フットサル日本代表で社長。星翔太が考えるこれからのアスリートの価値観

株式会社アスラボ 代表取締役 星翔太

フットサル日本代表で社長。星翔太が考えるこれからのアスリートの価値観

株式会社アスラボ 代表取締役 星翔太

「どっちがどっちって事はない。両方あって今の星翔太って感じなので…」

そう話すのは星翔太さん(35歳)。現役フットサル日本代表でFリーガー、そして「株式会社アスラボ」の代表も務めているビジネスマンでもあります。

なぜ第一線で活躍する現役アスリートである星さんが、ビジネスの世界に飛び込んだのでしょうか。

独自のキャリアを歩む星さんが考える「働くこと」の本質とは。そこにはアスリートと社会を繋げて、新しい価値観を作っていきたい思いがありました。

(取材:構成=スポジョバ編集部 荻野仁美)


アスリートから学ぶ。アスリートを学ぶ。「アスリート研究所」

ーー2017年に星さんが起業した「アスラボ」。まずは主にどんな事を行っている会社か教えて下さい。

:アスリートと一般の方を繋げるプラットフォームですね。アスリートがプレイヤーとしてのスキルやマインドを一般の方に伝える、その相手が子供であれば練習や将来の助けになるし、ビジネスマンの方であればビジネスの世界で活きるマインドセットの仕方などを学んでもらう事を目的としています。

ーー子供から大人まで対象なんですね!それを一緒にスポーツをしながら学んでいくスタイルですか?

:実戦形式もあれば座学形式もあります!プレイヤーとしてのスキルを受け取ってもらってもいいなと僕は思っていて、例えばインサイドパスが得意でそのスキルを伝えるものもあれば、そのスキルを得るまでに得たマインドを同時に伝えるものもあり、プロ選手として20年間やってきた中で劣等感とこう向き合ってきましたみたいなのを伝えるものもある、内容もそうだし、形式も個人レッスン、グループレッスン、対企業などスタイルも様々です。具体的に参加される方の例でいうと、運動会の時期にかけっこ教室に親子で参加される方もいらっしゃいます。

ーーなるほど!では競技も色々あるのですか?

:はい!フットサルやサッカー、陸上、ラグビー、水泳など様々な競技をカバーしていまして、カバディ選手の講師もいますよ!

ーー幅広いですね!教わる側も勿論ですが、教えるアスリート側にも学びの場になりそうですね。

:そうですね。教える事で自分が持っている特徴、武器に目を向けなきゃいけない。今まで自分が感覚でなんとなくやっていたものを言葉にして伝えなきゃいけないっていうところで、結果、競技で自分がなぜそのプレーを選んだのかっていうのがわかるようになるんです。「アスラボ」にはアスリート研究所といった意味もあって、アスリート自身がアスリートについて学んでいく、社会との繋がりを作っていく場所、それだけじゃなく自分たちの価値を持って社会をよりよくしていく、健康な社会を作る助けをしていくっていうのが、アスラボの目的ですね。





ビジネスインターン。フットサル日本代表のメンタリティは捨てていく

ーーフットサル選手、日本代表としても活躍する星さんが、現役を続けながらビジネスの世界に入ったのは何がきっかけだったのでしょうか。

:2016年、前十字靭帯断裂という大きなケガをしたんです。約6ヶ月プレーが出来ないと医師から言われて、時間が出来て。ちょうどその時、自分も30代に入って社会の事を知りたいという思いが強くあり、スポーツの外の世界の方々と積極的に繋がって話をする機会が多くありました。そんなタイミングだったので、これはビジネスの世界の事を学ぶチャンスなんじゃないかと思い、知り合いを介して繋がった広告代理店でビジネスインターンとして働くことになりました。

ーーそこではどんな業務を行ったのですか?

