1950年のチーム創設以来、70年以上にわたり川崎を拠点として活動を続ける川崎ブレイブサンダース。B.LEAGUE屈指の伝統を誇るクラブとして多くのファンを魅了するとともに、地域に根差した活動にも力を注ぎ、バスケットボールの普及や次世代の育成にも積極的に取り組んでいます。
本記事では、その取り組みの一つであるスクール部門にフォーカス。幅広い年代の子どもたちが通うスクールでは、「バスケットボールの楽しさを伝えること」を大切にした丁寧な指導が行われています。そこで、スクールのメインコーチ陣に指導への思いや子どもたちとの向き合い方、川崎ブレイブサンダースのスクールでバスケットボールを教える魅力について話を伺いました。
(取材・執筆:齊藤 僚子、編集:小西 秀人、中田 初葵)
幅広い年代の子どもたちが通う、川崎ブレイブサンダースのバスケットボールスクール「THUNDERS KIDS」(サンダースキッズ)。競技力の向上だけでなく、バスケットボールの楽しさを伝え、一人でも多くの「好き」を育むことも役割の一つです。まずは、多様な子どもたちと向き合うスクールの指導理念やその思いについて、アカデミー事業部 部長の内藤誠人さんに伺いました。
内藤「スクールには、さまざまな目的で通う子どもたちがいます。もともとバスケットボールをやっていて上達を目指す子もいますし、うちで初めて習うという子もいます。『友達と楽しくバスケがしたい』『部活動でもっと活躍したい』『親子で一緒に習いたい』。本当にいろんなニーズがあるので、幅広い思いを持った子どもたちに対応できることを、まずは大切にしています。

おかげさまでB.LEAGUEも10周年を迎え、競技のことも広く知ってもらえるようになりましたが、リーグが立ち上がった頃はバスケットボールを習うとしたらミニバスに入る以外ほとんど方法がなかったように思います。そこから、各B.LEAGUEクラブがスクールを展開し、その流れに触発されるようにミニバス以外でもバスケットボールが習える環境がどんどん増えてきました。バスケットボールが好きな子や、興味を持ってくれる子どもたちをどれだけ増やせるかが重要だと考えています。それがバスケットボール界全体の発展にもつながっていくと信じているため、裾野を広げる『普及』という観点も大切にしています。もちろん、その中から競技志向が高い子たちには、ユースチームもありますし、その成長や上達を少しでも後押しできればという思いで指導しています」
こうした理念を現場で実践しているのが、川崎ブレイブサンダースのスクールで指導にあたるコーチたちです。今年4年目を迎えた出光歩さんと、昨年から指導に加わった北條風弥さんに、指導者を志したきっかけや、このスクールで指導するようになった経緯について伺いました。
出光「バスケットボールは小学2年生の頃に始めました。プレイヤーとしては高校3年まで続け、大学に入ってからは母校で指導のお手伝いをしていました。僕自身、いろいろな指導者の方に支えられて、大きな大会にも出場させていただきましたし、指導者のおかげでたくさん成長できたという思いがあります。特に、自分ができなかったことや苦手だったことができるようになったときの喜びは、今でも強く印象に残っています。
母校の指導に携わる中、『自分が感じた嬉しさを今度は子どもたちにも届けたい』と思うようになり、本格的に指導者を志しました。その後、就職活動をしていたとき、高校時代にバスケットボールを通じて知り合った方とのご縁があり、その方の紹介で川崎ブレイブサンダースに入りました」

