「今、違う業界にいてもゲームセットじゃない」転職と専門学校を経て辿り着いた球団職員

千葉ロッテマリーンズ 片岡裕貴

「今、違う業界にいてもゲームセットじゃない」転職と専門学校を経て辿り着いた球団職員

千葉ロッテマリーンズ 片岡裕貴

新型コロナウイルスの影響で、開幕が6月となったプロ野球。無観客からのスタート。シーズンも終わりに差し掛かった今は、球場にファンの姿が戻ってきました。

こんな状況だからこそ、選手はプレーでファンを元気づけようと奮起します。そして、こんな状況だけれども、ファンに安全に球場観戦を楽しんでもらう為の工夫をしている人たちがいます。

今回スポジョバがお話を伺ったのは、今年1月に「千葉ロッテマリーンズ」の球団職員となった片岡裕貴さん(32歳)。

二度の転職、学生生活も経て、憧れのNPB球団職員の仲間入りを果たした片岡さん。その道のりは、決して無駄ではなかったと話します。一体どんな事が今の仕事に繋がっているのでしょうか。辿り着いた夢のその先の思いも伺いました。

(取材・構成=スポジョバ編集部 荻野仁美)


最初に任された大仕事は、球団設立70周年のビッグイベント!

ーー片岡さんが千葉ロッテマリーンズに入社されたのが2020年1月。大変なタイミングでの入社になりましたね…!

片岡:本当に(笑)僕が所属するファンサービスグループ(取材当時)は、試合時のイベントの演出、企画、運営やマスコットやチアのマネジメントを行っていて、まさに新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けるイベントに関わるポジションです。自分自身、入社して1年目のシーズンだったこともあり、平常時もわからないままイレギュラー対応に追われて、「自粛ムードの中でイベントはやっていいのか?」など正解がわからないまま毎日会議を重ねていました。そんな中でなんとか開幕を迎えて、初めて観客を入れて試合が出来たのは7月10日。お客様の前でチアがパフォーマンスをお披露目出来て、拍手を頂いているのを見た時はすごく嬉しかったですね。

ーーその中で片岡さんの主な業務はどういった事でしょうか。

片岡:主にパフォーマーと呼ばれるマスコット、チア、イベントMCのマネジメント業務です。後、大型イベントの企画担当もしています。今シーズン千葉ロッテマリーンズは、前身の毎日オリオンズから数えて球団設立70周年という年なので、それを記念した「70周年チャンピオンシリーズ」の企画をやらせてもらいました。

ーー球団設立70周年!節目の年ですね。おめでとうございます!スペシャルイベントはどんな事を行ったのですか?

片岡:8月22日の試合で、1974年ロッテオリオンズ時代の優勝をフィーチャーするイベントを行いました。当時のOBの皆さんをお呼びして、当時の日本一ペナントフラッグも出してセレモニーをやろうと考えたのですが、お客様がいる中で、OBの方の感染対策も行ったうえでどうやってグラウンド内で安全にセレモニーをするのかが大きな課題でした。控室の中の分け方、控室からグラウンドへの動線、グラウンドでディスタンスの取り方なども、どういう風にしたら安全に、かつ見栄えも良く出来るのかっていうのを考えるのは大変でしたね。

ーー人数や規模が大きい分、難しいですよね。

片岡:もちろん僕だけでなく協力会社や他部署の方に相談しながらだったのですが、無事に出来た時は本当によかったって思いましたし、そのイベントが次の日、新聞やテレビに出ているのを見ると、影響力のある事をやっているんだなと改めて感じました。

ーーこの仕事の面白みってそういったところですよね。

片岡:プロ野球は非常に影響力があるので、自分が関わった事がそうやって取り上げられるのは嬉しいですね。今回、村田兆治さん始め有藤通世さん、山崎裕之さん、木樽正明さんの4名のOBをお呼びしたんですが、その告知がyahoo!トップに表示されて、「こういう中でOBの方呼んでくださるのは元気づけられますね」「楽しみ!」とかコメントが沢山ついていて。このコロナ禍で期待されている事はあるし、自分が関わった事を少しでも楽しみにしてくれていたり、それを見て頑張ろうって思ってくれる方がいるのはよかったなと思います。





二度の転職と専門学校生活

ーーそんな大好きなプロ野球に関わるまでに2度の転職を経験している片岡さん。新卒で入った家電量販店を退職し、夢だった野球に関わる仕事をする為に転職活動ではなく、学び直すことにしたのですよね。

片岡:はい。当時、販売の仕事をしていたから、仮にスポーツ業界に転職できても販売の仕事しかできないんじゃないかなと思ったんです。販売が嫌いなわけではなかったのですが、自分がスポーツ業界でやりたいと思っていたのはプロスポーツってこんなに面白いんですよっていうのを伝える人、面白いなって思わせる仕掛けを作る人だったんです。ただ、当時は販売の知識しかない。じゃあその為の勉強をしようとスポーツビジネスを学ぶ専門学校に入って、アルバイトをしながら1年通いました。

ーーその専門学校を卒業しても必ずしも就職できるとは限らない。そんな中でもう一度アルバイトしながらの学生生活という事に不安はなかったですか?

