「少人数教室」で子どもたちの成長を見逃さない。水泳指導教室・トゥリトネススイミング有明が目指すマニュアルにとらわれない指導方針

有限会社オフィストゥリトネス 代表取締役 不破 央|水中パフォーマー・スイミングスタッフ 塚本 峻介

「少人数教室」で子どもたちの成長を見逃さない。水泳指導教室・トゥリトネススイミング有明が目指すマニュアルにとらわれない指導方針

有限会社オフィストゥリトネス 代表取締役 不破 央|水中パフォーマー・スイミングスタッフ 塚本 峻介

東京の海の上を走るゆりかもめ線の駅、有明テニスの森にある水泳指導教室「トゥリトネススイミング有明」。たった3レーンしかない一風変わったプールには、1週間で約500名もの子どもたちが水泳を習いに訪れる。

当教室の代表である不破央(ふわひさし)さんは、元100M平泳ぎ日本記録保持者。選手引退後には青年海外協力隊へ参加したのち、演劇の世界に入り「クラウン(道化師)」の養成学校に通うなど、異色の経歴の持ち主だ。スタッフの塚本峻介(つかもとしゅんすけ)さんは、縄跳び競技のダブルダッチで世界大会優勝の功績を残している。

そんな華々しい競技成績をもつ彼らが指揮をとるこの教室では「少人数」の体制や、ハンディキャップをもつ子どもの受け入れを行う。他とはひと味違った教室を運営する中で、大切にしていることは一体何なのか。おふたりの思いを伺った。

(取材:伊藤千梅 編集:仮谷真歩)

水中ショーとの両軸だからできること

当教室の運営会社である有限会社オフィストゥリトネスは、水泳教室の他に、水中パフォーマンスショーの活動を行っている。1998年にチームを結成してから、開催実績はのべ1000カ所で1700回以上。不破さんは映画・ドラマ「ウォーターボーイズ」の振り付けを担当した経験も持つ。

パフォーマンス活動に加えて2006年から水泳教室の事業を展開。2018年に自社プールによる水泳指導教室「トゥリトネススイミング有明」を開業した。現在は水中ショーと、水泳教室に加え、ダンススイミング教室など、さまざまな軸で活動している。

元々パフォーマーとして在籍していた塚本さんは、指導とショーは似ているところがあると話す。

「水泳指導を行うとき、子どもたちを楽しませるためにキャラクターを作ることがあります。また60分間の指導の中で、どこを盛り上げて、面白くさせようかなと考える部分も、ショーと似ているところがあると感じています」

一方の不破さんは、ショーのお客さんと、自身が教える子どもたちを重ね合わせた。

「ショーをやっていると、こちらがどんなに笑わせようとしても、笑ってくれないお客さんがいるんですよ。それは、笑わないお客さんが悪いわけじゃなくて、こちらの表現の仕方が悪いだけです。100%自分たちの責任で、稽古が足りなかったということ。水泳教室も同じだと思っています。子どもにできないことがあるのは、子どものせいではなく、教える側の責任です」

学校の先生やスポーツの指導者でも、教える側ができない相手に責任を押しつけてしまうことは多いのではないだろうか。しかしショーの経験をもつ不破さんらは、指導する子どもたちに「なぜそんなことができないんだ」とは決して言わない。お客さんを笑わせるのと同じように、子どもたちの成長のため、自らに矢印を向け技量を上げ続けていくのだ。

小さな成功を共有できる「少人数教室」

現在水泳教室を運営する不破さんが、若い頃に一番やりたくなかった仕事は、意外にもスイミングスクールに就職することだったそうだ。

「なぜかというと『こうやって教えなさい』というのを、決められているのが嫌だったからです。クロールのあとは背泳ぎを習います。そのあとは平泳ぎですよ。……そういった製造工場のような、型にはまったものが苦手で。『どうやって教えてもいいじゃん』と思っていました」

