50歳を目前にして決めた独立。野球で出会えた方々に背中を押され、自分が叶えたい目標に向かって一歩踏み出した。その先に見る理想とは?

サンビースポーツ株式会社:代表取締役 清水 孝行

50歳を目前にして決めた独立。野球で出会えた方々に背中を押され、自分が叶えたい目標に向かって一歩踏み出した。その先に見る理想とは?

サンビースポーツ株式会社:代表取締役 清水 孝行

たとえばあなたが野球好きだったとして「野球に関わる仕事」と考えたときに、どんな仕事が思い浮かぶでしょう。

「プロ野球チームの球団職員」「グローブやバットのメーカーで営業」などなど……。色んな仕事が頭の中を巡ったはず。その上で、どんな活躍ができるかな。どんなことをやってみたいかな、と、自分の経験・やりたいことを照らし合わせながら、仕事探しをしていると思います。

その中でも「グラウンドキーパー」という仕事はいかがでしょうか。選手が野球をするうえで、バットやグローブ、スパイクなどの道具以上に一番必要なグラウンド。それを守る職業です。今回お話を伺ったのは、日本通運野球部専属でグラウンド整備を行う、サンビースポーツ株式会社の清水さん。清水さんはもともと「野球に携わりたい」と考える、特別野球が上手いわけではなかった野球少年だったそうです。彼が歩んできたこれまでと行ってきた活動、今の選択、そして今後の目標は、ぜひ「スポーツを仕事にしたい」と考えるあなたにこそ、知ってほしい。

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


「正直、独立なんて考えてなかった。自分が社長だなんて……」

__清水さんが独立されたのは、2019年の2月と伺っています。40代後半にして独立というチャレンジをされた背景等々含め、まずは現在に至るまで伺えますか?

清水:私は、国際武道大学野球部出身なんですが、野球部在籍時にメンバーに入れたことはありません。バッティングピッチャーとグラウンド整備をやっていた4年間でした。ただ、卒業してからも、とにかく野球に携わる仕事がしたかったので、スポーツ施設に関係した仕事に就こうと、野球場等スポーツ施設専門の建設会社に就職。そこでスポーツ施設のノウハウを学ぶことができました。12年ほどお世話になりましたね。その後は、施設管理会社に転職をして、スポーツ施設や公園管理部門の業務管理の仕事をしていました。

__まさにスポジョバを見ている人も、当時の清水さんと同じようなマインドで「とにかく野球に携わる仕事がしたい!」という方が多いと思うんです。ただ、働いているだけで独立まではできないと思うので、何か特別なことをされていたのでは?

清水:特別ということはありませんが、プライベートでJABA埼玉県野球協会(日本野球連盟傘下)の裏方として、社会人硬式野球のサポートをさせていただいていました。30代後半くらいからでしたかね。JABA埼玉県野球協会の一事業として、近隣の中学生(野球部)に対してグラウンド整備の仕方などをわかりやすく面白おかしく講習会などをやっていたんですよ。

__「仕事とは別のところ」と仰ってましたけど、もう仕事を請け負うような形はできていたわけですね。

清水:請け負うとは思ってもいませんでした。あくまでもプライベートでの活動の一環でしたので。そんな中で、日本通運野球部の関係者の方々とも知り合えることができ、野球場の事についていろいろお話しする機会も多かったんです。そんな中で、日通野球部の方から「野球場を改修するので、新しくできたグラウンドの維持管理をやってくれないか」とご依頼をいただいたんです。それも日通さんによる雇用ではなく委託として、というお話でお声がけをいただいたんですよ。従来日本通運野球部グラウンド管理は、日本通運を定年退職された方の再雇用先としてあったと聞いていました。だから、自分がそこに入り込むっていうのは毛頭考えてもいなかったですね。ただ、私が経験してきたノウハウを直接現場で活かせるならと、自ら現場に入り込みたい一心で独立を決心いたしました。





