『1億総ダンス社会』を目指す、25歳社長の"型破り"な取り組みとは??

株式会社シャコダンNET:代表取締役 棚橋 健

『1億総ダンス社会』を目指す、25歳社長の"型破り"な取り組みとは??

株式会社シャコダンNET:代表取締役 棚橋 健

「業界のために。後輩たちのために。選手のために。」

仕事に限らず、何か物事をする時の動機として、誰もが一度はその言葉を口にした事があるのではないでしょうか。私だってそう。また耳にしたことも沢山あります。今回、スポジョバがお話を伺った株式会社シャコダンNETの社長・棚橋健さんは、敢えてその言葉を使わないようにしているといいます。

それは一体なぜなのでしょうか?

現役の競技選手でありながら、社交ダンスに関する会社を21歳の若さで立ち上げた棚橋さん。高齢化がすすむ社交ダンス界で、発想力と瞬発力で道を切り拓いていてきたその言葉の奥に、棚橋さんの強い軸が見えてきます。「自分がやりたいを貫く」読み終わったあなたの心に、そんな思いが浮かび上がるかもしれません。

(取材:編集=スポジョバ編集部 荻野仁美)


ダンスでマッチングイベント!仮面舞踏会って?

ーースポジョバ初の社交ダンスの取材です!スポーツ業界内でも、また一段とベールに包まれたような世界かなと思いますが、お若い経営者の方でビックリしました!

棚橋:ありがとうございます!ダンスをより社会に浸透させる事が僕の会社の目的なので、取材はすごく嬉しいです!この会社は僕が21歳の時に起こしまして、今年で4期目に入りますね。

ーー21歳で…!起業のきっかけなども伺っていきたいんですが、まずは事業内容から教えて下さい。今日お邪魔しているこちらのスタジオ経営も、そのひとつですか?

棚橋:経営の主軸はこのスタジオですね。この場所を借りる為に法人登録したのがスタートです。「J DANCERS LABO」という名前でやっているんですが、ここにもひとつ僕の思いがあって。通常のダンス教室って、プロダンサーとしても立派な経歴を持ったオーナー先生がいて、そこで働いている他の先生方とはだいたい師弟関係、上下関係の様な形なんです。でも、ここはそうではなく、僕も他の講師も横並びで競い合えるような関係にしたくて。ダンサーみんなで集まって、ここで経済圏作って世界で戦う為の費用を稼ぐ…ここはみんなの場所ですよって意味を込めて「J DANCERS LABO」、「ダンサーズ」ってしています。

ーー棚橋さん含め講師の方々、皆さん若くて、現役で競技会に出ているダンサーですよね。あとはダンスイベントも色々、企画されているんですね。

棚橋:ダンスパーティーやイベントに関しては、ダンスをあまり踊ったことない方と一緒に楽しめるものをと考えて企画しています。どこの業界もそうだと思うんですけど、マニアみたいになっている人が新規の参入妨げている節ってあるじゃないですか(笑)そういう方が楽しむ玄人向きではなく、社交ダンスをカジュアルでオシャレなものとして広められるようなイベントを仕掛けています。最近ですと、仮面舞踏会もやっていますよ!!

ーー仮面舞踏会?!どんなイベントですか?

棚橋:ダンスのマッチングイベントなんです。仮面で目元、今はマスクで口元も見えない状況で男女をマッチングさせる。でも婚活イベントとはまた少し違う、自然な出会いの場を提供したいなという思いの元でやっています。ダンスフロア、生バンド、バーカウンターがあるオシャレな空間で、最初は僕たちがダンスをレクチャーして、最後に顔が見えない状況でどの方と一番フィーリングが合ったか選んでもらって、相思相愛になったカップルに関しては次のダンスのお約束はこちらがお取りしますよっていう形をとっています。

ーーダンス×婚活のとても面白い試みですね!

棚橋:前回は20名ほど参加してくれて5組マッチしました!あくまでダンスのお約束なので、デートともまた違うライトなのもポイントです。




社交ダンスと仮面舞踏会を掛け合わせたイベント「THE MASQUERADE」では、非現実空間が味わえる


起業は勢い?!飛び込んでみよう、死なないから

ーーユニークなアイディアで事業をされているなと感じますが、そもそも起業しようと思ったのはいつ頃からですか?

棚橋:僕もともと小学生の頃から競技会に出て選手として活動していたんですが、その頃から将来の夢は『ダンス教室の経営者』だったんですよ。ダンサーとして憧れる人たちはいたけど、ダンサーという職業そのものにはあまり魅力を感じていなかったんですね。周りの仲間たちは将来プロになるって言っているけど、それ聞いて心の中で「プロになってどうするんだろう?今は良くても20年も経ったらどうするんだろう」って思ってました。なかなか冷静な子供ですよね(笑)でも、その後、競技で大きな挫折を味わって、自分は趣味として競技ダンスを続けて、ダンス業界ではなくスポーツメーカーなどに就職して生きていこうと思ってました。

ーー大きな挫折ですか。棚橋さんはジュニアの時に日本のトップにたっていますよね?