片岡:めちゃくちゃありましたよ!大学の同級生達は仕事にも慣れて、人によっては昇進とか、結婚とか。そんな中で自分は学生に後戻りするような感覚でした。大きなお金もかかるし不安や葛藤はありましたね。最終的には 1年だけ好きな事をやらせて欲しいと親を説得しました。

ーーそんな背水の陣で挑んだ1年間の専門学校生活。実戦的な学びを経て、卒業後は女子プロ野球で働く事になり見事、スポーツ業界への仲間入りを果たします。

片岡:僕の仕事は埼玉にあるチームの広報が主だったのですが、試合の演出もやっていました。選手の登場曲を流したり、イニング間に流す効果音選びだったり、試合全体のスケジュールを組んだり、球場を借りるための交渉やスタジアムMCまでやっていましたね。最終的には、スポンサーさんなどから「この場所使っていいから何かやってもらえないか」と言われても、この広さならこんなイベントできます、段取りも出来ます、トークショーやるなら台本も作れるし、仕切りも出来ます…ってなってました。女子プロ野球は色々な球場で試合をさせていただいたのですが、この球場ならこういう配線で、音出しはこうやって出来るねーとか。

ーーすごい!もう片岡さん1人イベント会社みたいな感じですね!そんなマルチな能力を身につけて5年経った時に、再び転職活動を始めたのはなぜだったのでしょうか。

片岡:はい。僕の中でもっと演出を極めたい、もっと仕掛けを作りたいし、大きなことをやってみたいという思いがあったんです。女子プロ野球ではそういった部分の仕事に携わらせていただいたのですが、自分自身のキャリアを考えた時にこのままでは成長できるか不安を感じ、次のステップに進もうと思いました。





辿り着いた夢のその先。全ては今に繋がっている

ーーそんな熱意が通じて、遂にプロ野球の球団スタッフとなった片岡さん。憧れの仕事に就いて、外から見ていた時と違うなと感じた事はありますか?

片岡:そこまでイメージと違う事はなかったですが、3時間半の試合の為に裏での準備が途方もないなとは感じました。華やかな所しかお客さんには見えないし、見せない。でも裏では一瞬の為に沢山の人が動いている。例えばゲストのセレモニーなんて時間にしたら、たった3分。でもその為に色んな人が色んな準備をして、日数もかなりかかっている。それこそ違う業界の方からは「いいなぁプロ野球選手に会えるんでしょ?」とか言われるんですけど、確かにそういう面もあるけれど、そんなの大きな業務の中から見たらほんのわずかですし、なんなら僕まだ選手に会ってないですし(笑)華やかなイメージがある業界かもしれないけど、ひたすら資料作りしたり会議重ねたり、地味な作業も沢山あるんですよね。

ーー片岡さんの様に憧れのスポーツ業界で仕事をする為には、どんな事が大切になってくると思いますか?

片岡:まずはその気持ちを忘れないこと。何かチャンスがあったらやってやるっていう気持ちを持ち続けるのは大事ですよね。今、違う事をやっていたとしても必ずそれは活きてくると思います。すごく細かい事ですけど、チアの人がグッズ紹介する時の商品の見せ方とか説明の仕方をアドバイスする機会では、家電量販店での経験が役立ったりするんです。女子プロ野球での経験ももちろんそうですが、全てが今の仕事に役立っているし、参考になっています。

ーーなるほど。何かを一生懸命やっていれば、それがスキルとして必ず何かに繋がっていくという事ですね。

片岡:冷蔵庫の売り方とかは役に立ってないですけどね(笑)ちょっとした事が活きてきます。だから、もし今違う業界にいてもそれでゲームセットって事はないと思います。

ーーもし仮に新卒で、今の球団に採用されていたら今と少し違いますかね?

片岡:それはそれで頑張っていただろうとは思いますけど…。今振り返ると色々な経験を積ませていただいた分、多少のことではへこたれないぞって思いますね!





目指せ!ムーブメントの仕掛け人

ーー片岡さんが考えるプロ野球の魅力って、どんな所でしょうか。

片岡:野球って一瞬で空気が変わるじゃないですか。たった一球で場内の空気が変わって、その時に笑っている人もいるし、怒ってヤジ飛ばしている人もいるし、感動して泣いている人もいる。プロ野球の一瞬の中に色んな感情が混じっているのがすごく面白いなと思いますね。

ーーその球場での時間を彩るのが片岡さんのお仕事ですね。

片岡:選手のプレーをいじったり、チーム成績を僕らで変える事は出来ないので、一回球場に来た人を、もう一回来たいという気持ちにさせるのが僕らの仕事かなと思います。

ーー今後、新しく考えている取組みは何かありますか?

片岡:そうですね。このコロナ禍で、来場者はもちろんですが、おうちで見ている人にもオンラインを通じて何か届けて行かなきゃなと思っています。究極の形としては、球場に行かなくても楽しめる仕組みを作れたらいいなと思っています。

ーーでは最後に今後の目標を教えてください!

片岡:10月中旬からファンクラブ部門に異動したのですが、この状況下でいかにファンクラブ会員の満足度を高めるか、どう会員数を伸ばしていくかなど、日々新しいチャレンジをやらせてもらっています。マリーンズのファンは熱さやチーム愛が12球団No.1だと思っているのですが、そうしたファンの生の声を聴きながら、僕自身としては将来的に演出やイベント企画をもっともっと極めたいです!もっと大きな事をやらせてもらえる様に色々勉強しなきゃいけないし、やれるようになりたい。いつか自分発信で企画を立ち上げて、それが大きなムーブメントになったら楽しそうだなぁと。「これ考えたの自分です!」って言えるくらいの事が出来たらいいなぁと思います。





【PROFILE】

片岡 裕貴(かたおか・ゆうき)

1988年生まれ。愛知県名古屋市出身。日本大学法学部新聞学科卒業。新卒で家電量販店に入社し3年務めた後、退職。2014年に東京スポーツレクリエーション専門学校に入学し、翌年から日本女子プロ野球リーグの職員に。2020年1月に千葉ロッテマリーンズに入社。マーケティング戦略本部ブランド統括部ファンサービスグループを経て、現在はBtoC本部コンシューマビジネス部チケット・ファンクラブグループ所属。

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