そこで、現在教室で行う指導内容は、多くの人に適したプログラムを作成したうえで、最後は個々に合わせた対応をしているという。

「最低限抑えるところはしっかりと抑えつつ、完全には縛らないようにしています。人によって教える順番を変更するといったことは、なるべくやるようにしていますね。指導方針については、開設当初にスタッフ同士ですごく話し合いましたし、今でも話し合っています。どうしたらマニュアルだけにとらわれず、自由の中で子ども自身の個性を磨いていけるかは、今も模索しています」

また、教室のもう一つの特徴として「少人数制での指導」がある。大手のスイミングスクールになると、1つのクラスの生徒数が15人から20人ほどになるのに対し、当教室では多くても8人と約半分ほど。プール自体もわずか3レーンしかないことから、教える側と子どもたちの距離感は必然的に近くなる。

別の水泳教室でも指導経験がある塚本さんは、少人数での指導のほうが、子どもたち一人ひとりに向き合うことができると強調した。



「この教室は、他のスイミングスクールに比べて、コミュニケーションが密にとれる状態だと思います。人数が多いスクールでは、1回の練習中に一度も個別に声をかけられずに終わってしまうこともありました。けれど、ここではそういうことがないですね。」

一方で、子どもたちとの距離が近い分、コーチとしての質もダイレクトに伝わることは意識しているという。

「教える側の至らない点も、少人数だからこそ目立ってしまう部分はあります。そういった緊張感は、常に持ち合わせていますね。ただそれはマイナスなことではなく、自分自身の成長につながっていると感じています。日々指導の技術を磨かないといけないなと思える環境ですし、仕事がマンネリ化することもありません」

プールを見るたびに泣いてしまっていた子が、楽しんで来てくれるようになった瞬間。伸び悩んでいる生徒が、殻を破って記録を出した瞬間。大人数での指導だったら見逃してしまうようなちょっとした成功に対しても、少人数であれば喜びを共有することができる。「成長を一番近くで見られるというのも、この仕事の特権じゃないかなと思います」とうれしそうに話す塚本さんは、その何にも代えがたい一瞬を再び体感するために、今日もプールに向かう。

パターンがないから考え続ける

少人数教室を展開していく中で話題に上がったのが、ハンディキャップをもつ子どもたちの受け入れだ。不破さん自身はそのような子どもの指導経験がなかったものの、経験豊富な先生たちから「前にいたプールは、こういう風にしていたよ」「私は、こういう子を教えたことがある」といった声があがり、当教室でも挑戦することになった。

実際に受け入れを開始してからは、夜も眠れないほど悩むこともあったと不破さんは話す。

「集団行動が苦手な子が入ってきたときは、『この子はなんでこんな態度をとるのだろう』と、頭を悩ませましたね」

悩みながらも、不破さんはご両親や本人とコミュニケーションをとり続けた。「事前に情報があると整理ができて動きやすい」という話を聞いてからは、練習メニューを先に決めて渡すように、接し方を改善。すると、子どもの態度が見違えるように変わったそう。

「思いつきでメニューを変えていくほうが、刺激があって面白いと感じる子もいるけれど、逆にマニュアルがあったほうがやりやすい子もいるのだと気がつきました。子どもたちに、過去のパターンを当てはめることってできないんですよね。ハンディキャップがある子もない子も、50人いたら、50パターン違いますから。一人ひとりが違うことからこそ、常にスタッフ同士で話し合い、子どもたちにとって最善の方法を考え続けるしかないですね」

今でも悩むことは少なくないと、不破さんはこれまでの大変な出来事に思いを馳せる。それでも「楽なことはないですけど、後悔はないです」と言い切った。

今この時代に目指したい教室の形

スクール開設当初。不破さんが若い頃にお世話になっていた先輩方が「一緒にやろう」と声をかけてくれたことで、教室には経験と指導力を兼ね備えたコーチが多く在籍する。ただ、これから共に働くスタッフについては「水泳指導の技術や経験は関係ない」と2人は口を揃えた。