棚橋:14歳と16歳で全日本で優勝して、その世代のトップになったんですが、僕の少し下の世代にすごい選手がいて、その選手が台頭してくるようになると、僕は勝てなくなってしまったんです。17歳で優勝できなかった時に長いトンネルに入りました。それでダンス界で仕事をする事を自分の選択肢から外して、スポーツの専門学校に進学しました。専門学校で学びながらも、ダンススタジオでパートタイム的に講師として勤務していたのですが、あまりに多忙で倒れてしまいまして…。若かったのにショックでしたね。その時に、専門学校かダンス講師か、どちらの道に絞るか選択を迫られて、専門学校を辞めてダンス業界で生きていくって決めました。

ーー1度はダンスを仕事にするのは止めようと思っていたのに、なぜそこでダンスをとったんですか?

棚橋:講師として働いた事で価値観が大きく変わったんです。ダンスってケガをした方、高齢の方のリハビリテーション的にも使えるんです。ペアダンスなので先生の両手と身体を借りて踊るような形、ケガの心配なく安全に身体を動かせますよね。更にリハビリってどうしても精神的に楽しいプログラムではないと思うんですが、ダンスは音楽にのせて、自分の着たい衣装を着て踊るっていう事がリハビリになる。他の何かに代えがたいものだなって思いました。僕は子供の頃から競技しかやってこなかったので、全く見えていなかった部分でしたが、社交ダンスにはこんな魅力的な面もあったのかって講師という仕事を通して知ったんですよね。そこでダンスを仕事にしようという決意が固まって、21歳の時に法人登録して、22歳でこのスタジオを構えました。

ーーでも経営のスキルや知識があったわけじゃないですよね?一体どうやって…。

棚橋:いや、今だってそんな知識持ってないですよ(笑)でも、ある程度の事は馬力で持っていけるなとは思っていて。逃げられない環境を作ってしまえば、勉強は後からついてくるんです。これ、人の受け売りなんですけど、泳げない人が教科書を読み漁って泳法を勉強するより、とりあえず死なないから25mプールに飛び込んでみて、溺れてもいいから実践で手や足の動き方を学んで行く方がよっぽど効率的だっていう話。僕も法人化する前に、会計とか色んな本読みましたけど、全然ピンとこないんですよ。でもいざ起業してみて、目の前に様々な処理しなきゃいけない案件が出てきたら調べるじゃないですか。覚えようって思わなくたって、そこで覚えちゃうんです。

ーーおぉ~!行動する前に頭でっかちになってしまう私には、刺さるお話です…!実践で知識を身につけて行く方が、痛みも含めて身に刻まれていきますもんね。

棚橋:僕、もともとぐうたら気質なんです(笑)やろうって思ったら、その熱がある時点で退路を断って進まないと出来ないタイプ。例えばイベントをやろうって思ったら、その気持ちが盛り上がっている時に高い会場を予約しちゃうんです。翌日に熱が冷めて、あ、やっぱりいいかなって思っても、もうキャンセルできない状態にしちゃう。テンションの上がり下がりって誰にでもあると思うんですけど、テンションが高い時に一気に進めるのが得策で、下がっている時に無理矢理やったとしてもパフォーマンス発揮できないと思います。このスタジオをオープンする時も、とりあえず場所借りちゃって逃げられないようにしておこうって感じでした。まぁ、さすがにもうちょっと計画ちゃんと立てましたけどね(笑)





〇〇の為に…で見え隠れするエゴ。ダンスの恩師から教わった人生観とは

ーー棚橋さんが経営の先に思い描いている未来はどんなものですか?

棚橋:僕の大きな目標のひとつとして、日本から世界チャンピオンを輩出するというのがあるんです。その為に世界で通用するダンサー達が、いくらでも海外に挑戦していける経済力を持てるようにしたい。選手自身が稼いでいけるよう、ダンスを様々なビジネスと紐づけていきたいと思っています。それと同じくらい大きな目標として、日本国民がカジュアルに社交ダンスを踊ってくれる社会にしたいというのもあるんです。

ーーより競技人口を増やす…というような?

棚橋:もっとカジュアルです!ガチの競技選手ではなく、バーとか行って曲が流れてきたら「ちょっと踊る?」くらいのテンションで誰もがステップを踏めるような世界。昔は、日本でもそういう文化があったんですよね。実際に今、僕がイベント会場お借りしている方のご両親も、実はそういう形でダンスを通して出会って結婚しているそうで。何か素敵じゃないですか、そんな世界。日本国民がカジュアルに社交ダンスを踊れる社会になれば、今とトップ選手の価値も大きく変わってきますしね。

ーー選手たちの価値向上に繋がっていくわけですね。棚橋さんの経営の根底にはダンス業界のために…という思いがあるんですか?

