1950年のチーム創設以来、70年以上にわたり川崎を拠点として活動を続ける川崎ブレイブサンダース。B.LEAGUE屈指の伝統あるクラブとして多くのファンを魅了する一方で、バスケットボールの普及活動や選手の育成にも積極的に力を注いでいます。
今回は、アカデミー事業の『ユース活動』にスポットを当てます。現場の指導者のインタビューを通じ、強化育成に懸ける熱い思いや、その取り組みについて詳しくお話を伺いました。
(取材・執筆:齊藤 僚子、編集:小西 秀人、中田 初葵)
現在、川崎ブレイブサンダースのアカデミーでは、U18・U15・U12と3カテゴリーを保有し、プロ選手の輩出を目指しています。その取り組みには、どのような思いやこだわりがあるのでしょうか。まずはアカデミー事業部 部長の内藤誠人さんに伺いました。
内藤「一番の目的は、この育成期間を経て川崎ブレイブサンダースのトップチームで活躍できる選手を育てることです。チームによって編成の仕方は様々あると思いますが、川崎ブレイブサンダースは、もともと東芝バスケットボール部をルーツとする実業団チームです。当時は移籍もほとんどなく、社員として働きながらプレーする選手が大半でした。そうした背景やホームタウンを中心としてたくさんの方に応援されるチームであり続けるためにも、川崎にゆかりのあるフランチャイズプレーヤーを育てていく思いは、クラブ全体として強く持っています。そのため若い世代の育成にも力を入れ、トップで活躍する選手を輩出していくことを大きな目標に掲げています」
川崎ブレイブサンダースでは、アカデミー事業のもう一つの柱として、主にバスケットボールの普及を目的としたスクールも運営しています。普及と育成、それぞれの役割を明確にしながら、両者がそれぞれの目的を果たせる体制づくりが進められてきました。
内藤「スクールももちろん育成に注力していますが、もう一方で裾野を広げたり、バスケットボール人口を増やしたりしていく普及活動にも注力しています。ユースチームの目的は強化・育成に特化し、ユースチームに所属する選手たちの中から、一人でも多くトップチームへ引き上げていくという強い意志を持って運営しています」

大きなミッションを背負う、指導者たちの存在。トップ選手の育成を支えるコーチたちは、どのような思いで現場に立っているのか。U18ヘッドコーチの木村さんとU15アシスタントコーチの髙橋さんに話を伺いました。
木村「僕は11歳からバスケットボールを始めて、入ったミニバスチームの一期生でした。厳しい指導の甲斐もあり、県では負けることがないくらい強いチームでした。そういう経験があって、バスケットボールがどんどん楽しくなっていきました。その後も競技を続け、高校卒業時にミニバスの恩師から『子どもたちの面倒を見てくれないか』と声をかけられたのが、指導の道に進む最初のきっかけでした。小学生を教えていると、毎日のように上達していく姿を目の当たりにできて、それが本当に楽しかったんです。もともと教員を目指していたこともあって、大学卒業後はご縁があった私立高校に就職し、25年間お世話になりました。

ただ、自分の中では一つの山を登り切ったような感覚があったんです。50代を前にして、このまま、人生の山を下っていくのは嫌だなと思っていたときに、川崎ブレイブサンダースのユースチームコーチの求人を紹介してもらいました。昔から雑誌や画面越しで見ていた憧れのチームでしたので、そんなご縁があるならもう一度チャレンジをしてみたい、と思って飛び込みました」
髙橋「僕は、9歳からバスケを始めました。2013年からプロ選手として活動し、2025年からユースチームのアシスタントコーチに就任しました。伝統あるクラブであること、そしてチーム理念の『BE BRAVE』やプレースタイルに強く共感したことがここを選んだ理由です。僕自身、現役時代から『数字に残らない部分』というのをとても大事にプレーしてきました。川崎ブレイブサンダースのプレースタイルも、フロアダイブやディフェンスでプレッシャーをかけたり、前から当たってハッスルプレーをしたりする戦い方で、すごくかっこいいなと思っていたんです。そしてそのスタイルが、まさに自分の考えと合っているなと感じました。また、僕も以前一緒に活動していたマネージャーとのご縁から『コーチを募集しているよ』と声をかけてもらいまして、そのタイミングも重なりこのチームで挑戦したいと思いました」

