「バスケはお金にならないと思っていた」だからこそ”面白い”を全力で!名物カメラマン・元さんのこれまで【後編】

川崎ブレイブサンダース 石川 元 (広報部・カメラマン)

「バスケはお金にならないと思っていた」だからこそ”面白い”を全力で!名物カメラマン・元さんのこれまで【後編】

川崎ブレイブサンダース 石川 元 (広報部・カメラマン)

2021年3月の第96回天皇杯優勝。しかし叶わなかったB.LEAGUE制覇。オフには辻直人選手の移籍、前田悟選手の獲得などビッグニュースも飛び込んできた。感動も涙も笑顔も。選手と一緒に間近に感じてきた人物が、川崎ブレイブサンダースにはいる。今回密着したのは同チームのYouTubeでもお馴染み「カメラマンのもとでーす!」の石川元さん。

後編では、彼が川崎ブレイブサンダースに出会うまでの軌跡をお届けします!”諦めない”というよりは”今いる場所で全力を尽くす”ことで、自己成長した先に掴めるものがあると、元さんのお話を聞いてしみじみ感じることができました。

(取材:構成=スポジョバ編集部 小林亘)


面白い人が集まる場所へ。趣味から始まった「カメラマン」という仕事

__すみません、今更なのですが、元さんは大学卒業後、どんなお仕事をされていたんですか?川崎に入るまでのお話を、ぜひ伺いたいなと(笑)

石川:そうっすよね(笑)僕は日本大学芸術学部(日芸)放送学科出身です。ただコースは、番組制作、コピーライター、音響技術とか色々あるんですけど、特にこれをやりたいと思っていったわけではなく、日芸に面白い人が集まるらしいっていう話で友達と受験して放送学科に入ったんです。ただ、父親がカメラマンだったので、同時期にカメラを譲ってもらって写真撮り始めてたんですね。そこから写真学科の子たちと仲良くなって写真をよく撮るようになりました。それで賞を取ったりもしてたんですよ。褒められるので楽しくなって本格的に写真を仕事にしようと思い、卒業後はすぐに日本で一番古い広告会社と言われる『LIGHT PUBLICITY』って会社に入って、カメラマンとしてのキャリアがスタートしたって感じです。

__卒業後、当時はどんなお仕事をされていたかも、お伺いしていいですか?

石川:まぁもう本当に広告の写真ですね。ナショナルクライアントっていうか。街に貼ってあるポスターとかTVCMとか化粧品の広告に関わっていました。あとはタレントさん、食品、物撮りなど、まぁ広告のカメラマンです。

__バスケも天才的に上手かったと、噂では聞いていますが……(笑)

石川:昔は本当に天才的に上手かったです(笑)。でも部活バスケは中学校で辞めてしまって。高校からはクラブチームとかでバスケをやりながらずっと……ですね、大学でも一応。美大のバスケ部なんで普通のサークルより活動しないんですけど、バスケ部としてやっていて。そのあと美大の仲間でチーム作って今も運営しています。15年くらい?ですかね。どちらかと言うと、見るよりはやる方が好きでしたね。

__選手は難しいにしても、たとえば将来的にはバスケに携わりたいって気持ちは、当時からあったんですか?

石川:いえいえ。何より最初は全然余裕がなくって。「バスケやりたい!」って目標に向かうというよりは、一生懸命、目の前の仕事を頑張って、色んな広告を作ったりしていたっていうのが正直ですね。それで何年か経って仕事にも慣れてきたタイミングで『SOMECITY』ってストリートバスケットボールのリーグを立ち上げた棚町義一っていう友達から「SOMECITYの写真撮ってみない?」って言われて。彼はムサビ(武蔵野美術大学)出身なんですけど、美大の繋がりから元々友達で。それで撮影するようになったんですけれど、写真の評判が凄くよくって。そこからずっとSOMECITYの撮影を趣味みたいにやるようになったんです。





美大とバスケで作ってきた繋がりが導いてくれた世界

__SOMECITYでも撮影されていたなんて驚きです!

石川:たまたま同時期に会社でCMの撮影とかも始めてたので、映像とかも撮るようになっていたんですね。それでSOMECITYでも写真だけではなく動画も撮り始めるようになったんです。当時ジンバルって、今はみんな手持ちできるような小さい物ですけど、昔はめちゃめちゃ大きい機械で。それを持ってコートに入って撮らせてもらったり。色んなアイデア出して自由にやらせてくれる環境だったのでありがたかったですね。そういう撮り方が結構新しかったので、SOMECITYの動画を見た海外の方から問合せが来たりとかして、ちょっと呼ばれて海外に撮影行ったりとかしてました。

