新聞配達員から第一線のスポーツライターへ。共通項は「〇〇力」

スポーツライター 佐藤主祥

新聞配達員から第一線のスポーツライターへ。共通項は「〇〇力」

スポーツライター 佐藤主祥

スポーツの魅力を多くの人々に届けるーーーそんな役割を担うのが、メディアの仕事。

今回は、その中でも「スポーツライター」にスポットを当てたインタビューをお送りします。

お会いしたのは「東洋経済オンライン」「スポルティーバ」など、数々の著名メディアで執筆をするスポーツライター、佐藤主祥さん(28歳)

高校卒業後、新聞配達員を経てライターに転身した異色の経歴の持ち主です。

出版社や編集社へ入社せず、最初からフリーランスとしてスタートを切った佐藤さん。どうして第一線で活躍するまでに成長できたのか?新聞配達の仕事で培った能力とは?その答えはただ一つ、「継続力」でした。

(取材・構成=スポジョバ編集長 久下真以子)



スタンスは「冷静と情熱のあいだ」。スポーツライターの仕事の醍醐味


ーースポーツライターは、「書く」だけでなく色んなことを担当しますよね。

佐藤:まずインタビューや取材をして、そのあと撮影もしますし、執筆後の編集も基本的に1人で行っています。スポーツに関してはオールジャンルで書いていますね。最近は卓球が多いですが、野球やサッカー、バスケ、3x3(3人制バスケ)、格闘技、アメフト、フットサル、陸上、パラスポーツ、eスポーツ…幅広く担当させてもらっています。

ーー本当に幅広いですね!それだけ分野があると、知識を身に着けるのも大変そうです。

佐藤:もちろん勉強してから臨みますが、1つ1つ取材をこなしていくことで勉強になっています。逆にその競技や選手についてあまり知らない読者の方に対して、同じ目線で噛み砕いて書けるというメリットもあるんですよ。経験を積み重ねながら、自分自身も知識を深めています。もちろんコア層向けの記事も担当するので、企画に応じて書き分けています。

ーースポーツライターは、一流の選手の話を直接聞けたり感動の場面に立ち会えるなど、やりがいが大きい仕事だと思います。

佐藤:雲の上の存在だった選手たちと普通に1時間や2時間話せるというのは、本当に貴重だなと改めて思います。僕はすごく野球が好きだったので、野球選手や解説者の方を取材し始めた当初は緊張が全然拭えなかったのを覚えていますね。あとは自分自身が卓球をやっていたということもあって、去年水谷隼選手の独占インタビューを担当した時のことも忘れられません。

ーーそれは印象に残りますね。

佐藤:僕もライターとしてのキャリアは積み上げてきてはいますが、久々に緊張しましたね。インタビュー後の写真撮影では卓球台で水谷選手に構えてもらったんですけど、そのオーラがすごくて圧倒されたんですよ。「うぉー」って背筋が伸びるような感覚でした。ライターという立場上、冷静さは保たないといけないですけど、「当たり前」ではなく初心を忘れないでいたいとは思っています。

ーー私は記事を書くとき、「タイトルから考える」というのがこだわりなのですが、佐藤さんはいかがですか。

佐藤:いろいろスタイルがありますが、僕は本文を先に書いてタイトルは最後ですね。そして記事を書く上で大切にしているのは、「選手の伝えたいことをしっかり汲み取って、それを軸に組み立てていく」ということです。一本筋が通っていないと物語としてバラバラになるので、ちょっとでも違和感を感じたら何回でも修正して、ある程度納得できてから納品するというのは心がけています。






新聞配達員から、スポーツライターへ。「回り道の努力」で花開いた転身


ーーそもそも佐藤さんがスポーツライターになったきっかけは何だったのでしょうか。

佐藤:高校の時から「スポーツに関わる仕事がしたい」と思っていたんですけど、その時は自分に合う仕事が分からなかったんです。だから卒業後に上京して、新聞配達員として就職しました。実は、中学・高校でも新聞配達のアルバイトをしていたんですよ。

ーー中学の時から!長いですね。

佐藤:東京に出てきても5年は続けていましたから、計11年は新聞配達の仕事をしていたことになりますね。東京に出てきた理由は、ジャイアンツファンだから「東京ドームに通いたい」という単純な理由だったんですけど(笑)。社会人3年目くらいになった時に、スポーツライターを目指せる学科のある専門学校の存在を知ったんです。自分自身がスポーツを「伝えてもらう立場」から、「伝える立場」になるのもいいなと思ったのが、今の自分の原点です。

ーー実際入学してみて、いかがでしたか。

佐藤:在学中に、スポーツ系ではないオウンドメディアのインターンを経験しました。ビジネス系や和服に関するもの、「オススメのスマホアプリ10選」というものなど…本当にいろんなジャンルで取材や執筆を担当したんですけど、ライターとしての基礎の部分を一気に経験させてもらいましたね。ほぼほぼゼロの状態からのスタートだったので、その経験がキャリアの土台としては大きかったです。

ーー卒業後は、就職せずにフリーランスのライターとしてスタートしたんですよね。

佐藤:最初は工事現場のアルバイトをして、その後はスポニチの編集補助のアルバイトをしました。各競技のスコア入力や、スポニチのwebメディアに出す記事の編集が主な仕事でしたね。その間に、インターンでお世話になった編集者の方から少しずつメディアを紹介してもらっていました。初めはキャリア系の記事を書いていたんですが、のちにスポーツメディア「KING GEAR」(※)を紹介してもらって、ようやくスポーツライターとしての道を歩み始めることができたんです。

※スポーツライター・金子達仁氏が主宰するスポーツメディア。用具などの「スポーツの脇役」を中心に、選手やコーチの思いなどスポーツのさまざまなシーンにスポットを当てて展開している。

ーー地道な努力が花開いたんですね!