積み重ねて積み重ねて。勇気を出して踏み出した一歩先にあった幸せ

__そもそもプロになれる人なんて一握り。そうじゃない方でスポーツに携わっている方も一握り。もっと言えば「スポーツに関わっていない人」の方が多いと思うので、清水さんのように競技に関わって独立されていること自体が凄いと思います。

清水:凄いかどうかはわかりません。しかし現在はとても充実していますし、本当の意味で必要とされることを目標に日々グラウンド整備に力を注いでいます。私は、大学の4年間”なんとか部に在籍させてもらえた”立場です。仲間に恵まれ4年間なんとか野球部を続けることが出来ました。この4年間があったから今も尚、野球に携われ、野球で出会えた方々に支えられ今があるんだと本当に思います。

__「野球の仕事」と言っても、関わり方は本当に様々だとお話伺っていて思います。ところで「本当の意味で必要とされることを目標に」というお話もありましたが?

清水:選手の皆様は『チームの一員』のような形で接していただいています。とってもありがたい環境ですが、ただ馴れ合いが生じてしまうと、本当はもっとグラウンドのクオリティを上げなければいけないところで、チームが言いにくい関係になってしまうのは一番避けなければならないところ。あくまで私たちは仕事をさせてもらっている立場なので、当社がいるからには、選手の皆様に少しでも練習の時間に充ててもらいたいと思っているんです。

__起業して約3年。「まだまだこれから」と清水さんは捉えていらっしゃるわけですね。

清水:選手が大会で成績を残し、次なる目標にむけて取り組めるような環境づくりを目指しています。私たちが出来ることを多角的に考え、様々なサポート方法を常日頃考え行動して、少しでも選手の為になる事をと思っていますね。






自分が整えたグラウンドで、選手が野球をすることの喜び

__大前提、グラウンドキーパーとはどのようなお仕事でしょうか?それこそ清水さんのグラウンドキーパーとしての技術が高いからこそ今があるとも思うので、プロから仕事のノウハウをお伺いしたいとも考えています。

清水:グラウンドのクウォリティを日々改善し、平坦性・透水性・路面硬度等の点を良好に保つことが私たちの仕事です。

__ゴルフのバンカーを整えるみたいな、トンボ―でバーッとやるみたいなイメージだったので、専門性の高さに驚いてます(笑)

清水:もちろんトンボでやることもありますが、少数精鋭ですし、機械を有効的に使うことも必要です。最適な方法を考えて整備しています。当日だけではなくて前日のコンディションとかもコーチ陣にヒアリングして話し合って整えるので、毎回品質をどう上げていけるかどのように工夫を凝らしていけるかを毎日考えています。

__となると、この仕事のやりがいについて、清水さんはどう捉えていらっしゃるのですか??

清水:私たちが整備したグラウンドで、目の前で選手たちがプレイしている姿はいつ見ても感動的です。それこそ「グラウンド、今日も最高でした」なんて言ってくださる選手もいて、本当に嬉しいです。もちろん厳しい意見を頂戴するときもあるんですが、自分たちのやったことがそのまま反響として返ってくる。それに、努力が実って感謝をいただけたときは、本当に感動できる職業だと思います。専属だからこそ愛着も湧きますが、選手たちが怪我なく今日も野球をできている姿そのものが、私にとっては幸せなことです。





グラウンドキーパーという仕事そのものを、もっと若い方々に知ってほしい。

__清水さんの強い想いをひしひしと感じます。ところで、今回は求人も弊社で出していただいてますが、現状は3名でグラウンド整備をされているとも伺っています。

清水:そうです。1人はクオリティマネージャーをしている経験者。彼とは前職時代からの付き合いで非常に信頼している社員です。前職時代に彼が「グラウンドキーパーとしてステップを踏むために転職したい」ということで辞めるときも「自分の人生、自分で決めたほうが良い」と送り出しました。その後、私が独立することが決まり、送り出していながら、私の身勝手ではありましたがダメ元で「一緒にやらないか」と伝えたところ、合流してくれました。彼には本当に感謝しかありません。今は「こうしたらいいんじゃないか」「あーしたら……」って自分から色々アイデアを出して、やりがいを感じて、毎日充実している姿を見ているので、嬉しい限りです。もう一人は私の息子なんですよ。泥まみれになって毎日家に帰ってくる私を見て「一緒にやらせてくれないか」と言ってきてくれました。嬉しかったですね。

