将来Bリーガーになれる道が、今ココにある。宇都宮ブレックスの未来を支えるユースコーチ2人の対談 ~ユースコーチの仕事とは~

荒井尚光|本谷篤司 (株)栃木ブレックス・BREXバスケットボールスクール

将来Bリーガーになれる道が、今ココにある。宇都宮ブレックスの未来を支えるユースコーチ2人の対談 ~ユースコーチの仕事とは~

荒井尚光|本谷篤司 (株)栃木ブレックス・BREXバスケットボールスクール

「将来は、バスケットのプロになって、Bリーグで活躍したい!」

そんな夢を語る子どもたちが、一昔前と比べても確実に増え続けていると思う。私の学生時代では考えられなかったことだ。

育成年代の子どもたちの選択肢ができた今、アンダーカテゴリーからトップチームへのコールアップも積極的になってきた。レバンガ北海道の内藤選手を皮切りに、より世代交代がバスケットの世界でも進んでいくだろう。ただ、この流れができているからこそ、リーグ全体としても「育成年代の教育」に非常に力を入れているのが、ここ数年のBリーグだ。

今回は『宇都宮ブレックス』のU18ヘッドコーチであり、スクールディレクターとして活躍される荒井尚光氏と、U15ヘッドコーチの本谷篤司氏に話を伺うことができた。「バスケットの競技力は確実に上がっているんですが……」と語る二人が感じる課題とは?また、目指すべき未来とは一体……。

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)



バスケットの競技における、ユースとスクールの違い

__まずはブレックスの育成組織における、ユースとスクールの違いについて教えていただけますか?





荒井:まずスクールに関しては、わかりやすく言うと学習塾のようなイメージです。個々のスキルを上げるところに特化して指導をする。その中からトライアウトを実施して、優秀な選手を集めてブレックスユースのチームとして活動していく。個の力を伸ばすのがスクールで、チームとして一つの目標に向かうのがユースすね。






本谷:ブレックスはU18が3年前にできて、それまではU15がメインだったんです。ただ、U18がない頃からスクールとU15の架け橋、いわゆる一貫体制は昔からあったと僕は感じています。スクールからユース、ユースからトップチーム(Bリーグのチーム)へ、といった、子どもたちの目指す方向性が具体化されている。僕はブレックスの前に信州ブレイブウォリアーズでユースコーチをしていたので、外から見ていても「すごく良い環境だな」と思っていましたね。


__一貫体制の話、それこそレバンガ北海道の内藤選手がコールアップされたように、Bリーガーへの道ができているのは本当に素晴らしいと思います。ユースコーチをされているお二人にぜひお伺いしたいのですが、ブレックスユースが特に力を入れているポイントについても教えてください。





荒井:やはりユースはチームとしての活動が多くなりますから、その分スクールではバスケット以外の競技や運動を体験してもらって、その中でバスケットを学んでほしいというのが、ブレックススクールとユースの根底にはあります。

その上で子どもたちが中学生くらいになった時に、学校の部活を選択するのかユースを目指すのか、と選べる時代ですから、僕らとしては選ばれるためにもコーチの指導力向上には力を入れています。これが生徒人数にも紐づいていまして、今は過去最高の700名を越えました。


__それはすごい。





本谷:荒井コーチがA級ライセンスを先日取得されたのですが、その講習会で学んだことを僕たちにフィードバックしてくださったり、オンラインの講習会やJBAが行っている勉強会など、日々コーチがスキルUPできるように多くの機会をいただいています。

また、僕たちはスクール事業としてしっかり売り上げを立てないといけません。保護者の皆さまにはスクールでの満足度や質にお金を払っていただいているからこそ、対価に見合った形で還元していくこと、つまり良い指導をしていくことが重要だと思っています。かつその中でも、もちろんバスケットを選んでくれたら嬉しいんですが、子どもたちには無限の可能性がある。いろんなスポーツを経験しながら、いろんなことを吸収して成長してほしいなと感じています。




本谷コーチ指導風景(©️スポジョバ編集部)



