2022年7月、福田拓哉さんが熊本バスケットボール社の社長に就任。大学准教授を経てBリーグチーム運営会社の社長になるという珍しいキャリアを歩まれている福田さんに、バスケの可能性や今後の熊本ヴォルターズについてお伺いしました。
今回お話を伺う中で登場したポイントは以下の通り。
・〇〇することばかりやってたらすぐに枯渇する
・まずは〇〇との関係性を再構築するべき
・社員一人ひとりに目を向けることが〇〇のカギ
上カテゴリーを目指すクラブのフロントスタッフ、社員が辞めていく現状に悩んでいる経営者、スポーツ業界に入りたいと考えている学生や院生、その他すべてのスポジョバ読者。あなたのモヤモヤを薄くしてくれるヒントが隠されているはずです。
(取材:伊藤知裕 構成:スポジョバ編集部 仮谷真歩)
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>>コンパクトだから広がるバスケの可能性と福田拓哉氏が体感した課題
ーーBリーグは大企業資本のクラブが多い中、アリーナグルメや地域密着のコミュニティを生み出そうと動いているクラブが多くあります。ヴォルターズさんも地域課題を明確にしたうえでの取り組みが印象的でした。どのように売上に変えていくビジョンをお持ちですか?
売上には直結しませんが、短期的に直結することばかりやっていたらすぐに枯渇してしまいますよね。長く適切に事業を進めるとなると、確証に基づいてクラブを経営する必要があります。そのためにも専門機関などに依頼して調査をする方が良いと思いますが、調査費用を出せるかというと、そうではない。
ーー確かにそうですね。結果的には短期的な施策から着手することになりそうです。
ただし、僕は大学にいたので、大学の研究者が調査できること、学生に調査させて教育するニーズがあることなどは知っていました。また、スポーツチーム側が協力してくれなかったり、調査報告しても数値を解釈する仕方がわからなかったりという課題もありました。
僕であれば、調査して報告してくれればある程度の解釈はできますし、研究対象を探す先生方の苦労も知っています。お互いに足りない部分の橋渡しができるなと思ったんです。
ーー両者を理解している福田さんだからこその視点ですね。
ヴォルターズには応援を通じて家族や友人との絆を維持したり、深めたりしているブースターさんが数多くいらっしゃいます。ボランティアを通じて活躍の場や、他者とのつながりを構築されている方も。
つまり、クラブと関わってくれることで生きがいを見出してくれている方が数多くいらっしゃいます。これって社会的価値の塊のようなものですよね。こういう点を感覚的にだけじゃなく、科学的かつ学術的に検証し、世に広めていくことが現在すでに始まっています。
こうしたエビデンスを積み重ねることでSDGsやウェルビーニングに取り組む企業がパートナーとして参加してくれやすくなります。
なので経済的価値を創るためには、まずは社会的価値を作るのが先だと思っています。
クラブが地域社会から必要性を認められ、その結果「必要なクラブには必要な対価を払って支援しましょう」「試合を見ましょう」という風になっていくのではないかと。
ーー仰る通りだと思います。
だから社会との関係を再構築しない限り、より上位の経済的価値は生み出せないと思うんです。そのために、大学の先生方の力を借りたりする。スポーツチームって「応援してください」って言うことが多いじゃないですか。
「応援する理由はどこにあるんだ」って言われたら、言葉に詰まってしまいますよね。活動内容を伝えても効果や意味を問われると、主観でしかないとか、なんとなくとか...。
そうではなく、ヴォルターズがあることで熊本市内に在住の方が「観戦経験がない人に比べて10p以上幸福度が高いです」とか「孤独感を感じる割合が極めて低いです」ということを学術的に言えると、社会的意義がある状態になりますよね。そこを目指したいと思っています。
vol.3はコチラ
>>信頼を失ったなかで福田拓哉氏が社員一人ひとりに目を向けた理由
【PROFILE】
福田拓哉 / 熊本ヴォルターズ代表取締役社長
立命館大経営学部を卒業後、京都サンガF.C.や福岡ソフトバンクホークスにてブランド構築やファンクラブの運営などを担当。新潟経営大学(准教授)・九州産業大学(准教授)を経て熊本ヴォルターズ代表取締役社長に就任。
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