日本一の海・和歌山県串本町のアークダイビングショップで探求する“海”の魅力。 「楽しみは、与えてもらうものではなく見つけるもの」

株式会社ArcaDesign 代表取締役 川田圭太

日本一の海・和歌山県串本町のアークダイビングショップで探求する“海”の魅力。 「楽しみは、与えてもらうものではなく見つけるもの」

株式会社ArcaDesign 代表取締役 川田圭太

「海が好きなんです」

真摯な目で、そう語りかけてくれたのは、日本一の海・和歌山県串本町でダイビングショップを営む川田圭太さんだ。

紀伊半島の最も南に位置する串本町は、全国有数のダイビングスポット。自然の恩恵を受けるこの海は、珊瑚が群生し、生物の種類が豊富で、魚たちとの距離感も近い。

偶然の出会いでダイビングの仕事を始めた川田さんだが、この職業に就いて15年が経った。串本町にお店をオープンして5年、潜っても潜っても辿り着けないダイビング、そして海の魅力を、言葉を尽くして語ってくれた。

ただ、ダイビングの魅力を知っても、“仕事”としての向き合い方は変わらない。海への認識を誤ったまま、安易に乗り出そうとする人を潜らせない。どれだけ美しく、楽しい場所であっても、相手は自然。時に命を脅かすほどの厳しい側面を見せる。

その海を相手に、どれだけ自分自身で「楽しさ」や「好き」を見つけることができるか。川田さんのダイビングへの思いと、働く上で大切にしていることを聞いた。

(取材・執筆:伊藤 千梅、編集:伊藤 知裕、中田 初葵)

「思い通りにならない」自然の魅力

―――川田さんがこの仕事を始めたきっかけを教えてください。

実は、この仕事を始めたのは「ダイビングを仕事にしたい」という理由ではありません。単なる職業という認識で、就職する際にたまたまダイビングショップを選んだだけでした。ただ性格上、何か一つのことを追求するのが好きだったので、どっぷりとハマって今に至ります。


―――大阪でダイビングショップをされていたなか、和歌山県串本町にお店をオープンしたのはなぜですか?

和歌山県の海は、ダイビング業界で有名だからです。潮の関係で魚の種類は日本で一番豊富だと言われていますし、珊瑚も群生しています。あとは、車で20分圏内に違う方向を向いた海が3種類あるので、波が高くても別の海を案内できることもいいところです。

―――元々は仕事として始められたそうですが、川田さんが思う「ダイビング」の魅力はどんなところにありますか?

一言で言い表すのは難しいですが……まず、水の中では言葉にできないからこそ、共有できる感情があります。それを共有したことによって、陸上にはない繋がりが生まれる気がしていますね。海の中では密なコミュニケーションになりやすいので、ダイビングをすることによって、人との距離感がぐっと縮まることは魅力の一つだと思います。

―――海の中だからこそ感じられる、人とのつながりですね。

はい。またダイビングは自然に対してアプローチをするアクティビティです。自然は優しい時もあれば厳しい時もあって、人間が思っている通りにいかないのが当たり前。例えば生物観察をしていても、海の透明度、波の高さ、天候、気温……その時の環境によって、生物や水中がすべて変化します。

海に潜るということは、未知だったものを既知にできることもありますが、特定の正解やゴールへ向かっていくわけではないんです。むしろ、海に潜れば潜るほど知らなかったことが増えていって世界が広がります。だからこそ潜りがいがあって面白いんです。

いくら追求してもしきれないですし、人間の都合のいいように動かないところに奥深さを感じます。その未知の領域を探求し続けることは、価値あることだと思いますね。

―――確かに、自然が相手ですものね。

そうですね。昔、水族館で潜ったこともあります。最初は面白かったですが、環境が限られていて、そこにいる生物もわかっているので、僕は30分で飽きてしまいました。それに比べて海は、最も深い箇所は10000mもあるのに、結局人間が潜れるのはたかだか30m、40mの世界でしかありません。人間が作り出せるものではない、辿り着けない部分にすごく魅力を感じますね。

命を預かる接客に必要な“心構え”

―――「アークダイビングショップ」では、普段どんな仕事をしていますか?