選手が花開くキッカケをたくさん与えたい。バスケットの競技力向上に対して思うこと

__私、高校バスケもよく見るんですが、最近の中高生って本当に上手いですよね。学ぶ環境や学び方が、テクノロジーの発達や時代の変化によってだいぶ変わってきたと思うのですが、競技力の面でお二人が感じることについても伺いたいです。





荒井:仰る通りですね。こと技術に関しては、クリニックでもインターネットでも、いつでもどこでもバスケの勉強ができるので、今の子どもたちは非常に恵まれてると思います。そのように育っていった子供が、今世界で活躍する八村塁選手(現在:ワシントン・ウィザーズ)だったり渡邊雄太選手(現:ブルックリン・ネッツ)じゃないですか。女子の日本代表は東京五輪で銀メダルを取りましたから、本当に環境やテクノロジーの発達によって、日本のバスケットのレベルは上がっているな、世界に日本も追いついてきたんだな、と感じています。

ただ、学ぶ環境が整って全体的にレベルが上がっているからこそ、子どもたちはみんな満遍なく上手いんですよ。ドリブルもパスもシュートもみんな上手。ただ、じゃあそれで全員プロになれるかと言えばそんなことはなくて、何か突出したものがないと厳しいわけです。






本谷:荒井コーチの話の通りで、僕も「バスケットは上手い」と思います。でも、ずっとバスケットをやってきた子は、良くも悪くもバスケットの動きを本当によく知っているので、上手いからこそ予測もできるんですよ。ちなみにブレックスユースにも元々サッカーやっていた子もいるんですが、やっぱり足捌きが本当に上手なんですよね。結果、新しいスキルも身につきやすかったりすることもあるんです。

このような事例があるからこそ、休ませることが主な目的ではあるものの、あえて他のスポーツに触れる機会を作ることもあります。その結果、普段やらない身体の動かし方を覚えて、以前より飛びやすくなったりするケースも多い。選手が何かしら突出したスキルを身につけられるようなキッカケ作りになれればな、と思いながら指導にあたっています。


__競技力、という側面でもう一つ伺いたいのですが、その人によっていつ花開くかって本当にわからないじゃないですか。逆に「こうすれば花開く」みたいなポイントって、何かあるんですか?





本谷:U15の選手が急激に伸びるタイミングは、間違いなくゲームだと思っています。ゲームで少しでも「うまくいった!」という感覚を持てるようになると、そこから飛躍的に伸びる、つまり花が開くと僕は思っています。

結局、練習はあくまで上手くいく状況を作ってあげる部分もあるんですよ。でもゲームだとそうはいかない。色んな状況で色んな情報がある中で、自分がとった選択・状況判断が成功した時に「俺できるんだ!」ってマインドになれば、そこから成長が加速すると感じていますね。






荒井:本谷コーチの話はすごく共感しますね。ゲームでいきなり花開く選手は本当に多く見てきました。あと、U18に関しては、中学生から高校生って、身体が変わる時期なんですよ。中学時代は細くて、ドライブにいっても当たり負けしちゃっていたのに、高校でトレーニングを詰んだことで身体が明らかに変わってパフォーマンスが上がっている選手も何人も見てきています。だからこそ、U15でもU18でも、選手一人一人の変化を見て「身体強くなったね」「前より飛べるようになったね」とか、何でも伝えてあげることが重要なんじゃないかなって思うんですよね。




U-15の選手たちの練習風景(©️スポジョバ編集部)



宇都宮出身の原石で、宇都宮ブレックスを強くしたい

__ユースチームとして、当然最終的には「勝利」が目標だと思います。全国の高校を見ていると、出身がその都道府県ではない選手もいると思いますが、いわゆる県外のリクルートもされているんですか?





荒井:今はまだ、そこまで県外のリクルートには重きを置いていません。やっぱり栃木県出身の子たちが最終的にブレックスで活躍できるのが、僕は最大のチーム作りなんじゃないかなって思ってるんです。今トップチームも栃木県出身者はゼロですし。その現状を「ちょっと残念」と思う反面、じゃあ何をしなきゃいけないかと言うと、絶対に育成なんですよ。

そうなった時に、県外からいい人を引っ張ってきて育てるのも一つの方法ではあるんですが、それって目先のゴールしか見えてない。それよりも栃木県でいい原石を見つけて、その原石を僕と本谷コーチでしっかり磨いて、トップチームに輩出することが、僕らの最大のゴールだと考えているんですよ。