北條「バスケットボールは、小学校に上がる前くらいから始めました。最初は選手になることだけを目指していましたが、中学生の頃に選手生命に関わる大きな怪我をしてしまい、競技からはしばらく離れていました。でも、当時の部活の顧問から『プレイヤーだけがすべてではないんじゃないか』と声をかけてもらい、サポートする側の道もあることに気づき、『じゃあコーチを目指してみよう』と思うようになりました。
その後は地元の高校へ進学し、ミニバスチームで指導を手伝いながら経験を積み、専門学校で指導に必要な資格や知識を学びました。卒業後は地元である北海道から一度は外に出てみたいと思い、バスケの指導に関わることができる企業を調べていくうちに、川崎ブレイブサンダースと出会いました。スクールには多くのクラスがあり、さまざまな年代の子どもたちを指導できる環境の方が自分自身の成長にもつながるだろうと思い、志望しました」
選手として歩んできた道のりや、指導者を志したきっかけはそれぞれ異なるお二人ですが、幼い頃から変わらないバスケットボールへのまっすぐな思いが伝わってきます。子どもたちと向き合う中で、どのようなコミュニケーションを大切にしているのでしょうか。日々の指導について伺いました。
出光「僕は身長が高いので、5~6歳くらいの子どもの背丈は僕の腰下くらいなんです。なので、子どもたちと目線を合わせたり、話すときの雰囲気を柔らかくしたりすることは心がけています。指導者の雰囲気が怖いとバスケを楽しめないので、まずは話しやすい空気づくりが第一です。ただ、年齢や技術が上がると練習がゆるくなりすぎる懸念もあります。そのため、スクールでは全クラス共通の『チームルール』を大切にしています。『時間とものを大切にしよう』『大きな声を出そう』『話を聞こう』『仲間を褒めよう・助けよう』『挑戦しよう』の5つを意識した指導をしています。チームルールは毎回練習前に確認しているので、『これはルールに合っていないよね』と、共通の意識をもとに指導ができる環境になっています。子どもたちも納得して行動しやすくなりますし、いい雰囲気の中で練習できていると思います」
北條「年が浅いクラスでは、まずは友達になるような感覚で接しています。『友達に会いに来る』くらいのテンションで最初はいいのかなと思っています。もちろん上のクラスになってくると、それを求めてない子もいるので言うべきことはしっかり伝えますし、チームルールに反したことがあればきちんと指導します。特に大事にしているのは、指導に矛盾をつくらないことです。『あのときはこうだったのに』ということがあると、子どもたちや保護者の方にも不信感を与えてしまいます。一貫した指導や思いが伝われば、子どもたちもついてきてくれると思うので、そのうえで初心者と経験者、それぞれに合わせた指導を心がけています」

また、指導を振り返り、大変だったことや苦労したことも次のように話します。
北條「小さい子のクラスは、まず知らない大人や子どもたちに囲まれる環境で、多いときは20人くらいいる中に1人で入ることになります。それだけで怖くて、そもそも輪に入れず泣いてしまう子もいます。そういう子をまず輪に入れるところからが、僕にとっては一番大変かなと思います。レッスンの1時間のうち30分くらいは『ここは怖くないよ』と安心してもらうコミュニケーションの時間にして、最後の30分で少しでもボールに触れたり、シュートを打ったりして慣れてもらう。そして、『じゃあ次も来てみようか』と声をかけて、次は40分、50分、1時間と、少しずつ練習に入れる時間を伸ばしていきます。忍耐力を持って、長い目で待ってあげるのが大事だと思っています。
一方で経験者のクラスになると、こちらがやろうとしていることが伝われば取り組んでくれます。ただし、間違ったことを伝えてしまうと、それが子どもたちの成長や試合に直結してしまうため、特にその責任の重さを感じますね。その分、練習内容を組む段階から考えることも多く、そこが楽しさであると同時に大変な部分です」
出光「逆に、そんな幼い頃に担当した子が、4年生くらいになって上のクラスで頑張っているのを見るととても嬉しいですね。クラスが変わると担当コーチも変わることがありますが、『上のクラスに上がったよ』という話を聞いたり。そういった近況を聞けるのも嬉しい瞬間のひとつです」

川崎市はプロスポーツチームが集まるスポーツの街としても注目されています。プロバスケットボールチームの存在は地域の誇りでもあり、文化の広がりにもつながっていると感じます。
内藤「僕たちの会社のミッションが、『MAKE THE FUTURE OF BASKETBALL ― 川崎からバスケットボールの未来を』というものなのですが、それぞれの事業部ごとにそのミッションにどう近づいていくかという考え方のもと動いています。その中でアカデミー事業部は、バスケを始める子どもたちや、それを通じてクラブを応援してくれる人が増えることに直結する役割です。スクールの会員数が増えることも嬉しいですが、それ以上に『未来が広がっていく感覚』がある活動だと思います」
また、普及活動の一つとして川崎市と連携したプロジェクトも進めており、コーチが市内の小学校へ出向き、授業の中でバスケットボールを指導する活動にも取り組んでいます。この活動にはとてもやりがいを感じていると二人は話します。
北條「このプロジェクトはすごく楽しいです。生徒の中には、興味なさそうにしている子もいますし、『朝の1時間目から眠いのに……』って顔をしている子もいます。でも、終わった頃には『楽しかった』と言ってくれますし、それが自分たちの役割だと思っています。スクールにはやりたい子たちが来てくれますが、このプロジェクトはそこが違ってバスケへの入り口がもっと手前にあるので、もちろん難しいですし、エネルギーも使うし体力も使いますが、このプロジェクトはめちゃめちゃ好きですね」
出光「自分が入った時からこの活動はあったので、僕も4〜5年ほど携わっていますが、年度によって受け持つ学年が変わるんです。別の年に『あ、また来てくれた!』というような再会があったりして、それもこの活動の好きなところですね」

