「3つの柱をかけ合わせて大きなものにしていきたい」
そう話すのは、株式会社オアシス代表取締役の中田直樹さんだ。2011年に会社を設立し、フットサルコート「刈谷フットボールオアシス」を開設、5年前には2号店となるフットサルコート、ラウンジ、スタジオ、プライベートBBQガーデンなどを併設した、多目的施設「WACTIVA ANJO」を増設、また各会場にてサッカースクール「alegreed Soccer school」を運営。さらに2年前からは体幹教室「JPCスポーツ教室」もスタートした。バラバラなようにも見える3つの事業だが、今後はそれぞれがリンクし合うことでの相乗効果を狙っている。
これら3つの事業は一体どのように始まったのか。そして世界基準の選手を育てるために、子どもたちに新しい機会を提供し続けるオアシスの次なるビジョンとは。ご自身と社員の思いを汲み取り、形にし続ける中田さんに話を聞いた。
(取材・執筆:伊藤 千梅、編集:伊藤 知裕、中田 初葵)
──中田さん、本日はよろしくお願いします!まず、株式会社オアシスを立ち上げた背景を教えてください。
よろしくお願いします!僕は小学校からボールを蹴っていましたが、家の近くでやっているサッカースクールがありませんでした。社会人までサッカーを続けましたが、小学生年代に技術を教わった子はやはり上手で、なかなか追いつくことができませんでした。小学生の頃にサッカーを教えてもらえる場所や機会があったらもっとうまくなれたかもしれないですし、当時の僕みたいな子ども達が通えるサッカースクールを地元でやりたいという思いはずっと持っていました。
──幼いころの経験が今に活きているということですね。最初に始められたのはどんな事業だったのですか?
2002年に開催された日韓ワールドカップの時に、東京にフットサルコートが増え始めました。その頃はサッカーとは関係ない資材を取り扱う商社の営業マンをやっていましたが、その仕事もちょうど10年経ったこともあり、幼い頃の思いに加え「ボールを蹴る環境を人に提供したい・子どもたちにはサッカーに触れて欲しい」と、フットサルコートの事業から始めました。
──周りはどんな反応でしたか?
ちょうど子どもが生まれた時だったので、周りの人から大丈夫か?とは言われましたね(笑)。でも、元々サッカーに関わる仕事を自分でしたいという思いがありましたし、タイミング的にもよい時期でしたので、これは仕事をやめてでもやりたいと思ったんです。大半の人からはやめたほうがいいと言われると思い、ほとんど人に相談せずに始めました。
──1人で始められるくらい強い思いをもたれていたことが分かります。
そうですね。始めはフットサル大会の企画、運営やレンタルコートの営業を1人でしていました。今もフットサルコートの事業では、個人で20人ぐらい集まってゲームをする個サルを仕切って盛り上げたりしています。
──フットサルコート事業からどのようにしてスクール事業が始まったのですか?
スクール事業については、普通はコーチを募集してから始めるのが一般的だと思うんですけど、うちはコートの運営をしていくうちにコーチやサッカー経験者が集まってきてくれました。地元にFC刈谷というチームがあるのですが、当初はFC刈谷の現役選手がコーチを行うスクールで始まりました。今では現役を引退してもコーチとして指導をしてもらっています。セカンドキャリアとしての受け皿として、社会貢献できていることはとても嬉しいです。
──フットサルコートの事業から人を集め、現在は「alegreed」というスクールを開講されています。どのようなことを大切にしていますか?
「alegre」は楽しむ、「greed」は貪欲、という2つの言葉を合わせた造語でそれぞれの想いが込められています。世界水準の選手を育てるために、技術面に特化して教えています。ベーシッククラスとスペシャルクラスに分かれていて、上を目指したい子は元Jリーガーのコーチのもとでレベルアップを図ることができます。もちろん、初心者や始めたての子、もっとうまくなりたい子を対象としているベーシッククラスなどもあるので、上を目指したい子以外にもしっかり技術を学ぶことができます。
──御社は、フットサルコートや「algreed」のほかに2年前から「JPCスポーツ教室」という体幹教室も始められていますが、それはどのようなきっかけだったのでしょうか。
実はJPCスポーツ教室を始める前に、当時20代だった社員が「体幹教室をやりたい」と言ってくれたことをきっかけに、体幹のクラスをスクール内で開催していました。その時に、体幹を鍛えることが怪我の防止につながることや、一歩目の速さが変わってくること、またすべてのスポーツの能力を上げるにはそもそもの体づくりが大切で、サッカーばかりやっていればいいわけではないこともわかってきました。その社員が筑波大学の大学院にいくことになり一旦教室は閉めましたが、体幹に特化したアプローチは継続したかったので、今度は新たな事業として始めました。
──すると、社員さんの思いが事業として形になったのですね。
そうですね。言い出してくれた担当の子は、今はJリーグのクラブのフィジカルコーチをやっています。「箔をつけて帰ってきます」と言ってくれています(笑)。
──スクールのほうでは、中学生年代のクラブチームも立ち上げられました。
こちらも、元Jリーガーの中野裕太コーチの思いから始まりました。スクール事業だけではほとんどの子が6年生までしか教えることができず、中学生になると多くが辞めてしまう流れが続いていたなかで「教えられることの幅も広がるし、中学生以降も関わりたい」と相談してくれました。それをきっかけにジュニアユースのチームを立ち上げることになりました。
──どの事業でも、なにかをやりたいという思いのある人が活躍していける環境なのですね。
そうですね。基本的には社員がやりたいことを中心に考えていく会社です。自分でアイデアを出したり、企画したりする人のほうが向いているかもしれません。
自分の好きなことを掛け算でやることで、スポーツをやっていた時の輝きを忘れず頑張ってもらいたいというのはすごく意識しています。まだ大規模な会社ではないので、その社員に合わせてクラスやメニュー、授業内容は変えることができます。例えばプレーヤー時代にストライカーだった人は「ストライカークラスを作りましょう」ということもできます。なるべく自分の力が発揮できるようなところに、バランスを見て入ってもらいたいです。
──楽しそうないい環境ですね。中田さんが経営者として大事にしていることはありますか?