__グラウンドキーパーは、アスリートが活躍するために無くてはならない仕事だと思うんです。お話を伺っていて、御社の事業がもっと大きくなってほしいと思います。ただの業者さんではないと思いますから。

清水:そう言っていただけて光栄です。だからこそこの魅力ある仕事を、もっと若い子たちに知ってほしいなっていうのが本音です。それこそ私が中学校に行って講習会を開いて来ましたが、その時の生徒たちが「そういえばグラウンドキーパーって仕事があったな」って思いだして、当社の門を叩いてくれたら本当に嬉しい。「野球に携わりたい。この関わり方面白そう」って思ってもらえるように、職業そのものの地位も高めていきたいですね。

__ご自身の会社のことのみならず、次世代のことまで考えられているのが本当に素晴らしいと思います。清水さんであれば、きっとその理想を継続していけると思います!

清水:同じようにグラウンド整備をされている会社は沢山あります。比較されることもあります。自分たちのことを少しでも必要としてくれるなら「できない」とは言わず、どうしたらできるかを考え、提案し、やれることはなんでもやりたい。そのようにしてもっと要望をいただけるようにするために、社員数を増やしてゆきたいと思っています。まずは目の前の1人ひとりのお客様とグラウンドに向き合って、一生懸命頑張っていきたいですね。

__ありがとうございます。最後に、新しく入る方に伝えておきたいメッセージなどがあれば、ぜひ!

清水:経験者でも未経験者でも、しっかり教えるので経験の有無はそんなに気にしていません。それよりも機械を扱うことが好きな人。グラウンド整備に特化している機械に乗るので、そういう事が好きな人。あとは泥だらけになっても問題ない人(笑)。当然、野球好きであればもちろん(大歓迎)です。「プレイヤーとしてはドロップアウトしないといけないけど、野球にどうしても携わりたい」っていう方であれば、すごくやりがいを感じていただけると思います。

それに社会人野球は本当に面白いです。アマチュア野球界では、どうしても高校野球のほうがメジャーですけど、社会人の硬式野球は物凄く面白い。だからこそ、当社も社会人野球を盛り上げるために何かできないか一緒に模索したいですね。あとはやっぱり、これまで私が色々話してきた想いに共感してくださる方と働きたいです。同じ方向を向いて、一緒に頑張っていければ、きっと業界も当社も、そして個人も幸せになると思いますから。





【PROFILE】

清水 孝行|サンビースポーツ株式会社:代表取締役

国際武道大学野球部出身。当時はメンバーに入れずバッティングピッチャーとグラウンド整備に徹する4年間だった。振り返って「あの時の経験がなければ今の自分はない」とも語ってくれた。卒業後はスポーツ施設についてもっと学びたいと考え、野球場や陸上競技場、テニスコート等のスポーツ施設専門の建設会社に入社。12年勤めた後、施設管理会社にて、本社の業務管理部へ。そこではスポーツ施設・公園管理の業務管理を担当。

同時期に仕事とは別のところでJABA埼玉県野球協会の裏方として社会人野球のサポートに携わる。そのタイミングで地元の中学生たちにグラウンドキーパーの仕事をユニークに紹介。その取り組みが毎日新聞に取り上げられたことがキッカケで県内の中学・高校の野球部に出向きグラウンド整備やグラウンドキーパーの仕事を伝える活動範囲を広げていた。趣味はゴルフ・釣り。


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