:多岐に渡ります。まずは営業ですね。スポーツ選手なんで名前が使いやすいんじゃないかって事で営業回りを一緒にさせてもらったり、資料作り、電話かけ、裏取り作業などの細かい作業もさせてもらって、華やかな事だけではなく、仕事は細かい作業で成り立っている事も学ばせてもらいました。3ヶ月経った頃にPR部に異動になりました。そこで広告とPRの違いとか、どうやって商品をPRしていくのかっていうのを学んでいき、最終的に自分で自分をPRするという課題が僕のインターンのゴールでした。

ーーインターンのゴールで自分自身をPRする為に生み出されたのが「プレイングワーカー」という言葉。どんな意味が込められているのでしょうか。

:プレーヤーとしても一流、ビジネスマンとしても一流であるべき。でも一流ってなかなかなれないじゃないですか。一流になるって努力する事が大事だと思っているので、両方とも同じように人生を豊かにするために努力しようっていうのがプレイングワーカーに込めた思いですね。

ーーまさに星さんの姿勢を表す言葉ですね!インターン生として0からビジネスを学ぶ星さんは、当時31歳。一緒に働いていたのは年下の先輩社員達。そのあたりの葛藤はなかったですか?

:そこはないようにして挑んでいました。インターンに行く前に、社会人の同級生と話していた時、「スポーツの世界では、後からチームに入って来ても年齢上の人が上だけど、会社だと違うよ。22歳の人が先に入社してて、後から25歳の人が入社したら、それは22歳が上司だよ。」と聞いて。それはその時、初めて知り驚きました。でも、フットサル日本代表というメンタリティで行ったら、誰も教えてくれないし、誰も助けたいと思えないなと考えていたので、会社の人は全員さん付けで呼んだり、聞ける事はなるべくこちらから丁寧に聞いたり心掛けました。向こうも相当、気を使ってくれていたとは思いますけどね。

ーーそれは頭でわかっていてもなかなか出来ない事だと思います!星さんは、そのインターンを経て2017年に共同代表の五十嵐さんと一緒に、インターン先の新しい事業として「アスラボ」を立ち上げました。選手との両立は大変ではなかったですか?

:立ち上げ当初が一番大変でした。9時半には会社に行って18時まで働いて、慌ててご飯食べて、会社のある渋谷からチームのある浦安に移動して21時から23時までチーム練習。車で帰ってきて寝るのは1時とかそんな日々。週末は試合、そこに日本代表合宿も入ってくる。代表合宿に行くと睡眠時間は確保出来るのでラッキーとか思ってました(笑)後、平日は運転手がいれば移動時間が作業や睡眠に充てられるのにとも思いましたが費用対効果あわないぞと(笑)睡眠不足は続いてましたが、そんな状況だからこそ仕事にも試合にも熱を持って打ち込んでいたので、精神的には充実していました!今は事業も軌道に乗っているので、フットサルに集中出来ています。






人生を豊かにするための仕事。社長業がもたらした変化

ーー星さんの様に同時に2つの仕事をする事をデュアルキャリアと表現しますが、星さんは、それぞれの仕事の住み分けというか、ウェイトの置き方はどんな風に考えていますか?

:デュアルキャリアってまさにその言葉の通りだと思っていて。例えばセカンドキャリアって2つのキャリアが分離して存在していたと思うのですが、デュアルキャリアは1本の線の上に両方載っているイメージです。僕の場合、会社の人に会う時ってビジネスマンの星翔太、でも自分の得意な分野はスポーツだし、その時にスポーツ選手としてこういう経験してたんですよねって話をする時はスポーツ選手の星翔太。両方あって今の星翔太って感じなので、どっちがどっちって事はない。その時々によって周りから見た自分の肩書きが変わっているだけで、自分自身としてはどちらともにしっかり足を載せている感じですね。

ーービジネスの世界で働いた事で、選手としての変化はありましたか?

:会社を運営する上で、色んな仕事を同時にしなければいけなくて、人に任せなければいけない事が出てきました。今までピッチの中だったら自分がやればいい、自分が活躍出来ればチームを勝利へ導けるといった考えに落ち着いていたのが、そういった場面で人に委ねられるようになりました。アスラボでそういう経験をしたから、ピッチでも若い選手の失敗もある事だし、彼らにも最後のシュートの所で決断をさせてあげなきゃいけないなという思いを持てました。グループに対する関り方が成長しましたね。

ーー信頼して部下に任せる社長としての経験が、選手としての成長に繋がったわけですね。

:人それぞれに特徴があって、その特徴を活かすことで相乗効果があるのだという事を感じたので、それをピッチでもやろうって思えたのはアスラボでの仕事のおかげですね。

ーー独自のキャリアを歩む星さんが他のアスリートに伝えたい事はありますか?

