ネギを叩いてバスケを応援!?!? B.LEAGUE:越谷アルファーズの『ネギばんばん』誕生秘話と発案者の想いに迫る【前編】

越谷アルファーズ|(株)フープインザフッド 取締役副社長:上原和人|広報:森岡礼佳

ネギを叩いてバスケを応援!?!? B.LEAGUE:越谷アルファーズの『ネギばんばん』誕生秘話と発案者の想いに迫る【前編】

越谷アルファーズ|(株)フープインザフッド 取締役副社長:上原和人|広報:森岡礼佳

『幸せならネギたたこう~♪♪』

『Let’s Go アルファーズ!』

上記は、B.LEAGUE(B2)『越谷アルファーズ』のホームゲームにて、試合中に流れる応援のコール。コロナ禍において声出しの応援ができなくなってしまったスポーツの興行では「メガホンやハリセンを叩く」という行為で、好きなチームを応援する流れができている。

今回はこの「メガホン」や「ハリセン」など応援アイテムの中でも非常に話題を呼んだ『ネギばんばん』について焦点を当てる。皆様『ネギばんばん』はご存知だろうか?

話を伺ったのは同アイテムを制作した『越谷アルファーズ』の取締役副社長:上原和人氏と、広報:森岡礼佳氏。リーグを席巻した『ネギばんばん』を通じて実現したい未来や誕生秘話について、"ネギ愛"たっぷりに語ってくれた2人。完売御礼、大量出荷の裏側を、前後編にて余すところなくお届けしよう。


(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


ネギばんばん誕生秘話

__私、埼玉県出身で越谷はかなり所縁があるので、アルファーズさんの取材は楽しみにしてました!早速ですが、まず『ネギばんばん』がどのようにして生まれたか教えてください。





森岡:私たちが本格的にアルファーズにジョインしたのが2021-22シーズンの開幕直前。それまで越谷アルファーズのグッズに「メガホン」がなかったのですが、まずはグッズとしてスタンダードなメガホンを投入しました。

その背景には、コロナ禍でスポーツ観戦の醍醐味でもある声を出しての応援ができない状況下で、ファンの皆様がもどかしい思いをされている中でも、叩いて応援するメガホン(クラップメガホン)で会場の一体感を作り出していきたいという思いがあったんです。グッズの仕掛けで一番大切にしていたのは「とにかく定番アイテムを定着させる」「クラブカラー(バーガンディー)、クラブロゴを定着させる」という部分でした。






上原:そうそう。チームカラーのバーガンディーのものを身につけていただき、メガホンをクラップすることで「ファン・ブースターさんと一体感を作ろう。応援を楽しんでもらおう」と思ったんです。だから当時は”クラップの音を大きくする”ということと”会場をバーガンディに染めて、来場いただいた方と一体感を作る”の両軸が走っていたんですよ。

メガホンを作って販売してからというもの、来場者数に大きな変化はなかったんですけど、11月のウイングハット春日部でのホームゲームから、明らかにメガホンによってクラップの音の大きさが変わったりとか「メガホンを持つのが当たり前だよね」という会場の空気感に変わっていたのを、結構強く感じまして。






森岡:メガホンが浸透してきて私たちもすごく嬉しかったんですけれど、浸透してきたタイミングだからこそ「もっと盛り上げるために、何か次なる一手を打ちたいよね」という話になりまして。とにかく定番アイテムを定着させるフェーズから、次のちょっと遊びのある、楽しんでもらえるアイテムを投入するチャレンジをしてもいいのではないかと。






上原:そこで雑談の中から生まれたのが『ネギばんばん』でした。本当に親父ギャグみたいなところから生まれたんですよ(笑)。地域に根ざしたプロスポーツチームだからこそ、地域に根ざした、ご当地アイテムを使った応援アイテムを作れないかなと考えて。それで最終的に「ネギだ」と


__その話でいくと、ネギばんばんは「越谷ネギ」がモデルですよね?私、越谷に所縁があるとお伝えしておきながら「越谷ネギ」は知らなかったです……。





上原:埼玉・越谷出身の方でも「越谷ネギ」を知らないというのも、結構狙いにはあるんですよ。というのも、やっぱり「深谷ネギ」は埼玉では有名ですが、「越谷ネギ」はそこまで有名ではないんです。調べて見ると埼玉県は「深谷ネギ」「越谷ネギ」「吉川ネギ」っていう三大ブランドがあって、見つけたときに「ネギを応援アイテムにすることで、アルファーズを通じて地元の名産を知るキッカケ作りの役割も果たせるのではないか」と思えたんですよね。