「経験がなくて、自信がないのは当たり前です。でも、なんでもそうですけれど、テクニックは後から手に入るものなので。実績の伴った指導法や、保護者に対する接し方、子どもに対する接し方などをアドバイスできる先生は、ここにはたくさんいます。経験はなくとも、子どもが好きであれば、それで問題ありません」

「むしろ泳げなくてもいいなっていうのはありますね。僕らは物心がつく前にある程度泳げていたので、どういう過程を踏んで泳げるようになったかを覚えていないんです。だから、これから泳げるようになる子を教えるとき、逆に泳げないことを強みにもできると思います」

不破さんがスクールを運営していく中で、折に触れて思い出すのは自分が水泳を始めた頃の記憶だそう。最後に、自らの経験を踏まえたうえで、不破さんが考える教室のあり方について次のように教えてくれた。



「僕が子どもの頃を思い返すと、スイミングスクールに毎日通っていたのは、練習をするためではなかったんですね。ただプールにいる面白い大人たちと、アホな話をして、ゲラゲラ笑うのが楽しくて行っていたんです。今の子どもたちも、プールにいるときは悪ガキでもいいじゃないですか。両親には話せないことで、プールの先生には話せることがあってもいいですし。そんな、古き良きスイミングスクールを今この時代に作りたいです」

開設から現在5年目を迎えた、トゥリトネススイミング有明。新しい挑戦を続け、少人数体制で密にかかわるからこそ生まれる課題もたくさんある。けれど彼らは、難しくとも子どもと目を合わせていく道を選んだ。

たった3レーンの小さなプールで、一人ひとりと向き合うからこそ味わえる指導の面白さを、スタッフたちはこれからも追い求めていくのだろう。

 

【PROFILE】

不破 央(ふわ ひさし)

有限会社オフィストゥリトネス、代表取締役。元水泳選手であり、元 100M平泳ぎ日本記録保持者。選手引退後は青年海外協力隊への参加や、「クラウン(道化師)」養成学校を経て、水中パフォーマンスの活動を始める。2018年から水泳教室・トゥリトネススイミング有明を開業し、現在5年目。個性を大切にする少人数教室で、子どもたち一人ひとりと向き合う。とにかく子どもといる時間が好きで、子どもの話を聞くのが好き。怖い顔をしているのに、なぜか子どもたちが寄ってくる。

 

【PROFILE】塚本 峻介(つかもと しゅんすけ)

有限会社オフィストゥリトネス、水中パフォーマー・スイミングスタッフ。水泳を始めたのは幼少期の頃。大学から縄跳び競技のダブルダッチを始め、2012年には世界大会で優勝。水中パフォーマンスのメンバーで、現在は水泳指導者としても活動している。大学時代は子どもが苦手だったけれど、トゥリトネスのメンバーになってからは子どもたちに感情移入をしてしまう毎日。縄跳びの経験から、ターンなどの動きを教えることが得意。個人的に大切にしていることは「一瞬一瞬を見逃さないこと」

 

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設立年月 2002年06月
代表者 不破 央
従業員数 17名(役員3名含む)
業務内容

・プールイベントの企画、制作、演出および出演活動
・スイミングスクールの運営
・定期水泳教室、シンクロナイズドスイミング教室、ダンススイミング教室の開催と講師派遣
・水泳大会(ダンススイミングフェスティバル)の企画、開催および運営
・講演会、企業研修会への講師派遣
・各種メディア企画のシンクロナイズドスイミング振り付け、指導、安全管理指導および出演
・オリジナルグッズの企画、デザインおよび販売
・サポーターズクラブ会員への情報発信および個人情報管理
・前各号に付帯関連する一切の業務(広告、ホームページ運営管理、ポスター・チラシ・告知映像の作成など)

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