:長い人生を見て、自分の人生を豊かにするって考えた時は、外の世界を見る事が大切。スポーツの世界だけにいると井の中の蛙、ちやほやされる事に慣れてしまう。トップのレベルじゃなくてもプロの舞台に立ったというだけでも応援してもらえるんですよね。でも、その後の人生を考えた時に自分の知らない世界に行った方が沢山学べる事がある。若い選手には、外の世界を見るようにって言っているんです。何も仕事をしなさいって言っているわけではなくて。お金の為でもないんです。

ーーなるほど!食べていけないから、もうひとつ仕事をするとは意味合いが違いますよね。

:そうです!お金は本当にがむしゃらになれば皆稼げると思うんです。だからこそ、そこだけを見るんじゃなくて、自分が何をしたくて、何を成し遂げたくて、何でこれをやっているのかって考えた時に、自分の人生を豊かにする為に自分がやりたい事やって幸せでいたいという思いがあってやっていると思うので、そこから逆算して色んなものを見ていくと、そこに仕事をするっていうのも入ってくると思うんです。お金を稼ぐためだけじゃなくて、色んな人と繋がって色んな事学べて、色んな失敗があって成功体験を得る事が出来る。それが結果、自分の幸せに繋がっていくと考えられますよね。





スポーツ業界を稼げる業界へ

ーー今のスポーツ業界を星さんはどんな風に考えていますか。

:スポーツ業界がお金を稼げる業界になって欲しいなって思いがあります。今はどうしても企業がCSRとか社会貢献の意味でスポーツに投資しているっていう側面がある。そうじゃなくてそのスポーツを扱う事で企業にメリットがある、企業がチームと何か取り組む事によって価値を出せる様になれば、スポーツチームも企業と同様の価値があって、チケットとかスポンサー収入だけじゃなくて事業体として稼げる様になれば、もっと色んな競技が豊かになっていくし、スポーツ業界自体がひとつのビジネスとしてもっと認めてもらえるようになると思うので、経済活動がしっかり出来る業界になって欲しいと思っています。

ーーその中でアスラボの立ち位置はどこでしょうか。

:僕らは新しい価値観を伝えていく。スポーツを通して社会と繋がりを作って、健康な社会を作っていくっていう目的もあるし、プレイングワーカーという考え方を浸透させていって、必ずしもプロで結果を出すだけが幸せではないよっていうそういうマインドの部分、何を持って豊かなのか、豊かな社会なのかっていうのを伝えていきたいですね。

ーー今後、新しく考えている取組みはありますか?

:僕自身、選手としての引退が近づいているんです。前から公言していましたが、2021年に延期されたW杯をひとつの区切りとして考えています。引退なのか第一線を退くのか、そこはまだ完全に決められていないけど、基本的には引退をしなければいけないなと思っています。それはフットサル業界をもっとよくしていきたいという思いがあって、引退後はクラブレベルなのかリーグレベルなのかわからないけれど、そこにお金を入れていける仕事に携わりたいと思っています。

ーー選手としても大切なシーズンかと思います。選手としての目標も教えて下さい!

:今シーズンはイレギュラーで22試合しかないのですが、まずはチームを優勝させる。個人的には得点ランキングも現在、上位にいるので、出来れば得点王とか明確な形でチームに貢献するのも狙っています。後、延期になっているアジア選手権に出場して、W杯の出場権を獲得するのが大きな目標です!




【PROFILE】

星 翔太(ほし・しょうた)

1985年東京都生まれ。早稲田大学在学中に、ブラジルにフットサル留学し、大学卒業後の2009年シーズンにFリーグ・バルドラール浦安へ入団。翌年にはフットサルの本場スペイン1部リーグ・GESTESA Guadalajaraに移籍。2012FIFAフットサルワールドカップ日本代表メンバーに選出されるとその後、AFCフットサル選手権2014では日本代表チームのキャプテンに任命される。2016年にビジネスインターンをした後、2017年に共同代表の五十嵐雅彦氏と共に「株式会社アスラボ」を立ち上げる。現在も名古屋オーシャンズに所属する現役Fリーガーであり、フットサル日本代表、アスラボの社長と三足の草鞋を履く。ピッチ上でのニックネームは「狂犬」。





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