「スポーツ業界で働きたいけど、どんな仕事があるの?」
このように漠然と悩んでいる方、また「業界の仕事の理解を深めたい!」と考えている方に向けて立ち上がったのが『スポーツ業界のおしごと図鑑』という新シリーズ!実際に働いている人に「それってどんなお仕事なの?」「どうやったらなれるの?」と聞きご紹介し、働いたことのない方にもよりお仕事のリアルがわかる内容をお届けします!皆様のやりたいことが明確になるためのお手伝いになれれば、これ以上嬉しいことはありません。
『おしごと図鑑』の第5弾として、今季からBリーグ:香川ファイブアローズでチームマネージャーとして活躍することが決まった前山明日翔さんにインタビュー!「マネージャーって何するの?」という視点から、さまざまなチームを渡り歩いてきた彼女だからこそわかる、チームごとのやり方の違いなどなど、詳しくお話を伺いました。
「マネージャーとして働くこと。就活すること自体がそもそも難しいから、私が将来やりたいのは……」
(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)
__早速ですが、マネージャーとしての役割もクラブ毎で違うんじゃないかなと想像しているんですけれど、まずは普段、前山さんがどんなお仕事をされているのか教えてください。
前山:仰る通りで、私は今回のオフに『香川ファイブアローズ』へ移籍しまして、これで実業団チームの大塚商会(現・越谷アルファーズ)含め4クラブ目なのですが、マネージャーの役割はクラブによって大きく異なります。
私が最初入った大塚商会は一般企業の実業団チームでしたので、いわゆる今も何人かまだいらっしゃる『Bリーマン』と言われる、会社員とBリーグ選手という二足の草鞋を履いている方しかいませんでした。私も同様にOL(事務職)として働きながらチームマネージャーとして働いていましたので、あの当時が一番忙しかったかもしれません(笑)。当然仕事が9-17時であってそれが終わってから練習になるので、マネージャーとしてできることは、タイマーとかスクイズ作るとか、準備も片付けも本当に何でもしていました。あと土曜の遠征で金曜夜に出発するために、先に試合で必要なものの準備を進めたりしていましたね。
__明らかに大変だな……と思いますが、社会人チームとプロ球団の違いもぜひ伺いたいです!
前山:でもみんな飛行機の中で見積書作ったりしていたので、あの時は大変でしたけど凄く楽しかったですね!バスケのことだけではなくて、ビジネスの会話ができる。「前山、あれめっちゃ売れてるけどヤバくね?」「あの商品凄いですよね、追加発注しておきますね」といった話。社会人としての常識、それこそメールの打ち方とか電話のかけ方とか名刺交換とか、色々学んだ上でプロに行けたのは、本当にラッキーだったと思います。
プロ球団になると、いわゆる9-17時の仕事はないですし、かつある程度自分で「今日はこれやろう」ってコントロールできるようになったものの「プロのマネージャー」として意識は大きく変わりました。その上でチームごとに違う事と言うと、それこそある程度ルールが固まっていて、マネージャーの仕事が明確に割り振られているクラブもあれば、逆にゼロからマネージャーの仕事の領域を作っていけるクラブもあったり、もっと言うと広報さんと連携しながら、企画にも一緒に入ってチームが行うイベントの提案ができるクラブもあったり……本当にさまざまなんですよ。
__ちなみに、コロナ前も前山さんは経験されていると思いますが、コロナになってから働き方で変わった部分がもしあれば教えてください。
前山:大塚商会時代だけはコロナ前だったんですけれど、やっぱり直接お会いしてお話して、たくさん交流ができて、私にも声をかけてくださる方もいましたので、凄く良い思い出が多いです。他の競技と比べて、Bリーグの選手たちはブースターの皆様と距離が近く感じられることが魅力の1つだと思う一方、コロナになってシーズン始まった矢先、触れ合うことはできませんし、イベントも形を変える必要があったりました。選手にどこまで何をしてもらうか等々、トレーナーさんたちとも話ながら、本当にゼロから作っていかなきゃいけない大変さはありましたね。
それに、私は男子チームの女子マネージャーなので、withコロナになってから今までは普通だったことも、ある程度の節度を持って動かないともしかしたら選手が不快に思ってしまうかもしれないな……ですとか、行動1つひとつに対して、物凄く色んな視点で考えるようになって、良い意味で自分の仕事の棚卸しはできたな、とも思っています。