__それは凄い……!棚町さんとのご関係から、元さんがバスケ界に徐々に入るようになったんですね。あれ、当時はまだ独立されてないですよね?

石川:そうですね!そもそもバスケットでお金を稼ごうなんて思ってなかったんですよ。当時はBリーグもなかったし「バスケットはお金にならない」って学生時代からずっと言われてきたので。昔の話をすると、中学校の頃もバスケは真剣にやってましたけど、その時も「一生バスケだけやっていくわけにはいかないんだよ」って言われてて。バスケじゃ食えないって。そう思ってて最初は実際そうだったけど、仕事ではない分、好きなことをやれる。好きなことを好きなように撮れる。なので、バスケの撮影は言い方悪いかもしれませんが僕の趣味みたいな感じでやってました。それで、しばらくして棚町が『ballaholic(ボーラホリック)』っていうバスケアパレルを始めて、それのイメージムービーとか新作の写真撮影とかもやるようになって。当然友達なので仕事ではないんですが、楽しくやらせてもらってて。

__ちなみに独立されるまでのお話で、お伺いしたいのは『ダブドリ』の存在です。元さんがダブドリの写真も撮影されていると伺っているんですけれど、整理する意味も込めて、SOMECITY、ballaholic、ダブドリ、川崎ブレイブサンダースと色々ある中で、どんな風に歩んできて現在に至るんですか?

石川:SOMECITYとかballaholicはお伝えした通りで、その次にダブドリなんですよね。Twitterのバスケ仲間で始めたんですよ。編集長の大柴壮平さんが「バスケ雑誌作りたい」って話から始まって仲間集めですよね。通訳とか色々詳しい大西玲央さんとデザイナーのTOMIさんと、カメラマンだったらアイツかなってことで僕に声をかけてもらったんです。「こんなのやりたいんだけどやらないか」って。もちろん二つ返事でOK。最初は全部の撮影をやってたんですけど、さすがに普段の仕事とスケジュール的にも合わなくて、最近はほぼ表紙だけやらせてもらってるような感じで。あれは毎回我ながら出来が良くて。毎回それを超えていかないといけないのでプレッシャーもありますけど、楽しくやってます(笑)ちょうどダブドリに関わり始めた頃ですかね、以前勤めてた広告会社を辞めてフリーになったって形です。

__それっておいくつくらい?

石川:30歳くらいから自分の撮影が増えてきて、お金になる仕事もバスケの仕事も含めボリュームが増えてきたので退職したんですよね。それでフリーのカメラマンとして軌道に乗ってきたな……ってくらいのタイミングで、友達から「DeNAが川崎ブレイブサンダースを承継して、面白いことになりそうだよ」って話を聞いたんです。その時に広報部の募集をしていたので「せっかくだからやってみたいな」ってことで応募したんですよ。





困ったときに頼るのは、漫画〇〇の名言!

__じゃあ、一瞬独立されて、今は川崎の正社員としてご活躍されているわけですね!そうすると、川崎に入ったのっていつ頃になるんですか?

石川:あれ?いつだっけ?DeNA1年目の年で、北卓也さん(当時HC・現GM)がいたので、冬とか春になるくらいですかね。その年の6月くらいに一回タイミングがあったんですが、カメラマンの仕事が整理できていなかったので、半年くらいお時間いただいて、そこから入るって感じです。振り返ると、まさか自分がこんな風にプロバスケに関われるとは思っていなかったので、入れるってなった瞬間は本当に嬉しかったですね。もちろんSOMECITYとかの撮影も楽しいし今もやっているんですけれど、バスケクラブのカメラマンとして食べていけることが嬉しかったというか。

__それは非常に感慨深いですね。元さんのこれまでの活動が認められた瞬間の1つでもあるのかなと思います。ちなみに仕事で培った部分も大きいとは思うんですけれど、カメラマンとして成長していくために、元さんはどんな風に学ばれていたんですか?

石川:偉そうなことは言えないですけれど、考え続けるっていうことは何するにも大事だなと思っていて。元々挑戦すること、ダメそうでもやってみるっていうのが好きなんですけど、ダメでも考え続けていれば、いつか正解の道にたどり着けるっていうのが、漫画のジョジョに書いてあったので。その通りにやっているだけですね。アバッキオの同僚が言ってたんですけど(『ジョジョの奇妙な冒険:第5部(コミックス59巻参照)』)。なので、ルーティンになった仕事でも新しい要素を入れたりとか、その中でも考えていくっていうのは仕事だけじゃなくて常に考えています。

__まさかジョジョ5部の話が出てくるとは(笑)。それこそ今回は藤井選手がダブドリvol.12の表紙でしたけど、あれってどういうアイデアから始まるんですか?どうやって撮影したんだろう?と思いつつ。

石川:あれはもう、バックボードとリングだけ借りてきて、スタジオに設置して。本当に座って撮って合成しているんですね。あれはもう、本当にお遊びなんで。お遊びだからいいじゃないですか。遊びだから本気でやれるし。仕事ってやらなきゃいけないから。どうせやらなきゃいけないなら楽しいほうがいいし、自分で選んだ楽しいことなら真剣にやろうって、これだけはいつも思います。だからダブドリの撮影は仕事じゃなく、面白い絵を撮りたいので、できるだけ面白いほうに。リスクは跳ね上がるんですけどね(笑)。それこそ藤井選手の撮影で言えば、ゴールが倒れないようにするとか、ゴールの手配とかも大変でしたけれども。藤井選手も心よくやってくれたので、良いものが出来上がったなって思っています。

