イニエスタ選手のパートナーシップを最大化する戦略。楽天におけるユニークなスポーツマーケティングとは。

楽天株式会社 グローバル スポンサーシップ オフィス ヴァイス オフィスマネジャー 堀弘人

イニエスタ選手のパートナーシップを最大化する戦略。楽天におけるユニークなスポーツマーケティングとは。

楽天株式会社 グローバル スポンサーシップ オフィス ヴァイス オフィスマネジャー 堀弘人

「楽天は、全世界で70以上の事業・サービスを展開しています。日本国内ではECやフィンテック、そして通信の分野では第4の携帯事業者として参入しました。今後、海外で“楽天”というブランドを、どうやってより発展させていくか、またはブランドの観点で言うとそれをどうやってもっと多くの人に知ってもらうか、というところが、大きな課題になります。その一助になっているのがスポーツマーケティングなのです。」

世界トップレベルの知名度と実力を持つFCバルセロナや、NBAの強豪であるゴールデンステート・ウォリアーズのユニフォームにパートナーとして名を掲げ、世界的有名選手が活躍するJリーグクラブのヴィッセル神戸を運営。


世界を股にかけてスポーツ界にインパクトを与え続けているのが、楽天株式会社(以下 「楽天」)です。


その楽天においてグローバルスポーツマーケティングを担当している堀 弘人氏にスポーツを通じてどのように楽天の価値を高めようと考えているのか聞きました。

5社の外資系企業で学んだこと


「90年代のバスケットボール人気に影響を受けて、学生時代は自らもプレイヤーとしてその渦に身を投じました。特にマイケル・ジョーダン選手の影響は大きかったです。こんなにも絶対的な存在として世界に君臨するアスリートがいるのか、と。


そこからですね。いつかはスポーツの世界で働いてみたい、と思うようになりました。

自分が若かりし頃に感じたことを次世代にも同じように伝えたいということがモチベーションとなり、マーケティングという仕事を選びましたし、その中で人の感情に一番影響を与えやすいものがスポーツであるという考えは、今も昔も変わっていません。


私は転職経験が比較的多く、楽天での勤務は自身のキャリアで6社目となります。新卒で外資系広告代理店に入り飲料メーカーのアカウント担当としてブランドビジネスの奥深さを知りました。次に独系スポーツブランドで働くことを決め、マーケティング部門でブランドをきちんと表現するリテール(直営店)を国内主要都市に立ち上げていくプロジェクトに関わり、その後に世界最大手の米系スポーツブランドに転職しました。」




「独自性を持ったブランドがこれまでに培ってきたものを分析しながら、現代的な革新性をマーケティング戦略に盛り込み、スニーカービジネスや、ライフスタイルアパレルの立ち上げ、そして自身が憧れていたNBAプレイヤーとの業務を含むバスケットボールの仕事など、充実したキャリアと経験を積むことができました。


その後、外資系ラグジュアリーファッショングループに身を移し、スポーツマーケティングにも力を入れる高級時計ブランドのマーケティング統括責任者を務めました。


そして、現在の楽天に辿り着きます。当社に入ってから1年数ヶ月経ちますが、スポーツを中心としたブランド活動やマネタイズ戦略の構築、アスリートマネジメント、プロモーターとしてのイベント興行、サッカースクール事業、マーチャンダイジング事業、メディア事業などに幅広い業務に携わっています。スポーツマーケティング業界のなかで、楽天はとてもユニークなポジションに位置していると思います。


楽天は、全世界で70以上の事業・サービスを展開しています。日本国内ではECやフィンテック、そして通信の分野では第4の携帯事業者として参入しました。今後、海外で“楽天”というブランドを、どうやってより発展させていくか、どうやってもっと多くの人に知ってもらうか、というところが、大きな課題になります。その一助になっているのがスポーツマーケティングなのです。」




日本におけるイニエスタ選手のサッカーファン以外からの認知度は想像よりも低かった

「FCバルセロナという世界最高峰のサッカークラブと、NBAの強豪チームであるゴールデンステート・ウォリアーズのユニフォームには『Rakuten』のブランド名が刻まれ、世界中のスポーツファンからの認知が広がり、そしてそれは確実に成功しています。


そして、2018年5月に、楽天グループのヴィッセル神戸がFCバルセロナに所属していた、アンドレス イニエスタ選手の獲得を発表し、日本だけでなく世界のサッカーファンを驚かせました。実力だけでなく、世界的に発信力・影響力のある世界的トッププレイヤーの加入により、ヴィッセル神戸の強化、引いてはアジアでNo.1クラブを目指すという目標が立てられたのです。さらには、アジア全体のサッカー界の活性化にもつながるものと期待しています。彼がいるからこそビジャ選手、フェルマーレン選手、酒井高徳選手をはじめ、世界各国の代表や日本代表クラスの選手たちが集まりだしてきています。


最初にイニエスタ選手の移籍報道があった際、我々の部署でリサーチをしました。当時の彼の日本における認知度は想像よりも低く、彼の影響力をどのようにブランドとビジネスに活用・変換していくのかというのは企業としての課題となりました。実際のところ彼は、サッカーファンからしたら最高峰の選手ですが、一般にはそれほど知られていなかったのです。そうした状況下で、彼の持つ世界的な価値や伝説の数々、そして素晴らしい人間性を含め、サッカーを知らない方々にも伝えていくというブランディングへの取り組みが始まったのです。


その中で、彼のマネジメントチームと一緒に“アンドレス イニエスタ”のブランディングをしながらマネタイズしていくという構想が思い浮かびました。具体的にその"マネタイズボックス”は4つに分類されます。