いろんな経営者がいますけど、僕は自分の考えに絶対ついてきてほしいタイプではありません。いろんな人が集まってくれて、それぞれ個人の考え方がある。そこに対して1人ずつ話して、人生設計も含めてサポートするようなスタンスです。社員からは、自分が死ぬ時に「あの人と関われてよかった」と思ってもらえるようにはなりたいです。立場は違いますが、人と人の関わり方として、なにかを得られてよかったと思ってもらえたらいいですね。
──新しく一緒に働く人には、どんな人に来て欲しいですか?
スポーツの経験がある人がいいですね。うちの会社にも元Jリーガーがいますけど、その道を真剣に突き詰めてきた人には、それまで積み重ねてきた努力といった、目に見えないものがあります。アスリートは基本的に負けず嫌いだし、最後まで頑張れるところがすごく魅力的です。サッカーをやってきた人でいうと、自分がボールを欲しいところを相手に伝えることをしてきているので、すでにコミュニケーション能力も高い。挨拶なども幼い頃から言われてきて、当たり前のことを当たり前にできる人が多いです。指導経験がなくても、スポーツ経験があれば備わっていることがあると思います。
──スポーツ経験を通して学んだことが活かされるような場所なんですね。それぞれの事業で求められることがあったら教えてください。
フットサルコート施設の事業では、人が喜んでるのを自分も喜べるような人がいいですね。イベントを企画・開催するので、その時にお客さんが楽しかったと言ってくれることが、自分の喜びだと感じられて、仕事のモチベーションがあがる人がいいんじゃないかなと思います。またスクールのコーチであれば、責任感があって時には厳しいことも言える人。クラスによっては高いレベルを追求しているところもあるので、なにかあったときにビシっと言えることも必要になってくると思います。体幹教室は保護者とお話しする機会もが多いので、コミュニケーションを取ってしっかり対応ができる人がいいのかなと思います。あとは、どこにいても大変さが伴うなかで、自分が熱くやれることも大切だと思いますし、スポーツ業界で働きたいという思いの強い子のほうがいいですね。
──3つの事業をしていくなかでのそれぞれの思いを教えてください。
施設事業のコンセプトにもあるように「第3の場所」として、競技を引退しても熱くなれる、仲間と繋がれる場所を提供したいという思いがまずあります。それと合わせて、スクール事業では子どもの頃から本格的に技術を学ぶことで、日本代表クラスの選手を育てていきたいです。さらにそこからアプローチを変えたものが体幹教室のJPCスポーツ教室ですが、それぞれ年齢を重ねても使ってもらえて、集まれる場所でありたいというのはどの事業にも通じて強く思っています。
──幅広い年代の方々に愛される場にしたいということですね。実際に長く通われている方もいらっしゃるのですか?
実際に年少さんからスクールにきていた子が、アルバイトとしてサポートしてくれたり、フットサル大会のプレーヤーとして来てくれたりしていた子が今でもコーチとして活躍してくれています。そういうつながりを感じた時にやっていてよかったと思いますし、これから関わる人たちとも長い間お付き合いができたらうれしいです。
──成長してここにまた帰ってきてくれるとやりがいを感じられますね。今後、新たに取り組んでいきたいことはありますか?
先ほども言ったように、これからなにか得意なことをもっている子が入った時には、そこで一つ新しいものをスタートさせる可能性はあると思います。また社員さんと話し合いをしながら、こちらから提案をしてチャレンジしてもらうこともあるかもしれません。
──これからもまだまだチャレンジしようという前向きな姿勢が伝わってきます。3つの事業の今後の展望を教えてください。
現状はサッカースクールと体幹教室の場所が離れているので、目に見える相乗効果を生み出せてはいません。ただ今後は、サッカーで当たり負けをしてしまう子などに、週1、2回でも体幹教室に通ってもらい、より高みを目指せる環境を整えていきたいと考えています。いずれは3つの柱をかけ合わせて、より大きなものにしていきたいです。
──社員さんの思いを大切にされているオアシスさんですが、社員さんの働き方についての展望も教えてください。
働き方としても、事業間で行き来できるようにしていけたらいいなと思っています。それにより指導の幅が広がったり、年齢やライフスタイルに合わせて働き方を変えたりして、社員さんも長く働ける環境をつくっていきたいです。
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【PROFILE】
中田 直樹
株式会社オアシスの代表取締役。幼いころの経験から子どもたちが通えるサッカースクールを作りたいと考え、事業をスタート。今後は、3つの事業をかけ合わせて更なる相乗効果を狙っている。
設立年月 | 2011年04月 | |
---|---|---|
代表者 | 中田 直樹 | |
従業員数 | 18名 | |
業務内容 | ・フットサル ソサイチ大会企画運営・フットサルコート施設管理
・サッカースクール運営、ジュニアユースクラブチーム運営
・体操体幹教室運営
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