルあげんといて(笑)体操を始めたので言うたら小学校1年生の時で、きっかけはジャッキー・チェン!映画「ポリス・ストーリー」を観て「うわっ!かっこええ~!僕もバク転出来るようになりたい!」って思って体操教室に入りました。当時の僕にとって唯一、体操教室だけが褒められる場所で……あ、僕、発達障害なんですよ。
ーーえ、そうなんですか?
南:大人になってからわかったんですけどね、最近はそういった発達障害児かもしれないお子さんを持つ親御さん向けの講演会とかもやってるんですけど。幼少期から持っている特性、いわば左利きみたいなもんって僕は言ってるんですが。そんな僕にとって小学校はめちゃくちゃ怒られる場所やったんです。落ち着きはないし、忘れ物も多いし。でも体操教室では違った。褒められて、楽しくて仕方なくてどんどんハマっていきましたね。
ーー幼い南少年にとって、体操教室が自分を認めてくれる居場所だったんですね。
南:僕は「注意欠陥多動性障害」ってやつなんですが、じっとしていられない、思いつくと行動してしまうっていう特徴があります。でもこれは裏を返せば、チャレンジ精神旺盛、好奇心旺盛、行動力があるっていう長所でもあるんです。そんな特徴もピタッと体操にハマったんやろね。ジュニアクラブで始めて、岡山県の高校に進学して、そこで選手として花開いたかな。全国の表彰台に乗れるようになって、日本代表にもなりました。水鳥(寿思)と冨田(洋之)と僕の3人で、国際試合出たりしてましたね。(2人とも後のアテネオリンピック体操団体金メダリスト)
ーーす、すごいメンバー!!ではやはり体操で生きていこうと思ってらっしゃったんですか?
南:うん、それは思ってましたね。でもね、高3の時くらいかな、水鳥、冨田と決定的な差を感じるようになってました。それが僕がオリンピック行けへんかった理由かな。
ーーお2人とどんな差を感じていたんでしょうか?
南:内的動機と外的動機ってあるんですよ。内的動機は「体操が好きだからやる」っていう純粋な気持ち。僕も小さい頃からずっとそうやったんやけど、いつしか外的動機、日本代表になるとか、表彰台に登るとかが目的になっちゃってた。
ーー結果を求めるアスリートなら当然な気もしますが、それじゃダメなんですか?
南:うん。あの2人はちゃうかったね。ただただ体操が好きってだけ。僕は彼らより上手くなりたいから彼らより長いこと練習するようにしてた。でも彼らは僕なんて見てないんですよ、ただ自分が上手くいかないから練習する、それだけ。当時はわからんかったけどね~(笑)僕、好きこそものの上手なれって言葉が好きやねんけど、突き詰める人ってまさにそんな感じ。今、思えば、その時点で僕は体操が苦痛になってたんやと思うわ。
ーー大好きな居場所だった体操が…。でもその後も名門、日本体育大学で体操を続けてらっしゃいますよね?
南:彼らとの差を感じてはいたけど、世界大会には出たかった。それで大学1年の時、色々調べて体操6種目あるうちの1種でも日本のトップになればW杯に出られるという事を知った。それで、先生に「僕、平行棒しかしません!」って言ったら、当時はそんな選手はおらんからめっちゃ怒られてね(笑)でも6種やりながら、先生の目を盗んで平行棒の練習ばっかりしてたらめっちゃ上手くなりましたよ(笑)
ーー(笑)。レギュラーメンバーでそれやってたら、そりゃ怒られますよね(笑)実際、W杯には行けたんですか?
南:2000年の全日本選手権。平行棒で決勝残って、これで優勝すればW杯決定っていう場面。(立ち上がる南さん)で、最終着地が、こう~っヘナッと(笑)(実演中)結局2位。W杯には出られへんかった。だからね結局、不純というか外的動機だけではダメなんですわ。最後のその一歩に出ちゃうんです。
ーー実演までありがとうございます!!(笑)それで大学卒業後はビジネスマンとしての歩みを始めたわけですね。
南:こっからが僕の人生、第二章ですわ(笑)6歳から体操一筋で生きてきた僕が、入社1年目で仕事ってめっちゃ楽しい!!って思うようになるんです。
ーー第二章、気になります!新卒で入った会社ではどんな仕事をしていたんですか?
南:大学卒業して僕が入った企業がリコージャパン。僕はコピー機の飛び込み営業やってたんですが、企業訪ねて「コピー機いりますか?」っていうても全然売れへん。そらそうや、家にいきなり誰か来て「冷蔵庫いりますか?」言われてもだいたい「あるからいらん。」やないですか(笑)それとコピー機も一緒やなと。それで僕は考えた。正面からやなくて、後ろから行かないかんなと。その企業の社長さんのところに行ったんです。当時はまだパソコンが今ほど普及していなくて、でも電子入札が始まった時やった。僕が回っていた企業さんは社員5、6人の中小企業。そこの社長さんたちは必要に迫られてパソコン使いだすけど、使い方全然わからへん。それで僕は毎日、社長にパソコン教えに通ったんです(笑)
ーーパソコン?でも南さんが売りたいのはコピー機じゃ……
南:そうです!で、何度目かに行った時に「社長、僕、何屋か知ってますか?コピー機売れんとポイントつかんのですよ。だからいつかのタイミングで買ってくれませんか?」と。そしたら「別にええよ!」でバンバン売れて、その年、社内で新人賞とりました(笑)
ーーすごい……!できる営業マンは、商材よりも人の魅力で買わせるって聞きますけど、まさにそれを体現されていますね。
南:この話がまさに今、僕が子ども達に伝えていきたい事なんですよ。マニュアルにはパソコン売れ、とか書いてないじゃないですか。でも僕が、社長にパソコン教えに行こうって思いついた時に飛び込めた力が「自己効力」なんです。
ーー自己効力?自己肯定力はよく聞きますが……
南:自己肯定力は、自分の事を大切にしたり認めたり、自分の過去や現時点を肯定する力のこと。自己効力は、その先の話で、私ならやれる!って行動を起こせる力のこと。でも、自己肯定力がないと自己効力で飛べないんです。ワンセットになってる。これが幼少期にめちゃめちゃ大事で!!僕の場合は体操教室で褒めてもらったことで、その力が育まれた。もしジャッキー・チェンに出会わなくて、体操教室にも通ってなかったら、その根が育たなかったと思います。
ーーなるほど!どんな些細なことでもいいから幼少期に成功体験を沢山積む事が、将来の力になるんですね。
ーーバリバリの営業マンとして活躍されて…その後はどんなキャリアを歩まれたんですか?