本谷:もちろん勝ち負けはありますが、勝ち方ってあると思っているんです。本気で勝ちにいくなら留学生を取るかもしれない。でも荒井コーチはやるつもりもないと思うんですよね。あくまで僕らの仕事は、子どもたちの可能性をどれだけ伸ばしてあげられるか。栃木県に可能性のある子はいっぱいいるんですよ。そういう子達を成長させたい、一緒に成長して行きたいと思っています。

ただ、選んできてくれる子もいます。現に、群馬県から来ている子もいますし、U18も大阪や千葉から来てくれる子もいるんです。でもそれは私たちから言ってる訳ではなくて、彼らが求めてくれる。そう言う声にはたくさん応えたいなと思っています。


__もちろん県外から「ブレックスでやりたい!」という選手は大歓迎!だと思いますが、それ以上にスクールで教えた子が15に入り、15から18、そしてトップチームに行ける子を育成していきたいという強い思いを感じます。





荒井:それは間違いないです。やっぱり最終的にはトップ選手の輩出が目標でもありますし。加えてB.LEAGUEとしても掲げている「世界に輩出する選手を育てる」ということを、栃木県出身の選手で実現したい。それが僕の使命だとも思っているので、そこに向けて日々、本谷コーチと話し合いながら指導しています。


__それも冒頭の一貫体制があればこそできることと思いますが、お二人の間では「U15のあの選手良いね」「U18で見てもらえませんか?」みたいな話になる認識で間違いないですか?選手のどんなところを見ているかも伺いたいです。





本谷:仰る通りです。選手を見る時は、もちろんシュートが上手い、ディフェンスが良い、スピードがあるとか、なんでも良いんですけれど、何か一つでも秀でるものがあるかどうかですね。

それがあるだけで「荒井コーチ、U15の選手、ちょっと見てもらえませんか?◯◯がめちゃめちゃ良いんですよ」と推薦しやすくなる。今の子って意外と自信を持っていない子が多いんですよ。でも何か絶対的な自信を持っているって、僕は素晴らしいことだなと思うんですよね。だから子どもたちが自信を持てるように、モチベーションが溢れるように、良いシュートを決めた時や良いディフェンスをした時は、一つ一つしっかり褒めてあげて「あなたはこれが凄く良い」とフィードバックもして、良いところを伸ばすように・増やせるように、そして花開くキッカケになれるように、とも考えていますね。






荒井:それこそU18が自主練習しているところにU15の選手が混ざってもらうとか、僕が声かけるとか、色んなシーンがあります。いずれにしても、U18ができたことによって、間違いなく僕と本谷コーチとのコミュニケーションは増えました。

色んなことを話しましたけれど、彼らはまだ10代で未来がある。もちろん練習後に何人かピックアップしてワークアウトしたりもするんですが、一方で進路の相談にも乗ります。今教えている子たちの今ではなくて、その先にどんな未来があるか。もちろんバスケットの技術的なところもそうですが、人間的なところも含めて、彼らの可能性を最大化できるよう、これからも本谷コーチと頑張っていきたいですね。




荒井コーチ指導風景(©️スポジョバ編集部)



教えるのはスキルだけじゃない。コーチになりたいあなたへ

__競技の話からチーム作りまで、さまざまなお話を聞かせていただきありがとうございました。ここからは「職業:コーチ」について伺いたいのですが、お二人はお互いのことをコーチとしてどのように見ているかも教えてください。





荒井:やはり今の時代、コーチも学び続けないといけないなと思う中で、本谷コーチは非常に勉強熱心なんですね。18のこともブレックスのことも、当然今指導している15のこともそう。あとは、、、言ったらキリが無いかもしれません(笑)



__(本谷コーチに向かって)ベタ褒めですが?(笑)





本谷:めっちゃ気持ち良いですね(笑)もっとください!(笑)








荒井:あはは(笑)。でも本当に冗談抜きで、選手に親身になって話をして・聴いているんですよね。個人のところにフォーカスして話す時間を作っているのが素晴らしい。

それこそ先日、入会してくれた子がいるんですが、その子の保護者の方から「本当にここのユースチームに入れて、本谷コーチのわかりやすい説明と、どうしてこの練習が必要なのかって言うところをわかりやすく説明してくれたのが嬉しかった。何より1番は、子どもが毎回「楽しかった」と言って家に帰ってくるのが本当に嬉しいんです」という言葉を伝えてくださったんですが、それを聞いてしまうと、僕も負けてられないなって思いましたね。