森岡:それこそ隣町の草加市は「草加せんべい」で有名ですけれど、私たちは『越谷』のチームですから、なにか越谷の地に恩返しというか、ご当地で応援っていう形になるものを何か組み合わせていけたら面白いんじゃないかって、色々調べた結果「ネギ」になったんです。






上原:『「草加せんべい」カスタネット』とかも最初あったよね(笑)








森岡:ありましたね(笑)。越谷には『ガーヤちゃん』っていう越谷特別市民(キャラクター)がいて、自分で鍋に入った鴨がネギを背負っているという愛くるしさがたまらないのですが(笑)。ガーヤちゃんが街の至るところにいて、それもあって「ネギ」が浮かんだ、というのもあります。






上原:そうそう(笑)。調べて行くと、どんどんネギは越谷に所縁がある食材っていうことが目に見えてわかってきたんですよ。であれば、メガホンが浸透してきたタイミングでクラップするための応援アイテムになっているからこそ、形もネギみたいですし「メガホン、ネギにしちゃおうか(笑)」「メガホンがネギだったら面白くない?(笑)」みたいな、そんな雑談から生まれたんです(笑)。

それで、もうパッと『ネギばんばん』って名前が思いつきまして、そこからは森岡に「あとは任せた」ってプロモーションをお願いしてですね(笑)






森岡「ご当地アイテムを使う」ということそのものは、地域のプロクラブがやらなければいけないことだとも思っていたんです。私たちプロバスケチームを通じて、地域の皆様に活力を与えられたり、楽しいと思えるような瞬間を作りたい。かつ、まだまだ有名ではない越谷ネギを、アルファーズを通じて知ってもらえたら嬉しいなと。そんな想いでストーリーづくりやプロモーションを仕掛けていきました。





『ネギばんばん』への愛をアツく語る上原氏






上原:これは余談ですが、実はかつて我々と苦楽を共にした山谷さん(山谷拓志:現『静岡ブルーレヴズ』代表)もご当地グッズには強い思いを持っている方で。山谷さんの場合は○○ヘッドという被り物ですが(笑)。

『ネギばんばん』完成後、師匠への敬意を込めて『富士山ヘッド』を真面目にふざけてプロモーションしている山谷さんのもと(静岡)に、ネギばんばんを届けに行ってきました。





[左]『富士山ヘッド』を被った上原氏 [右]『ネギばんばん』を持つ師匠に当たる『静岡ブルーレヴズ』代表の山谷氏 


ネギってもネギらなくてもいい。越谷ネギを多くの人に知ってもらうため

__すみません。私がネガティブなだけかもしれないですが「ぶっちゃけネギを叩くってどうなの?」とか、反対意見等々はいかがでした?





上原:仰る通り食べ物なので「ネギを叩くって……」という意見もあると思って、実際にJAの本部長にもご相談させていただいたんですよ。「『ネギばんばん』という新アイテムを作ってみたんですけど、これはクラップするためのアイテムです。ネギをモチーフにしたアイテムを叩くことがどう映るのか、という懸念もあるのですが、応援グッズとして、そして越谷ネギの認知拡大の後押しにもなればという想いで開発しました」というお話をさせていただいたら、好意的な反応で後押しをいただいて。






森岡:2022年1月22日のホーム戦で販売開始してから大好評をいただきまして、販売開始した節では2日間通して4人に1人の方に購入いただきました。また、日本農業新聞さんの一面を飾らせていただくなど、スポーツメディア以外の方々に取り上げていただくことも多くて、私たちとしては『越谷ネギ』の認知拡大に多少なりとも貢献できたのでは?と、嬉しく思っています。


__それは凄い(笑)。ちなみに『金のネギばんばん』もありましたよね?





上原:実は通常の『ネギばんばん』の発売前から『金』という着想はあったんです。アルファーズはバーガンディーとゴールドがチームカラーなので『金』の方がアルファーズのアイテムとしてはマッチしているんじゃないかなと。

もっと言うと、はじめて販売したバーガンディーのメガホンが浸透してきて、ようやく会場がバーガンディー色に染まってきたのに「そもそも緑色のアイテムを出すこと自体、ちょっとリスキーなんじゃないか」という話もありました。ただ、やはり地域活性化という側面も考えてネギの再現度を優先するという着地になったんですよね。まぁ、ダメだったら元に戻せばいいかな、とかも考えていたんですが(笑)。結果、通常の『ネギばんばん』は緑『金のネギばんばん』は、選ばれし者だけが持てるレアアイテムとして、ファンクラブ会員の方だけに本数限定で発売しました。