南:年間優秀社員としても表彰されて、ここでやれることはやりきったなと思って。これも自己効力の性質なんですが、常に次のステージを目指すんですよ。そのあとはITベンチャー、人材派遣の会社で役員も経験しました。で、ずっと持っていた起業の思いを20代のうちに実現したいと思って、29歳11ヶ月の時に会社起こしました。
ーーそれが2010年のネイス創業ですね。様々なビジネスを経験されていますが、やはり体操で起業しようと思ってらしたんですか?
南:いや~会社起こすのが最優先やったので(笑)とりあえずお金も人もないし、僕ひとりで出来る事って言ったら、当時ちょっと流行ってた体育教師の派遣やなと。おうちまで伺って逆上がりとか教えますよ~って内容のビラ作ってポスティングしたんですけど、1ヶ月くらい経っても問い合わせ全くなし(笑)で、ある日、公園におったお母さんにビラ渡したら「家まで来てもらうのはちょっと…どこか教室で開催していたら参加したいな」って。それをヒントに翌日から公民館借りて、ビラに日程かいてポスティングしたら、すぐに反応があって!2か月後のクリスマス会やる頃には生徒さん40人くらい集まってくれて、急いで物件探して年明けの2011年2月には1号校をオープン。それが今の東川口校ですね。
ーーお母さん、ナイスヒントですね!(笑)その1号校のオープンから今年でちょうど10年。今や首都圏を中心に31校も展開されていますが、創業当時から南さんが変わらず持っている信念というかやり遂げたい事ってなんでしょうか?
南:僕ね、目標は定めないんです。もちろん短期経営計画でいつまでに何店舗展開するとかそういうのはありますけどね。目標について、よく旅行に例えるんですが、旅行好きな人が世界一周したいとか、何年後までに何ヵ国とか掲げて、それ達成して終わりって事ないですよね?もう二度と旅行は行かないってわけじゃないですよね?それと一緒で、好きな事だからずっと続けていくんです。だから僕はずっと「やり続けていきたい」んです。
ーーまさに!!それは先程おっしゃっていた内的動機ですね!ただただ好きだからっていう……
南:そうですね!あと信念でいったら、NEISかな。社名のNEISはNew,Exciting,Interactive,Smileの頭文字なんです。新しい事して、おもんなきゃあかんし、一方的やなくて相手も求めているものでなきゃあかんし、ニコニコ笑ってないかん。これが僕の大切にしている事。新しくておもろいもん大好き!それと僕の中で「楽しい仲間と楽しい仕事」っていう思いもあって、NEISの意味に共感してくれた仲間たちと、同じ思いで楽しく働き続けていきたいなと思っています!この会社、おもろいって思ったら来てくれたらよろし(笑)
ーーユーモアたっぷりに語ってくれたネイス創業物語。次回は、そのネイスで求める人財、今後の展望などにも迫っていきます!!
【PROFILE】南 友介(みなみ・ゆうすけ)
1980年大阪生まれ。小学校1年生の時にジャッキー・チェンに憧れ、バク転がしたくて体操を始める。ジュニアクラブで経験を積み、当時、練習量が多くて有名だった岡山県の関西高校に進学。そこで選手として花開き、水鳥、冨田(後の2004年アテネ五輪団体金メダリスト)の2人と共に、日本代表として国際試合に出場。
日本体育大学でも体操を続け、レギュラーメンバーとして大会に出場するも、大学卒業と同時に選手は引退。現在のリコージャパンに入社し、新人賞、優秀社員賞を受賞し営業マンとして輝かしい成績を収める。
その後、六本木に本社を構えるベンチャー企業、大阪の人材派遣のスタートアップ企業で役員を勤めた後、2010年の9月、30歳の誕生日1ヶ月前にネイスを起業。
体育教師の派遣業からスタートし、2011年2月に1号校となる東川口校をオープン。現在は首都圏を中心に31校を展開する。
また自身も発達障害であることから、講演活動や発達障害児向けのプログラム「ネイスぷらす」の展開なども積極的に行う。
好きな言葉は「好きこそものの上手なれ」。インタビュー中もギャグや体操の実演で終始笑わせてくれるエンターテイナーな社長。いつもこんな感じなんですか?と伺うと「今日は大人しいほうやで?」の返答が。
設立年月 | 2010年09月 | |
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代表者 | 南 友介 | |
従業員数 | - | |
業務内容 | 1.子ども向け体操教室「ネイス体操教室」の運営
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