“続けられる”体操教室運営とは? 自走できる人材が輝ける場を提供する株式会社TAG企画の「2軸経営」

株式会社TAG企画 代表 後藤 孝弘

“続けられる”体操教室運営とは? 自走できる人材が輝ける場を提供する株式会社TAG企画の「2軸経営」

株式会社TAG企画 代表 後藤 孝弘

「スポーツクラブを運営したいけれどやり方がわからない」「やってみたけれど稼げなくて生活が苦しい」

スポーツに携わる仕事をしている人たちが抱えがちな悩みを、自らが実践してきたノウハウを提供しながらサポートをしているのが、株式会社TAG企画の代表・後藤孝弘さんだ。

「自分の思いを大切にするのはもちろん大切だけど、無理なく続けられることも大切」

辞めてしまう人を少しでも減らせるように、「2軸経営」という仕組み作りで課題を解決していく。自走できる同志とともに新しい事業を形にしていこうと走り始めた後藤さんに話を聞いた。

(取材・執筆:伊藤 千梅、編集:伊藤 知裕・中田 初葵)

「続けられない」スクール業の現実

──後藤さんは元々パーソナルトレーナーをされていたそうですがどんなきっかけで始めたのですか?

小学生の頃に野球やラグビーなどをしていたのもあり、スポーツはずっと好きでした。大学卒業のタイミングで就職を考える時に、純粋に「パソコン系は嫌だな」と(笑)。

大学時代はトレーニングジムでアルバイトをしていて、実際に数年働いてから独立する先輩たちをみていました。この働き方は収入が安定しないかもしれないけど、自分の裁量が大きいですし、稼げるかどうかも時間も、すべて自分でコントロールできることに魅力を感じてトレーナーの道に進みました。

──裁量の大きさを求めてジムのトレーナーになったのですね。

そうなんです。しかし、就職して1、2年で想像よりも収入面での“不安定さ”を実感するようになりました。トレーニングの予約が入るまでもまず大変で、予約が入った後も30分前に現場入りをした後にキャンセルが発生したり……。そうなると予想していた売り上げが立たないので、このジムの業界の仕組みがそもそも稼ぎづらいというのを感じました。そこから別の形での収入源を確保しようと副業を探していたときに、現在の事業の軸となっている体操教室の仕事を始めました。

──後藤さんのような課題感を感じて、トレーナー業を辞めてしまう人はどのくらいいるのでしょうか。

そのような人をいっぱい見てきました。トレーナーだけでなく、体操やラグビーを教えている人の話も聞いたことがありますが、起きている現象は同じだと感じています。

また、スポーツジムに勤めている人では、自分が会員数を伸ばしても給料に反映されなかったり、体力面できついと感じて辞めてしまう人も後を絶たない印象です。

そのような仕組みに嫌気がさして独立する方も多いと思います。社員として体操を教えていて、頑張って一人である程度回せるようになると、お給料が割に合わないと感じて自分で体操教室を始めるパターンが多いですね。

──辞めてしまうだけでなく、独立を選択する人も多いのですね。

ただ、独立してからのほうが実は大変だったりします。集客して、テナントを借りて、人を雇う。それをすべて自分で行わないといけません。事務の仕事も発生しますし、スクールであれば会費が引き落とされているかといった顧客管理も必要になります。

そのうえで、スクール業を続けていくのは体力面でも大変です。子どもたちに体操を教える業務を平日3、4時間、土日は7時間ほど行うのは、年齢とともに限界が来てしまいます。それでも、雇われているだけだったり、ただ教室を運営しているだけだったりすると、永遠にきつい状態で指導をし続けないといけません。だからこそ経営視点をもって、長く続けられるような仕組みを作っていけたらと考えています。

だからこそ僕が今行っている一つの仕事で稼ぎを安定させながら、もう一つの事業を伸ばす“2軸の経営”というのが選択肢を広げる働き方になるのかなと思います。

体操教室スタートで“余裕”をもたせる

──2軸の経営とは、具体的にどういったものでしょうか?

体操教室で指導を行いながら、自分がやりたい別の事業を展開していくという形です。新しく入る人には、体操指導の仕事から始めてもらおうと考えています。

基盤となっている体操教室の指導業務を飲食店に例えると、お店も食器も食材もある飲食店で料理するというイメージです。一方の自分でやりたい事業を立ち上げていくには、お店探し、食器集め、食材選び、さらには集客もしていかないといけない。ただし、それは料理が作れるようになった後のステップになるので、まずは料理が作れないと始まりません。

だから最低限の指導ができるベースを作ってから、オリジナリティーを出す方向にシフトしていくことをすすめています。

──サッカーや野球をやりたい方でも最初は体操の指導を行うことになるのでしょうか?