森岡『金のネギばんばん』という響きは最初からとても気に入っていて。レアアイテムにする、ハードルを超えた方々だけが持つことのできるアイテムとして「え?あれ何?あの人、金のネギばんばんを持ってる!」とザワザワさせたいという想いもありました(笑)。発売前からそこに生まれる景色や皆様が楽しんでくださっている笑顔を想像して、私たちも楽しみながら実行していったようなイメージでした(笑)





『金のネギばんばん』のプロモーション時に使用した画像 @越谷アルファーズ提供


__楽しそうに企画中に話されているのが目に浮かびます(笑)。発売に関しては、色んなプロモーションもありましたよね?





上原「ネギり(値切り)価格」とかも、正直親父ギャグの延長ですけれども(笑)。ただ、値切れたら面白いけど、値切った先に何があるか、ですとか、その辺りの企画はみんなで作っていきました。『ネギばんばん』は1200円が定価で1000円に値切れるんですが、もし値切らずに購入いただいた際、この差額の200円は、コロナ禍で収入面が苦しい農家さんとか、食べるのに困っている方への寄付とか、当社への利益ではなくて、地域に還元する流れを作ろうと考えました。

もちろん値切っていただくだけでも、私たちとしてはファンの方々とのコミュニケーションが生まれるので非常に嬉しいことで「ネギだけにネギれる!」という単なる思いつきから始まったんですけれど、越谷ネギの認知拡大や地域の方々の為に少しでもなれれば、という想いはあります。おかげさまで今は街で『ネギばんばん』を持っている人を見た人が「なんであの人たちネギ持ってるの?」「アルファーズの応援グッズなんだ」「なんでアルファーズの応援グッズがネギなの?」「ネギって、越谷の名産みたいだよ」みたいな会話も生まれているんですよね。それが本当に嬉しくて。






森岡:ファンの皆様と共にひとつのストーリーをつくっていって、盛り上がりを生み出したい、みんなでシェアできるひとつのアイデンティティーをつくりだしたいという思いでプロモーションを仕掛けていきました。地域にとってのアルファーズの存在価値を見出すことも大切だと思いますし、「越谷ネギってあったんだ、地域の特産品なんだ」ということをより多くの方に知ってほしいという思いも乗せながら。

最初のインパクトを与える手段としてSNSを活用したんですけれど、実際にネギばんばんの絵を出してネギり価格について触れた投稿のインプレッションは20万を超え、皆さまが『ネギばんばん』の登場にワクワクしてくださっている反応がとても嬉しかったです。アルファーズのファンの皆様だけでなく、他クラブのファンの方からもたくさん反応をいただけたのが印象的でした。









森岡:デビュー後にアルファヴィーナス(チア)が実際にネギばんばんを手に踊る姿と共に「幸せならネギたたこう」と添えたツイートも、1日で2万回再生いただくなど大きな反響をいただきました。コロナ禍ということもあり、アイデアを実現しきれないこともありましたが、皆様の反応に支えられながら、SNS上でも会場でも、時にメディアの皆様を巻き込みながら、話題作りの種まきを続け、育てていきました

結果、一瞬の盛り上がりで終わることなく、継続的に想像以上のに反響をいただけましたし、それも全てポジティブな印象でした。SNSのエンゲージメントも高まったので、本当によかったですね。





2022年4月24日にはクラブ史上最多2,865名の動員に成功。会場内には『ネギばんばん』を手に応援するファンの姿も目立ち、『ネギばんばん』がアルファーズの代名詞として浸透している様子がうかがえた(写真は動員企画を行ったメンバー)


>>>次回後編へ続く



【PROFILE:経歴編】





取締役副社長:上原和人|越谷アルファーズ (株)フープインザフッド

茨城県出身。国士舘大学を卒業後は、バスケットボール選手として東京日産自動車販売実業団チーム東京日産ブルーファルコン所属後、2013-15シーズンは大塚商会アルファーズ(NBDL・現越谷アルファーズ)で選手としてプレーした。その後、2015年2月につくばロボッツ(NBL・現茨城ロボッツ)GM就任。2020-21シーズンB1昇格を達成し退任。2021年9月に越谷アルファーズ(B2)取締役副社長に就任し現在に至る。






広報:森岡礼佳|越谷アルファーズ (株)フープインザフッド

奈良県出身。早稲田大学時代から部活動の広報を務めていたことから、卒業後、2014-2016年はサッカーJリーグ『ヴィッセル神戸(J1)』の営業/広報として活躍。その後2016-2021年まで上原氏とともに『茨城ロボッツ』に在籍(Bリーグ初年度から5シーズン広報を担当)。上原氏と同タイミングで越谷アルファーズにジョインし、広報・事業全般を担っている。過去にはスポーツナビ「スポーツPRカンファレンス」優秀賞受賞(B2最多動員5,041名達成)しており、また2021年東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会の広報局の一員としても活躍した。


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