本谷:いや〜本当に嬉しいですね(笑)。でも、僕はアシスタントという立場で、U18ができる前から荒井コーチの背中を見させていただいてたので、本当に師匠と言いますか。とにかく指導においては衝撃的で。

まずテンポが良いんです。次はこれ、その次はこれって。子どもたちって、どうしてもちょっと時間が空くと集中力が切れてしまうことがあるんですが、荒井コーチの場合は逆で、どんどん子どもたちの集中力が上がっていく。そんな印象でしたし、指導中も短い言葉で的確にわかりやすく伝える。その説明が長くなればなるほど、またスイッチが切れてしまうと思うので、言葉選びから全て素晴らしいと思っています。

オフコートでもメリハリをつけて接しているところをみると、本当に常日頃学ばせてもらっていますね。


__スポジョバは求人サイトという側面もあるので、ぜひお二人から「これからコーチになりたい!」と考える方へ向けたアドバイスもいただきたいのですが、一言ずつよろしいでしょうか?





荒井:やっぱり僕の中で1番思うのは、自分の中の信念みたいな、コーチとしての信念だったり、コーチングフィロソフィー、哲学をしっかり持っていることですね。でも、その哲学っていうのは僕は変わってもいいと思っているんです。ちゃんと時代に沿って合わせていって、自分なりのコーチング像を見つけていただければ。あとは情熱のあるコーチが、やはり子どもたちからも保護者からの信頼も得られると思うので、その二つだけはしっかり準備しておくことが良いんじゃないかなと思います!






本谷:僕は今、HCになって3年目ですが、1年目・2年目は上手くいかないことが当たり前だなと思っていました。だからたくさん勉強して、たくさん振り返りしてたんですけれど「よくなかったこと」を並べてしまったことがあって。それって本当に苦しいんですよね。

だから「これが当たり前だよね」って思って、そこからどう変わるかが僕はすごく大事だと自分の経験から感じました。逆に言えば良いところも必ずあると思います。上手くいかないところを並べるだけじゃなくて、自分の良いところを見つけながら、コーチングにどう活かせるかを、考えながらやったら楽しくなるんじゃないかなと思います!




将来Bリーガーになれる道が、今ここにある。(©️スポジョバ編集部)


【PROFILE】





荒井尚光:BREXバスケットボールスクール・ディレクター/宇都宮ブレックスU18ヘッドコーチ

栃木県小山市出身。白鴎大学卒業後、当時の『リンク栃木ブレックス』『TGI D-RISE』で選手としてキャリアを積み重ねてきたフランチャイズプレイヤー。ルーキー時代から小学校などにバスケットを教えに行く機会があり、そこから指導者の道に徐々に興味を持ち始めたという。選手としてキャリアを全うしつつ、最終的には「地元の栃木に貢献したい、し続けたい」と考え、D-RISEにてキャリアの幕を閉じた。

ちなみに宇都宮ブレックスマネジャーの武田氏は高校の後輩に当たる。荒井氏が現役1年目、ブレックスアリーナでの開幕戦の時に、高校生の武田氏から花束を贈呈されたそうで、今となっては同じ職場で働いていることを誇りに思っているそう。






本谷篤司:BREXバスケットボールスクール・インストラクター/宇都宮ブレックスU15 ヘッドコーチ

東京都出身。高校3年の引退試合で非常に悔しい負け方をしたことがキッカケで、本気で選手を目指し始める。卒業して1年ほど経ったタイミングで「富山グラウジーズ」に入団。ただし、元々教員志望だったこともあり「プロになる夢を叶えたと同時に「指導者になりたい」という欲も出てきた」と本人談。選手としてのキャリアを終えると同時に『信州ブレイブウォリアーズ』にてコーチのキャリアを歩み始めた。

ただ、自分の指導者としてのスキルをより高めたい、多くを吸収できる環境に行きたいと悩んでいた矢先、たまたま荒井コーチと出会い気持ちを伝えたところ「そんなに情熱があるなら、一緒に働こうよ」とスカウトされ、2020年に宇都宮ブレックスへ移籍。

※2人とも、共通の趣味として挙げてくれたのはゴルフ。「普段屋内にずっといるので、外の気持ちいい空気を吸ってスポーツすることが、とてもいいリフレッシュなんです。スコアは聞かないでください(笑)」と、最後まで笑顔で話してくれた。


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