チームに加わるということには、さまざまな関わり方があります。指導者として選手と向き合う中で大切にしている思いや、日々心がけている指導スタイルについて伺いました。
木村「僕はその選手からバスケットボールを引いたときに、何かが残っていないと意味がないと思っていて、まずはバスケを通して人としてきちんと成長させることを一番大切にしています。3年間という限られた時間で、選手を『一丁前にする』。それがあってこそ、バスケットも成長すると思っています。先ほど髙橋さんが言ったみたいに、誰かのためにルーズボールに飛び込むプレーなどは、お互いを信頼し支え合えるチームだからこそ生まれるものです。いいチームというのは、お互いをきちんとリスペクトできて、つながっている人の考えていることが分かり、信頼関係がある状態だと思っています。
ただ、ユースチームとして一緒に過ごせる時間は限られています。教員時代は学校生活全体の中で、コート外の部分まで自然と関わることができましたが、今はそのようにはいきません。直接関われる時間は限られているからこそ、コート上の練習やトレーニング以外の振る舞いなどにも、できる限り意識を向けながらやっていきたいと思っています」
髙橋「僕も、技術だけではなくやっぱり人としても成長できるようにということを大切にしています。長くバスケットに関わってきた中で、競技以外のことも勉強させてもらったので、選手たちにも同じように伝えていきたいと思っています。また、いまはアシスタントコーチとして、ヘッドコーチに少し言いづらいことも、間に入ってコミュニケーションを取る役割も意識しています。ただ、最近優しくしすぎたのか、距離感を間違えて少し踏み込みすぎてくる選手もいるので、そこは正しているところですね。『友達じゃないんだぞ』と(笑)。
一方で技術を教える面では難しさも感じています。自分にとっては当たり前だったことができなくて、『なんでだろう』と思うことも結構多いので、帰ってから練習の動画を見返して振り返ったりしながら、自分自身も学んでいますね」

日々試行錯誤を繰り返し、子どもたちの人生のステップに深く関わるからこそ、指導者という立場から、選手を育てるプレッシャーを感じることも多いように感じます。どのように向き合っているのでしょうか。
髙橋「実はそこまでプレッシャーを感じずにやっているんですが、僕が担当しているのは中学生なので、プロという存在がまだ遠いというか、明確にわかっていないところがあると感じています。口では『プロを目指す』と言いつつ行動が伴わない選手もいますが、自分と向き合える選手は目に見えて成長します。プロの厳しさを知る身として、積み重ねの大切さをしつこく伝えていきたいですね」
木村「プレッシャーという意味では、このチームの看板の大きさはすごく感じています。『自分で本当にいいのか』『このやり方でいいのか』ということは、常に考えています。まずチームがこれまで築き上げてきた川崎ブレイブサンダースユースならではの文化や伝統があります。選手たちもその中で育っていますから、途中から加わった自分が、その積み重ねを邪魔したり、曲げたりしてはいけないという思いは強くあります。かといってノーチャレンジでは何も生まれません。チームに加わる前、試合を見て、『自分だったらこういうチャレンジができるかな』というイメージを持ってここに入りましたが、指導に関する新しい提案にも理解をいただいて、いま少しずつ積み重ねているところです。『川崎らしさ』の中で、どう自分らしさを出していけるのか、そこに多少プレッシャーは抱えながら、日々取り組んでいますね」

カテゴリーを超えた風通しの良さは、指導環境における大きな魅力です。お二人はその強みを次のように語ります。
髙橋「僕はU15をメインで見ていますが、上のカテゴリーと一緒に練習することもあるので、そこでの取り組みを見ることで自分の引き出しも広がり、とてもいい勉強になっていると感じています。自分がこれまでやったことのない様々な練習や考え方に触れられ、指導者として学びの多い環境だと感じています」
木村「僕もこれまで主に高校生を指導してきましたが、カテゴリーを縦断して関わることができるのはいいなと思います。指導の幅も広がるのでとてもありがたいです。やりやすい環境をどんどん整えてもらえるので、すごく居心地のいいチームですね。それでまた、U15と一緒に練習すると、ボソっと髙橋さんが『もっとこうすればいいのに』と呟くんですよ。そしてこれが効くんですよ(笑) 『ああ、やっぱプロでやってきたこの目線はすごいな』と」
髙橋「いや、なんか『もうちょっとこうしたら簡単にできるのにな』みたいな……」
木村「その一言が今チームで困っていることを一瞬で解決してくれることもあって、出てくる意見が全て同じじゃないというところがいい感じで回っているなと思います。今年は特に、一緒に指導する機会が増えて、違った視点や強みを持っているので、お互いに補い合いながら指導できていますし、それは選手たちにとってもすごく良い環境になっていると感じています」
また、初期からチームを作ってきた内藤さんはチームのあり方について次のように話します。
内藤「自分自身は、選手にバスケットを指導するいわゆる“指導者”としての経験はありません。その一方で、クラブとしてどんなチームでありたいのか、どんな姿を目指していくのかという方向性を考えることは、自分の役割だと思っています。B.LEAGUEのユースはまだ立ち上がりの時期でもあるので、コーチが指導と運営の両方を担っているクラブも多い印象です。その中で、コーチが指導に専念できる環境を構築していることは、ひとつの価値なのかなと思っています」

