現在、国内で最も注目を集めるプロスポーツリーグのひとつといっても過言ではないBリーグ。2016年の開幕以来、リーグ全体はもちろん、各クラブの事業規模も拡大を続けています。
そんなBリーグの中でも、近年急成長を遂げているクラブが福井ブローウィンズです。2022年の設立後、翌2023年にB3リーグへ参入し、2024-25シーズンにはB2リーグ昇格を達成。短期間で大きな飛躍を遂げました。
今回は、立ち上げ期からクラブ運営に携わり、マーケティングやファンコミュニティ形成を支えてきた福井ブローウィンズの取締役で、Fan Circle株式会社代表取締役の山本恭平さんにインタビュー。クラブ創設時のエピソードや急成長の裏側、そしてスポーツマーケティングの可能性や今後の展望について伺いました。
(取材・執筆:齊藤 僚子、編集:小西 秀人、中田 初葵)
「スポーツ&エンターテインメントで社会課題を解決する」を理念に掲げ、多様なプロスポーツ事業を手がけるFan Circle株式会社。前職からスポーツビジネスの最前線で数々のプロジェクトに携わってきた山本さんですが、なぜ自ら会社を立ち上げることを決意したのでしょうか。まずはその原点にあった思いについて伺いました。
「僕は前職もスポーツマネジメントの会社の代表をやっていたので、大きな考え方は変わってはいないんですけれども、 立ち上げる前に思っていたこととしては『スポーツマーケティング』の力をもっと多くのチームやクラブに広げていきたいなということでした。僕がスポーツビジネスに携わり始めたのが十数年前ですが、ようやく少しずつマーケティングの重要性を、さまざまなリーグやチームが認識し、さまざまな投資を行っていました。ただ、まだまだ必要性は理解しつつも、実行できない、そこまでの余裕がないクラブやチームが多い印象でした。そこで、これまで、マーケットに力をいれたかったけど、様々な事情のなかで、やり切れない企業やチームのために、マーケティングなどのプロフェッショナルが集まる組織というのが、すごく重要だなと感じたんです。そういう場所を作るためにFan Circle株式会社を立ち上げたというのが経緯です。」
既存の枠組みを超え、真のプロフェッショナル集団を目指して産声を上げたFan Circle。しかし、そうした個の力を最大限に発揮させるためには、従来の会社組織のあり方そのものを変える必要があったといいます。
「プロフェッショナルが集まり、力を発揮できる組織をつくるためには、やっぱり文化など何から何まで設計し直す必要があると思っていました。例えばFan Circleでは、当初からフルフラットな文化を大事にしているので、会社の中にいわゆる上層部というような考え方はありません。もちろん、プロジェクトごとに責任者がいて、その人が意思決定を行うことはありますが、『部長』『課長』『リーダー』といった役職を人に紐づける考え方は持っていないんですね。『課題ファースト』で、役職関係なく取り組んでいく、そして最後まで自分でアウトプットし切ることが、このスポーツ業界でマーケティングをきちんと遂行するためには必要だと思っているからです。