__良い意味で棚卸しもできた、というお話もありましたけれど、たとえばご友人に「マネージャーって何するの?」と聞かれたときに、前山さんは何てご説明されているんですか?
前山:やっぱりクラブによって全然違いますし、1年いたチームと2年いたチームでもまた役割が変わってくるので、正直一概に「コレ」と言うのが難しいです。その中でお伝えできることとしては、シーズン前であれば、たとえばウェアの発注や備品の準備であったり、公共の体育館を使う場合は予約の管理もします。あとはリーグのスケジュールが出たタイミングで、遠征に必要な持ち物リストと、いつまでに準備するのが必要か等々の予定を作ったりします。主に事務所での作業が中心ですね。練習が始まれば、タイマーやったりスクイズ作ったり、選手がシューティングする際にリバウンドを取ってパス出したり、終われば備品の片付けやウェア洗濯等々……ですね。
それから、いざシーズンが始まったときは、練習中や練習前後はお伝えした通りですけれど、たとえば遠征のときは荷物を飛行機だったりバスに載せたり降ろしたりもそうですね。コロナの感染症対策として、体育館やボールの消毒も今は仕事の1つで、それも報告書を作ってリーグに提出するので、結構、毎日はあっと言う間です。確認の電話も様々なところからいただきますし。
__参考までに、一日の流れについても教えていただけませんか?
前山:オフシーズンは、ある程度自分で優先順位をつけて事務作業をすることが多いので、時と場合によるんですけれど、たとえば練習の日はだいたい日中になるので、練習行って、事務所でちょっと作業して……という過ごし方が大まかな流れです。試合の日は、土曜日なら朝練の前、だいたい選手より2時間くらい前に会場に入って、準備して試合して片付けして、また翌日……。概ね月曜はオフなので、お休みするかちょっと家でやること済ませちゃうか、というようなイメージですね。シーズン中は、ガムシャラです(笑)。
__一通り聞いた上で、ですけど、大変じゃないですか??
前山:でもすごくやりがいは大きいです!たしかに大変なことも多いですが、マネージャーは"居たら嬉しい"ポジションだとも理解していて。小さなことだとしても、誰かにやってほしい仕事をして、最終的に全てが上手く回るような、その一部を手助けできることはやっぱり嬉しい。それに、選手に夢を見させていただいていますし、自分が選手だったらこんな景色見られないなって思うような場所で働けていることが、そもそも幸せなんです。
もっと言うと、チームのことがめちゃめちゃ好きになるので、勝ったときは本当に誰よりも喜べるんですよね。選手やチームがスムーズに練習や試合に望めて、勝ってって、本当に嬉しくて。だからこそ、私は移籍したてのときとか不安にはなるんですけれど、でもシーズンが終わったときに「きっと私、このチームのこと大好きになるんだろうな」と思うと、好きなチームが増えることへの喜びを感じずにはいられないと言いますか。
__愛ですね、愛。その気持ちを持てるまで尽くせるのが素敵です。ちなみに業務量が多いからこそ、前山さんの中で効率的に働くために意識していることは何かありますか?
前山:いやー私も悩んでいる部分ではあるんですよ(笑)。正直この仕事は試合や練習以外の時間であれば、パソコンとケータイがあればいくらでもできる側面があるので、私の中では、いつ・どのくらい・何をやるかを、自分で優先順位をつけることは大切にしています。あとは遠征に行くときだとしても、ないと困るものを除いて、なるべく荷物を少なくしたり、上手くまとめられたりしないかな……と考えて準備したりはしています。
あとはやっぱりフロアに立つポジションでもあるので、スタッフをはじめ選手やコーチとのコミュニケーションは大切にしています。この仕事はそれが一番大事だと思っていて「これお願いできる?」って、私に言いやすいほうが良いじゃないですか。だからこそ今は移籍したてですし、まずは仲良くなるように、なるべく事務所や体育館に顔を出したりするようにしていますね。とにかく話して、仲良くなるところから頑張っています!