棚橋:いや、実はその感覚はあまり持たないようにしているんですよ。

ーーえ、それはなぜですか?

棚橋:僕のダンスの恩師に、ある時「自分の後輩ダンサー達のためにダンスの新しい道を築きたい。後輩たちの選択肢を増やしたい」って話したら、すっごい怒られたんですよ。僕が選択して新しい道を進んでいくのは、僕自身が好きでやっている事で、それを人にやってやる精神はやめろって。ハッとしました。そこからダンス業界のために、後輩のためにって言わなくなりましたね。僕がもっとこうだったらいいなって思ってやった事で、たまたま他の人にもハッピーがいくならいいけど、あまりにもしてあげている精神でいると危険だなって。経営面でもそうなんですけど、そこに属している人に、してあげる精神ではなく、僕がやりたい事をやっている中で、共感してくれている人に対しては責任は尽くす。でも、その人たちが自由に生きていく事に関して何にも影響を与えない、そんな関係でいなきゃいけないと思うんです。ダンスの先生から、ダンスだけでなく人生観みたいなのも教わりましたね。

ーーどの仕事でも、どうしても「誰かのために」って着地したくなるんですよね。でも究極、「自分がやりたいからやっている」が一番強いのかもしれませんね。

棚橋:誰かのためにってやっている人を批判するつもりはないんです。ただ僕の考えとして、誰かのため、つまりボランティア精神って逃げ道になっちゃう事があると思うんです。あまりにも〇〇のためって言っていると、無意識に手を抜く理由になってしまう傾向がある。他の誰でもなく自分のために、やりたい事をやっているというスタンスですね。だから文句は言わせないぞっていう(笑)





幼き日の自分が憧れる自分であるように・・・

ーーここまで様々、事業を広げてらっしゃいますが、今考えている新しい取組みはありますか?

棚橋:最初にお話した仮面舞踏会に関しては、かなり壮大な事を考えていて。アメリカやイギリスでは学校を卒業する時に『プロム』というダンスパーティーをする文化があるんですが、あの文化を『プロム東京』みたいな形でやりたいんです。コロナも収束した世の中で1000人とかの規模で。社交ダンス界の集客に一切頼らず、日本全国からみんなが『プロム東京』に踊りに来る、そういうイベントを今後、数年のスパンで考えています。

ーーおぉ!!ワクワクしますね~!海外ドラマなどで見てプロムに憧れている人もいますもんね!こうしてお話を伺っていると、棚橋さんの考える市場ってダンス業界内に限らないんですね。

棚橋:それも意識している部分ですね。社名の『シャコダンNET』には、日本全国に社交ダンスをネットしていくっていう意味があるんですが、よりダンスを浸透させていく為には、外にいくしかないんです。子供の頃から、社交ダンス業界の人って業界の中にしかいかないよなって不思議に思ってました。その頃の自分を裏切らないためにも、僕はどんどん外にアピールしていこうと思っています。子供の頃の自分が見ても憧れてもらえるような魅力的な仕事をしていくっていうのは、起業の頃から大切にしているテーマですね。

ーーちなみに現在は競技会には出場されてませんが、競技ダンサーも続けていきますか?

棚橋:もちろんです!当分引退するつもりはありませんよ。経営する上で僕自身が競技選手であり続ける意味も大きいと思っています。常に競技の前線で戦っている人たちに囲まれながら、そのあたりの感覚を養いながら取り組もうと思っています!

ーーよかったです!またフロアの上で輝く棚橋さんを見られるのも楽しみにしています!





【PROFILE】棚橋 健(たなはし けん)

1996年2月生まれ。神奈川県横浜市出身。両親が習っていたのをきっかけに6歳から競技ダンスを始める。初めて出た大会で決勝入りし、最初は成績を残すとゲームソフトを買ってもらえるという報酬目当てで続けるも、だんだんとダンスそのものに、のめり込んでいく。14歳の時に三笠宮杯全日本ダンススポーツ選手権ジュニアの部で優勝。16歳で全日本選手権ユーススタンダード部門で優勝。

高校卒業後に、スポーツ医学を学べる専門学校に入学し、同時に都内のダンススタジオで講師として勤務するも、多忙により体調を崩し、専門学校を退学する。ダンス業界で生きていく事を決め、21歳の時に株式会社シャコダンNETを起ち上げる。現在はダンススタジオ「J DANCERS LABO」経営、ダンスイベントの企画運営、ダンス関連商品の販売などを行う。また現役の競技ダンサーでもあり、全日本強化選手にも指定されている。公益財団法人日本ダンススポーツ連盟、未来創造事業部長も務める。

コロナ禍で在宅時間を利用して作ったアプリ『フロアクラフト』。ダンサーが接触を避けながらフロア上の『♪』を拾っていくゲームは、地上波アプリ番組でも紹介された。






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