基本的には、来てもらったお客さんに、海をガイドすることが仕事です。
現在は体験ダイビングやシュノーケリングもやっていますが、一番は串本の海をしっかりとご紹介すること。一人ひとりのお客さんに責任をもって魅力を伝えられる、プロフェッショナルな集団を形成したいと思っています。

―――人と接する機会が多い仕事になると思いますが、どんなところに気をつけていますか?

まず大事にしているのは、自分の命を預けても大丈夫という信頼感です。僕らは水中でお客さんの命を預かる責務があります。なので、お客さんは信用できる人でないとお願いしようとは思わないですよね。インストラクターとして、お客さんに「この人と潜っていれば安心」「なにかあっても対応してくれる」という気持ちをもってもらうための信頼関係を構築する必要があると思っています。

―――その信頼関係を構築するために大切にしていることはありますか?

水中では会話ができないので、陸上と比べてコミュニケーションを取ることが極端に難しくなります。そのため信頼関係を作るには、陸上からのケアやフォローが大事です。上辺だけで会話をしていると、その場では笑ってくれるかもしれないけど、実際に水中で自分の体を任せられるかというと別の話になります。

私たちは、普段皆さんが他の人と関わっているよりも、一歩踏み込んだコミュニケーションを取らないといけません。そのためには、お客さんに合わせた距離感をつかむことが必要です。友達くらいの距離感のほうが信頼関係に繋がるのであれば、プライベートで遊ぶことも別に悪いことではないとは思います。僕はお客さんによってはダイビング以外の相談ごともされますし、連絡もします。ただ、距離感を詰めるだけでなく、お客さんに対して強く伝える場面もあります。

―――どのような時に、お客さんに対して強く伝えるのでしょうか?

こちらが伝えたことを、実行してくれない時です。僕らは事故のことを想定して、そうならないように説明しています。だから、それを守らないと命に関わるので、安全面に関しては厳しく言います。ダメなことはダメって言いますし、そこを含めての信頼関係です。

働く上で大事な「海が好きか」の問い

―――アークダイビングショップではどんな人を求めていますか?

ダイビングの仕事には「若いうちに」という感覚で携わる人も多くいます。一方で、1年や2年潜ったところで、海のことはわからないんですよ。僕らとしては、それはプロフェッショナルじゃないと思っています。
ある意味“職人”に近い業種かもしれません。ずっと潜り続けて、ずっと観察していくことが必要です。

だから長期的に働ける人がいいですし、遊びの感覚でこられても人の命を預けることはできません。だから自分たちは、バイトは受けていないんですよ。


―――正社員になる方は未経験でも問題ないとのことですが、逆に必要なことはありますか?

「海が好き」かどうかですかね。

海は荒れている日もあれば、透明度が低くて水温が低い日もあります。これは難しいですが、夏の穏やかな条件のいい海だけが好きなのでなく、そういう時も「これが海や」と楽しめる人でないと、厳しいかもしれません。


大きく捉えると「自然が好きな人」でしょうか。たとえ厳しい自然環境におかれても、「でもやっぱ、海が好き」という思いがあればしんどくても頑張れるんですよ。

――つらいことを乗り越えるのに「好き」が大切な原動力になるのですね。

そうですね。あとは、目標がある人もいいですね。今いるスタッフには「水中の写真家になりたい」という子がいます。そのように何か目標があったら、大変なことも耐えられるのかなと思います。もちろん、体を動かすことが好きだったり、接客が好きだったりと、もっと軽い感覚でも大丈夫です。経験するうちに、少しずつそういう気持ちになっていってもらえたら、それはそれで問題ありません。



ただ、軽すぎる気持ちで来てしまうと、仕事は朝早い時もあれば遅い時もあって、田舎なので遊ぶ場所も海くらいしかありません。1人で頑張るとなったら寂しい気持ちには当然なると思います。そうなった時に、挫けてしまうんですよね。ダイビングの仕事をする環境としては最高ですが、それだけ大変さもあるので。だから、それに耐えられるだけの「好き」があったほうがいいかなと思います。

―――その他に、川田さんが働く上で大事にしていることはありますか?