佐藤:KING GEARは基本的には選手の用具(=ギア)などを紹介するメディアなんですが、それ以外にも選手やイベントの取材などやりたいことができるし、自分で撮影も編集も記事の入稿も1人で任せてもらえるというのが本当に嬉しかったですね。KING GEARにはライターが多数いるんですけど、その横のつながりで「東洋経済オンライン」や「スポルティーバ」など他のメディアを紹介してもらうようになりました。3年前からは僕もライター1本で生活するようになりましたね。






「継続力」こそが、夢を叶えるただ一つの道。ブレない姿勢が成長の秘訣


ーーフリーライター1本で生きていけるというのは、すごいことだと思います。

佐藤:大学にも行ってないし、出版社などの社員としてはどこにも入れないと思っていました。だからこそ本当に地道にやっていかないと難しいと当初から感じてたんですよね。僕は話すことが苦手なので、書くことだったら自分にもできるかもしれないと思ってライターを目指しました。でも実際この世界に入ったら全然違いましたしね。

ーー確かに、インタビューでは話を引き出すことが大事ですもんね。

佐藤:元々書くことも得意、というわけではなかったので、性格的にも能力的にも全然ライター向きじゃなくて。でも親にも応援してもらっていたし、自分も「目指す」と宣言した以上、辞めるという選択肢はなかったですね。自分がここまで来られたのは、「諦めずに続けてきたこと」。これに尽きると思います。

ーー新聞配達の仕事を11年していたという意味でも、佐藤さんには「継続力」が備わっているのではないでしょうか。

佐藤:確かに、そこで身につけられたのかもしれないです。僕の地元は宮城で、新聞配達をしていた当初は冬は膝まで雪が積もるような地域だったんですよ。早起きして自転車を押しながら配達して、家に帰って足を温めてまた学校に行くという生活をしていました。培った継続力が、今のキャリアに生かせているのかもしれません。

ーーとはいえ、ライターとして第一線で活躍できる保証は初めはないじゃないですか。不安はなかったのでしょうか。

佐藤:1つ目標としてブレさせなかったのが「オリンピック」だったので、そこまでは何があっても絶対続けると決めていたんですよ。ブレない目標が柱としてあると、モチベーションを保つことができるのでないでしょうか。今までお世話になった人に恩返しするという意味でも、成長した姿を見せたいですね。






スポーツライターは「書き手」であり、「届け手」。佐藤さんの目指す未来像


ーー哲学的な質問になりますが、「どうしてスポーツを伝える存在が必要なんだろう」と考えることが、私自身あるんです。佐藤さんはどう考えますか?

佐藤:世の中に娯楽がいっぱいある中で、これほど世界中の人が一体になれるものってなかなかないと思うんですよ。1つの大会や試合、プレーに歓喜して感動して輪が生まれるのって素敵なことですよね。今は新型コロナウイルスの影響でスポーツシーンを見ることは難しいけれど、アスリートがSNSなどを通じて今できることを発信し続けて日本の方々に元気を届けているのはすごく価値のあること。そんなアスリートたちの「伝えたい思い」に対してお手伝いできる存在でありたいし、どんどん僕たちメディアを利用してほしいとも考えています。

ーーそういう意味では、スポーツライターは選手とファンのつなぎ役でもありますよね。

佐藤:「本当に届けたいことを届ける存在」ですね。新聞だって配達員がいないと皆さんの家に届かないのと同じで、スポーツの感動や選手の伝えたいこともメディアがないとファンに届かない。スポーツライターは、「届ける仕事」なんだと思います。

ーーこれからスポーツライターを目指す人に、アドバイスはありますか。

佐藤:取材する相手を「好き」になって、思いを届けてほしいということですね。あとはいきなりスポーツライターになれなくても、割り切って地道に積み重ねてほしいです。例えば僕は今に至るまで時間はかかりましたけど、スポーツ以外のメディアで「執筆」について学んだり、スポニチで「スポーツの知識」を深めたり、スポーツライターになるためのスキルを順番に習得していきました。続けていくことによって世界が広がって、結果的に行きたいところに行けると思うので、諦めずにチャレンジしてほしいです。

ーー佐藤さん自身の今後の夢を聞かせてください。

佐藤:やはりオリンピックを目標にしてきたので、そこは目指したいです。オリンピックの現場に立てるフリーのジャーナリストって限られていて、トップレベルじゃないと難しいんですよ。東京大会以降も含めて、いずれは自分がその立場になれるように頑張りたいですね。またオリンピックだけでなく、各競技の世界選手権やW杯など、大きな大会を任される存在になりたいです。そのためには、ここからまた地道に「継続」していかないといけないですね。






【PROFILE】

佐藤主祥(さとう・かずよし)

1991年、宮城県生まれ。東京スクール・オブ・ビジネス卒業。中学から11年間新聞配達を続けたのち、スポーツライターに転身。スポーツをオールジャンルで取材。「東洋経済ONLINE」、「スポルティーバ」、「Rallys」、「KING GEAR」、「アントレSTYLE MAGAZINE」、「アルペングループマガジン」、「GATHER」等で執筆中。大のジャイアンツファン。菊池雄星・筒香嘉智世代。



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