僕はそれをおすすめしています。サッカーや野球で同じような軸になる事業を見つけられたら良いのかもしれないですが、それが意外と難しいんですね。

ゼロからのマネタイズは簡単ではないので、結局なにか軸になるような収入源が必要になると思います。結局日雇いのバイトなどをやることになるのであれば、そこで選り好みをするのではなく、同じ“指導”という共通点のある体操教室はアリだと思います。

また、同じ月収20万でも、それを週5かけてやるのか、週3かけてやるのかでは話が変わってきます。指導者は頭も体も余裕があった方がいい指導ができるでしょうし、その余裕は時間や金銭面だったりします。うちの体操教室は基本給が高くそこまで拘束時間が長くないため、両方を叶えられる軸としていい事業だと思いますね。

余裕がなくて辞めてしまう人がたくさんいるからこそ、スポーツを指導する人が転職しない、やめないで済むような仕組みを作ろうというのを根幹にもっているのは大きいですね。

──「TAG企画さんで」2軸での事業展開を行うメリットとは?

ゼロイチがしやすいことですね。片方の事業で安定的な売り上げがあるからこそ、次に自分がやりたいことを実現していくステップにいける。

あとは、指導と経営両方のノウハウがあることもメリットだと思います。体操教室から指導力を向上させればいいし、やりたいことを実現させていくための方法を一緒に探っていく。そうやって、うちの会社をうまく活用してほしいですね。

目線を合わせて、伝え方を変える

──現在働いていてどんな時にやりがいを感じますか?

チラシ配りなど、今まで自分が種をまいてきたものが芽吹いた瞬間は面白いです。実際にチラシを見て予約しましたというメッセージが送られてきたりとか、何気ないところから「体操教室を探している方がいたから紹介したよ」とご縁をつなげてくれて、ご紹介から仕事になったケースもあります。そういうふうに地道に行動していたものが、成果に表れていると感じる時は楽しいです。

こういった働き方は、自分がやりたい分だけ種がまけるのはいいですね。そのまいた種の労力によって結果は変わってくるし、会社員などの働き方よりも、個人の方が好きなだけ広げていけるのはいいポイントだなと思います。

──子どもたちの指導をしている時に大切にしているポイントはありますか?

子どもの目線と親の目線、大人の目線、指導者の目線、これらは全部違うと思っているので、それを合わせられる方は強いなと思っています。

例えば「ジャンプして」というと、小学生は勝手にジャンプしますが、ジャンプをしたことがない3歳くらいの子は、ジャンプがなにかわかりません。でもそこから「膝曲げて伸ばしてごらん」というと屈伸のような感じになりますし、そのあとに「ここにタッチしてごらん」と手を伸ばすと、屈伸から自分なりにジャンプのようなものをし始めて、足が浮いてきます。そういった形で目線を合わせて、相手に合わせて伝え方を変えられる人はとてもいいなと思いますね。

子どもたちも、納得感が生まれるので楽しいと思うんですよね。「なるほど!こういうことか!」と思える発見の回数を増やして、またやりたいと思ってもらうことが、指導において大切なのかなと思います。

──たしかに、目線を合わせるのは大切ですね。その他にご自身が仕事をする上で大切にしていることはありますか?

そんな大きいものはないですが、仕事をしていく上で、遅刻をしない、欠席をしないといったことは徹底すべきだと思っています。体調管理から仕事のうちだというのは自分の信条として持っていますね。

他には、コミュニケーションの取り方。例えば体操教室に通っている子のご両親に、レッスン中の様子を伝えるときに「あれができませんでした」と伝えるのか「あれがもう少しでできそうです」と伝えるのかは、雲泥の差があると思っています。

この子は頑張ってるんだなと肯定的に捉えてほしいですし、気持ちよく教室に通ってもらいたい。それはこちらのアプローチにかかっていると思います。そういった健康面や物事の伝え方の部分は大切にしていきたいですね。

固執はせずに柔軟な思考で

──TAG企画さんに新しく入られる方は、どんな人を求めていますか。

うちでは、やればやるだけ自分に返ってくる仕組みができているので、今自分がやっていることの頑張りが報われないと感じている人はぜひ挑戦してほしいです。頑張ろうとしない人の底上げではなく、頑張れる人をより伸ばしてあげたいと僕は考えていますし、そういう人は圧倒的に成長できると考えています。

あとは基本的に、これまで部活に積極的に打ち込んでいたり、結果に限らず運動が好きでやっている方がいいのかなと。「これがやりたい」といった明確なものはまだなくても、なにかスポーツに関わる新しいことをしたいという思いが大事です。やってみて気が付くこともありますし、いろんな人と積極的にお話ができたらなと思っています。

──スポーツに携わりたい方であればいいとのことですが、どんな人が向いてると思いますか?