一番は根本に戻って「楽しい」と思えることが大切です。いかに楽しもうとする気持ちがあるか。それが働く上ではすごく大事だと思います。都会に比べるとあれもない、これもないとはなるんですよ。だから物事をネガティブに捉える人は、現地で働くのは難しいと思います。自分なりの「ここが好き」を見つけないと、なかなか続きません。
自分から前向きに楽しめる人であることは大事です。

僕も別に就職する時にダイビングがしたかったわけではなく、単なる職業として始めました。でもやるんだったらこだわりたいと思って続けています。楽しみは、与えてもらうものではなくて、基本的に自分で見つけていくものです。その上で、お客さんを楽しませるのであれば、自分自身が楽しまないと本当の意味で楽しませることはできないんじゃないかなと思っています。
お客さんと接する時は、自分がどんな状況であれ楽しませていく気持ちでいられたらと思っています。

環境を整え、業界を牽引する存在に

―――アークダイビングショップの今後の目標を教えてください。

会社としてどうしていきたいかはよく聞かれますが、最終地点は決まっていません。ただある程度の規模がないと、業界で影響力をもって大きいことを動かすことができないので、まずは10年後に僕らがこの業界を牽引できるぐらいの実績と規模、資金が必要だと思っています。なので、関西の現地ショップで売り上げも含めて一番になりたいです。

そのために、来年は店を新しく建てて、船も買ったので、それをどんどん回していきたいです。ライセンスを持っている人が来る「ファンダイビング」を中心に、ガイドインストラクターにウエイトを置いてやっていけたらと思います。

―――これから会社としては、どのようなことに取り組みたいですか?

ダイビングやインストラクターの地位を向上させたいと思っています。労働環境が他の一般企業と比べて整っていない部分が多いので、きちんと長く働ける環境を作らないといけません。

例えば女性が30代になった時に、体力的に続けることが大変であれば、女性でも続けられるような仕事を作らないといけないと思っています。当たり前ですが、結婚、出産があったとしてもきちんと続けられるように、潜るだけではない仕事を作る。

やっぱりお客さんとのコミュニケーションは、信頼関係をつくることがすごく大事です。そこでは、潜っているかどうかは関係ありません。潜っていなかったとしても、信頼できる人がこのお店にいるとなったら、お客さんは安心してきてくれると思います。


今のダイビング業界は数年で人の入れ替わりがあって、その度に一から人を育てています。でもそれでは業界も発展しないし、店も安定しない。
だからまずは雇用条件や労働環境をできるだけ整えることで、業界自体を安定させていきたいです。

―――会社の枠を超えて、業界全体のことを考えているのですね。

そうですね。僕自身、周りの人や親から「あんた、いつまでダイビングの仕事やってんの」と言われることがありました。「30歳になったらちゃんと定職つきなさいよ」と言われてしまうくらい、世間一般からの見られ方としては、軽い仕事なんですよね。

でも僕は人生をかけてこの仕事をしていますし、責任感と専門性が必要な仕事だと感じているからこそ続けています。また最初は偶然始めた仕事でしたが、続けてきたからこそ見えてきた仕事の魅力と業界の課題に対する使命感をあります。

だからダイビングの仕事の見られ方を変えていきたいです。仕事として誇りを持って長く続けられるような環境を作らないといけないですし、僕としても10年、20年ずっと海で潜って、職人的なガイドをしたいと思っています。

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【PROFILE】

川田 圭太(かわた けいた)(写真中心)

株式会社ArcaDesignの代表取締役。2009年に仕事としてダイビングに携わり、2011年からARKDivingShopを開業。大阪で8年間お店を続けた後、2019年に串本町にお店をオープン。2021年に会社を設立した。今後はインストラクター業の地位向上にも務めていく。

第1位

第2位

第3位

第4位

第5位

設立年月 2021年12月
代表者 川田圭太
従業員数 2
業務内容

ダイビングショップの運営
ダイビングツアーの開催
器材の販売・営業

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