__表紙のデザインと写真のクオリティには、毎回驚かされていますw

石川:vol.1のロバート・サクレさん(2019年現役引退・サンロッカーズ渋谷)も、vol.2のシゲさん(田口成浩選手・現秋田ノーザンハピネッツ)も、結構合成は使ってるんですけれど、合成が嫌なんじゃなくて、できることはチャレンジして良いものを創りたいっていう気持ちです。それこそ最初の最初は、デザイナーのTOMIさんがアイデアをラフにして持ってきてくれるんですけれど、それは広告の頃の経験で、その絵の何が面白いのかをずっと考えて「これって面白くない?」っていう話をしつつ「それって実はこうだから面白いんじゃない?」って別の角度からも考えながら。それは広告の撮影で培ってきた考え方だと思いますし、今もだいぶ活きてるなって感じています。川崎でもそんな風に、面白いと思っていただけたり何かしら心に響くようなコンテンツを造り続けたいなって思っています。




バスケ雑誌『ダブドリ』の表紙から一部抜粋


原点回帰。”カッコいい”より”伝わりやすい”言葉で。

__色々たっぷりお話聞いてきて、もう元さんのインタビューも終盤になってきました……。もっとお話伺いたいところですが、一旦締めの部分で、ファンやサンダースファミリーの方々に、一言メッセージいただけますか?

石川:皆さんにメッセージする立場ではないですけど、特にサンダースファミリーの方々は胸が熱くなるような応援を毎回してくださってて、本当にありがたい限りです。SNS上でも皆さんチームを愛してくださってるので。これからも多くの方が楽しんでもらえるように、より川崎を応援しててよかったなって思えるコンテンツを出していけるように、頑張っていきたいって思っています。やれることを全力でやって、バスケ界を盛り上げていければこれ以上の幸せはないかもしれないですね。

__これからも元さんを始め、広報部の皆様の情報発信は見逃せない、ということですね!

石川:もちろん!あと動画だけじゃなくて、僕はちょっとしたテキストとかも書かせていただいたりしています。端々にチームのことを共有できるようにやっているつもりなので、新しいこともチャレンジしつつ。

__と言いますと?

石川:広告とかもそうですけど、英語で誤魔化してる部分っていっぱいあって。たとえばポスターにカッコいい単語入れても「それっぽい」「カッコいい」だけであってメッセージ性としては弱くて、伝わりにくいんですよね。だから今年、川崎のクリエイティブは日本語に挑戦してるんですよ。それこそポスターとか会場の装飾とかも極力英語を減らして日本語に。英語がダメってわけではなくて、英語のコピーを採用した時に、その英語を一回日本語に直して「これじゃカッコ悪いね」って単語は、本当にカッコ悪いんですよ。そういうの常々気を付けながらクリエイティブは作るようにしています。

__今シーズンの『MOVE』は恐らく佐藤HCが作られていると思いますが、それ以外の部分、それこそ『MOVE』に対するメインコピーとかを元さんも作られているってことですね?

石川:今回は外部のコピーライターを入れて作ったんですけど、僕も関わらせてもらいました。結果的に『MOVE 未来は、その一歩の連続だ』って結構強いメッセージがついているんですけど。これってわかりやすい。それが例えば『MOVE never stopなんとか』みたいな風にしても伝わり方は違うし、日本語に直した時に『MOVE 絶対止まるな』みたいになって「それで本当にいいか?」って考えると「あれ?」って。なんか何も言ってないし「動く」って言ってるんだからそりゃ止まらないでしょ(笑)みたいな。でも英語だと平気でそういうことができちゃうんですよね。だから「未来は、その一歩の連続だ」って、過程も一緒に楽しんで、最後頂点に登った時に一緒にっていう気持ちがすごく伝わると思うんです。スポーツってやっぱり、普段の生活とかを勇気づける1つだと思うので、そういうわかりやすいメッセージと、川崎ブレイブサンダースを通じて、バスケファン、サンダースファミリーだけではなくて、チラっと見てくれた誰かの心にも響くように、役に立って行けたらいいなって思ってます。そんな風に、これからも頑張りたいですね。




今シーズンの川崎ブレイブサンダースのスローガン


【PROFILE】石川元|川崎ブレイブサンダース 広報部・カメラマン

生粋のNBAファン。自身がPGであるため、憧れはジェイソン・キッドとペニー・ハーダウェイ。ダブドリvol.6の撮影でペニー本人にインタビューする機会があり、その際、生まれて初めてサインをお願いした。書くものがなくパスポートを出したそうで、彼の代名詞である「25」ページ目にサインを書いてくれたとのこと。

最近初めてフェニックス・サンズを箱推しするようになった。「エリック・ブレッドソー(現LAC)が好きで、彼がPHXに来たのがキッカケで、そこから大ファン」という。


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