よく『こうした方がいい』『ああした方がいい』と、アドバイスをしてくれる方、プロフェッショナルな方々もたくさんいますし、フィールドやコートでも『あの選手を入れるべきだ』とか、たくさんの意見があります。ただ、課題なのは、いかに実行し切れるかだと、僕は思っていますし、最後に責任を取れるのは実際にやっている人だけでもある厳しい世界だと思っています。だからFan Circleという会社も、やり切れる人、あるいは『やり切ることが重要だと思っている人』が集まる組織でありたいと思っていますし、そういう人に入ってきてほしいと思っています。そういう文化をゼロからつくり上げたいという思いがあったので、会社もゼロから立ち上げたというところです。」
今回、広報職の募集を行っている福井ブローウィンズ。その立ち上げ当初から深く関わり、クラブの成長を支えてきたのがFan Circle株式会社です。なぜ福井でのプロスポーツプロジェクトに参画することになったのか、そのきっかけや経緯について伺いました。
「本当に幸いなことに、立ち上げたばかりの会社にも関わらず、クラブの立ち上げ支援に関わる機会をいただいていました。例えばその一つに、プロラグビーチームの『静岡ブルーレヴズ』があります。2022年に『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE』の開幕にともなうタイミングでチーム名が変わり、マーケティングや事業全般に関わらせていただきました。その実績や体制を評価されて、福井ブローウィンズのプロジェクトにもお声がけいただきました。
正直、課題の多いプロジェクトですし、なにより目標がとても高かったこともあり、本当に受け切れるのかなという不安はありましたし、悩んでいた部分もありました。ただ、福井県は、本格的なプロスポーツチームがなかった土地だったので、チームをつくることによって、地域活性化や地方創生といったことが成立するかもしれないという可能性にはものすごく共感しました。そもそも僕自身、日本のこれからを考えたときに、都心ではないところでどうやってエンターテインメントや産業をつくっていくかは、重要なことだと思っていたんです。だから、『いよいよそういうプロジェクトに出会えたな』という思いもあったので、最初は本当にコンサルティングの一部を担うということで契約させてもらったのですが、気が付けば事業全体を任せていただけることになりました。」

スポーツが社会課題解決の糸口になる――。福井ブローウィンズのプロジェクトに大きな可能性を感じたという山本さん。しかし、一からブランドやファンコミュニティを築き上げていく過程では、想定外の出来事や多くの苦労もあったといいます。山本さんは当時の印象に残っている出来事について、次のように振り返ります。
「このプロジェクトが特徴的だったのは、やっぱり、今までやってきたプロジェクトと違ってその地域にプロスポーツチームがなかったことでした。それがどういうことかというと、まずプロスポーツの興行ができる会場がないんです。それに耐え得るインフラもないですし、そこに携わる人もいない。例えば都市部や、そういう施設がある場所でイベントやプロスポーツの興行を開催するとなったときには、まず運営を管理するイベンターがいます。そういった地域は、興行を実施する上でのノウハウを持っているわけです。しかし、福井では、そもそも体育館がプロ興行に対応できるのかも分からない状態でしたし、それを運営する人も、運営した経験のある人もいなかったんです。
なので、B3リーグ参入当初は、とにかく場所や組織を整えて『興行できる状態をつくる』ということがとても大事であり、同時にものすごく大変でした。特に苦労したのは、それを実現できる人材を集めることでした。成功させるためには、やはり経験者が必要で、そうなると必然的にマーケットが県外の方が多くなります。そうなると県外から、福井に住んでもらうことも含めて、本当に簡単ではなかったですね。」

地方での人材採用という高い壁。しかし、ようやくの思いでプロフェッショナルたちが集結したあとも、想定外の試練は続きました。
「ようやくプロフェッショナルな人材を集められたとしても、今度は会場の課題がありました。今でも覚えているんですが、ある体育館で試合を開催しようとしたとき、図面と実際の施設の規格がずれていたんです。つまり、本来のプロ興行はできない施設だったのを改修したり、観客席の調整をしたりしなければならない事態が多くの会場で起きてしまったんです。バスケットボールのゴールを作っている会社の方にも協力をお願いしながら、そうした問題を一つひとつクリアしていったのは本当に大変でしたし、やり切ったのは誇らしいところでもあるのですが。試合を開催するだけではなく、それを1年間継続して運営しなければならないので、30試合ほどあるシーズンを回す人員を整えることも含めて、本当に全員が頑張ったなと思います。」
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想像以上の苦労と、まさにゼロからクラブをつくり上げてきたことが伝わってきます。クラブは創設からまだ4年ほどですが、福井ブローウィンズは多くのファンをつけ、地域にも根付き始めています。その成長を間近で見てきた山本さんは、今の福井ブローウィンズを率直にどのように感じているのでしょうか。
「やればやるだけ課題が出てくる状況ですし、うちの会社もそのように考える人たちばかりなので、全く満足はしていないですね。3シーズン目で12万人を動員したり、他チームからも『福井はすごいですね』と言っていただいたりする機会は増えましたが、運営側としては『あれもこれもできていない』『あれもこれもやりたい』という思いがあって、常に課題を感じて、それを解決しようとしている状態です。もっといい興行がつくれるんじゃないか、もっといいチームがつくれるんじゃないかというのは、みんな常に思っています。『全然足りていないな』と全員が感じていると思いますね。」