人と関わって、接するのが好きな人ですかね。とはいえ、僕自身も人と接するのがすごく得意かと聞かれると怪しいところではあるんですけど(笑)。でも喋るのが好きな方とか、人と接するのが苦ではない方ですかね。そういう人は向いているし、スポーツが楽しいと思う方がまずはベストです。やるのも教えるのも楽しいと思える方が一番かもしれません。

あとは暗い方より明るい方がいいとか、笑顔が多い方がいいというのはあります。対外的なスキルや能力もありますけど、明るくてどんなことも前向きに取り組める方であれば向いていると思います。

──この仕事をしていく上で、どんな思いを持っていた方がいいでしょうか?

最初のゼロイチは広く浅くやった方がいいので「絶対にこれだけしかやりたくない!」といった頑なな思いは、むしろない人のほうがいいかもしれないです。一つのことに固執しすぎないほうがいいですね。少し視点を横にずらせる余白というか、幅があったほうがいいです。

自分の思いを大切にするのはもちろん大切だけど、無理なく続けられることも大切だという話ができるほうがいいですね。なにか思いを貫いていくのは次のステップでもできることだと思うので、教室の会員人数が集まった後に考えて、形にしていくのでも遅くはないと僕は思っています。まず土台がなかったら2階も立たないのでね。最初からタワーマンションを建てようと思っても難しいですし、1階ずつ作っていくのでもいいのかなと思います。そこの柔軟性があるといいですね。

裁量を持って挑戦できる会社に

──今回新しい方は業務委託での契約になるそうですね。

そうですね。やはり正社員だと言われた仕事をこなすようになりがちですし、自分のブランディングをしていく余地が限られてきます。だからこそ基本的には業務委託で、裁量を持って働いてもらう形がいいと思っています。

働く人も、始めはコーチをやりながらだけど、次第に監督、運営側とフェーズに合わせてステップアップしていきやすい。また事業としても、社会のニーズや自分のニーズに合わせて、新たな事業を展開させやすいのも強みです。やればやるだけ自分に返ってくる形が作れますし、やりたいことを実現できるような柔軟性が業務委託だとかなり高いと思います。

──たしかに、裁量をもって自分からさまざまなことに挑戦していけそうです!今後、会社としてはどうなっていきたいですか?

体操だけにとどまらず、色んな種目を教えている方が増えたらいいなと思っています。

現在、総合型地域スポーツクラブという形で、横浜市と連携して関係を作っているところです。そのため、横浜市でもいろんなスクールが立ち上がりやすくなります。子どもたちにとってもメリットも大きく、近くの沿線で土曜日は隣の駅でサッカーができて、日曜日はその隣でラグビーができる。そんなふうに複数の種目と、複数の指導者に巡り合うことが可能です。

そのように子どもたちによりよい環境を提供するための一助となるような組織になっていけたらいいなと思っています。

──会社の雰囲気については、どんなふうにしていきたいですか?

お互いに意見交換ができるようになりたいですね。体操の考え方や野球の考え方、サッカーの考えに、ラグビーの考え方と、全然違うと思います。体の動かし方や指導するときの伝え方を意見交換できると、みんながいろんな能力やノウハウを手に入れられますよね。その教室やチームごとのベースアップがしやすくなると思います。

また、どんどん挑戦していける空気も作っていきたいです。うちの会社でノウハウを学んで、いずれ独立していくのも一つの方法だと思いますし、そのチャレンジを応援したい。その上で会社内だけでなく、独立した人たちも含めて相互に連携していけたらいいなと思っています。

──今回のこういう仕組みをつくることで、スポーツ界にどんな影響を与えていきたいですか。

いろんなスクールやいろんな種目が立ち上がって、長く指導者が続けられるような会社、世界にしていきたいです。最近は個人の時代だと言われているように、自分のやりたいことや思いをそれぞれで実現できるような世の中にしていけたらいいのかなと思っています。

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【PROFILE】

後藤 孝弘

神奈川県横浜市生まれ。現在も横浜市在住。スポーツ経験は野球、ラグビー。ご自身の経験から、多種多様なスポーツを子どもたちへ届けるべく、継続的な仕組み作りに取り組んでいる。

第1位

第2位

第3位

第4位

第5位

設立年月 2023年10月
代表者 後藤孝弘
従業員数 2名
業務内容

・子供向け体操指導者を委託・育成・マネジメント
・スポーツイベントを企画・運営
・個人事業主としての独立支援

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