__そもそもですけれど、前山さんが大学を卒業された頃って、Bリーグが始まったくらいのタイミングですか?いつからマネージャーを仕事にしようと思ったのか、すごく興味があります!
前山:仰る通りで、私が大学4年生のときにBリーグが誕生したんです。だから私も正直Bリーグのマネージャーになれるとは思っていませんでした。そもそもマネージャーが仕事になるとも思っていませんでしたし。もっと言うと、白鷗の同期で、横浜ビー・コルセアーズのマネージャーをやっている薄井麻鈴って子がいるんですけど、逆に彼女は4年生のときに「絶対Bリーグでマネージャーになる!」って就活を頑張ってたんです。彼女が(マネージャーの)仕事ができることを知っていた一方で、私もやりたいけど、大学4年やってきただけの技量じゃプロでやっていけるとも思えませんでした。かつ、そこにお金が発生するとも思えなかったんです。
ただ、将来的にスポーツ業界で働く為に、まずは一般教養を身につける為にも企業で働きたいと考えた中で、その上でマネージャーとして働けるところはないかと、バスケットボールチームを所有している企業さんに就活をしていたところ、大塚商会から内定をいただきました。会社員且つチームに所属できるということになり、とても嬉しかったことを覚えています。
__もちろん大塚商会に入れたことは前山さんにとってもラッキーだったと思いますけれど、それにしても会社の選び方が凄く素敵だなと思います。そのあとは……?
前山:当初自分が思い描いていた一般社会での教養をしっかり学ばせてもらっていく中で、今度はマネージャーとしての比重を大きくしたいと思ったんです。会社員という安定を捨ててでもマネージャーに挑戦したいって気持ちが強くなって。それで本当、全チームに履歴書を送るくらいやりました。結果、たまたま地元の『新潟アルビレックスBB』が採用してくださったという流れです。
そして、その次の『京都ハンナリーズ』にいた頃の話。本当に色んなチャレンジをさせていただいたんですけれど、最終的に自分のキャリアの終着点を考えたときに、このマネージャーという仕事の価値を上げたいのと、マネージャーになりたいと考える次の世代の子たちの何かお手伝いができないかなって考えるようになったんです。選手の自由交渉リストがあるように、スタッフにも自由交渉リストのようなものがあったら活用できるのになって。本当に、スタッフってエージェントさんもいないので、自分で「私どうですか!」ってチームに売り込まないといけないんですよね。でも、自分がそのクラブに合っているかどうかはわからない。そのようなノウハウを伝えられたり、もっと言うと「このクラブならあなたに合ってると思うよ、行ってらっしゃい!」って送り出せる『家』みたいなものを作れたらいいなって思ったんです。
__前山さん、それは素敵すぎます……!
前山:ありがとうございます!でも、まだまだ漠然としていて、それが会社なのか何なのかとかは明確ではないんです。ただ1つだけ理解しているのは、最終的に自分が家をつくって巣立っていける子たちをたくさん出せるような場所になるためには、自分がまだまだキャリアを積む必要があるなって。今の自分じゃまだまだ未熟すぎるなと思ったんです。
だからこそ、また新しいところで新しい仲間と一緒に頑張りたい。色んなクラブを知って、自分のスキルも知識も経験も積んでいきたいと考えた結果、今シーズンは『香川ファイブアローズ』さんでお世話になることになりました。色んなクラブを渡り歩けば歩くほど、私としても学びが多いですし、今回もチームに大きく貢献していくことを前提に、活かせるところは活かしながら、吸収しながら頑張っていきたいですね。
__個人的に、ボールを3つ、4つ持ってフロアを走り回ってる前山さんが印象的なので、香川でも注目していますね(笑)
前山:あはは(笑)。本当、落ち着きのある人になりたいって毎年思うんですけど、大塚商会時代に「ボールは選手が欲しいタイミングで必ず渡す」という鉄の掟があって。それを自然と今もやっていたらあーなっちゃったんです(笑)。改めてご説明すると、フロアから離れたときにどれくらいチーム全体を動かす仕事があるかという、その比重がクラブや人員体制によって変わってくるっていう話ですし、マネージャーって本当に色んなやり方があるので、それぞれが正解になるように動いていると思うんです。だから私もまだまだこれから勉強です。