1つはスポンサーシップのセールス活動です。アンドレス イニエスタの影響力をもってイベントや、PRをしたいという企業はたくさんいますので、そうした企業とお繋ぎするというところ。我々が管轄になってからは大手スポーツメーカーや消費財メーカー、エンターテイメント企業などを繋げています。

2つ目の軸は、スクールビジネスです。もともと、スペインで彼が行っていたジュニア向けのサマーキャンプで"イニエスタ メソドロジー”という独自トレーニングプログラムがありました。すごく簡単に言うと、イニエスタのような創造的なプレイヤー、そしてピッチを離れても模範的な人間になろう、という教育プログラムです。これを日本でも展開していこうということになりました。


3つ目はマーチャンダイジングビジネスです。スポーツメーカーとスパイクを共同開発しているのはその一例です。そして4つ目がメディアビジネス。イニエスタはSNSのフォロワーが世界トップクラスに多いサッカー選手の一人で、全てのプラットフォームを合わせると8,000万人を超えます。日々、ファンが増え続けるので私たちも正確な数字を把握するのが難しい状況なのですが、彼の影響力をどうすればメディアビジネスに活用できるのかというところを今、戦略面から考えています。


スペイン人たちは日本でプレーする選手のことを気にかけているということもあり、メディアとしての顕在的ニーズがあるのです。そこに対して彼の現在を伝えられるメディアを作れたら良いなと考えています。」

投資をどう回収し、さらにはマネタイズを考えなければいけない


「このように、業務は多岐に渡っています。立ち上がった1年前に2名でスタートした事業部ですが、今は人材の獲得に急速に力を入れています。他の業界でスポーツを専門にしていたメンバーも加わりました。それこそメディアビジネスやマーチャンダイジングビジネスもスポンサーシップも、それぞれの専門家に入ってもらうことによってビジネスが大きくダイナミックなものになっています。スポーツ関連に特化した専門家、そして国籍を問わず、多様性豊かな人材が集まっています。


今では、FCバルセロナ、NBA、ゴールデンステート・ウォリアーズ、アンドレス イニエスタに加え、スパルタンレースというアメリカ発のユニークなレース競技や、テニスのデビスカップでも楽天はグローバルパートナーを務めています。様々なスポーツコンテンツと戦略的に提携すること、そのシナジーによって楽天のブランドや事業内容を全世界に広め、ビジネス拡大を推進していくフェーズにいます。


同時に、投資したものをどう回収するか、または上回る利潤をどう生み出すかいかに安定したスポーツビジネスの基盤を築けるか、という企業としての課題があります。


国際的なスポーツ大会のスポンサーシップにおいて、その権利を戦略的に履行し、うまく活用するケースを模索できない企業様も多いと聞きます。


日本ではまだスポーツのスポンサーシップにおいて企業側に浸透していないと思いますが、「買った権利の購入額と同等のマーケティング予算を必要とする」というロジックがあります。例えば、3億円分のクラブ、アスリート、大会などの権利を獲得したら、それをフル活用するために同等予算を別で持つのです。


ただ、楽天に関してはその辺りのバランスを見ながらマーケティング部門とマネタイズ部門が密接に連携しながら日々動いているので、そういう意味ではグローバルマーケットに対して戦略的にアプローチすることができています。


楽天は“楽天エコシステム(経済圏)”という、1つのIDによってあらゆる楽天グループのサービスと有機的に繋がるというビジネスモデルを組んでいます。その経済圏への最初の入り口として、また楽天サービスのファンであり続けていただめにも、スポーツは最強のコンテンツのひとつだと捉えています。」




求められているのは、スポーツだけに傾注しない人材


「楽天はスポーツを活用したグローバリゼーションにおいて既に先頭を走っているという印象があります。世界的に一流のコンテンツと手を組むことによって日本から世界への発信を体現しています。その戦略上の重要な局面に携われるのは純粋に嬉しく、やり甲斐を感じますよね。


一方で扱っているコンテンツの大きさ故に、コンテンツホルダーとの対峙をする中での会話、交渉、会議など日々の業務にはなかなかの緊張感があります。それを含めてのやりがいとも言えますが、一瞬たりとも気を抜くことができません。日々、クラブや選手のコンディションや勝敗によって状況が変化する中で、それに対して場面場面で的確に判断を下していくことはかなり重要になってきます。


また、業界で働きたいと思っている方には、グローバルに仕事をするのであれば最低限の英語力は必要な時代に突入したということはお伝えしたいです。


我々の事業部では入社のタイミングでTOEICスコア 800点をひとつの指標としており、基本的にビジネスにおいて外国人との会話で困らない程度がベンチマークです。ここは最低限の資格として保有しておくべきと考えています。


もう1つは、スポーツ単体に没頭しないことが重要です。


これは私見なので正しいか、正しくないかは別として、私は国際的な企業で多種多様な経験をしてきたことから、視野は確実に広がっている実感があります。近視眼的にならず、俯瞰的に状況をみることができると自負しています。そして、それが業務の中で生きています。


1つの企業にいても色々な経験の機会に対し積極的に手を挙げ、日々の生活の中でスポーツ以外の事象にも目を向けたりすること。これは重要です。例えば、私で言えば、スポーツと音楽はどういう風に手を結べるのか、スポーツとアートはどのような表現に昇華できるのか、もしくはスポーツと政治はどのように関連しているのか、といった複合的な視野を持つようにしていますね。


日々の情報のアンテナの張り方を単一にしてはいけないな、と。私自身も幅広い分野への興味をできるだけ心掛けるようにしています。それがクリエイティブな仕事を生み出すコツでもあるのかな、と。」








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