指導の現場では、選手をはじめ多くの関係者とともに、同じ目標に向かって進んでいくことになります。ユースチームの指導者として求められる資質とは、どのようなものなのでしょうか。
内藤「まず一つは、二人の話にもありましたが、川崎ブレイブサンダースとして大事にしていることや、ユースチームとしての“川崎らしさ”に共感していただけるかどうかは、大事なポイントだと思っています。『何を大事にするのか』という共通認識がしっかりあることが、今の環境を生んでいるのかなと感じます。もちろん、それぞれの能力や経験は最大限生かしてほしいですが、ベースにあるのはやはり川崎らしさですし、チームとしてトップで活躍する選手を一人でも多く輩出していくという目標に向かって、一緒に神輿を担いでくれるような感覚で関わってくれる人がすごく大事だと感じていますね」
お話を聞く中で、それぞれが自分の立ち位置や役割の中で、最大限に力を発揮できる環境があることが伝わってきます。最後に、さらなる飛躍を感じさせるこのチームの今後について、掲げる目標やビジョンに込めたそれぞれの思いを伺いました。
髙橋「まずはチームで日本一をとりたいということ。もう一つは、プロ選手の輩出です。今後B.LEAGUEの仕組みが変わることで、ユースチーム選手の優先交渉権もできると思います。これまで以上にチャンスがあると思うので、そういった機会にふさわしい選手を、縦のつながりも生かしながら育てていきたいです」
木村「僕が育成という立場で考えているのは、3年間関わった選手の答え合わせは、その後の人生の中でしかできないということです。ユースを離れた後に『ここで育って良かった』と思ってもらえるかどうかが、育成としての一番の成果かなと考えています。その上で、チームとしてはチャンピオンシップでの優勝、そしてトップチームへの選手輩出が大きな目標です。育成とチームの成果はときに相反する部分もありますが、その両立を目指すのが大事だと思っています」

内藤「まず目先の目標としては、とにかくトップチームへ輩出する選手の第1号を早く出したいという思いがあります。そこは今、目指す一番近い目標ですね。また、ユースの世界はまだ黎明期で、選手の入れ替わりなどで結果が大きく動くことがあります。短期的な成果に惑わされず、これまで通り積み上げる育成にこだわりたいですね」
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【PROFILE】
内藤 誠人(ないとう まさと)写真右
地域振興・アカデミー事業部 部長。基本はバスケットボール三昧だが、趣味は釣り。海が近い環境もあり、ユースの練習後に夜釣りへ出かけるのも日々の楽しみの一つとなっている。
木村 太(きむら ふとし)写真中心
U18 川崎ブレイブサンダースユース ヘッドコーチ。ミニバス時代は全国大会出場、高校時代は関東大会出場、国体選手としても活躍。教員時代にはウインターカップ出場や関東大会出場を経験し、指導者としても数多くの実績を残す。現在は、教員時代にはなかった自分の時間も増え、家族との時間や週3回のトレーニングを習慣にするなど、ワークライフバランスが整い、人生が大きく充実していると感じている。
髙橋 祐二(たかはし ゆうじ)写真左
U15 川崎ブレイブサンダースユース アシスタントコーチ。9歳からバスケットボールを始める。小中学生時代はバスケットボールと並行して陸上競技の大会にも出場。日々、練習や試合映像を振り返るなど、基本的にバスケットボール漬けの生活を送る一方で、メリハリも大切にしながら、趣味の映画鑑賞や温泉で息抜きをする時間も時折楽しんでいる。
| 設立年月 | 2018年01月 | |
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| 代表者 | 川崎 渉 | |
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| 業務内容 | プロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」の運営および関連事業 |
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