__ちなみに、家の話もありましたけれど、スポジョバでも多くはないんですがマネージャーの募集はあります。「これからマネージャーになりたい」と考える方に対して、前山さんから何かアドバイスいただけませんか?
前山:アドバイスできる立場でもないので恐縮ですが、ただ、Bリーグは今まさに変革期で、2026年の新リーグ基準に向けて、どのクラブもかなり大きな動きをしています。だからこそチャンスはたっくさんあると思います。その上で、どこに焦点を当てるか、だと思うんですよ。「マネージャー」「職場」「お金」とかとか、人によって大事にしたいものが違うと思うので、それを明確にした上で、募集があれば応募してみるのがいいと思いますし、まずは自分から積極的に動いて繋がりをもつことが大事だと個人的には思います。
__ズバリですけど、マネージャーになるために必要なことって前山さんは何だと思いますか?
前山:いやーそれも私が言えることではないかもしれません……。回答になっているかわからないですけど、でも英語ができなきゃいけないとか、大学でマネージャー経験がないといけないとか、そういう堅苦しいものはないと思うんです。
私みたいに、高校まで陸上部でバスケはほとんどやらずに来た人間も多いと思いますけれど、それこそ社会人になってからバスケにハマって「経験も何もないけどどうしてもやりたい!」って琉球ゴールデンキングスでマネージャーとして働いている子もいます。ですから、私が思う限りで言うと「どれだけチームのことを想えるか」「どれだけチームのことが好きか」という、気持ちを持っているかどうかが、マネージャーになるには一番必要かもしれないなって思います!
__ありがとうございます!今シーズンの前山さんの香川での活躍も、期待していますから、最後に2022-23シーズンに向けた意気込みを!
前山:香川の試合は去年もその前からも見ていて「互いが互いを思いやって、全体で高めあっている」っていう文化が凄く根強いていると、大学の先輩でもある石川HC(石川 裕一ヘッドコーチ)から聞いています。だからこそ、本当に一ファンとしてもワクワクするシーズンが始まるなって思っています。
だからこそ、本当にみんなが伸び伸びバスケできるような、当たり前の環境を当たり前に作っていきたいなと思います。それに、会社の理念やチームの意向にも凄く共感する部分が多かったので、自分が1年間でどれだけ成長できるかも楽しみです。また新たなチームでどんな未来が待っているかわかりませんが、経験があるからこそより頑張らないとなと思っていますし、クラブ、選手、スタッフ、そしてブースターさんやスポンサーさんのためにも、ちゃんと結果を残したいと思います!
【PROFILE】
前山 明日翔 (まえやま あすか)|香川ファイブアローズ:チームマネージャー
新潟県出身。父親が現在もミニバスのコーチをされているとのことで、幼少期からずっとバスケが当たり前にある環境で育ってきたと本人談。ただ高校までは陸上部。白鴎大学進学時に、陸上を続けるつもりがあまりなかったことと、昔から何か人のお手伝いをすることが凄く好きだったということもあり、たまたま募集を見つけた男子バスケ部のマネージャーにエントリーし入部。2年次には主務をつとめ、3、4年次は副務として活躍。4年次には当時の創部史上最高成績となったインカレ3位、オールジャパンに出場した。
卒業後は「社会人としての教養も身に付けたいし、できるならマネージャーもやりたい」と考え、一般企業であり実業団チームでもあった大塚商会アルファーズ(現・越谷アルファーズ)に入社・入団。3年ほど働き、もっとマネージャーに比重をおいて挑戦したいと考え退団。その後はアルビレックス新潟BB、京都ハンナリーズを渡り歩き、そして現在香川ファイブアローズでマネージャーとして活躍している。
水族館が凄く好きだそうで、幼少期の夢は「イルカの調教師」。現在の目標は、ホームアリーナ:高松総合体育館のすぐ近くにある新屋島水族館硬式キャラであり、香川ファイブアローズ公認のキャラクター『マナやん (アメリカマナティ)』と仲良くなること。破天荒な性格の持ち主が故に日々(仲良くなる)努力を重ねているんだとか。
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