お話を伺う中で、川崎から想像以上にバスケットボール文化が広がっていることや、その盛り上がりが生まれていることを感じました。この流れが今後さらに広がっていくことにも期待が高まります。最後に、スクールとしてその先に見据えるもの、そしてバスケットボール業界の中で目指す姿について、それぞれの思いを伺いました。
北條「昔からミニバスってあるじゃないですか。でもそれとは違うところに、スクールの役割があると思っています。ミニバスと掛け持ちする子も多く、求めるものはそれぞれ異なります。週1回でもプラスアルファの経験や、少しレベルの高い練習を柔軟に提案していくことが大切です。『スクールだからこそ通う意味がある』と思ってもらえるようにしたいですし、最初に言ったように自分の指導の色や芯をしっかり伝えられないと、続けてもらえないと思うので、ブレないようにしたいです。ただ、それを押し付けすぎると暑苦しくなりすぎてしまうので、子どもたちや保護者の方との距離感を調整しながら指導していきたいです」
出光「僕はスクールを通して、バスケをやる人や関わる人をもっと増やしていきたいと思っています。2030年には川崎ブレイブサンダースの本拠地として、新しく約15,000人規模のアリーナができます。現在ホームのとどろきアリーナが約5,000人規模なので、それが倍以上になるというのはすごく楽しみです。僕は他のスポーツを見に行くのも好きで、野球などもたまに見に行くんですけど、試合があるたびに街中にユニフォームを着た人たちがあふれている光景を見るんです。バスケもそのように広がっていけばいいなと思いますし、スクールでは子どもたちだけじゃなく保護者の方も含めて、バスケットボールの楽しさをもっともっと伝えていきたいです。そして、2030年に新しいアリーナができたときに、街中に川崎ブレイブサンダースのチームカラーであるブレイブレッドのユニフォームを着た人がたくさんいるような景色を見てみたいですね」

内藤「川崎ブレイブサンダースのスクールは、規模で言えばB.LEAGUEの中でも最大級です。だからこそ、育成年代において、バスケットボールを楽しむこと、頑張ること、好きになること、知ること、興味を持つことを、これからもリードしていく存在であり続けたいと思っています」
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【PROFILE】
内藤 誠人(ないとう まさと)写真左
地域振興・アカデミー事業部 部長
基本はバスケットボール三昧だが、趣味は釣り。海が近い環境もあり、ユースの練習後に夜釣りへ出かけるのも日々の楽しみの一つとなっている。
出光 歩(いでみつ あゆみ)写真右
バスケットボールスクール「THUNDERS KIDS」メインコーチ
大学在学中から指導経験を積み、卒業後に現スクールへ
年に一度はバスケットボール以外のことにもチャレンジしたいと考えており、昨年はハーフマラソンに挑戦し完走。今年は富士山登頂を目標にしている。
北條 風弥(ほうじょう ふうや)写真中央
バスケットボールスクール「THUNDERS KIDS」メインコーチ
スポーツ専門学校在学中から指導経験を積み、卒業後に現スクールへ。バスケットボール漬けの日々を送りながら、練習後や休日はNetflixで恋愛映画やドラマを見るのが楽しみ。恋愛ジャンルにハマっており、現在研究中。
| 設立年月 | 2018年01月 | |
|---|---|---|
| 代表者 | 川崎 渉 | |
| 従業員数 | ||
| 業務内容 | プロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」の運営および関連事業 |
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