クラブを支える側の根底にある「もっと良くしたい」という思いと、そのまっすぐな姿勢は、選手やファンにとっても心強いものだと感じます。同時に、そんな環境に魅力を感じ「自分も力になりたい」と思う方も多いのではないでしょうか。
また、今回の募集では、福井で働くことや拠点を移すことも選択肢の一つとしてポイントになってくると思います。その点についてもお話を伺いました。
「実は、必ずしも福井県に住まなければいけないとは思っていないんです。条件には書いていますが、近県でもいいですし、出張ベースでの働き方も選択肢としてはあると思っています。ただ、できる限り近くに住んでいただけるといいなとは思っています。その理由の一つは、スポーツチームというのは『なまもの』だと思っていて。その時々の福井県内の空気感や、さまざまなステークホルダーとの状況を含めて臨機応変に対応していく必要があるからです。これまでのフェーズは、地域との連携よりも、まずは興行やプロモーションをしっかり成立させることだったので、ある程度はリモートや出張ベースでも成り立つ部分もあったのですが、今はスポンサーさんやクラブを支えてくださる方々がどんどん増えてきました。クラブとしては、地域の中で色々な活動を増やせるフェーズに入っているので、福井で動けることがとても大事だと思っています。また、近くで働くメリットとして、スポーツチームがゼロから立ち上がって熱量を帯びている状態を、今もなお肌で感じられています。そうした空気を感じながら、一員として誇りを持って働けるというのは、ここでしか得られない貴重な経験になるんじゃないかなと思いますね。」
2026-27シーズンから、Bリーグは新たな体制へと移行し、クラブの事業力もこれまで以上に重要な時代を迎えます。そんな中で、福井ブローウィンズがさらなる成長に向けて目指していること、そして山本さんが描く今後のビジョンについて伺いました。
「クラブの調子が良ければそれでいいということでもないですし、それが地域活性化につながっていれば十分ということでもありません。どうやってこの福井という土地で、産業として成立するコンテンツをつくり、そこで働く人たちの雇用を生み出していけるのか。そうした視点から逆算して、福井ブローウィンズというチームがどんな立ち位置を目指し、どのように人気や事業をつくっていくべきなのかを考えられることが大切だと思っています。そうした視点を持っている方、あるいは持とうと思える方と一緒に働きたいですし、そういう方が今後活躍していくのではないかと思っています。

私たちだけでなく、パートナーの皆さんもそうした思いを持って集まってくださっていますので、この流れを継続するだけでなく、さらに加速させていく必要があると思っています。それが福井という土地で成功したら、他の地域でも展開できるモデルになる可能性があると思います。人口やさまざまな条件を考えても、福井は決して恵まれた環境ばかりではありませんし、地元でもそう感じている方もいらっしゃいました。だからこそ、そういった地域でもスポーツを通じてここまで成長できるんだ、事業や産業としても成長できるんだという地域活性化のモデルを、この地でつくり切りたいと思っています。」
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【PROFILE】
山本 恭平(やまもと きょうへい)
大手広告代理店からスポーツ業界へ転身し、数々のプロクラブのマーケティングや新規立ち上げを牽引。Fan Circle代表取締役として「課題ファースト」の組織を率い、福井ブローウィンズでは観客動員数で数々の歴史的記録を塗り替えた。
| 設立年月 | 2020年01月 | |
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| 代表者 | 山本 恭平 | |
| 従業員数 | 15名(うち業務委託6名) | |
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